1時間ほど動くことの無かった列は、徐々にゆっくりと動き出した。日ノ内は先ほどの一件もあり、素直には期待できなかった。
低速で走り出した列はすぐにまた停車した。それからしばらく時間が経って、また再び進み出すということを繰り返した。
日ノ内が隣を見ると、助手席の斉藤も眠っていた。三人の寝息の音ばかりが聞こえる車内で、日ノ内はアクセルをたまに浅く踏んではブレーキを踏んで停車を、変則的なタイミングで動いたり止まったりする列に合わせて足を動かしていた。
日ノ内の前方の車が五台ほど列から外れていった。日ノ内の思った通り、その先には「止まれ」の合図を誘導棒で出していた警察官が立っていた。
その警官は、下に倒していた「進入禁止」の看板を起こして立てた。
「まただぜ。」
日ノ内がそう言うと、寝ていた三人が起きた。
「ええ?何すか?」高内が顔をしかめた。
「シェルターには入れないとさ…」
日ノ内が高内に言った。
「もう、満員なんですかね?」
斉藤が前に首を伸ばした。
「分からん。」
日ノ内はそう言いながら、車を警官の前に止めた。
「進入禁止」の看板の横に立った警官は怪訝そうな表情で、日ノ内達を見ていた。
日ノ内が窓を開けると警官が「もう、満員。別の所に行って。」と言ってきた。
「あの…」と日ノ内が言いかけた時、警官は「何」と高圧的な態度で臨んできた。
その一言も言わせぬような態度に日ノ内は、一瞬怒り出しそうになったが妻を探していることもあり、テンポを一つ落ち着けてから話はじめた。
「避難した女房を探してるんですがね。ここにいないかどうか確かめたいんですが…」
「んで?いたらどうするの?」
日ノ内はいちいち突っかかってくる警官だな、と思った。
「いたら、連れて行きます。」
「そう。んで?」
「確かめるだけだったらいいですよね?車は道路脇に止めますから。」
日ノ内は警官の目を真っすぐに見定めて言った。
「そこに止めて。」と警官はアゴで指した。
「どうも。」
日ノ内は警官がアゴで指した場所に車を止め、三人に「探して来るから待っててくれ。」と言って、車から降りた。
先ほどの警官の後ろを通り過ぎ、金網のゲートを越えるとトンネルの入り口をコンクリートで塞いだような「美波北防空シェルター」があった。そのシェルターの外には先ほど入ることが出来たらしい避難民達とその車が止まっていた。
日ノ内は何か妙な気分がした。具体的には知らないが、シェルターの収容人数から考えて、今ここに入ることが出来た避難民の数が少ないように思えたのだ。
もしかしたら、何時間も前から避難民をシェルターに入れていたのかも知れない。そう思った日ノ内はあたりを見回したが、つい今しがた入った車以外の車両といえば、パトカーや警察の車両ぐらいなものだった。
勿論シェルターも、ここにいる警察と避難民を合わせても、まだ収容人数に余裕があるようなのだが。
だが、ゆっくりと深く考えている余裕などなかった。
日ノ内は避難民の群集の中に入り、自分の妻の顔を探した。全ての顔をじっくりと見回したが、妻の顔はなかった。それでも、日ノ内は今度は駐車スペースに取って返し、一台一台車を見て回った。
車のナンバーにも細心の注意を払って見てみたが、妻の車は無かった。
外にいないのなら、シェルターの中はどうかと思い、シェルターに足を踏み入れた瞬間、「無断で入らないで下さい。」という声がした。見ると、そこには警官が立っていた。
日ノ内は「このシェルターに女房がいないか、確認してます。すぐに出ますので。」と言った。
警官は「ああ、でしたらこちらへ…」と言ってシェルターの入り口のすぐ横にあるテーブルに、日ノ内を座らせた。
その警官はノートパソコンを開き、「奥様のお名前は?」と聞いた。
「日ノ内 小夜子です。」
「年齢は?」
「30です。」
警官は日ノ内から聞いた名前と年齢をタイプした。
検索というボタンを押して数秒後に結果が出てきた。
「ここにはいないようです。」
「そうですか…わかりました。」と日ノ内は言った。
「もし、なんでしたら…」
「はい?」
「シェルターの入り口に伝言板を今日の昼にでも設置しますんで、メッセージでも残していかれたらどうですか?」
「ええ? ああ、そうします。紙ありますか?」
「こちらにどうぞ。」
警官は伝言メッセージと印刷された紙を日ノ内に出した。
日ノ内はそれに名前と歳、電話番号、日付と妻へのメッセージを書いて警官に渡した。
警官は「分かりました。張っておきますんで」と言って日ノ内から紙を受け取った。
「よろしくお願いします。」
と日ノ内は言ってシェルターを出た。
そうだなあ。
明日は休日出勤だ。早朝から陸前高田に行く。
まあ、被災地域だな。
それはさておき、また絵を描き始めようかと思ってるのだが、イメージが中々浮かんでこない。
