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ミネルヴァ・エルヴァ19

 ラジ・アタは部屋の隅に置いてある電動式の車椅子を押してくると、「ここではなんだ。日の光でも浴びようじゃないか」と言ってアスランの手錠を外した。
 一瞬、手錠が外されたタイミングを見計らって、逃走しようかともかんがえたが海にいたのでは逃げようがないなと考え、それを思いとどまった。

 ラジ・アタの肩を借り、車椅子に座った。手錠はもう一方の腕にはめられ、両方がつながれる形となった。

 「私が押そう。この車椅子はモード切替が3つあってね。完全電動モードとアシストモード、手動モードがあるんだ。」と得意な感じでアスランに言った。

 船内の廊下をしばらく渡ると、デッキへと出た。目の前の空は晴れ渡り、その下には碧い海原が広がっていた。
 「良い天気だね。」
 「この船は何だい?」
 「水空両用の戦艦って所だね。」
 「戦艦だと?どこの軍だ?」
 「国籍は特にこだわらないのがウチのやり方でね。」
 「FATGか!?」
 「残念ながら、違うよ。協力することも、たまにはあるがね。」
 アスランは先の短くなったタバコを海に投げ捨てた。
 
「君が戦ったあの国防技研の兵器は、ファルコン-ZIZと言ってね。私達はそれを追っていたんだ。丁度、あと少しと言う所で君達が飛んできてね。あの鳥がお出ましになったのさ。」

 「ファルコン…知っているのか?あのでかい鳥を」

 「ああ、あれは君らにロボットか何かの兵器にしか見えないだろうけれど、厳密にいうと機械ではないんだよ。あれは、生体兵器の一種だ。と、いってもこの星の生物の仕組みとは違う。」

 「…何だって…?」アスランは怪訝そうな顔した。

 「信じられないかい?それも、仕方ないさ。君達には突飛な話しだろうからね。作り話だと思うのならそれはそれで構わないよ。」

 アスランはまた一本、タバコに火を付けた。「じゃあ、あれはなにかい?宇宙人か何かだって事かい?」

 「あの兵器のいきさつを話す事情は大昔まで遡る。まだ、地上に恐竜が生きていた時代の事さ。住んでいた惑星を失った生命体、君らが言うところのエイリアンがこの地球に移住してきた。移住と言っても、宇宙船に乗って来るのではなく、転生という手段によってね。」

 「それがあの化け物鳥なのか?」

 「いや。続けようか。それでね、彼らは比較的知能の高い種の恐竜の子どもとして生まれることを選んだ。そしてそれは親よりも優れた突然変異種だった。まあ、より進化した種とも言えるね。転生の道を選んだのは、現にその星の環境に適応した物質的生命体の形を貰った方が近道だったんだ。自分達の肉体を持ったままの移住だと、その星に適応するまでに多大なコストと時間が掛かりすぎるし、そこまでしたとしても上手くいかずに高い確率で、全滅するリスクがつきまとったためさ。」

 「しかし、そいつらが自分達の惑星を失った原因は何だ?」

 「戦争さ。戦争で惑星を失ったんだ。これは興味があれば後で話すよ。そして、彼らは変異種同士で交配を繰り返し、この星に適応した肉体を保ちつつも、元来の自分達に近づくために進化のスピードを早めたんだ。最初に変化させたのは寿命だった。

 比較的成長の早かった固体を選りすぐり、これらで交配した。寿命を短くすることで成長スピードは格段に早くなって、世代交代のサイクルも早くなった。これによって進化の速度を上げた。そして、生まれたのが地球初の人類型動物だった。 

 けれど、今の人類とは別なものでね。爬虫類型の人類だ。恐竜人間としておこう。そして、この恐竜人間は自分達の文明を築くのだけれど、およそ今の人類が想像するようなものではなかった。

 石器や簡単な道具を作り出してはいたが、これらを使うことは殆どなかった。フルに活用したものは天体を観測して、時間や位置を割り出すための測量器の類いで、刃物や器を殆ど使うことはなかった。

 と、いうのは、長い時代を彼らは森林や荒野で狩りをして生きていたために、道具に頼らずとも手や歯だけで事は足りたからだ。

 もっぱら、力の弱い個体や年老いた個体が刃物を武器や道具として使うことがあったが、その必要も殆どなかった。彼らの築き上げた社会形態にその理由があってね。彼らの社会は老若男女の関係なしに、獲物を獲れない個体がそうでない個体を扶養する社会だったんだ。

 勿論、獲物が獲れない個体は自分に出来る事をやって貢献していたのだけれどね。 

 強きものが弱きものを助けるのが美徳とされていて、扶養する数の多い個体を持つ者ほど尊ばれた。

 この時代にはまだ農耕というのはなかった。大型の草食動物を追って移動する獲得型経済で、土地というものに特別な執着はなかった。農耕と定住という発想がなかったから、道具の発展も非常に限られたものしかなかった。

 木の枝や草で編んだ布団のようなもので夜をしのぎ、固定の住居を必要としなかったために建築技術もなかった。ただ、社会形態や知識という形でだけ文明が存在していた。現在の人類のように城壁を築くことがなかったから、他の肉食恐竜の驚異に晒される毎日ではあったのだけれど、彼らの日々は幸福に満ちていた。

 彼らは生と死をよく理解していた。そして転生という魂の摂理を覚えていた。だから、さほどに死を恐怖しなかった。それと、元々自分達のいた惑星では、精神的な苦痛があったのだけれど、この地球にいて彼らはそれらを感じることがなかった。のんびりと生きていた。

 そんなある日、一人の恐竜人間が天体観測をしていると、夜空に見慣れない小さな光を見つけた。彼らはその光にフォーカスすると、それは産卵のために地球に向かっていたフェニックスだと分かったんだ。

 彼らは高度な測量技術と能力で地上に到達するまでの時間を割り出した。およそ200年前後で地球に到達する計算だった。

 彼らは愛してやまないこの星の地表をフェニックスの到達によって焼かれることを恐れた。そして彼らは100年かけて知恵を出し合い、能力を研ぎ澄ましてフェニックスを封じ込める技術を身につけた。

 そしてさらに100年後にフェニックスが地上へと降り立った。彼らは全身全霊で事にあたり、なんとか地中にフェニックスを封印することに成功した。

 だが、その後の彼らが元の生活に戻れたかというとそうではなかった。夜空に見慣れない小さな光や流星を見る度に、仲間のフェニックスが封印を解きにやってきたのではないかと、気が気では無かった。

 彼らは次第に観測のためだけではなく、警戒する目的で空を見上げるようになった。彼らの不安は恐れへと変わり、ありとあらゆる対抗策を考え始めた。

 そんな不穏な気配を察知したのは、月の基地から恐竜人間達を監視していた他のエイリアンだった。恐竜人間達が再び同じ過ちを繰り返すことを懸念したそのエイリアン達は、地球の表面に生きる彼らを殲滅するために、非常に大きなエネルギー弾を地球に発射した。

