不肖
この私、MANX MOZROEは、ショートフィルムの映画に出ることになりました。
犯罪者の役なのですがね。
といいますのも、高校時
映画を作っていたのだ。
その、仲間が最近、外国から帰って来まして、ええ
それで、地元で映画を撮ろうなんて話をしてまして
それで、旧友である私に白羽の矢が立ったと
まあ、そんな感じでございます。
詳しいことは 追々…
この私、MANX MOZROEは、ショートフィルムの映画に出ることになりました。
犯罪者の役なのですがね。
といいますのも、高校時
映画を作っていたのだ。
その、仲間が最近、外国から帰って来まして、ええ
それで、地元で映画を撮ろうなんて話をしてまして
それで、旧友である私に白羽の矢が立ったと
まあ、そんな感じでございます。
詳しいことは 追々…
2
「訓練が実戦になっちまうなんて。お前、今日はトンだ日になったな。」キースはサイモンの肩を叩いた。
「いえ、かえって良かったと思ってます。ところで、私はこの隊は航空機の特殊部隊だと教官から聞いて来ました。」
「初耳だ。他の連中はそんな風に見てるのかね?」
「きっと、それは俺らの任務の大半が特殊な任務だからだろうな」とボッシュがマグカップを片手に割って入ってきた。
「ろくに説明を受けてなかったようだな。と、いっても誰もあまり、俺らの隊については説明できないし、知っていても説明したがらないだろうからな…」
「どういう事です。」
「まあ、追々分かってくる事もあるだろうが、俺らの部隊は存在しないことになっているんだ。だが、呼び名がなくては不便だから便宜上、ゴースト・パックという名で呼ばれている。実在しない俺達、つまりはゴーストなわけだ。ゴーストが群れてゴースト・パックだ。」
「じゃあ、ここにいる私もこの部隊にはいないことに?」
「いないはおろか、ここに配属された瞬間から軍自体に存在しないことになっている。」
ボッシュはコーヒーをすすると、煙草に火をつけた。
「サイモン、お前さんは5番機の補充としてここに入ってきた。」
「補充員ですか?」
「ああ、お前さんの前の5番機の奴、名前はアルガー。先月、死んじまったよ。強行偵察に行ってなぁ。敵の猛反撃を受けて海に墜落したよ。死体も上がらんが、望みはあったもんじゃないな。まあ、俺らが今までやってきた任務は、危険度の高い濡れ仕事や裏工作、逃亡兵の始末、人道上許されない類いの任務の遂行。まあ、挙げだしたらキリがないが、空軍本隊が表ではやりかねたり、危険度が高い仕事をこなす雑用係って所だ。」
「みんな志願して来たのですか?」
「いや、殆ど左遷さ。この隊の発足メンバーは、アスラン隊長と俺。キースとクリスは問題児、死んだアルガーも命令違反の常習犯だった。訓練所を出て、真っ直ぐここにきたのはお前さんが初めてだ。隊始まって以来のな。」
「隊長とボッシュ中尉は発足メンバーですか。」
「ああ、元々はリヴァイデには空軍というセクションは無かった。俺たちは海軍の飛行戦闘隊だった。俺とアスランはそこに所属していた。だが、天昇との戦争の時、当時の俺たちの隊長はわけの分からない飛行機に撃墜された。仲間も半分以上死んだ。リーダー不在となった隊は整理されてしまったんだ。6人いたうち、俺とアスランはゴースト・パックに、他の奴らはそれぞれ別の隊に散り散りになってしまった。」
「その隊長はどこの飛行機に?」
