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マンデラの説得

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イーストウッド映画の中でも5本の指に入るぐらい好きな『インビクタス』を見返した。

インビクタス =イーストウッド集中講座(15)=

http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-885.html

やはり印象的なのは、スプリングボグスの主将ピナール(マット・ディモン)が、マンデラ大統領(モーガン・フリーマン)にお茶に呼ばれるエピソード。
以前に取り上げた時、こう書いた。

訪問後ピナールの妻が聞く。
「大統領の要件はなんだったの?」
「・・・・」
「大統領が何の用事もないのに呼ぶわけないでしょ」
ピナールはハッとする。
でも観客もピナールも要件らしきものは受け取っていない。
しばしの沈黙の後、ピナールはつぶやく。
「ワールドカップで優勝しろってことだ」
ここで観客もマンデラの意図を理解する。
自分の言葉に驚いたような表情のピナール。
観るものに不思議な感銘を与える。

あの時「観客もピナールも要件らしきものは受け取っていない」と言ったけど、マンデラはもうちょっとハッキリ言っている。
マンデラは彼が「ひらめき」と呼ぶものをこう説明している。
「バルセルナ五輪に招待されたとき、スタジアム全員が詩で迎えてくれた。
“神よアフリカに祝福を”だ。
それは私に力を与えてくれ、限界を超えて挑むことが出来た。
今、南アフリカは国民が持てる能力以上の力が必要だ。
この国は誇れるものを求めているのだ」
つまりそれがラグビーワールドカップ優勝だ。

私は前回見た時、何を見てたんだろうね。
1995年の南アフリカのようなことは日本でも起こっている。

2011年 なでしこジャパンのW杯優勝
1949年 全米水泳選手権で圧勝したフジヤマのトビウオ古橋広之進

テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

ブラッドリーの秘密

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『父親たちの星条旗』の3人の帰還兵のうち、語り部役で最も闇の部分が少なかったのはブラッドリーだった。

名声に惑わされず、静かに人生を終えた、ことになっていた。

映画の中では。


ところが、今日(2016/6/24)あるニュースが飛び込んできた。

なんとブラッドリーは1回目の星条旗を立ててたが、2回目には参加せず、あの写真には写っていなかったというのだ。
ブラッドリーと思われていた人物は、ハロルド・シュルツ一等兵で、家族にだけ伝えて1995年に亡くなっている。

ブラッドリーもまた、人に言えない秘密を抱えて生涯を終えた様だ。





YahooNEWS「父親たちの星条旗」モデルは別人 米海兵隊が調査結果を発表
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160624-00000573-san-n_ame


『父親たちの星条旗』
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-1313.html



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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

イーストウッドとリバタリアニズム

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我々の単純なイメージではアメリカの共和党は鷹派、民主党は鳩派ってことになっている。
そして、イーストウッドが共和党支持なのは昔から有名だ。
実際ダーティ・ハリーの頃はイメージ通りのキャラクターだった。

ところが、後半の作品群を見ると、平等、博愛、弱者への思いやりに溢れていて、リベラル派かと見まごうほどだ。
しかし、今でも共和党支持だ。

そもそも、歴史を紐解けば共和党と民主党の立場は入れ替わったりしてる部分もあるようで、ことはそんなに単純ではなさそうだ。

ただ、そのブレは別として、共和党の中にはその標榜するところの小さな政府を究極まで推し進めたリバタリアンというグループがあって、イーストウッドはそこに属するらしい。

経済的自由と個人的自由の両方を求める彼らは、国家の介入を嫌うから左翼的な計画経済も右翼的なファシズムとも相容れない。

政府による富の再配分を伴うリベラリズムとも一線を画する。

一方でリバタリアンに倫理観がなければ単なる弱肉強食になってしまう。
ある意味ヤクザの世界などその一種だろうか。

明らかにタッチの異なると見える初期のイーストウッドの作品も、国家権力を当てにしないという点に絞れば共通すると言えるかも知れない。

前述のように後半のイーストウッドには高い倫理観の下、権力への厳しい視線と弱者への思い遣りに溢れている。

リバタリアンの中には保険制度には反対しながら、無料診療をする医者もいるらしい。

それはさておき、完全なリバタリアンではなくとも、この思想はアメリカ人の心情に何らかの影響を与えているように思える。
そしてそれは国を愛しながらも完全に魂を預けず個の尊厳を保つという健全さに貢献している気がする。

国を思うと盲目的に走ってしまう我々日本人に足りない部分ではなかろうか。

それにしても、小さな政府が強いアメリカ、軍備増強体外強硬派に繋がるメカニズムはよくわからない。支出を集中させるということだろうか。

もっともベトナム戦争を始めたのは民主党だし、冒頭の鷹派、鳩派の括りはやはり単純に過ぎるかな。

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テーマ : ここがヘンだよアメリカ
ジャンル : 政治・経済