 これが、君達の言うビッグ・インパクトだ。地球全てがその衝撃に揺れ、半球が炎に呑まれた。

 何とか生き残った個体もいくつか存在したが、その後に起こった激しい気候変動の中で次第に数が減っていった。

 残りわずかとなった彼らは、その過酷な気候の中で生きる小さな高温動物に、自分達の遺伝子の一部を託してこの地球から消え去った。その小さな動物は交配を繰り返し、そして現在の人間の祖となった。」

 「んで?ファルコンは?」

 「この地球に現在の人類が生まれて文明が発達すると、とある荒野に再び地球外生命体が降り立った。

 彼らは恐竜人間とは全く別の種類の生命体だった。

 物質的身体を保ちながら、この地に降り立った。それらを見つけたその周辺の住人達はこれを神として崇めた。この生命体がこの地球にやってきた目的は、自分達を蝕んでいる病を治すヒントを得るためだった。

 彼らは自分達を傷つけられることを極端に嫌った。そこで、自分達を神と崇める人間達を支配して使うことに決めた。自分達の都合に合わせ、持つ技術を少しずつ教えた。

 そして、彼らは周囲の人間の中から数人を選び出し、それらが裏切らぬようにその精神に、自分達を畏れ、忠実になるプログラムを移植した。プログラムを移植された彼らは自分達を正統なる民と名乗るようになった。

 神と崇められたこの生命体達は、今ではミッショナリー(伝道師)と呼ばれるようになった。古代のミッショナリーは正統なる民達を使役して、地球上のあらゆる物事を調べ上げた。

 その過程の中で、彼らは封印されたフェニックスを発見した。だが、流石の彼らの技術を持ってしてもその封印を解くことは凄まじく危険な行為だったため、封印したままにしてその構造や性質を可能な限り調べた。

 そして現代になって人間の技術レベルがそれに見合うようになり、そしてその必要性に駆られて、フェニックスの構造や性質を応用したミニチュアのコピー品を創った。それがファルコンだ。」

 「随分と壮大な物語だったが、あんたはあの化け物を人間と宇宙人が創ったって、そう言うのかい?」

 「そう言っているよ。」と言ってラジ・アタは笑った。

 「馬鹿らしい作り話だぜ。あんたらUFO教団か何かか?第一、宇宙人だなんてそんな絵空事…」

 「フー・ファイターか。割とオシャレな名前を付けたものだね…。よく、撃ち落としたものだよ。」ラジ・アタは得意顔で言った。

 「何で…それを…」

 「自己開示はもっと親しくなってからにしようと思ったのだが、君には率直なやり方のほうがいいようだ。ざっくばらんさの中に互いの信頼を見出すタイプのようだし。君の脳に少しフォーカスさせてもらった。親しくしたい相手には、あまり、やりたくないことなのだけれどね。」

 「フォーカス?何だ?読心術か?」

 「まあ、読心術ってのは外れじゃないけれど、心を覗き見するわけじゃない。心に寄り添う術だ。簡単に言えば、さっき一瞬だけ私は君になったのさ。だから、我が事のように過去が分かるし、喜びも悲しみも共有できる。」

 「…ごまかされないぜ…種がどこかにあるんだ…。心理学だろう…どうせ…」アスランは驚きを隠せなかったが、自分は騙され掛かっているのだと自分に言い聞かせていた。

 「種が分かったぜ。俺のドック・タグだ。認識番号から、軍の俺の経歴データを引っ張り出したんだろう?」

 「君が最初に飛行機に乗ったのは16歳の時だね。高校を途中でやめて、同じパイロットである父親の農薬散布の仕事を手伝いながら民間ライセンスを取った。その後、金を掛けずに飛行機の整備を覚えたいという理由で海軍に入隊。その後、テンショー国との戦争が勃発。飛行戦闘隊のパイロットが不足していたため、特例措置として整備兵からパイロットへの転属の希望者を軍が募集したね。けれども、同僚の整備兵よりもいくらか空を知っている君は、転属希望を出さなかった。むしろ、民間のライセンスを持っていることを隠そうとさえした。けれども、その努力の甲斐もなく、君の履歴書を改めて見た上官の命令によって、飛行戦闘隊に転属させられた。これは軍のデータには載っていない情報だろ?」

 アスランは無言になった。

 「きっと君は今の段階では信じないだろう。だが、地球の外にも生命体はいるんだ。かく言う私もその一人でね。私の故郷はレイデスという惑星だ。つまりは、私はレイデス人と言った感じだ。さっき話したミッショナリー、正式名称アストロナ人から地球を解放するために派遣されて、グラス・ムーンに協力しているんだ。」

 「それが…本当だったとして…俺に話して何になる?」とアスランは困惑した。そこにグラス・ムーンがやってきた。

 「私達は今、最新の戦闘機を開発したの。勿論、これはミッショナリーに対抗するためよ。けれど、乗りこなせる人間がいないのよ。それで、優秀なパイロットを探していたの。」

 「それなら傭兵派遣会社にでも問い合わせれば、多少はマシな…」

 「いえ、あなたに協力してほしいの。あのファルコンと戦って、生き残れた唯一の人間に」

 「たまたまだよ。そして、たまたまが重なってあんたらに助けられた。」

 「いいえ、私には見えているわ。ラジ・アタにも。あなたのそばにいるその女性。」
アスランはどきりとした。

 「な、なんだよ。女って、誰がいるんだ?」

 「彼女は、あなたを導いているわ。そして、あなたにこの星を呪縛から解き放つことを望んでいるわ。彼女がいる限り、あなたは死なない。」

 ラジ・アタは「彼にも姿を見せてやってくれ」とアスランの後ろに向かって言った。すると、半透明の白い腕がアスランを後ろから抱きしめた。急に後ろから生えてきた腕にアスランは驚いた。白いうでが首のあたりに回った時は一瞬、首を締められるのかと焦った。

 その腕がアスランの首から離れると、その女は空中を舞うように、彼の正面へと来た。その若い女は静かに笑いながら、ゆっくりと霧のように消えていった。

 「今のは何だ?」

 「昔、あなたが助けたドラゴンよ。」とグラス・ムーンが言った。

 「さあ…憶えが無いな…」

 「この人生ではないわ。前世で出来事よ。」

 「さてね…」

 「私達はGeneration Minerva(ジェネレーション・ミネルヴァ)通称GEM(ジェム)よ。」グラス・ムーンはアスランに手を差し伸べた。

 「俺はまだ、入るなんて言ってないぜ。」

 そのアスランの言葉を聞いた、ラジ・アタは内ポケットから小型の携帯端末を出すと、その画面をアスランに見せた。
その画面には、共産テロリストとして国際指名手配されている自分の顔写真が映し出されていた。

 「この1ヶ月の内にこんな事になってしまっていてね。本当にお気の毒さま…。どうやら、君はゼルバム戦争を引き起こした、リヴァイデ空軍に入り込んだ共産テロリストということで、指名手配されてしまったようだね。」

 半分は事実であったため、アスランに言葉はなかった。

 「これもきっと国防技研の画策に違いないよ。多分、彼らは君がパラシュートで脱出する所を目撃したのだろうね。それで、こんな事やり方で君を炙り出そうと躍起になってる。もし、捕まったら…」

 「ちょっと、待ってくれ。俺はお上の命令で、暴走した国防技研のタンカーを沈める任務を遂行したんだぜ?むしろ、指名手配されるのは暴走したタンカーの奴らじゃないのか?」