「さあな。正直な所、正体不明機だ。しかも、飛行機のように飛んではいたが、俺らの飛行機とはまるで違う。光る高速の飛行機だった。俺達はそれをフー・ファイターと呼んでいたよ。そいつに隊長が殺され、隊は解体。そして俺らは今の隊の前身のインディゴ・デーモン隊に配属された。純粋な白人のいない、インディゴ人だけで編成された飛行隊がね。インディゴ・デーモンというのも俺らインディゴ人に対する侮蔑の意味合いもあったのだろうな。それから慣例となったのか、他に理由があるのか、この部隊にはインディゴ人と有色人種しか配属されてこない。白人にだって左遷されるような輩はいるが、大抵そういう奴はシルヴァー・ファング・ナイツ隊かソニック・バンディット隊に流される。サイモン。お前さんがここに来たのは、お前さんもインディゴ人だからだぜ。」
「はあ…。ところで…」
「なんだ?」
「そのフー・ファイターを見たんですか?」
「見たって所の話じゃない。奴らに追い回されたぜ。天昇国との間で起きた戦争の時だった。とある南の島を天昇軍と俺ら連合軍が取り合いをしていたんだ。名前がリヴァース島といってな。天昇海軍の中継基地になっていた所だ。味方の爆撃隊がその基地やら仮設の軍港を攻撃するってんで、俺らはその爆撃隊と一緒に出撃した。恐らく、爆撃隊が近づけば、天昇の戦闘機が飛んでくるだろうってことでな。案の定、飛んで来たよ。」
「はい」
「俺らの飛行機よりも天昇の飛行機は軽いようでな、速く飛び回る上に突き刺さるように突っ込んで来やがる。今でもあれは覚えてるぜ。翼にホワイトスネークのマークが入っていたっけな。」
「それがフー・ファイター?」
「いや。散々手こずって何とか爆撃作戦は成功した。まあ、成功はしたが爆撃隊は一人も残らず撃墜されたがな。当初の目的は果たされた所で、俺らも退散したがその帰り道だったよ。後ろから光る高速飛行体が飛んで来て、俺らの頭の上を通り過ぎていった。」
「ええ」
「きっと、天昇の新兵器に違いない。そう思って追いかけた。その飛行体が味方を攻撃しに行くんだとしたら、やばいからな。だが、激しい戦闘の後だ。正直、ミサイルも機銃の弾も心細ければ、燃料の残りも危うい。だが、みすみす逃しちまうよりはいくらかマシだろうってんで、基地と連絡を取りながら追いかけた。だが、基地のレーダーには何も映ってないときやがった。俺らもレーダーを見直したよ。映ってねえのさ。だが、目には見えてる。見えている以上は追跡しないとな。結局、途中で振り切りられて見失ったがな。」
「それで、2回目は?」
「まあ、聞けよ。空母に帰って、仲間や上官にそれを話したよ。最初は誰も信じられねえだろうなって思ってたら、意外と真剣に受け止めていたよ。まあな。レーダーに映らない新兵器だったら、厄介なことだもんな。みんな、あれやこれやと対策まで考え始めたよ。自分がフー・ファイターと遭遇するかも知れねえからって、カメラを持って出撃する奴すらいた位だ。管制室も目を皿みてえにして見張ってたぜ。まあ、レーダーに映らねえものをレーダーで探そうとしてたわけだがな…そんで、噂によるとその話が海軍の提督の耳に入ったらしく、偵察機の飛行時間と回数を増やしただの、情報局に問い合わせただの、結構、事態は深刻だった。」
ボッシュは先が灰の棒となりつつあった煙草の先を灰皿に叩いた。
「だが、時間と共にフー・ファイターの話題を誰も口にしなくなった。敵の見えない新兵器疑惑なんかよりも、俺らにはもっと重大な関心事が出来たんだよ。」
「なんです?それは」
「天昇国への上陸作戦さ。俺らはついに天昇にリーチをかけたのさ。だが、そう簡単には事は進められない。というのも、当時の天昇の国民ってのは非常に厄介なものだと考えられていたんだ。きっと女子供も捨て身の抵抗に出るのではないかっていうことと」
「それと?」