アルカトズからの脱出 =イーストウッド集中講座(38)=《ネタバレ》

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前回『ダーティハリー3』の舞台がアルカトラズ島だったところで、Aからの提案で『アルカトラズからの脱出』を取り上げることとなった。
提案者がストーリーと共に書き出しを務める取り決めなのだが、前回私提案の『ダーティハリー3』をAが書いてくれたので、こちらを私が書こうと思ったが、こりゃ書くの簡単だわ。

知能優秀な脱獄常習犯フランク・モリス(クリント・イーストウッド)が、脱獄不可能と言われたアルカトラズに収監されるが、ジョン(フレッド・ウオード)とクラレンス(ジャック・チボー)のアングリン兄弟と共に脱獄に成功(正確にいうと行方不明)する話だ。

これを監督のドン・シーゲルはまるでドキュメンタリーででもあるかのように淡々と描く。

実話でもあるし、原作小説もあるので、アメリカ人にはモリスのことは知られているのかも知れないが、少なくとも映画でみる限り、どんな罪を犯したのか、どんな人となりでなぜ犯罪にたどり着いたのか分からない。

普通はそれを描いて、例え犯罪者であっても主人公への幾ばくかの共感を得るようにするものだ。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ダーティハリー3 =イーストウッド集中講座(37)=<ネタバレ>

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ダーティハリー3(The Enforcer)1976

今回の敵は革命グループを名乗っているがその実は金目当てのギャング団という設定。

後年の「ダイハード」のパターンだ。

冒頭いつも通りハリーのかっこよさを見せるシーンだが、レストランの仮病で食い逃げしようとする男の話で、あんまり冴えない。
救急車を呼んででもらおうとする食い逃げ常習者を「飯代はいいからとっととうせろ」と追っ払う。
結局無銭飲食を見逃した格好で見てるこっちは「いいのかなあ?」と思ってしまう。

なんじゃこりゃ、と思ってたら他所で人質を取った立てこもり事件が発生し、そこでは犯人グループを皆殺しにしてしまう。
警察としては人命第一で犯人の要求を飲もうとしたやさきの強行突入だったのでハリーの上司はカンカン。
店を滅茶苦茶にした損害と、人質を無視して強行解決したことを責められて、人事課に回されてしまうハリー。

ここでテーマが明らかになる。

「人質を取られたら犯人の言いなりになるしかないのか?」


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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ダーティハリー2 =イーストウッド集中講座(36)=<ネタバレ>

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ダーティハリー2(Magnum Force)1973

「人殺し」と書かれたプラカードを持った群集に追われ裁判所を後にする組合幹部カーマイン・リッカ
どうも悪党だが、裁判で無罪になったようだ。

帰路白バイに停められ、問答の最中に同乗者含め警官に射殺される。
凶器はマグナム。
犯人の顔は映らない。

ここでハリー・キャラハン登場。
今回の相棒は黒人のアーリー、前作の相棒チコは転職して教師になったらしい。
二人は上司のブリッグスにこの事件から外される。

その帰り、二人が空港でハンバーガーを食ってると何かトラブルの様子。
ハンバーガーを食いながら近づくハリー。
国内線がハイジャックされたという。

このあたりの展開は第一作を踏襲してて嬉しくなる。

機長に化けてハイジャック機に乗り込むハリー。
犯人に銃を突きつけられたままハリーはジェットを飛び立たせようとする。
その様子に不安になった副操縦士が聞く。

「国際線の機長に失礼な質問ですが、経験は?」
「ない。習ってない」

ここでハリー急ブレーキを引く。

倒れこんできたハイジャック犯を殴り銃を奪う。

乗客を抑えていた共犯が機中を後方へ逃げる。

しきいの向こうへ駆け込んだところにハリーが撃ち込む。

しきいの影から犯人が通路に倒れこむ。


事が終わった後、通報を受けたブリッグス到着。
「遅かったな」
アーリーに銃を渡して立ち去るハリー。

この呼吸だよ
もう最高

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テーマ : イーストウッド
ジャンル : 映画

ダーティー・ファイター =イーストウッド集中講座(35)=<ネタバレ>

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2010年9月に始めた『イーストウッド集中講座』も34本目の『チェンジリング』を以て、当初の予定分は終了となった。
新作や折々の話題との関連などで一部順序を入れ替えたが、基本的には時代を追って取り上げてきた。

まだまだ触れていない作品は多くあるので今後も継続して行こうと思うが、これからは年代にかかわらず交互に作品を指名して行く形を取りたいと思う。
まずは私Hから、、。

ソンドラ・ロックのファンとしては、やはり『ダーティー・ファイター(1978)』(Every Which Way But Loose)を指名したい。

企画された時は配給元からは反対が多かったと聞くが、蓋を明けてみると意外に好評で、実はその時点でのイーストウッド映画最大のヒットとなり、続編まで作られることとなった。