 「国防技研は暴走などしていないよ。」

 「何だと…?」

 「君達はファルコンの実験体にされたのさ。勿論、これは機密事項だ。君達と戦わせて実戦データを取ったのさ。そして、生き残ったのは君一人。他はみんな、ファルコンの光線によって分解されてしまった。そして、技研は生き残った君を何としてでも発見して抹殺したいのさ。」

 「端っから、俺達はあの化け物の餌食だったのか…」

 「私は、私達と行動を共にすることをお勧めするよ。彼らから世界を解放したその日には、この無実の罪も晴らすことができるだろう。そのためにも私達と一緒に来て欲しい。」

 「クソ。弱みにつけ込むその遣り口は汚いぜ。だが、そうするより他はなさそうだな…」アスランは考え込んだ。
「よかった。ジェネレーション・ミネルヴァは心より君を歓迎するよ。」

ミネルヴァ・エルヴァ18


 ダビデは工房の外でテーブルの組み立てに取りかかっていた。日は少し傾き加減になり、オレンジ色の日光が空一面にぼかされていた。この地域は比較的乾燥した空気なのだが、大気中に巻き上がった砂埃が日光の直進をいくらか和らげていた。

 木槌でテーブルの台を叩いていると、御用聞きから帰ってきた大旦那が歩いてきた。そして一度工房の中へ入り、辺りを見回すと再び外へと出てきた。

 「あのバカ息子は、まだ帰らんのか?」と大旦那はダビデに尋ねた。

 「はい。俺は今日は一度も若旦那を見てません。」

 大旦那は深いため息をつくと、ぶつぶつと独り言を言いながら、また辺りを見回した。

 「…ったく、しかしなんだな。それに比べてお前は、覚えは遅かったが真面目な男だな。お前が息子だった方がマシだった。あのバカは、仕事ほっぽりだして、妙なことにうつつを抜かしてばかりだ。」

 ダビデは無言で木槌を打ち続けた。大旦那は暫く独り言を言いながら、工房を出たり入ったりを繰り返すと、「しかしなんだな。お前もそろそろいい年だ。嫁を探してやらんといかんなぁ。」

 「え?ああ、まあ…」と一瞬、手を止めた。

 「なんだい、その間の抜けた返事は。」

 「いや、俺の前に若旦那の嫁御のほうが先かと…」

 「はっ、そんな仏頂面して、親心に水を差すようなこと言うもんじゃないんだよ。そら、見ろ。お前が蒸し返すような事を言うからまた腹が立ってきたじゃないか。」

 大旦那は目を細めて、町の方を暫く眺めながら「あのバカ…まだ、帰ってこんなぁ…」とつぶやいた。そして、再びダビデの方を向くと「そろそろ、夕げだ。もう、今日はやめて片付けろ」と言った。

 工房の裏手にある母屋では、大旦那の妻が夕飯を用意していた。床に食事が乗った器をいくつか並べ、大旦那はそのそばに横になった。ダビデも大旦那の向かい側に横になり、器のパンをちぎって食べ始めた。

 すっかりと外が暗くなり、月がはっきりと顔を出した頃に若旦那は家へと帰ってきた。若旦那の後ろには若い女と数人の男がいた。

 大旦那の妻は若旦那とその仲間のために、再び夕飯を用意した。若旦那達はパンを食べながら、何やら話をしていた。傍らの部屋で眠ろうとしていたダビデの耳にもその声が聞こえた。

 時折、耳に引っかかる話しの内容は、哲学的でありながら、また剣呑なものでもあった。町の寺院にいる司祭の耳に入ろうものなら、処罰は免れないだろう。

 「そうだ。話しは変わるのだが…」と若旦那は、葡萄酒を一口飲んだ。

 「まだ、誰にも話していなかったが、10年ほど前に数ヶ月かけて方々を旅して回ったのだが、その時に手つかずの水源と肥沃な土地をいくつか見つけた。いずれ、私がこれらの土地のどれかに、新しい国を建国しようと思っている。どれも、とても良いところでね。どうだろうか?家族や縁者、友人達を連れて君達も住まないか?」

 「10年も昔の話しでしょう?きっと遊牧民か何かに先を越されてるかもしれませんよ。」と対面する男が訝った。

 「その可能性もある。だが、一ヶ所というわけではない。」

 「一体、どこの土地です?」

 「ここから東に行った所だ。河の向こうに深い森がそびえ立つ肥沃な土地だった。魚は泳ぎ、木の実は豊富だ。そして翼に目をもつ青い鳥や鼻の長い巨人達がたまに水を飲みに来るぞ。」

 「そういう所は、危険な所っていうんじゃないですか?そんな怪物と一緒になんか暮らせませんよ。」

 「大丈夫だ。遠巻きにそっとしていれば、彼らに襲われることはない。彼らはこちらから害をなさなければ、大人しいものなんだよ。」と若旦那は笑った。

 「私はこの国のあり方に疑問を持っているんだ。そして、この法にも…。だが、これを力で真っ向から変えようだなんて思わない。現実的に考えてそれは無理だ。きっと私達は、力でねじ伏せられてしまうだろう。それだったら、こっちから離れてしまえばいい。そして、自分達の理想とする国家を造るんだ。私は父や母、そして弟子のダビデも連れて行こうと思う。そろそろ、計画のために動きださないと。」

 ダビデは自分の名前が呼ばれたことに驚いた。多少、話しが気になり始めてきた彼は寝床を静かに立った。
 



 「他に生存者は?」「彼だけです。」

 「呼吸なし、心拍数なし…」

 「死んでます。」「蘇生剤を使ってみよう…」

 「心拍数上昇、でもまだ呼吸が…」「心拍数、呼吸すべて正常…安定してきました。」

 「メディスン・マシンに入れろ。」

 「彼は?」「認識票を見る限り、リヴァイデ空軍の人間ですね。名前がアスラン・エイプフィールド」

 「インディゴ人だな…。」「損傷部をスキャンしました。」「どうなっている?」

 「足に炎症、右肩から右胸部、背部にかけて皮下組織の細胞が傷ついています。」

 「ファルコンの光を喰らったからなあ…遺伝子は?」「はい、かなり分解しています。」

 「バッファロー・モードだ。」「はい。」

アスランはベッドの上で目を覚ました。辺りの見慣れない部屋の様子から、リヴァイデ軍の医療施設でないことが分かった。一通り辺りを見回すと、再びベッドに横になった。

 自分が新兵器の怪鳥に撃墜されて海に沈み、その後にみた夢の断片までは覚えていた。ここはどこだろうか、リヴァイデ軍の医療施設でないとしたならば、自分は敵軍の捕虜になってしまったのだろうか?ならば、ここは北ゼルバムの医療施設か?いや、北ゼルバムの連中が拾った敵兵にこのような待遇などするはずがない。息があればその場で射殺、よくて粗末な収容所に送り込まれるだけだ。となると、例のタンカーの内部なのだろうか?あの状況で一番に近い艦船はタンカーしかなかった。だが、国防技研のタンカーが自分を救助などするだろうか?