「俺たちは天昇国の背中も気にしなくちゃならなくなっていた。ヴァルツ連邦だ。天昇と同盟国だったガーマを陥落した時、ガーマ戦が終結するかの土壇場の中、急にヴァルツが連合軍として参戦してきやがった。ドサクサに紛れてガーマをブン取る気だったんだろうな。恐らく天昇でも同じこったろうと踏んでいたのさ。まあ、予想は的中。ヴァルツが天昇方面に軍を集結させていたらしい。だが、まだリヴァイデとヴァルツの間には直接的な武力衝突は無かったもんだし、ヴァルツを追い払いながら天昇を占領なんて芸当も出来ない。むしろそんな真似なんかしたら、天昇を片付けている最中にヴァルツとの紛争に突入しかねなかったからな。結局、天昇国に決定打を与えるっていう名目で、天昇の二カ所を核攻撃したのさ。迂闊に邪魔すんじゃねえって、ヴァルツに対するメッセージの方が強かったんだがな。」
「フー・ファイターは?」
「ああ、そうだったな。話がそれちまったな。そんなワケで新兵器の話はなりを潜めちまって、俺らすら目前に控えた天昇に気を取られてたある日、上陸作戦に先駆けて天昇の軍港を空爆しようってことになった。その作戦に俺たちが駆り出された。空母を真夜中に飛び出して、夜襲に向かったんだが、途中で…」
「途中で?」
「海からフー・ファイターが3機、飛び出して来やがったんだ。だが、上陸作戦のお膳立てを優先しなくちゃならない、母艦に連絡はしたが接触しないでそのまま、作戦を続行しようとしたら、仲間が撃ち落とされた。ミサイルかレーザーかは知らないが光のかたまりを撃ってきやがった。振り切って、何とか作戦に戻ろうとしたがあれよあれよと撃ち落とされていく。結局、乱戦状態になっちまって、隊長機が撃ち落とされた。俺もフー・ファイターにケツを捕られた。だが、ミサイル警報も何もならない。死ぬか生きるかの瀬戸際だったが、不思議だった。もう、死ぬと思った時アスランがフー・ファイターを撃墜した。そいつは海に落ちてでっけえ爆発を起こしたよ。その後は、無我夢中で逃げた。出撃数15機、生き残ったのは6機だった。その後、俺とアスランはインディゴ・デーモン隊を発足。他の奴らは別の部隊に配属となったが、2人は百新戦争で戦死。1人はまだ現役。もう1人は風の噂によれば、除隊して犯罪者になって刑務所だとかな…。まあ、そんな所だ。」
「フー・ファイター…」
「今となっては、真相は闇の中ってな感じだな。まあ、最も、本腰入れて誰も突き止めようなんてしなかったしな。目の前の戦争に忙しくて、それどころじゃなかった。」
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「訓練が実戦になっちまうなんて。お前、今日はトンだ日になったな。」キースはサイモンの肩を叩いた。
「いえ、かえって良かったと思ってます。ところで、私はこの隊は航空機の特殊部隊だと教官から聞いて来ました。」
「初耳だ。他の連中はそんな風に見てるのかね?」
「きっと、それは俺らの任務の大半が特殊な任務だからだろうな」とボッシュがマグカップを片手に割って入ってきた。
「ろくに説明を受けてなかったようだな。と、いっても誰もあまり、俺らの隊については説明できないし、知っていても説明したがらないだろうからな…」
「どういう事です。」
「まあ、追々分かってくる事もあるだろうが、俺らの部隊は存在しないことになっているんだ。だが、呼び名がなくては不便だから便宜上、ゴースト・パックという名で呼ばれている。実在しない俺達、つまりはゴーストなわけだ。ゴーストが群れてゴースト・パックだ。」
「じゃあ、ここにいる私もこの部隊にはいないことに?」
「いないはおろか、ここに配属された瞬間から軍自体に存在しないことになっている。」
