ピケティ氏「物価上昇には賃金増しかない」 都内でパネル討論
来日中のパリ経済学校教授のトマ・ピケティ氏は29日、東京都内で講演し、各国で広がる富や所得の格差は「グローバル化の結果だけではない」と述べた。「教育や労働市場、企業統治、財政政策が長期的に決定する」として、各国の制度や政策が大きな影響を与えると強調した。日本経済については「低成長が続くなかで、過去に蓄積した富が不平等につながる」と指摘した。
ピケティ氏は世界的なベストセラーになった著書「21世紀の資本」で、資本主義社会では「資本収益率が経済成長率を上回り、富や所得の格差が拡大する」とする仮説を唱えた。
講演では、格差の是正策として「累進課税は最も透明性が高く、民主的な制度だ」と強調。日本経済に関しては「国民所得に対する資産の比率は欧州の推移と似ている。比率はこの数十年上がってきており、相続財産に依存する社会に戻ってきている」と述べた。
講演後のパネル討論ではアベノミクスに触れて「リフレ政策は不動産バブルにならないか」と懸念を示し、「物価を上昇させるなら賃金を増やすしかない」と指摘した。