来年の3月に個展を控えているのだが…。
成王から発射された核ミサイルによって、現在の旧首都圏や主要な都市が破壊されたことから、それまで天照では馴染みのない核シェルターがここ10年の間にいくつか建造された。
だが、この実質上の「核シェルター」をそのまま「核シェルター」と呼ぶ事に関して、色々と意見が出た過去がある。
「核シェルターとそのまま呼ぶことは、非常に物騒な感じを受ける」というような意見もあれば、「そういう時代だ。
分かり易い方が避難民も迅速に対応できる。」という意見もあった。
それにより、どちらの意見もに配慮してか、この建造された「核シェルター」は「防空シェルター」または「防空避難所」という名前が付けられた。
日ノ内達が目指す美波の北地区にある核シェルターもこういった経緯から「美波北防空シェルター」と名づけられたのだった。
国道から外れ、美波の田畑が広がる田舎道を山に向かって数分走った先に、その美波の山をくり貫き、コンクリートと鉛で作られた防空シェルターはあった。
シェルターへと続く道は、その鉄のゲートまで避難民の車が長蛇の列を作っていた。
「こっちも集中してやがんな。考える事はみんな同じか…」
日ノ内は再び巻き込まれた渋滞の最後尾でブレーキを踏んだ。
「昨日から俺ら、待たされてばっか…」
斉藤が溜息をついた。
「まあ、もう少しの辛抱だ。君らの楽園は近い。」
日ノ内は斉藤の機嫌を取るようにおどけた感じで言った。
「君らって、ヒノさんは?」
「俺は、君らをこのシェルターに置いたら女房を探す。一応このシェルターも探すが、いなければまた別の避難所を探しに行くまでだ。」
日ノ内は先ほど、道の駅で貰った防災マップを指差した。
後部座席に座る高内と萌は、眠っていたようだった。
諸君はSAWというサスペンス映画を知っているだろうか?
まあ、知ってる人は知っているだろう。ジグソーというまあ、あのイカれた設計士親父がトンデモなゲームを始め、そのジグソーに目を付けられた人間がどんどん苦痛と生死のゲームに巻き込まれていくあれだ…
今日、実は映画SAWを地で行くような事が仕事場であった。
まず、とり急いで折りたたみ式のノコギリが必要になったのだ。
んで、先輩の工具袋に取りに行くことになった。急いで…
なんと、その先輩 身のまわりを片付けられない先輩なのだ。
んで、俺は急いで工具袋の中を見た。
やたらめったらと、先輩はその工具袋に色々詰め込んでいた。
刃の出たカッターナイフ、作業用ナイフ、壊れて折れたハサミの刃、折ったカッターの刃、釘、細くて非常に鋭利な何かのピン、パイプカッター用の円形の取り替え刃、ビス
それらと一緒にスパナやモンキー、ドライバー、圧着、まあそういった色々な工具も入っているのだ。
その中に折りたたみ式のノコギリが入っているらしかった。
急いでいた
普段ならそんな工具袋の中に手を突っ込んで、かき回すのは躊躇するが何とか意を決して手をいれた。
まあ、ビスで手にひっかき傷を作った程度で、折りたたみ式のノコギリを見つけた。
先輩にそれを渡す。「ごめん、そのノコ…折れてるんだよ。同じような折りたたみなんだが、もっと小さいサイズのやつがある。」
再び、あのSAWの工具袋に手を入れた。結局、ノコギリは車の中から出てきたのだ。
頼む、工具袋をSAWのまんませずに整理してくれ
高内も不満そうな顔で自販機の前に立ち尽くしていた。
そこに日ノ内が来ると「これ、全部売り切れッスよ」と言ってきた。
「どうやら、そのようだな。」
日ノ内も自販機を上から下へと眺めた。
「避難所がこの先にあるみたいだ。そっちに行こう。ま、そこいけば一安心だな。さ、行くぞ。」
と言って三人を連れて車へと戻った。
ハザードランプを消し、エンジンをかけた。
「この先に核シェルターがあるみたいだ。そこに食い物もあるみたいだ。」
日ノ内はそういいながら、アクセルを踏んだ。
道の駅からさらに南下を続けると、直売所の店員が言っていた通り「美波北防空シェルター」と書かれた矢印の付いた標識が見えた。
その標識の通りに左折した。
「…今日未明より、総理大臣と議員数名が行方不明になっていた事が明らかになりました。」
「なんだって!?」
日ノ内はラジオのボリュームを上げた。
「…これは今朝、野党議員が明らかにしたことで、それによると、総理と一部の議員は今日未明、突然現場を視察に出たきり、行方が分からなくなっている模様です。」
「首相が行方不明って…」
斉藤はカーラジオを眺めながら言った。
「責任者がいなきゃ、警察も軍も動かねえぞ…。あいつら、手続きと許可でしか動いてねえなからな…」
「どうなるんですかね…」