ボッシュはコーヒーをすすると、煙草に火をつけた。
「サイモン、お前さんは5番機の補充としてここに入ってきた。」
「補充員ですか?」
「ああ、お前さんの前の5番機の奴、名前はアルガー。先月、死んじまったよ。強行偵察に行ってなぁ。敵の猛反撃を受けて海に墜落したよ。死体も上がらんが、望みはあったもんじゃないな。まあ、俺らが今までやってきた任務は、危険度の高い濡れ仕事や裏工作、逃亡兵の始末、人道上許されない類いの任務の遂行。まあ、挙げだしたらキリがないが、空軍本隊が表ではやりかねたり、危険度が高い仕事をこなす雑用係って所だ。」
「みんな志願して来たのですか?」
「いや、殆ど左遷さ。この隊の発足メンバーは、アスラン隊長と俺。キースとクリスは問題児、死んだアルガーも命令違反の常習犯だった。訓練所を出て、真っ直ぐここにきたのはお前さんが初めてだ。隊始まって以来のな。」
「隊長とボッシュ中尉は発足メンバーですか。」
「ああ、元々はリヴァイデには空軍というセクションは無かった。俺たちは海軍の飛行戦闘隊だった。俺とアスランはそこに所属していた。だが、天昇との戦争の時、当時の俺たちの隊長はわけの分からない飛行機に撃墜された。仲間も半分以上死んだ。リーダー不在となった隊は整理されてしまったんだ。6人いたうち、俺とアスランはゴースト・パックに、他の奴らはそれぞれ別の隊に散り散りになってしまった。」
「その隊長はどこの飛行機に?」
「さあな。正直な所、正体不明機だ。しかも、飛行機のように飛んではいたが、俺らの飛行機とはまるで違う。光る高速の飛行機だった。俺達はそれをフー・ファイターと呼んでいたよ。そいつに隊長が殺され、隊は解体。そして俺らは今の隊の前身のインディゴ・デーモン隊に配属された。純粋な白人のいない、インディゴ人だけで編成された飛行隊がね。インディゴ・デーモンというのも俺らインディゴ人に対する侮蔑の意味合いもあったのだろうな。それから慣例となったのか、他に理由があるのか、この部隊にはインディゴ人と有色人種しか配属されてこない。白人にだって左遷されるような輩はいるが、大抵そういう奴はシルヴァー・ファング・ナイツ隊かソニック・バンディット隊に流される。サイモン。お前さんがここに来たのは、お前さんもインディゴ人だからだぜ。」
「はあ…。ところで…」
「なんだ?」
「そのフー・ファイターを見たんですか?」
「見たって所の話じゃない。奴らに追い回されたぜ。天昇国との間で起きた戦争の時だった。とある南の島を天昇軍と俺ら連合軍が取り合いをしていたんだ。名前がリヴァース島といってな。天昇海軍の中継基地になっていた所だ。味方の爆撃隊がその基地やら仮設の軍港を攻撃するってんで、俺らはその爆撃隊と一緒に出撃した。恐らく、爆撃隊が近づけば、天昇の戦闘機が飛んでくるだろうってことでな。案の定、飛んで来たよ。」
「はい」
「俺らの飛行機よりも天昇の飛行機は軽いようでな、速く飛び回る上に突き刺さるように突っ込んで来やがる。今でもあれは覚えてるぜ。翼にホワイトスネークのマークが入っていたっけな。」
「それがフー・ファイター?」
「いや。散々手こずって何とか爆撃作戦は成功した。まあ、成功はしたが爆撃隊は一人も残らず撃墜されたがな。当初の目的は果たされた所で、俺らも退散したがその帰り道だったよ。後ろから光る高速飛行体が飛んで来て、俺らの頭の上を通り過ぎていった。」
「ええ」
