続 思い出すまま (15) 藁布団
父の散文を掲載した「思い出すまま」は、「(36)ヒーロー」で完結したと思ってた。
昨年父が亡くなった時に、父のPCのドキュメントをバックアップしていたんだけど、探し物が合ってフォルダを探っていると37番目以降の文章が別のフォルダに入っていることに気づいた。
これもまた昭和を生きてきた庶民の記録となっているので毎週1つずつ公開しようと思う。
父は愛知県知多半島の大野町に生まれ、中京商業の夜学から予科練に行き、戦後闇屋を経て神戸の小さな貿易会社で働いて家族を養ってきた。
昭和4年生まれの男は何を見て何を感じてきたのか?
それについて話ができればと思っている。
(15)藁布団
「わらぶとん」と言っても正式の日本語なのかどうかちょっと疑問であるが、昭和一桁生まれの人には忽ち理解できるのではあるまいか。
それ程戦前の貧乏家庭には一般的な寝具であったはずである。
マットレスというものの無かった時代、保温のために布団の下に敷く簡便な保温用のマットレスを家庭で作っていたのだ。
農家へ行けばタダでもらえる藁の、竺を取り除いた葉っぱの部分だけを集めて、安物の木綿の綸子で厚さ15cmものマットレス状に仕立てたものを藁布団と呼んで、布団の下に敷いて用いたものだ。
ふかふかとまでは言えないが、一冬使用するには結構手軽でまた寝心地も良かったものだ。
これを毎年冬が近づくと母が新しく仕立ててくれたのが、無性に嬉しかったのが思い出される。
藁布団の実物にはお目にかかったことがない。
でも父によれば少年時代には一般的だったとか。
明治~大正~昭和初期を描いた映画やドラマは多いが、藁布団に気づいたことはない。
「花子とアン」あたりを見返してみたら、出てくるのかもしれない。
それにしても、こういう話を聞くと江戸時代と我々は地続きなんだと思う。
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