「さあな。俺には分からん。刑務所だって満室だろ…それを考えると、このドサクサに紛れて犯罪を犯す奴らも増えるんじゃねえかな…でも、まあ、大したことはないだろうぜ。多分、昼頃までには見つかるんじゃないの?まあ、見つかった所で、役に立つか立たないかは別問題だがな。」
日ノ内は美波のちょっとした町中を防空シェルターを目指して、車を走らせ続けた。
今日
「嫌われ松子の一生」という映画を見た。
まあ、面白い映画なのだろう、
だが、俺 こういうのダメなんだ…
おかげ、明日も気落ちした一日に…
出来れば…可哀相な人間の可哀相な境遇は見たくないのだが…
ああ、なんだか絵空ごととはいえ、心を割かれ、どっと自分の生きる気すら失う…
いや、面白い映画なのよ。
今日は床下での作業でした。
動きずらいったらなかったぜ。
床下がもう少し広ければなあ。
場合によっては、床下で溶接機を使うこともある。
床下で溶接機だぜ!? 普通、考えられないよな…
「何か、あの警官ムカつきますね。」斉藤はトイレで隣の日ノ内に言った。
「これが因果応報ってやつさ、俺らも同じ。工事現場を通り抜けたい一般車両を通せんぼして給料を貰ってる。出物腫れ物、所選ばずさ。こういう時でもちゃんとしっぺ返しがくるのさ。」
「でも、俺らは丁寧にやってますよ。あのオマワリ、態度が悪かった。」
「それが国家権力ってもんだあな。ああいうタイプには低姿勢でゴマすったフリして、極力関わらないほうがいい。」
「現場でやったらクレームもんですよ。あれは…」
「でも、あのマッポにクレーム付ける奴が、果たして何人いるかねえ。俺らは一日いくらの日当で働くガードマンだが…。あのマッポのバックに付いているのは国だぜ? 力を持っている奴とそうでない奴がいたら、君はどっちにケンカを売りに行く?」
「それは…」
「だろ? だから、必要以上に関わらない。それが一番さ。だがな…」
「え?」
「避難所に物資を送ってるらしいな。つー事は、避難所を知ってるって事だな。まあ、俺が聞いて来るから先に車に戻ってな。」
二人はトイレを出た。
道の駅の駐車場にはパトカーが数台と、物資を積み込んでいる最中のトラックが止まっていた。
道の駅には産地直売所やちょっとした飲食店があり、その店舗から食料品やその他の物資が運び出されていた。
直売所の出入り口の前に置かれた灰皿の横に、エプロンをした女がタバコをふかしながら駐車場を眺めていた。
日ノ内もそこに行きタバコに火をつけた。
「なんだか、えらい騒ぎですね。」
「へ?ええ、そうですね…」
日ノ内の唐突の言葉にその女は少し驚いたようだった。
「こっちは、まだ大丈夫なんですか?」
日ノ内は聞いた。
「はい、まだ大丈夫ですね。人が少ないから…。避難してきたんですか?」
「ええ、まあ。」
「赤森市から?」
「はい、そうなんですよ。赤森の北の方から死んだ人達が大量に流れ込んできて…。避難してくる車を誘導してたんです。俺、警備員なんですよ。」
「そうなの?じゃあ、死んだ人達を見た?」
「見たも何も、何度か襲われかかりました。」
「ええ!?そうなの?」
「はい。まあ。ところで、避難所ってこの辺にあります?」
「国道をもうちょっと南に行くと、ありますよ。核シェルターですけど。」
「南に真っすぐ行けばあるんですか?」
「南に行くと道路標識があるんです。そこに書いてあるんです。美波北防空シェルターって言うんですけど。」
「そうすか。ありがとうございます。」
「いえいえ…」
「あの…。他に避難場所って分かりますかね?県内の…女房を探してるんです。」
「そうなの!?う~ん、私は分からないけれど………そうだ、お店に防災マップがあります。取ってきます。」
その女は直売所へと入って行った。
斉藤はさらに機嫌を悪くして日ノ内のところへとやってきた。
「自販機でジュース買おうとしたら、自販機、空です…」
「そうか、根こそぎ持って行かれるんだな…」
そこに女が戻ってきた。
「はい、これ。」
女は防災マップを日ノ内に渡した。
日ノ内はそれを広げて大まかにその地図を見ると「ありがとうございます。」と言った。
「しかし、これ全部 避難所に行くやつですか…」
「ええ、そうみたいですね。突然です。」
「というと?」
「昨日、夜に店長から電話があって、避難してくる人達がいるだろうから朝早くから店を開けてたんです。店長の親戚に赤森に住んでる人がいて、家に突然、避難してきたんですって。それで話しを聞いて、もう夜中から店に野菜を卸してる農家に急いで連絡して…。」
「はあ…」
「店のとなりのレストランも早朝から開けて、炊き出しの準備をしてたんです。私も早出出勤だったんですが、ここに来た時には車が並んでて、前の晩から駐車場で寝てた人もいたみたいで。」
「それで…?」