「きっと、天昇の新兵器に違いない。そう思って追いかけた。その飛行体が味方を攻撃しに行くんだとしたら、やばいからな。だが、激しい戦闘の後だ。正直、ミサイルも機銃の弾も心細ければ、燃料の残りも危うい。だが、みすみす逃しちまうよりはいくらかマシだろうってんで、基地と連絡を取りながら追いかけた。だが、基地のレーダーには何も映ってないときやがった。俺らもレーダーを見直したよ。映ってねえのさ。だが、目には見えてる。見えている以上は追跡しないとな。結局、途中で振り切りられて見失ったがな。」
「それで、2回目は?」
「まあ、聞けよ。空母に帰って、仲間や上官にそれを話したよ。最初は誰も信じられねえだろうなって思ってたら、意外と真剣に受け止めていたよ。まあな。レーダーに映らない新兵器だったら、厄介なことだもんな。みんな、あれやこれやと対策まで考え始めたよ。自分がフー・ファイターと遭遇するかも知れねえからって、カメラを持って出撃する奴すらいた位だ。管制室も目を皿みてえにして見張ってたぜ。まあ、レーダーに映らねえものをレーダーで探そうとしてたわけだがな…そんで、噂によるとその話が海軍の提督の耳に入ったらしく、偵察機の飛行時間と回数を増やしただの、情報局に問い合わせただの、結構、事態は深刻だった。」
ボッシュは先が灰の棒となりつつあった煙草の先を灰皿に叩いた。
「だが、時間と共にフー・ファイターの話題を誰も口にしなくなった。敵の見えない新兵器疑惑なんかよりも、俺らにはもっと重大な関心事が出来たんだよ。」
「なんです?それは」
「天昇国への上陸作戦さ。俺らはついに天昇にリーチをかけたのさ。だが、そう簡単には事は進められない。というのも、当時の天昇の国民ってのは非常に厄介なものだと考えられていたんだ。きっと女子供も捨て身の抵抗に出るのではないかっていうことと」
「それと?」
「俺たちは天昇国の背中も気にしなくちゃならなくなっていた。ヴァルツ連邦だ。天昇と同盟国だったガーマを陥落した時、ガーマ戦が終結するかの土壇場の中、急にヴァルツが連合軍として参戦してきやがった。ドサクサに紛れてガーマをブン取る気だったんだろうな。恐らく天昇でも同じこったろうと踏んでいたのさ。まあ、予想は的中。ヴァルツが天昇方面に軍を集結させていたらしい。だが、まだリヴァイデとヴァルツの間には直接的な武力衝突は無かったもんだし、ヴァルツを追い払いながら天昇を占領なんて芸当も出来ない。むしろそんな真似なんかしたら、天昇を片付けている最中にヴァルツとの紛争に突入しかねなかったからな。結局、天昇国に決定打を与えるっていう名目で、天昇の二カ所を核攻撃したのさ。迂闊に邪魔すんじゃねえって、ヴァルツに対するメッセージの方が強かったんだがな。」
「フー・ファイターは?」
「ああ、そうだったな。話がそれちまったな。そんなワケで新兵器の話はなりを潜めちまって、俺らすら目前に控えた天昇に気を取られてたある日、上陸作戦に先駆けて天昇の軍港を空爆しようってことになった。その作戦に俺たちが駆り出された。空母を真夜中に飛び出して、夜襲に向かったんだが、途中で…」
「途中で?」
「海からフー・ファイターが3機、飛び出して来やがったんだ。だが、上陸作戦のお膳立てを優先しなくちゃならない、母艦に連絡はしたが接触しないでそのまま、作戦を続行しようとしたら、仲間が撃ち落とされた。ミサイルかレーザーかは知らないが光のかたまりを撃ってきやがった。振り切って、何とか作戦に戻ろうとしたがあれよあれよと撃ち落とされていく。結局、乱戦状態になっちまって、隊長機が撃ち落とされた。俺もフー・ファイターにケツを捕られた。だが、ミサイル警報も何もならない。死ぬか生きるかの瀬戸際だったが、不思議だった。もう、死ぬと思った時アスランがフー・ファイターを撃墜した。そいつは海に落ちてでっけえ爆発を起こしたよ。その後は、無我夢中で逃げた。出撃数15機、生き残ったのは6機だった。その後、俺とアスランはインディゴ・デーモン隊を発足。他の奴らは別の部隊に配属となったが、2人は百新戦争で戦死。1人はまだ現役。もう1人は風の噂によれば、除隊して犯罪者になって刑務所だとかな…。まあ、そんな所だ。」