 考えれば考えるほどに、自分の今いる場所が一体どこなのか分からなくなった。ひとまず、ここから出よう。少なくとも見慣れないこの場所からはすぐに出て行ったほうが得策だと、アスランはベットから立とうとした。だが、ベッドの横に足を下ろそうとした途端、反対側の腕が何かに引っ張られた。

 そこに目をやると、アスランの右腕には手錠がかけられていたのだった。
 
「くそ」とアスランは舌打ちすると、ベッドに腰掛けたまま暫く考え込んだ。

 数分アスランは無言のままでいると、部屋をノックする音が聞こえてきた。気がついた所で処刑か尋問が始まるのだろう。アスランはドアを見た。

 ドアが開かれ、そこから4人の男女が入ってきた。最初に入ってきたのは、プラチナブロンドの挑発に白人にしては透き通るように白すぎる肌の男だった。

 その後ろには銃を持った警備兵といった姿の男が入り、つづいて若い男と黒いローブを頭から被り、口元も同様の黒い布で覆った女が入ってきた。

 「失礼するよ。エイプフィールドさん。」プラチナブロンドの男が笑顔で言った。
 
 アスランは注意深く彼を見た。

 「警戒しなくても大丈夫。君に危害は加えないから」と言いながら、彼は部屋の椅子に腰掛けた。

 「だいぶ、回復したみたいだからね。ちょっと、お見舞いに来ただけさ。」

 アスランは、「タバコないか?」とその男に聞いた。

 「そう思ってね。見舞いの品だよ。」といって封の開いたタバコとライターをアスランに差し出した。そのタバコはアスランの飛行服のポケットに入っていた物だった。

 「吸ってもいいか?」

 「気を遣わないでくれ。自分の家のように思ってくれ。」

 「見た所、ゼルバム人ではなさそうだな。ここはタンカーの中か?」

 「いや。ここは、アスタロト号だよ。君が海に沈んでいる所を私達が助けたのさ。もう1ヶ月位前の事だけれどね。」

 「1ヶ月だって!?」

 「そうさ。君の治療には時間がかかったよ。全て終わったのは1週間前のことだよ。」

 「混乱してきたぜ。俺は今まで1ヶ月も意識不明だったのかよ。」

 「まあ、そういうことだね。ああ、そうそう。君の打撲のほうも直しておいたよ。」

 アスランは落ち着こうと努めたが、ショックを隠し切れなかった。タバコの灰を落とそうとした時、彼はこの部屋に灰皿がないことに初めて気がついた。

 「ちょいと、灰皿ねえかな?」

 黒いローブの女が若い男に「灰皿を」と命令した。その男は急ぎ足で部屋を出た。

 「ところで、あんた達何者なんだい?」

 「そうだね、自己紹介が遅れたね。私はラジ・アタ。彼女はグラス・ムーン。」プラチナブロンドの男は黒いローブの女を指した。

 「そうか。俺の素性については…。まあ、どうせドック・タグでも見たんだろ?」

 「ああ、見たよ。」

 「海に沈んでる俺をわざわざ助けたのには、理由があるんだろう?まさか、あの危険海域を航行してた商業船ってことはないだろうからな。」

 「まあ、それは追々。」

 「この手錠ってのが、気にくわなくて仕方ないんだがな。」といってアスランは手錠を指さした。

 「まあ、それは互いの信頼が出来るまでの形式的な儀式みたいなものさ。気にしないでくれ。」とラジ・アタは笑った。

ミネルヴァ・エルヴァ17


 ポゼストラブは顔に相変わらずの笑みをたたえながら、外を眺めていた。

 「攻撃はいつ開始しますか?」と部下が聞いた。

 「まだそのままにしておきたまえ。耐久力を見てみたいのでね…」とそれに答えた。サングラスの向こうにある彼の目は、その興奮を隠し切れていなかった。

 「どうだね?」と傍らにいたアルバートにポゼストラブは尋ねた。

 「どうですかね…」一体何について「どうだね?」と聞かれたのが理解出来なかったアルバートは言葉をつまらせた。

 船室の窓から見えるその巨鳥は、猛禽のようにタンカーの周囲を滑空していた。辺りには散り散りに飛ぶ5機飛行機が、正体不明の巨大な飛行物体の出方を伺っているようで、攻撃もせずに間合いを取るような飛び方から、彼らの警戒心が伝わってきた。

 「これはファルコンのテストであると同時に、君は忠誠心を試される。」再び、ポゼストラブは謎めいた物言いをしながらアルバートに向いた。アルバートはこの不可解な彼の言葉に困惑した。その言葉に苦笑いで変えそうと表情筋を動かし始めたその時、ポゼストラブは「あの飛行機部隊は、ゴーストパック。君の友人だ。」と言った。

 その言葉にアルバートは唖然とした。窓にかけより、よく飛行機を確認しようとしたが、高速で飛ぶそれらを仔細に見ることが出来なかった。

 ポゼストラブに振り返ると「実験を中断して下さい!!」と叫んだ。

 陰険な笑みがさらに陰険さを帯びると、ポゼストラブは「私は君に多大なる期待をしているのだよ。」と言った。

 「訳の分からないことを言わないで下さい!!すぐに中断して下さい!!」

 しばらく、アルバートはポゼストラブの顔を凝視した。しかし、自分の望みを聞き入れる可能性が皆無と分かるや、巨鳥ファルコンをコントロールするためのコンピューターの前に立った。帰投命令を指示すれば、アスラン達は助かるかもしれない。
 
 アルバートは、指先でキーボードを叩いた。だが、パスワードによってロックされたコンピューターの画面は一向に変化しなかった。
 「パスワードを!!パスワードは何ですか!?」

 「君は今、何をしているのか分からないのだよ。だから、許そう。きっと辛いことであろう。だが、いずれはそれが愚かなことだったと笑える日が来る。我々は未来について考えようではないか…」

 ポゼストラブは、アルバートの肩を叩いた。

 アルバートは懐から拳銃を抜いた。そしてポゼストラブにその銃口を向けた。周囲のポゼストラブの部下や護衛兵たちも銃をアルバートに向けて構えた。

 ポゼストラブは落ち着き払った様子で「それが、君の選んだ答えか」と言った。

 「今すぐ中止命令を出して下さい。」アルバートは銃の安全装置を外した。

 「私の許容は神よりも無限であり寛大だ。しかして、この物質世界は有限にまみれている。時間というファクターもまたかくの如く無情で、そして残酷なものだ。かくて私の主義にもいささかの配慮などしないものなのだよ。」

 ポゼストラブはそう言うと、アルバートの顔をしばらく見つめ「これを以て、解任。」と言った。

 アルバートを取り囲んでいた護衛兵達はその言葉の直後に、銃の引き金を引いた。そして、数発の銃声が鳴り止むと、アルバートは船室の床に倒れた。


 アスランは巨鳥の後方に位置を取った。レーダーに映っているところから察するにステルス性能は無いようだった。

 巨鳥の尻をロックオンすると、ミサイルを発射した。ミサイルは巨鳥の尾に向かって突き進み、接触と同時に爆発したようだった。

 ミサイルは命中したかに見えたのだが、巨鳥の尾はキズ一つ付いていなかった。巨鳥は長い首をもたげ、アスランのいる後ろの方向へと向いた。

 瞬時に危険を察知したアスランは、急降下し巨鳥の頭の死角へと入った。丁度、巨鳥の真横からサイモンが機関砲を乱射しながら飛んで来た。

 その機関砲は巨鳥の体に火花を無数に咲かせたが、その跡に損傷部分は見当たらなかった。

 「ミサイルもヴァルカンも効いてないようだ。」とアスランは長く巨大な翼を広げた鳥を、キャノピーの向こうに見上げながら言った。

 その言葉を聞くやサイモンは急旋回し、再び機関砲を発射しながら鳥の真横に襲いかかった。その荒くそして雑な飛び方から察するに、彼はこの状況に躍起なっているようだった。