「店を開けてからしばらくして、パトカーが何台か来てお店にいたお客さんを全部、店の外に出して。それで警察の人と店長が話しをして、警察が避難してきた人達をパトカーでシェルターに誘導していったみたい。それで、食料品やら何やら全部、避難所に移してるみたいです。」
「んじゃあ、ここにあった物資とかは防空シェルターのほうに?」
「多分、そうだと…」
「そうですか。ありがとうございます。ちょっと、行ってみます。」
「奥さん、きっと見つけてください。」
「ありがとうございます。」
日ノ内はその女に礼を言うと、駐車場を高内達を探して歩いた。
暗かった空が藍色に染まってきた頃、人気の少ない郊外へと車は出た。
他の避難民達の車も多少はあったが、その走行音さえなければ静かな所だった。
日ノ内は道路の脇に車を止め、エンジンを切った。車のラジオだけをつけたまま、運転席を降りた。
「しばし、休憩だ。」と三人に言うと日ノ内は背伸びをした。
それを聞いた三人も車から降りた。斉藤はアキレス腱を伸ばす運動を始めた。
「ここで少し休んだら、どこかでガソリンを入れて、何か食い物を探そう。腹が減ってきたよ。」
日ノ内はタバコを吸いながら、足の屈伸運動をしている斉藤に言った。
「ガソリン、入れられますかね?燃料統制がかかってるし。」
「まあ、まだ車には入ってるけれどね、一応入れられる時に入れておかないと後が怖いからな。」
「そうですね。ただ、この調子ですと営業している店もあるかどうか…」
「まあ、この辺に避難命令が出てるのかどうか分からんからな。でも、あまり絶望的に考えるのもよそう。」
「う~ん、そうですか…」
「マイナス思考に考える気持ちも分かるがね。あまりさ、悪い方に考えすぎると、かえって幸運を取り逃がしちまうしな。ま、こんな時こそ必要以上に心配しないほうがいい。結果が悪かったら、その時に考えることにしよう。」
萌は自分の携帯電話を気にしているようだった。その様子に気付いた高内が「何した?」と聞いた。
どうやら、携帯電話の充電の残りが心細くなったようだった。
「充電器ならあるぜ。メーカーはどこのだ?」
日ノ内は萌から携帯電話を渡されると、裏側のメーカーの名前を見た。
「これなら、プラグがある。」
日ノ内はシガーライターの電源に自動車用の充電器を差込、接続プラグを萌の携帯電話に繋いだ。
太陽が昇り大分明るくなってきた。その日光が日ノ内達の目前に広がる、延々と続く田畑をオレンジ色に染め始め、揺れる農作物にシルエットを作った。
「しかし、避難場所どこですかね?」屈伸運動をやめた斉藤が日ノ内に言った。
「さあてなぁ。どうしたもんかな。まあ、人に聞いて回るしかないよな。」日ノ内はタバコの火を靴で踏んだ。
日ノ内は運転席に座り、ラジオのボリュームを上げた。
「…こちら、都内ではもはや地上を歩くことが出来ません。地上では至る所で暴徒が暴れています。私達、取材班も屋上から様子を伺う事しかできません。都内の建物の中には、未だに取り残された避難者の方達が孤立無援の状態となっております…」
「やっぱ、こっちの放送局は全滅かな…。」日ノ内は頭をかいた。
「参りましたね…」
「ああ、マジでな。そろそろ行くか。」
日ノ内は高内と萌を呼び寄せ、車のエンジンをかけた。
「ガソリンスタンドを見つけたら教えてくれ。」
三人に日ノ内はそういいながら、再び国道を南下し始めた。
30分程走った先に、車の長い行列を発見した。
「何だろ?」
斉藤が窓から首出した。
「スタンドかもな。並んでみるか。」
日ノ内は行列の最後尾に車をつけた。
行列はジリジリと進んでは止まり、それを何度も繰り返していた。
「避難所か?」
日ノ内も窓から首を出してみた。だが、行列の先はまだ見えてこなかった。
「これで、トイレの行列だったらお笑いだよな。」
日ノ内はにやけた。
「いや、案外そうかもしれませんよ。」
斉藤が言った。
ゆっくりとだが、行列は進んでいった。しばらく低速で走った所で前方に看板が見えてきた。
「ああ、道の駅だ。」と日ノ内は言った。
「石油、詰められるといいですね。」
「スタンドもあることを祈ろう。」
またしばらく進んだ後に行列は止まった。
日ノ内は財布を出し、後部座席の二人を向いた。
「道の駅が先にあるみてえだ。おっつけ俺らも行くから先に行って食い物とか買ってきてくれ。」
そういって、紙幣を3枚ほど高内に渡した。
「ああ、了解ッス。」
二人は後部座席から降りると、行列の先へと小走りで行った。
「人数が多いと便利なもんだな。」
再び進み始めた行列に日ノ内はアクセルを少し踏んだ。
「はい。そうですね。」
長い行列の割りに進み具合がいくらかスムーズだった。日ノ内は「燃料」と「食料品」が手に入る期待に胸を躍らせた。
「ヒノさん、分かりやすいですね。今、機嫌いいでしょう?」
「ええ、そうか?」
「鼻歌まで歌って。」