さて、本作はイーストウッドには珍しい純粋な娯楽作品である。
もちろん『ダーティー・ハリー』やマカロニも娯楽作品には違いないが、なにがしかの緊張を伴うものなのに比べ、こちらはストリートファイトがテーマでありながらもう少し肩の力の抜けたものだ。

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テーマ : イーストウッド
ジャンル : 映画

チェンジリング =イーストウッド集中講座(34)=

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チェンジリング(2008) Changeling

1928年、ロサンジェルス
クリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は息子のウォルターと二人暮らし。
彼女は電話交換手のスーパーバイザーで、一戸建ての家に住み、女性としては安定した収入もあるようだ。

母子家庭のつつましいながらも幸せな暮らしぶりが優しいBGMとともに描かれる。
チャップリンの新作(年からすると『サーカス』)を見に行く約束の休日。
急な仕事でクリスティンが出勤し、帰ってみるとウォルターがいない。

近所を捜してもいない。

翌日警察が重い腰を上げたが、手がかりはない。

4ヵ月後、ウォルターが見つかったとの知らせに駅に迎えに行くクリスティン。
しかし、ウォルターは別人だった。
にもかかわらず、警察も医師もその子をウォルターだと主張する。
なによりその連れて来られた子供がウォルターだと自分で言っているのだ。
失踪前のウォルターより7cmも背が縮んでいるのに。

当時のロサンゼルス市警は腐敗しきっていて、しかも自分達のミスを隠蔽する為には、とんでもない手を使っていた。
クリスティンを精神異常に仕立て上げ、抹殺しようとする。

このカフカ的状況にクリスティンは何とか耐えているうちに、連続誘拐&殺人犯が見つかり、事態は急変していく・・・

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テーマ : イーストウッド
ジャンル : 映画

返信・ミリオンダラーベイビー =イーストウッド集中講座(33)= <ネタバレ>

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流行中のインフルエンザで寝こみ返信が出来なかった。

でもこれはイーストウッドの中でも問題作、スルーはできない。
ようやく元気になったので返信するよ。



【H】元ボクサーで今はジムの雑用係のエディ・”スクラップ”・デュプリス(モーガン・フリーマン)の独白を案内として物語が紐解かれる。

この映画の魅力のかなりの部分を占めるのがこのモノローグ。
教訓をちりばめたスクラップの言葉は味わい深い。

【H】ジムの経営者はかって天才カットマン(止血係)として名を馳せたフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)、

名人ぶりを示すエピソードが良い。

ある試合。
打たれて傷口が開きドクターストップ寸前。
「どうすりゃいい?」
「打たせろ」
相手にわざと傷口を打たせて血止め。
ドクターストップを免れたフランキーのボクサーは反撃に出て逆転OK。

現実にあり得る話かどうか分からんけど、こういうエピソードの積み重ねがこの映画を作っている。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ミリオンダラー・ベイビー =イーストウッド集中講座(33)= <ネタバレ>

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元ボクサーで今はジムの雑用係のエディ・”スクラップ”・デュプリス(モーガン・フリーマン)の独白を案内として物語が紐解かれる。

ジムの経営者はかって天才カットマン(止血係)として名を馳せたフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)、トレーナーとなってからも多くの優秀なボクサーを育てたが、慎重なマッチメークをし過ぎて功を焦る彼らに逃げられて来た。

スクラップの最後の試合でセコンドについた際、強引にでも試合を止めなかったことで片目を失明させたとの自責の念から、ボクサーの身を守ることに重きを置き過ぎた結果だ。

今またチャンピオン目前で待たせた愛弟子ビッグ・ウィリーにも去られたところへやって来たのが、マギー・フィッツジェラルド(ヒラリー・スワンク)だ。

貧しく、亡くなった父以外には家族の愛にも恵まれない彼女は、ボクシングで自己実現を夢見ている。

独学で3年、アマチュアながら試合にも出てそれなりの成績も収めているようだが、チャンピオンを目指す彼女はフランキーに強引に弟子入りを志願した。

女性ボクサーは扱わないとにべもなくハネツケるフランキーだが、ジム代を半年分前納した彼女を追い出しはしない。
一人練習するマギーにスクラップが手を差し伸べた。
フランキーのスピードバッグを貸し与えたのだ。

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テーマ : 映画感想
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プロフィール

spacecowboys A H

Author:spacecowboys A H
Space Cowboys は、2人の親父です
"A" システムエンジニア・
   中日ファン・世情に疎い
"H" 総務畑・てっちゃん・
   阪神ファン・雑学が得意
2人ともイーストウッド好きの還歴男

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