 鳥は頭を真横に向け、サイモンを見つめた。そして、その頭から生えるクチバシが開き、そこから強烈な光を吐きだした。
真っ向からその光を浴びたサイモンの機体は、次の瞬間には跡形も無く消え去っていた。

 「隊長!! サイモンが蒸発した!!俺、見ました。蒸発しました!!」クリスが無線越しに叫んだ。

 「ばかな!!」

 「隊長、どうします!?」

 「だめだ。俺らじゃ太刀打ちできん。こんな化け物、撃ち落とせん!!」

 「駆逐艦はどこっすか!?」

 「分からん。」

 鳥は優雅に弧を描きながら旋回し、その先を飛んでいるボッシュを見つけた。

 「ボッシュ!!かわせ!!」

 ボッシュはエンジン出力を最大にした。雷鳴のような音を轟かせ、機体のジェット噴射口は空気の壁に衝撃波を叩きつけた。

 その音とほぼ同時に、鳥はその消滅光線を吐きだし、音速で飛ぶボッシュの機体に斜めに当てた。

 胴体にポッカリと穴の空いた機体は、音速の惰力がついたままであり、高速で距離をのばしながら、放物線を描くかのように海面に衝突した。海は突撃してくる無礼な客人を好まないようで、ことさらに音速の来訪者には海面という門を硬く閉ざした。

 ネプチューンの統べる海中の王国を拒絶されたボッシュの機体は粉々に砕け散り、コクピットの中のボッシュもまた四方八方に破裂した。

 「二人も殺られました!!隊長、作戦は失敗です。撤退しましょう!!」とキースは叫んだ。

 鳥は急上昇し、宙返りしてアスランの後ろを取った。

 「隊長、逃げろ!!」クリスは機関砲を撃ちながら、鳥に向かった。

 その時 「急降下して脱出…」アスランの頭に、再びあの若い女の声が響いた。アスランは無意識にその言葉の通りに急降下して脱出装置のレバーを引いた。

 操縦席と共にアスランが機体から離れた直後、機体の後方部分に鳥の照射した光が直撃した

 アスランの背中は急に燃えるように発熱した。そして全身の神経に激痛と、快感が縦横無尽に走り回り、体中の体液が泡立った。手足は弛緩しながら痙攣し、破裂しそうな程の圧力が内側から膨らみ上がった。そして、理由の分からぬ情熱と歓喜、怒り、悲しみが激しく湧き上がった。

 パラシュートが開き、ゆっくりと海面に落ち行く頃には、それの全ては静かに治まってはいたが、その意識は朦朧とし、半ば気絶状態で着水した。

 覆い被さったパラシュートから、緩慢な動きで這い出ると、上空では最後に残った一機の飛行機が鳥の吐く光を何とか避けていた。恐らくキースであろう。

 アスランはその機に向かって叫ぼうとしたが、弛緩した体を海面に浮かべるのが精一杯だった。口を大きく開くと、塩辛い海水が口の中に入ってきた。反射的にそれを吐き出すと、全身全霊がそちらの方に集中し、水に浮かぶバランスがいとも簡単に崩れた。

 鼻から空気の泡を出しながら海中へと沈んでいったアスランは、自分の命運もここで尽きたことを感じた。

 自分の目の前の世界はこうして終わりゆく、だが兵士が一人死んだだけに過ぎない事なのだ。自分は空軍の兵士で、戦闘機のパイロットで、そして自分にも人生があった。だが、一人の男が撃墜され、そして海中へと沈むだけのこと、一千万もの戦死者の一人でしかない。大したことじゃないとアスランはいまわの際にそう思った。

ミネルヴァ・エルヴァ16

 アスランは居住ブロックの談話スペースでテレビを見ていた。先日の作戦で失った自機の代わりに海軍から同一の機種の戦闘機が自分に回され、整備の完了を待っていたのだ。
本来ならば、自分の使いやすい様に改造を加えたい所ではあったが、この航空母艦には生憎とその希望通りに作業をしようとする整備兵もおらず、またこの戦時の状況下でいつ緊急発進させられるかも分からなかったため、最低限のメンテナスで妥協することとした。

 アスラン自身、カスタマイズの間に合わない分はカバー出来るだけの腕前はあるつもりであった。
 クッションがやせこけて骨組みの金属が尻にゴツゴツあたる上、長い年月の酷使に耐えかねた背もたれにはもはや弾力はなく、どこまでも沈んでいく簡易的なソファに座っていると、後ろからスラップが声をかけてきた。
 「メンテナンスは終わったようだ。試運転もせずに急な話なのだが出撃命令だ。」
 アスランはななめに振り向いてスラップの顔を見上げると、体の痛くなるソファから立ち上がった。


 先日のこの空母への着任以降、アスランは居住ブロックの自室にいるよりも、ブリーフィング・ルームにいる時間のほうがはるかに長いかも知れない。今もまた、この部屋にいた。
 「緊急事態でな。すぐにでも飛んでもらいたい。」

 「何事です?」

 「我が国の国防技研の暴走だ。まだ開発段階の戦闘機3機を偽装タンカーに積み込んで、ゼルバム沖を目指して航行しているそうだ。」

 「実戦データを取るためでしょう?大して問題があるようには思えませんがね。」
 「いや、問題は飛行機ではない。開発チームのリーダーだ。動機については今のところ捜査中なのだが、技研上層部の許可を待たずに、この開発中の戦闘機を持ち出したようだ。物もカバンに入るような大きさではないし、偽装タンカーも用意していたとなると、関わっている人間の数も多ければ、随分前から用意周到に計画されていたのだろう。単に実戦データを得るためのフライングならともかくとして、そうではない可能性もあるんだ。」

 「といいますと?」

 「開発チームのメンバーの中にヴァルツの工作員と思われる人物と接触を持っている人間がいた。混乱するゼルバムを経路にヴァルツにこれを持ち込むつもりかも知れない。そこで、君達にはこの戦闘機を全機破壊してもらいたい。この飛行機は開発途中とはいえ、どんな挙動を示すかは今のところ未知数だ。だが、どんな性能を発揮しようともこれを完全に破壊する必要がある。これをやってのけるのは君達しかいないだろう。」

 「機密保持のためでもあるのでしょう?」

 「今回はそう言っている場合ではない。すでに海軍の駆逐艦が2隻、現場に向かっている。もちろん、戦闘機の具体的な性能や技術については明かされてはいないが、我が国の飛行機が敵国に持ち出される可能性がある。」