「あたりめえじゃねえかよ。」
行列の先が徐々に見え始めた。先頭に並んでいた車が道の駅には入らず、走り去っていくのが見えてきた。
「駐車場が満杯なことに短気をおこしたのかな?気の短い奴だ」と日ノ内は思った。だが、道の駅に近づくにつれ前列の車は全て諦めて走り去っていったようだった。
前に並ぶ車がすっきりといなくなった所で、日ノ内の心に暗い雲が影を落とし始めた。
前方には誘導棒を持った警察官が立ち、道の駅の入り口にはバリケードが張り巡らされていた。
立っていた警察官は誘導棒で「止まれ」の合図を出しながら、こちらへと近づいて来た。
日ノ内は窓を開けた。
するとその警官は「一般者はダメ。避難所に送る物資を出してるから。」と言ってきた。
「ああ、そうですか…」日ノ内は完全に期待を裏切られた。だが、「トイレぐらいはいいでしょ?漏れそうなんだよ」と聞いてみた。
その警官は「じゃあ、そこにハザード点けて止めて。」と言って、道路の脇を指差した。
日ノ内は言われた所に車を止めると、ハザードランプを点けてエンジンを切った。
「とりあえず、トイレだけでもな…」斉藤を連れて車を降りた。
警官は再び行列の車を追い返し始めた。
日ノ内は国道から脇道に外れ、自宅に辿りついた。
自宅の前を徘徊する死人を数人、日ノ内は車で跳ね飛ばした。自宅の電気はついていない様子だった。
家の駐車スペースにも日ノ内の妻の車は無かった。どうやら、妻は避難した後のようだった。
日ノ内は携帯電話を取り出し、妻にかけてみたがやはり繋がらなかった。
車を自宅の玄関に横付けにし、車のライトを消した。
日ノ内は運転席を下りると斉藤に「すぐに戻る」と言って、周囲の死人達に警戒しながら自宅へと入って行った。
廊下の電気をつけてリビングの方へと進むと、食卓に白い紙が置いてあった。
その紙には「先に避難してる。電話がつながったら連絡して」と書いてあった。その置手紙を見た日ノ内は少し安堵した。
寝室へ行きタンスの中から自分のリュックサックを取り出すと、トイレの隣の物置部屋に行った。
そこで日ノ内は工具箱をリュックの中に入れると、玄関へと向かった。
外に出ると死人達がまばらではあるが近寄ってきていた。
手早く家の鍵を閉めた日ノ内は後部座席の高内にリュックサックを預け、運転席へと戻った。
「よし、お待たせ。避難所に行くぞ。」
と言いながら日ノ内は再び車を発進させた。
「これ何スか?重いスよ。」
高内が言った。
「ああ、工具が入ってる。後ろの荷物置きに置いてくれ。」
とハンドルを握りながら日ノ内が言った。
「何するんですか?」
斉藤が聞いた。
「ふふん。まあな。その内、分かるさ。」
と日ノ内はにやけた。
「ところで、誰か避難場所を知ってるか?」
と日ノ内が聞いた。
「ええ?知ってんじゃないスか?」
と高内が言った。
「いや、どこにあんだか知らなくてな。斎藤君は?」
「いえ、分からないです。」
「だよな。日頃はそんな場所なんか意識してないもんなあ。」
「南方面はどうですかね?とりあえず、街から離れましょう。」
「そうするか。とりあえず落ち着いた所で情報収集といくか」
日ノ内は再び国道に戻り、南方面へと曲がった。
カーラジオからは一向に県内放送は流れてこなかった。
急に車内に別な放送の音が流れ始めた。萌が携帯電話でテレビを見始めた音だった。
日ノ内はラジオのボリュームを下げた。
「…都内では避難者の方が暴徒に襲われています。街は混乱状態になっています。もう、地獄です…地下鉄の駅に暴徒が殺到しています!!あれでは、避難した方も逃げ場がありません!!」
冷静な言葉使いを忘れかけた現地リポーターの半ば悲鳴にも似た声が車内に響いた。
「他のチャンネルはどうだ?」
日ノ内は萌に言った。
萌はチャンネルを変えた。
「…陸軍は事態の収拾が困難となった住頭市営体育館に、迫撃砲と戦車による砲撃を開始しました。市街地では歩兵隊による暴徒の掃討作戦が行われておりますが、軍関係者、一般者に被害が増える一方です…」
萌はさらにチャンネルを変えた。
「…沿岸の地域では漁業関係者が船を出し、避難者を沖合いに一時的に避難させている模様です…」
どのチャンネルでも県内ニュースはやっていなかった。
「あれかな…。やっぱり、放送局も機能不全になったのかな…」
日ノ内は呟いた。
まばらに走る他の車を追い越しながら、日ノ内達の乗る車は南方面に向かって走って行った。
あと数時間で夜が明ける。
刀屋町の複雑な小道を若い男に案内されるままに、日ノ内は車を走らせた。
繁華街の外れの比較的静かな刀屋町にも死人達が歩きまわっていた。
「ここです。」と若い男が言った。
止まった車の横に随分と古めかしい簡素なアパートが建っていた。アパートの外側には数人の死人達が歩き回っていた。