「フー・ファイター…」
「今となっては、真相は闇の中ってな感じだな。まあ、最も、本腰入れて誰も突き止めようなんてしなかったしな。目の前の戦争に忙しくて、それどころじゃなかった。」
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ミネルヴァ・エルヴァ
1
白い太陽の光が限りなく続く青空を切りつけた。その突き刺すような直射日光は上から下へとまっすぐにアスランの頭に降り注いでいた。
まだ、海に出るには距離があった。
「こちらゴーストパック隊。未だ、発見できず。」
アスランは操縦桿をにぎる力を少し緩めた。
「こちら管制室。全ての空軍基地にスクランブルをかけてある。訓練中の飛行機も平常のコースを離れて捜索している。」
「海に出られると厄介ですよ。海軍にも要請を頼みますよ。俺らだって万能じゃあないんですから。」
「手抜かりはない。だが、誰よりも先にお前達に処分をつけてもらいたい。あくまでも、他の隊や海軍はお前達の取りこぼしのカバーだということを忘れるな。」
「分かってますって。じゃなきゃ俺らなんざ、かり出すまでもなかったでしょう。」
アスランの操縦する機体を先頭に、5機の戦闘機がデルタ型の編隊飛行を組みながら、地上を遙かに下にして音速の風となっていた。
「新入り。お前もなかなかについてない奴だな。その運のなさには先が思いやられるぜ。」
3番機のクリスが昨日配属されてきた新兵のサイモンに、陰険な笑みをたたえて皮肉の洗礼を無線越しに浴びせかけた。
「よう、クリス。お前、どの口で言ってやがんだ?百新で俺が何度もお前の尻にたかった蚊トンボを追い払ってやったこともう忘れてやがんのか?」
2番機のキースがクリスに言った。
「てめぇ、なんだと!?」
腹を立てたクリスを尻目にキースは続けた。
「新入り。いいか?クリスはお前に先輩風を吹かしてやがるがな、こいつは俺が気づかなければ、もう2,3回は撃ち落とされてる。偉そうなことのたまってても結局そういう奴さ。」
「キースてめぇ。ぶっ殺すぞ!!」
「へえ。そうかい。どうやって俺とやる気だい?殴り合いか?飛行機か?お前の腕前じゃあ紙ヒコーキだって飛ばねえわな。」
「お前ら、いい加減にしろ。それ以上やるなら俺がお前らを撃ち落とすぜ。俺の飛行機のパイロンは逆向きに付いてるやつがあるのは知ってるよな?今日は75ミリ高射弾が合計4つだ。コクピットを穴だらけにされたくなかったら少し黙れ。」
アスランが割って入った。
「こちら管制室。ゴーストパック聞こえるか?」
「はい。こちらゴーストパック。どうぞ」
「脱走兵が見つかった。追跡ルートを北西にとれ。奴さん、北極海を越える気だな。」
「ダイレクトにヴァルツ連邦に亡命する気ですかね?領空に入った途端、防空ミサイルに食われかねませんよ。」
「奴さんだって、そうバカじゃない。恐らくヴァルツには低空侵入するつもりだろう。低空レーダーにでも引っかかりさえしなければな。」
「ミサイルの心配はともかくとして、低空で飛んでいるところあちらさんの戦闘機にでも見つかったら、これもまた厄介でしょうがね。でも、まあ大体の居場所の見当はついたわけだし。」
「領空を出る前に撃墜しろ。」
「了解です。」
アスラン達は北西に進路を取った。
