コロナ、雇用と生産に影響 有効求人倍率1.45倍に低下
新型コロナウイルスの感染拡大で雇用や生産に影響が出始めた。厚生労働省が31日発表した2月の有効求人倍率は1.45倍(季節調整値)で前月から0.04ポイント下がった。2年11カ月ぶりの低い水準となった。足元では解雇や一時休業が出ている。経済産業省が発表した2月の鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇だが、3月は5.3%低下と大幅な低下を見込んでいる。
有効求人倍率は1.45倍
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。有効求人倍率は1月に0.08ポイント下げた。2カ月で0.1ポイントを超える下げ幅になるのは、2008~09年の金融危機以来となる。
雇用の先行指標となる新規求人は主要産業全てで前年同月比で減った。製造業は24.7%減で業種別で最も減少幅が大きかった。生活関連サービス・娯楽業の減り幅も大きく、18%減だった。
新型コロナウイルスの感染拡大により、解雇などが見込まれている人数は厚労省が30日時点で把握しているだけで1021人にのぼる。一時休業など雇用調整を検討する事業所は3825ある。
厚労省は雇用情勢判断について、前月までの「改善している」との表現をやめた。新たに「新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響に十分注意する必要がある」との表現を加えた。
総務省が31日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は2.4%で前月から横ばいだった。完全失業者数は166万人で2万人増。勤め先の都合や定年退職などによる非自発的な離職は4万人増えた。
就業者は6691万人で前年同月に比べ35万人増えた。卸売・小売業で44万人増えた。一方、製造業は15万人減った。米中貿易戦争の影響で自動車関連で契約社員が減るなどの影響が出ている。
鉱工業生産は0.4%増
経済産業省が31日発表した2月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比0.4%上昇し100.2だった。3カ月連続で前月を上回ったが、上げ幅は小さくとどまった。3月の先行き予測は5.3%低下となり、経産省は基調判断を「一進一退ながら弱含み」に据え置いた。
2月は電子部品や化学が上昇した一方、航空機部品を含む輸送機械で前月比11.5%低下した。新型コロナの影響で部品供給が滞り、自動車も減産となった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査では、3月に前月比5.3%と大幅に低下し、4月は7.5%の上昇見込みとなった。経産省は「3月上旬までの調査のため、新型コロナを巡る情勢変化を反映し切れていない。先行きは厳しく、不確実性は大きい」と説明する。
小売業販売額は1.7%増
経済産業省が31日発表した2月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は11兆2280億円と前年同月比1.7%増えた。特にドラッグストアは18.9%の大幅増だった。新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクやトイレットペーパーなどの買いだめの動きが広がったことが統計にも表れた。
小売業販売額が前年の水準を上回るのは、消費税率を引き上げる前の駆け込み需要があった2019年9月以来5カ月ぶり。業態別にみるとスーパーは主に家庭用品が伸びて6.0%増、コンビニエンスストアは加工食品などが好調で3.4%増となった。いずれも新型コロナの不安が消費を押し上げた面がありそうだ。
一方で百貨店は11.8%減だった。訪日客の減少などの影響が出た。