 「了解しました。ですが、飛び立つ前の飛行機を空から攻撃できるならばいいんですがね、実際問題、その飛行機と空中戦になるかもしれません。拿捕や撃沈されるよりは、ヴァルツまで飛ばしてしまえってね。無論、そのタンカーに飛行甲板があればの話しですが。その飛行機の性能やデータを少しでも教えてくれませんか?」

 「今の段階で私が知っているのは、その飛行機は戦闘と攻撃両方の運用を目指して開発されていること、飛行甲板の話しだがこれは滑走路を必要としない垂直離着陸機であること、の2点だけだ。その他の事については分かり次第、随時連絡する。」

 「了解しました。」アスランはそう言うと、ブリーフィング・ルームを出た。


 「隊長。どうも、俺は解せないですんがね。」操縦桿を握りながら、クリスが言った。

 「何がだ?」とアスランは返した。

 「国防技研っすよ。ヴァルツの回し者とコンタクトしてた奴がいたって話しです。そこまで給料が安いとは思えませんがね。」

 「つまりは?」

 「ヴァルツ野郎共に買収されるような奴は、技研になんかいない気がするんすよ。」

 「人はそれぞれ、だろうぜ。俺らはお上の言うとおりに動くだけだ。拳銃は持ち主にあれやこれや口を挟まないもんだぜ。」

 「そりゃそうですがね。ただ、関係あるかどうかは分からないんすけれどね…。」

 「何だ?」

 「最近に妙に気になるんすよ。何て言うか…。覚えてます?この戦争が始まる前に始末した脱走兵のことを。」

 「ああ、覚えてる。」

 「あれとこの間のテンショー人のパイロット、このゼルバムの戦争。何だか繋がってるような気がして。」

 「どのあたりがだ?」

 「いや、詳しくは説明できないですよ。ですがね、どうもこれら全部、一つの何かに繋がっているように思うんです。今、俺達が向かっているタンカーも同じに匂いがするんすよ。」

 「なるほどな。だが、追求したところで何になる?」

 「いえ、追求しようとは思いませんよ。そう見えてしょうがないんすよ。正直。」

 「私もそう思っていましたよ。」とボッシュが割り込んできた。

 「そうか。お前さんはこれをどう読む?」とアスランが返した。

 「まだ、判断するには材料が足りないんですがね。でもあえて言うなら、それぞれが別の駒なんですよ。ポーンだったりナイトだったりね。んで、それらが味方同士かというとそればかりじゃない。色んな勢力や立場があるんでしょうな。ですが、チェス盤は同じなんですよ。そう簡単には見えてこない、もっと大きな同一のフィールドに立っているじゃないですかね。私はそう感じますよ。」

 「フィールド?バトル・フィールドはこのゼルバムだぜ?」

 「いえ、この戦争も駒の一つに過ぎません。駒ともいえるし手段とも言えますな。もっと根の深い所にあるフィールドですよ。」

 「長い話しになりそうだな。それは帰ってからゆっくり聞かせてもらおう。そろそろタンカーが見えてくる。みんな抜かるなよ。」
アスランはレーダーを見ながらそう言った。前方には海原に一つの点となったタンカーが見えていた。

 「駆逐艦はどこですかね?2隻いるんでしょう?」とサイモンが言った。

 「見当たらないな。まさか、撃沈したか?」とキースが辺りを見回した。そして、再びタンカーに目をやると、異変に気付いた。

 「隊長、タンカーのデッキが開いてます!!」キースはアスランに言った。

 「例の新兵器だろう。来るぞ。」アスランは強く操縦桿を握った。
 デッキが開ききったタンカーの中から、ゆっくりとその新兵器が見えてきた。折りたたまれた翼が開かれると、それは羽ばたきながら上空へと躍り出てきた。

 「何だ?あれ、マジで飛行機ですか?」キースは狼狽した。
 
 「なんだ?固定翼じゃないのかよ。羽ばたいてる…」クリスも驚きを隠せないでいた。
その新兵器は一度、アスラン達から離れると急旋回をして彼らに向かって羽ばたき始めた。

 「なんだこれは…。まるで鳥だ…。」ボッシュは言葉を失った。

 「鳥」というボッシュの言葉にアスランは、はっとした。友人のアルバートの「バード・ストライク」の言葉を思い出したのだ。飛行機に鳥が衝突する事故「バード・ストライク」、今アスランはアルバートの言った言葉の意味が分かったのだ。バード(鳥)ストライク(攻撃)だったのだ。

 「全機、散開しろ!!!!」

ミネルヴァ・エルヴァ15

一通りの診察が終わり、医務室を出たアスランは部下達の待つブリーフィング・ルームへと入った。ドアを開けるとまるで阿片窟を彷彿とさせるようなタバコの煙が、その口を開けた入り口からゆっくりと通路に向かって流れて行った。

その煙は何らかの意思を持つ霊魂にも見えた。きっと作戦室という名の、悪魔の所業ばかり悪巧みされる地獄穴に耐えかねた亡者達が、突然に開かれた門に殺到したのだろう。

どんな所でもここよりはマシなはずと、捨て火鉢になってその門をくぐろうとするが、その心の片隅には、その先は楽園だろうという根拠のない期待感を抱いていることぐらい見え透いている。

この地獄穴を抜け、殺風景な船内の通路を天井伝いに外を目指したところで、広い空にやっとの思いで出たにしてもそこには楽園も天国もないのだ。

地獄をその身に内包し、狂ったようにさらなる苦界に突進しようとする鉄の鯨の群れと見紛う艦隊を下に見た時、音速でやってくるジュラルミンで出来た死喰鳥に引き裂かれるだけだ。

その上、死喰鳥共ときたら、どこもかしこも燃やし尽くすしか能のない鳥で、飛ぶものに火の矢を放ってはこれを燃やし、地を這うものにはヘル・ファイア(業火)を降らせてこれも燃やす。

部屋には机と椅子が何個を置いてあり、そこに腰を掛けているアスランの部下の面々は、どれもこれもが救いようのない面構えと生き方の連中ばかりだった。新兵のサイモンこそまだ、曇りのない目をしてはいるものの、時間とともにその純度は損なわれていく。
生き残るための躊躇のなさと悪知恵を身につけ始めると、人好きしない人間性になっていく。
愛国兵士は国のために純粋に命を捧げようするならば、その望みは神に聞き届けられると見えて、真っ先にお国のために死んでいく。

アスランの部下達は愛国兵士とはお世辞にも言えなかった。戦場という職場でしか生きることの出来ない人間達だった。一般的な社会に彼らが放り込まれたならば、半年と持たない不適合者達でしかない。
国家によって許された相手、この場合は敵兵を一人でも多く地獄に叩き落とし、地獄の中を縦横無尽に飛び回り、あまりにも地獄を愛しすぎて、呼ばれもしないのに自ら地獄へ飛び込んでいくだろう。
だが、その瞬間まではどんな悪辣な手段を用いてでも、彼らは生き残るのだ。地獄を生き延びるならば、悪魔を教師とするしかないのだから。


部下達のタバコの煙の先にスラップが立っていた。以前からどことなく、アスランと彼の間には、お互いに今ひとつ踏み込めない壁があった。その壁はアスランが造ったとも言えるし、スラップが造ったとも言える。