「隊長。見つかったようですね。」と新兵のサイモンが言った。
「ああ、聞いての通りだ。まあ、領空内で事を済ませられればいいが、最悪でもヴァルツ領空に入る前に撃墜しないとな。」
アスランはレーダーを見た。
「脱走機の情報は?」
4番機のボッシュがアスランに尋ねた。
「脱走兵は空軍第22航空支援攻撃隊のブライアン・ストラマー中尉。訓練飛行中に僚機を撃墜、そのまま逃亡。機種はAFW-201スカイシャーク戦闘爆撃機だ。」
「了解。戦爆とはまた、厄介なものに乗りましたね。」というとボッシュはレーダーを見た。
「スカイシャークはそんな性能がいいんですか?」とサイモンが聞いた。
「いや、スカイシャークは俺らの戦爆よりちょっと新しい位で最新鋭機に比べればそうでもない。厄介なのはただの戦闘機じゃないって所だ。」
「と、いいますと?」
「爆撃機でもあるって点だ。この脱走兵がそのままヴァルツに行って、亡命者と認められればお上の不安材料の1つ位は減るってことだ。」
「よく、分かりませんが?」
「つまりはだ、ストラマー中尉がいくら亡命者を気取ってヴァルツの領空に入ったとしても、あちらさんの迎撃機が果たしてそういう見方をしてくれるかどうかってことだ。ヴァルツの領空に対立国であるリヴァイデの戦闘爆撃機が侵入して来るんだ。あれは亡命希望の脱走兵が乗っているのであって、ヴァルツを空爆しに来たわけではない戦闘爆撃機だと、向こうの軍部の一体誰にそれと分かるんだってことだ。俺らが取り逃がしちまって、スカイシャークがヴァルツに入り、向こうの迎撃機が撃墜、ストラマー中尉もくたばっちまった上で、これはリヴァイデの先制攻撃だと向こうが誤解しちまったら、きっと奴らは反撃に出る。いくらリヴァイデが事情を説明したところで、奴らはどこまで話しを信じるか…んで、これが偶発的な戦争の火種になりかねない危険も孕んでるってことなんだよ。いらねえ戦争を起こしかねないんだよ。単なる戦闘機1機なら大した破壊力もないし、スピードも快速だ。こっちの言い訳もまだ立つ。」
「隊長、脱走機です。レーダーに映ってます。」
キースがレーダーに脱走機らしき機影を発見した。
「ようやっとか。よし、この隊形のまま進むぞ。目標を確認後、俺が合図を出したら全員で目標をロックオンしろ。俺がGOサインを出したら一斉にミサイル発射。その後俺とキースと新入りはそのまま目標を追尾。クリスとボッシュの右翼はカバーに回ってくれ。」
「了解」と一斉に返事が返ってきた。
レーダーの上の端にそれらしい反応が出てから数秒後、肉眼でも確認できる程度まで距離が縮んできた。
「恐らく、こいつが例の戦爆だと思うがな。一応、確認する。」アスランはそういうと、続け様に「こちらリヴァイデ空軍、非常事態発生のため貴機の所属と氏名を申告願います。返答がない場合、直ちに攻撃を加えます。」と前方を飛ぶ戦闘爆撃機に通告した。
その戦闘爆撃機は返答せず、急上昇をし始めた。そのスピードからパイロットにかかる重力は尋常ではないことは容易に想像が出来た。
身体にかかっている重力が頭部に血液を逆流させているであろう。そして眼球に集中した血が、パイロットの視界を真っ赤に染めるレッドアウトを引き起こしている。
長く続けば失明、脳内出血すら起こしかねない。この死に物狂いの上昇によりアスランは確信した。
「やはり、こいつだ!!全員上昇。ロックしろ。」
そう言いながら、アスランは操縦桿を引いた。5機の飛行機がスカイシャークを追って、急上昇した。同様の重力がアスラン達にも襲いかかった。
破裂してしまいそうな重さと圧迫感に、体が押さえつけられた。それはまるで、神の住まう天の国が罪深い血に飢えた亡者を拒絶するかのように。