日ノ内達が通ってきた道路の向こう側から死人達が何人かこちらに向かっているようだった。
日ノ内達の車がその死人達を誘ったらしかった。
日ノ内は後部座席の若い男に向き「部屋はどこだ?」と聞いた。
「左から2番目です。」それを聞いた日ノ内はその部屋の前に車を横付けにした。
「早く来いよ。死人が集まって来てる。」
「はい。」若い男はドアを開けると、すぐにアパートの呼び鈴をならした。
数秒の後、ドアが開いた。若い男は部屋の中へと入った。
その辺を歩き回っていた死者達が緩慢な動きでじりじりと近づいて来ていた。
日ノ内はゴム弾銃を後部座席から取った。
「早くしろ…早くしろ…」日ノ内はブツブツと小声で言った。
助手席の斉藤は警棒を取り出した。
じりじりと近づいてくる死者達に堪らなくなった日ノ内は、ゴム弾銃を発射した。
ゴム弾に当たった死者はその衝撃で倒れた。
そして、その後ろから来る死者達にもゴム弾を見舞った。
だが、倒れた死者達はまたすぐに立ち上がってこちらへと歩いてきた。
「クソ、ゴムの弾じゃ話になんねえな!!」
日ノ内は腰から警棒を取り出し、目の前の死者をめった打ちにした。
その時、アパートの部屋のドアの開く音がした。ようやっと、若い男とその恋人が部屋から出てきたようだった。若い男は周囲を気にしながらアパートの部屋に鍵をかけていた。
「早く、乗れ!!」
その声に二人は、後部座席へと乗り込んでいった。
急いで運転席に戻ろうとした日ノ内の腕を、死者が掴んだ。
「邪魔だ、このやろ!!」と言って掴まれた腕で肘鉄を食らわせ、死者を振りほどいた。
日ノ内は運転席に座ると車を急発進させ、来た道を戻り始めた。
車のライトやゴム弾銃の銃声に誘われたらしい死者達が、先ほど通った道に徐々に集まり出していたようだった。
さすがに狭い小道を死者の群れを跳ね飛ばしながら走る事に抵抗を感じた日ノ内は、「他に道はないか?」と聞いた。
「ありますが…一方通行だし…」
「関係あるかよ…。とにかく国道に出られる道は?」
「じゃあ、アパートの方に戻って下さい。反対側の道を行けば国道に出ます。」
日ノ内は車をバックさせ、方向転換をするとアパートへと戻った。
「ここの道を真っすぐに行けば、国道に出ます。」
「わかった。」
日ノ内は道なりに車を走らせ、国道へと出た。国道には数台の避難民と思われる車が走っていた。
行きかう車の隙を見計らって、日ノ内は車を右折させた。
「一度、俺の家に行く。その後に避難所だ。斉藤君、寄りたい所はあるか?」
「いえ、ないです。」
ハンドルを操りながら、日ノ内はカーラジオを付けた。
「…は、蘇生した暴徒の集団に突破されました。都心では、地方に避難しようとしている避難者でパニックになっています…」
「県内ニュースはやっていないな…」日ノ内は溜息をもらした。
「やっぱり、放送局は全部やられたんですかね?」
斉藤が言った。
「ああ、もしかするとな…。放送局は全部、盛り場に集中してるからな。」
「そうですね…」
斉藤はタバコに火をつけた。
「俺も、タバコ吸っていいですか?」
後部座席の若い男が言った。
「ああ、かまわねえよ。」
若い男もタバコに火をつけた。
「ああ、そうだ…俺は、日ノ内ってんだ。んで、彼は斉藤君だ。君らは?」
「ああ、はい、俺は高内 啓輔っていいます。彼女は、萌っていいます。」
「そうか。まあ、今更だがよろしくな。君は食い物を買いに行ったらしいが、店は開いてたのか?」
「いや、開いてなかったス。開いてなくて、自販機でジュースだけでも買おうって思って、大量買いしてたら、死人に囲まれて…」
「そうか。本当、間一髪だったなあ。たまたま、俺らが通ったから良かったものの、もし俺らが来なかったら、今頃じゃあ君は…」
「マジそうっスね。激、感謝っスよ。マジで」
「まあ、気にすんなよ。」
「日ノ内さんはどこから来たんスか?」
「俺達は、北方面だ。避難車両の警備をしていた。そこに、北方面から死人の大群がやってきて、こっちに逃げてきた。」
「マジすか?すげえッスね。」
「県内ニュースは見たか?」
「いえ、テレビ見てなかったスよ。」
「彼女の方は? 見た?」
「県内ニュースは見てませんでしたぁ。でも、発電所に軍隊を送ったってニュースで言ってましたぁ。」
「あとは?」
「あとぉ? ええ~とぉ。夕方に都心の方では避難場所が満杯になったって…」
「そうか…。まあ、仕方ないか。」
日ノ内は再びにラジオに耳を澄ました。
「…GHO 国際保険機関は、今回発生した現象をSNR 超常性再活性化現象と発表しました。未だ、発生の原因については不明ですが、早急に原因を明らかにし、対策を打ち出す方針です…」
「SNRか…超常性再活性化現象とはね…」
日ノ内は目の前を見た。