双方の会話のやり取りにはそこまで露骨ではないのだが、どこか駆け引きをしているような感があった。

スラップはアスラン達と対峙する時、潜在的に自身を猛獣使いのように感じていた。アスラン達もまた、自身を国の飼う猛獣のか何かのように扱われていると感じていた。

猛獣使いは芸を仕込んで客のポケットから、金貨を引き出す知恵を絞ると同時に、うっかり背中を向けて、後ろから食い殺されないように注意を払わなければならず、時には分をわきまえさせるために脅して痛めつける必要もある。

猛獣も猛獣で割に合わない重労働生活から脱却することを渇望し、そのためにはまず猛獣使いを屠らなくて振り出しにも立てない。正攻法はすでに読み取られており、彼が振り回す鞭の間合いを計りつつ、振り下ろされる鞭の合間を縫うように接近して、頭蓋骨をかみ砕くトリッキーな奇襲攻撃を考えねばならないが、丁度良いタイミングというのがなかなかに見つからない。場合によっては、飼われた状態が自身の都合にとって、とても良いこともある。

今の彼らのように、互いの利益が一致している場合は、なおのことである。

「体はもういいのか?」とスラップがアスランに聞いてきた。怪我や病気から復帰した人間に対する社交辞令として、よく使われるお定まりの台詞であるのは想像には難くないないが、彼が言う言葉の裏には、早くに復帰してまた無理難題な仕事を押しつけたい焦燥感にかられていることが、アスランには分かっていた。

そうでなければ、軍部や国家の空暗い事情を知り尽くし、実際にそれを手掛けてきた自分達なぞ、葬って存在しなかったことにしたいはずなのだから。

「まあ、打撲を少々ってところですね。そのうちに治るでしょう。」

「そうか…。昨日、君からは話しは聞かせてもらったわけだが、これを上層部に報告したところ、今日、情報局のエージェントが話しを聞きに来るようだ。ここに来て貰ったのは他でもないのだがね。また、同じ話をすることになるとは思うが、協力してくれ。」

「了解です。」

スラップは腕時計を見ると「そろそろ来る頃だろう。」と言った。

アスランは席に着くと、ボッシュが「痛みはどうです?」とアスランを気遣った。

「痛み止めを飲んでるから大丈夫だ。効き過ぎる薬ってのは怖いものがあるがな。」と言った。

すると、ブリーフィング・ルームのドアが二人の男が入ってきた。

見たところ、一人の男は自分達と同じ、ある種の業界人の空気が滲み出ていた所から、スラップの言った情報局の人間であることが分かった。

同業者にすぐに悟られてしまう独特の雰囲気を醸し出している様子を見るに、第一線の現場からは退いて、内々の雑務や事務仕事をこなしているのだろう。

言ってしまえば、レストランのウェイターと裏方のコックの違いとでも言うのだろうか。彼はどちらかと言うと、酷使され続けた若い時代を経て、経験と実績、そして過酷な調理場で多忙な毎日を過ごすコック長のタイプだ。

彼がコック帽を被り、フライパンを片手に若いコックを怒鳴りつけ、番頭頭の熟練ウェイターとの軋轢の日々がまるで目に写るような感じだった。

一転してその後ろからついてきた男は、アスランよりはいくらか若い感じがあった。

歳の頃は恐らく、クリスやキースと同じあたりだろう。だが、きな臭いこの世界にいたにしては、どこか危なっかしい雰囲気があった。

ビジネスマンとしては、非の打ち所のない年相応の貫禄を感じさせるのかも知れないが、情報部員としては新人素人顔負けの不器用さがあるように思えてならない。

彼は顔の向く方向をせわしなく変えては、艦内の壁、天井、ドア、そして室内のホワイト・ボードに視線を落ち着き無く移動させている。

下手な探偵だって、顔を動かさずに目だけを動かして物を観察するのだろうが、彼にはそういう細かい芸当など考えもつかないようだった。

しかしながら考えようによっては、彼は相手の裏をかくには最適な人材なのかもしれない。諜報部員がそれと悟られては、元も子もない。

こんなに不器用で鈍そうな奴が、諜報部員なわけがないと思い込ませたほうが仕事もやりやすいはずだ。

コック長の方の男は、スラップと握手を交わすと、少しも遠慮する素振りも見せずに椅子に座った。それに習って、不器用そうな男も席に着いた。

「国家情報局 軍事戦略情報部のカーターだ。んで、彼はプログレッシブ・ワークス社のドーソンだ。彼は今回の軍事作戦に協力している。」

 ボッシュは「今回も…、でしょう?」と言った。

その言葉に一瞬、カーターは無言になったが、「事情は大体聞いている。だが、直接君らの口から聞かせて貰いたいこともあって、ここに来た。」と言った。

「アスラン隊長から話してくれ。」とカーターは言った。

アスランは「何からお話しますかね。スラップ司令官からの作戦についての内容はお聞きで?」

「それは資料で読んだ。グーク(黄色い小鬼)どもの対空兵器の破壊だろ?コールド・ウォーカーを見つけたのはウチの局の若い奴らだ。」

「ええ、ごもっともですな。そして、その作戦の遂行のために敵陣上空まで、超低空侵入をしました。対空ミサイルのレーダー網を避けるためではありましたが、通常の高度では高射砲の心配もありましてね、ほとんどジャングルの樹に張り付くように飛びましたよ。無論、対空機関砲の有効射程にはなりますからね、敵の砲手に捕捉されないスピードを保つ必要もあったんで、計器と目視をフル活用しての高速飛行でした。」

「まるで、フライング・サーカスだな。んで、敵の飛行機は?」

「その前に無線の電波に乱れがありました。部下からの返信が聞こえたり、聞こえなくなったり。それで、電子計器やレーダーを見たら、全てが不調になってましてね。この時、電波が阻害されていることに気付きました。」

「電子計器までとなると、妨害電波だけではなさそうだな。」

「電子攪乱装置でもあったのでしょう。ま、そこに敵のアイス・スラッガーが4機ほどこちらに向かってきました。電子装備が不能になってんで、ドッグ・ファイト(空中戦)なりました。勿論、相手もミサイルは撃てないようでした。作戦当初は、未熟な北ゼルバムのパイロットが来ると考えていましたがね。その読みは外れてました。かなり熟練パイロット達のようでしてね。考えなし減速なんてしようもんなら、すぐにケツに付かれてしまいますんで、スピードをさらに上げての高速戦闘でしたよ。」

「敵に搭載されていた装備はどうでしたか?」プログレッシブ・ワークスのドーソンがアスランに聞いた。

「あ?ああ、相手も俺らを射撃軸線に乗せようとしていたらしいから、まず機関砲を確実に積んでいただろう。ま、現に機関砲弾を撃ってきたからな。口径までは分からんが単純に考えて、標準のものと考えて差しつかえないと思いますよ。それと、そこまで細かくは見えなかったが、翼のパイロンに何か積んでいた。形としては予備燃料タンクのようには見えなかったが、あの電子攪乱の中をそうそうミサイルのために搭載重量とスペースは避けないだろう。多分、あれはロケット弾じゃないかな。」