全員のロックオンサイトがスカイシャークの後を捉えたあたりにアスランは
「発射!!」と指示した。
5機の飛行機の懐から、白い蛇が跳びかかるかのように発射煙を吐き出しながらミサイルが飛び出した。
この高速の蛇達を振り切ろうと、ミサイル避けのフレア弾を発射しながら空飛ぶサメは宙返りを始めた。
「貴様ら、狂った亡霊達(ゴーストパック)だな!?」スカイシャークのパイロットがアスランに言った。
「あんたには別に恨みはありやせんが、渡世の義理ってやつでね。」アスランのロックオンサイトが再びスカイシャークを追った。
「頼む、邪魔をしないでくれ。数万人の命がかかってるんだ!!」とスカイシャークのパイロットが叫んだ。
「こっちも自分達の生活がかかってるんでね。」
右翼のポジションにいた2機の飛行機は、アスラン達の3機から外れ、援護のポジションに位置した。
「俺は大量の殺戮計画の実験に参加させられたんだ。」
「その計画を手土産にヴァルツにでも亡命か?」
「違う!!告発だ。お国が企んでいることを世界中に告発するんだ。」
「全員、ロックだ!!」
アスラン達のロックオンにより、スカイシャークのミサイルアラートが鳴き始めた。
「くそ!!この下衆共め、お国は多くの国民を殺そうとしているんだぞ!!お前達も殺されるぞ!!」スカイシャークは再び宙返りでレーダーから逃れようと試みた。
「ミサイル発射!!」
空の四方から再び、白い大蛇達がスカイシャークに襲いかかった。
「よし、全員ブレイク。こいつを撃墜しろ。」
アスランの統べる左翼の3機も散り散りになり、高速旋回でミサイルを振り切ったスカイシャークを追った。
「何の罪もない人達が、何も知らずに殺されていくんだ!!」
新兵のサイモンが機銃を発射しながらスカイシャークの後部めがけて飛んでいた。
「あんまり、いきり立つなよ新人君。」
キースがサイモンの後ろについてきた。
「そのクソ度胸はいいが、奴が反撃に出てきたら数では勝っても、お前は死ぬぜ。」
キースがサイモンと並列になった。
「いいか?サイモン。奴をロックするぜ。俺の合図でぶっ放しな。」
「了解。」
二人はスカイシャークの尻をサイトに捉えると、「発射」の合図でミサイルを放った。
「お前達の家族も死ぬんだぞ!!」
再びミサイルを振り切るため、スカイシャークは急上昇し宙返りをし始めた。
だが、この宙返りがかえって命取りとなった。キース達の上にアスランの機がいたのだ。
宙返りに入ったスカイシャークは、丁度アスランの40ミリ機関砲が命中する角度に位置してしまったのだ。
アスランはこの好機を逃さなかった。機関砲を発砲しながら宙返りするスカイシャークを追った。
連発で発射された弾丸はスカイシャークを嘗めるように、機体の後部から前部にかけて無数の穴を刺し貫いていった。
その鋼鉄の雨がコクピットにさしかかると、キャノピーのガラスはパイロットの血液や肉片と共に粉々に飛び散った。
惰力のついたその機体は、今や操縦桿を握ったままの手首を残すのみとなった主を抱えたまま、更に高い空を目指して上昇し続けた。
そして、アスランの後続にいたキースの機体から飛び出したミサイルが、昇天し続けるスカイシャークに決定的な引導を渡した。
「当該機は撃墜。これより帰還します。」
業火に包まれ、散りゆく機体をキャノピーの向こうに見ながら、アスランは本部へと連絡を入れた。
任務を終え、態勢を立て直して帰還ルートに入ると「隊長。また、人相が悪くなりますね。」というキースの声が無線に入ってきた。
イメージ音楽
Primal Scream - Exterminator