第七章 天昇 赤森市 日ノ内 賢志(ヒノウチ ケンシ)
赤森市の繁華街は死人達で埋め尽くされていた。道路の街灯、警察署、消防署、行政機関の建物、テレビ局のそのぐらいの場所にしか明かりが灯っていなかった。
日ノ内はハンドルを握りながら、助手席の斉藤に言った。
「意外と死でる人間ってのは多いもんだな。」
「そうですね。俺もこんなに多いなんて…」
大通りのすぐ横にあるテレビ局にさしかかると、テレビ局の入り口は死人達でいっぱいだった。
その入り口の地面にはキラキラと光るガラスが散乱していた。どうやら、テレビ局は死人達に占領されかかっていたらしかった。
「テレビ局がやれてるな。道理で県内ニュースがやらなかったわけだ。」
「でも、テレビ局なら他にもあるじゃないですか。」
「さあな。もう一つの局もこの街の中だ。同じようなことになってんだろうぜ。ま、たまたま俺達が見なかっただけかも知れねえがね。」
テレビ局を通りすぎ、しばらく進んだ所に数時間前に自分達が集合した警察署が見えてきた。
警察署は電灯が灯ってはいたものの、駐車場には車が一台も止まっていなかった。
日ノ内はちらりとそれを見ると、赤信号を無視して繁華街の外れを目指した。
街の外れに続く橋の前に死人達の人だかりが出来ていた。
その人だかりの中から、血相を変えて逃げ惑う一人の若い男が転がり出てきた。
「何やってんだ!?あいつは…」
日ノ内はアクセルを踏み、その若い男の前に急停車して、ドアロックを解除した。
窓を開け「後ろに早く、乗れ!!」と日ノ内と叫んだ。
若い男は、ドアを開けて後部座席に飛び込んだ。
日ノ内は後部座席のドアが閉まるか閉まらないかのうちに車を発進させた。
車は群がってきた死人達を跳ね飛ばしながら橋を渡って行った。
若い男は息を切らせながら「ありがとうございます。」と言った。
「いや、危なかったな。何してたんだ?こんな時に…」と、そのビジュアル系バンドのメンバーのような格好をした若い男に聞いた。
「逃げようと思って…、でも食い物が家に無かったんで、どこかで買って来ようかと思って…そしたら、あいつらに…」肩で呼吸しながら若い男は言った。
「そうか…俺達も避難所に逃げる所だ。その前に俺に家に行って女房がいるかどうか見てから行く。」
「そうっすか…。俺の…アパートにも寄ってもらっていいですか? 彼女がいるんです。」
「ああ? いいが、どこに行きゃいいんだ?」
「刀屋町です。アパートに彼女がいるんスよ。」
「刀屋町か、俺の家の途中だな。道案内をしてくれや。」
日ノ内は交差点でハンドルを切った。
エイリアスは、集まりだしたスラムの死人達に照準を合わせた。
装甲車の機関銃が再びを火花を散らし始めた。
今ひとつ表情に乏しい死人達は、前から順番になぎ倒されていった。
「こちら、グランド-アルファのデイヴィッド。生存者を発見。」
「デイブか?」
エイリアスは無線を取った。
「はい。生存者は全部で2名。いずれも女性のみ。1人は妊婦で高熱を出して動けません。メディックと担架をお願いします。7階にいます。」
「了解。」
エイリアスは装甲車から衛生兵を呼び出した。2人の衛生兵は簡易担架を持ち、アパートの7階へと急いだ。
「デイブ、今、衛生兵がそっちに行った。医者が必要だな?」
「はい、風邪か病気か分かりませんが、とにかく病院には連れて行かないと。」
「分かった。」
エイリアスは本部に無線を入れた。
「HQ こちらグランド-アルファ。生存者2名を発見。1人は妊娠中の女性、高熱を出している。病院を手配したい。」
「大丈夫だ、大隊戦闘団の基地に医者と設備を確保してある。直接、装甲車で送ってくれ。医者を待機させとく。」
「了解。」
「デイブ、その2人を装甲車に乗せろ。そのまま、戦闘団の基地に送る。医者がいるそうだ。」
「分かりました。」
数分ほどして、アパートから生存者を連れたデイビッド達が出てきた。重症の妊婦を乗せた担架の横で、バーニーが「もう安心だ。世界最強の救急車で鉄壁の病院に送ってやるからな。」と言っていた。
生存者を乗せると、装甲車はすぐ様発進した。
「スーパー8。俺らのケツ持ちを頼むぞ。」
アパートの上空に待機していた攻撃機に無線を入れた。
「了解。」と言って攻撃機のパイロットは機銃の照準を群がる死人達へと向け、その極めて高速に連射される弾丸を集中豪雨のように浴びせかけた。
その鉄鋼の雨に打たれた屍達は一瞬にして真紅の霧の中に姿を消し、血の水溜りをいくつか残しただけだった。
死人の群れがいなくなった所にグランド-アルファ分隊は前進した。攻撃機が取りこぼしてしまった死人を歩兵達は掃討しながら第2小隊とグランド-ブラヴォー分隊のいるポイントへと向かって行った。
最近、SNRのほうが更新しないな、と思っただろう?