「なるほど。」ドーソンはそう言うと沈黙した。

アスランは「んで、結局俺は撃墜されましてね。」というと、「それも聞いた。」とカーターが言った。

「スラップ司令官からその事は聞いた。その外国人部隊の話があって、出兵している航空部隊の連中はよほどにピリピリし始めたようでな。おかげで毎日毎日、軍の参謀本部からウチの局が尻を叩かれまくってる始末だよ。」
スラップは多少怪訝そうな顔で、カーターの顔を見た。カーターは、日頃の鬱憤の少しは晴らしたようで、嫌味なしたり顔を彼に向けた。

「どうやら、私はその敵の部隊員に、助けられたらしいんですがね。」とアスランは続けた。

「ああ、実はそれで部内で、敵との内通者がいるのではないかとか、敵の勢力を内部崩壊させるためにウチにも知らせずに、送り込まれた工作員がいるのではないかとか声が出てな。方々調べたが結局それらしいものは見つからなかった。結局、そのテップ(天照人に対する蔑称)の気まぐれだろうと今のところはそう思っている。」

「天照の国防軍が送り込んだ可能性は?」

「あの腰抜け国家にそこまでの度胸はないだろう。実際には今回、ゼルバムに入った陸軍の中には、天照の歩兵が50人程度いるが、こいつらは国防陸軍戦技教育隊の連中だ。戦場の行儀見習いに来ているようなものだし、それにスラップ司令官から聞いた話を元に調査した所、そのシラサワ・リューイチという男なのだが…」

「そいつが?」

「まあ、今の段階で分かっていることなのだが、その男は君の聞いた通り元々は天照軍のパイロットだったらしい。因みに正式には旧天照海軍南海方面軍リバース支隊第21航空隊第1小隊隊長だ。リバース島で撃墜され、天照軍の書類上では行方不明。だが、本人はその後近隣の島へと移り潜伏。そして終戦。終戦後は島の農民として数年間生きていたようだが、間もなくして現地の風土病に掛かって死亡したことになっている。だが生きていた。奴はFATGに入団していたようだ。」

「何です?そのFATGってのは?」

「フロム・アポカリプス・ティル・ジェネシス(黙示録から創世記まで)というテロ組織だ。人員構成は多国籍で、先の大戦で活躍した兵士も少なからずいる。全くいつの時代にも自分の不都合を世間のせいにして、絵空事に逃避しようとする輩はいるもんだがな。組織のリーダーは、ドミニク・ガスケ。元亡命フェンティ陸軍中佐。大戦後の世界に失望したらしく、世界を奴の言う理想郷に作り直すために最終戦争を画策しているらしい。その戦争のために世界中のあちらこちらで兵士のなり手をスカウトしているらしい。まあ、もっとも、類は友を呼ぶのか集まるのは狂信的な奴らか、金目当ての傭兵もどきが殆どのようだが。だが困ったことに君の会ったテップのような手練れも入団している始末でな。まさかとは思ったが、このゼルバムにも入ってきたか。」

「奴は目的と金のために来た、と言ってました。」アスランはタバコを出した。

横にいたドーソンが「となると、資金を稼ぐために世界中の紛争に参加する可能性が出てきましたね。」と言った。カーターはそれに対して「いや、すでにそうなっているだろう。ゼルバム以外にもな。」と言った。

「奴は生き残った仲間を探しにいくと言って、ジャングルの中に入っていきました。その後については、俺は分かりません。」

「なるほど。では。まだ生きている可能性があるということだな。だが、なぜ撃たなかった?」

「奴もそこまでお人好しではなかったのでしょうな。俺の拳銃から弾丸は全て抜き取られていました。逆に言えば、俺が殺されてなかった方が奇跡です。それと、脱出の衝撃ですかね,体中激痛が走っていましてね。思うように動けなかったんでね。」

「なるほど。そうか。では今度は君の部下に聞くとしよう。」カーターはボッシュの顔を見た。

多分、カーターは自分を多少疑っていると、アスランは思った。敵兵に命を助けられ、捕虜にもならない場合は、それはそれで、めでたしとはならないものだ。それに相手がこの手の多国籍テロ集団ともなるとなおのことだろう。入団のお誘いがあったとも、内通者なのではないかとも、あらぬ疑いを掛けられる。ギブ・アンド・テイクが基本となる諸悪説の世界では、美徳故の善行という論理など成立しないのだから。

数時間をかけて、局員達の質問に全員が答えると、「みんな、ご苦労だった。」とスラップが言った。カーター達とスラップはまだ話しがあるらしく、ブリーフィング・ルームに残るようだった。

アスラン達は部屋を出ると、艦内の通路を食堂に向かって歩き出した。コーヒー以外の飲み物を飲むためだった。
タバコの煙に口の中の潤いを奪われ、ブリーフィング・ルームの片隅に置かれたサイフォンのコーヒーを飲んではいたが、そのカフェインを煎じた水は何度も飲んでいると口を余計に渇かし始めた。

「知っていたんですか?」とサイモンはボッシュに聞いた。

「何をだ?」ボッシュは聞いた。片手には愛用のマグカップが持っていた。

「プログレッシブ社のことです。」

「プログレッシブ・ワークスか。軍事作戦立案の一部を担っている民間企業の一つだ。無論、その仕事を受注している以上は、情報局の徹底的な管理下に置かれているが。」

「軍事作戦が民間企業に?」

「そう。今や戦争は公共事業として外注される時代だ。このゼルバムに入る地上戦力のいくつかは正規軍の他に民間軍事会社の人間もいる。場合によっては、正規軍の訓練教育の一部を民間会社が引き受けている場合もある。驚く事はない。まあ、民間軍事会社の場合は軍の退役した軍人なんかが多いようだが。」

「では、プログレッシブにも退役軍人が?」

「いや、プログレッシブの場合は違う。元々は、職にあぶれた工科大学を卒業した奴が、同じような境遇の仲間達を集めて始めたゲーム会社だった。話しによると、非常に緻密なシミュレーション・ゲームを制作して多大な利益を上げたらしい。それで、そのうちにそのシミュレーションの技術を発展させ、経営コンサルティングや旅行代理店、気象情報と事業を拡大し、今はこんな感じに軍事作戦の立案までやっている。予算と戦力、期間に合わせてな。とはいっても、これをやっているのは何もプログレッシブだけじゃない。俺の知っている限りではあと3社はある。戦争が起こる度にこれらの民間会社に作戦を発注する。すると、より適した作戦をそれぞれの会社が立案。プレゼン。そして、より有用性のある提案をしてきた会社の作戦を採用するのさ。ま、一種の入札だな。」

「じゃあ、俺らはゲーム屋の考えた作戦で…」

「まあ、そういうことだ。直接ここに来たのは、文章には残らない俺達の話を聞くためだろう。何せな、俺らは飛行機にフライト・レコーダーすら積んでいないからな。機密文章にすら載らないんだから。」

サイモンはショックを受けていたようだった。

「そう、難しく考えることはない。世の中は適材適所で動いているのさ。敵兵を探し出すのに下手な装置を使うよりも軍用犬を使ったほうが早い事だってあるだろ?それと同じことさ」
ボッシュは前を歩くアスランに続いて食堂へと入って行った。

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moz84

Author:moz84
Screamerと牛頭鬼八です。岩手県に生まれ、とりあえず生きてます。

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