まあ、そうでなくてもいいんだが、理由はこれだ
別に誰かに頼まれたわけではないのよ。
ただ、描いただけだ。
モチーフはマグダラのマリアだ。ま、キリストの愛人のほうのマリアだな。
本当はエレキ・ギターにでも描こうかと思ったのよ。でも、致命的なことにギターがなかった。
まあ、俺が書くマグダラのマリアは大体 赤 と 青 で描いてる。それが俺の定番だな。
まあ、俺も配管工の端くれ。
まあ、普段だとこんな感じだ。仕事師に腰袋は欠かせないのだ。
トビマス トビマス
まあ、また俺のの印象深い夢を載せておくかね。
まあ、ロズウェル事件の夢を見たことがある。
まあ、あくまでも夢な…
まず夢の中で、俺は陸軍の中間管理職だった。まあ、軍曹とかその辺りかな?
んで、緊急出動の命令が出たんで隊を率いて、現場に行ったわけだ。
まあ、その現場ってのは半ば砂漠化したような荒野だった。
なんか、ヤバイものが空から降ってきたって話だったのよ。そんで、その様子を見がてら、部外者の侵入を防ぐというのが任務だったわけだ。
部下を引き連れて歩いていると、向こう側の岩山に妙な感じのする連中がいた。部外者を入れるなってな話だったから、部下に命じてそいつらを射殺させたのよ。
そんで、その後そいつらを見に近づいたら、なんとまあ、リトル・グレイとでもいうのかね。そんな奴らだった。
んで、その岩山の斜面に登ったら、UFOが墜落してて、一度、本部に帰還。
本部はテントの中にあって、何も聞かされていなかった俺は、さして親しくも無い空軍のキャリア組みの奴に
「あれは一体、何なのだ?」と聞いたら
「あれは、アレさ。俺の妹が先週末に投げたフリスビーさ」と返事をされて目がさめた。
昨晩はこんな夢をみた。
まず、なぜかは知らんがレイ・チャールズが若かりし姿で現れた。そんで、その弟も現れた。
ま、俺はレイ・チャールズが舞台でピアノを弾くってんで、舞台まで介助することになった。
んで、ピアノには楽譜がない とレイ・チャールズが言い出した。んで、レイ・チャールズの弟がそれに対して
「なってねえな」みたいな感じでそのコンサートのスタッフにブチ切れしてた。
そんで、弟は随分と怒りっぽくなって、まあ、その矛先が俺に向くことは絶対になかったが、今度はスティービー・ワンダーを「あいつは、兄貴の真似をしている」と悪く言い出した。
まあ、確かに彼の眼も見えないみたいだし、歌も歌っている。そりゃあ、同じ境遇のレイ・チャールズに感化や触発された部分もあるだろうが、だからってそれを悪く言うモンなんだろうか?
んで、その後レイ・チャールズは「話にならん」と言ってコンサート会場を後に
正直、姿や格好は若かりし日のレイ・チャールズなのだが、どこか爺むさい…ま、仕方ねえか。おじいちゃんだしな。
んで、そのコンサートを反古にして一日空いた分、三人で魚釣りをすることになった。
「俺の実家のほうにナマズが釣れるトコがあるんだよ。釣ったらお袋に料理してもらおう。」
と、俺に言ってきた。まあ、レイ・チャールズが「右に曲がれ」とか「そこ左折」とか言って案内してくれるので
車の運転手をした。って、いうか、あんた見えてるだろ!?
ま、目的地に辿り着いた。なるほど、アメリカの片田舎。
広大な麦畑が連なる、「あらいぐまラスカル」か「トム・ソーヤ」か…まあ、カントリーといった所か
ちょっと濁った沼がある。まあ、ナマズ釣りにはおあつらえ向きじゃないか。
「あいつは贅沢なやつだ。あいつは専用のトレーラーを持っている。トレーラーの中で演奏できるようになってるんだ。」レイ・チャールズの弟は、まだスティービー・ワンダーの悪口を言ってる。何か恨みでもあったのだろうか?
しまった、釣り道具を忘れた。あきらめようかと考えていたら、
レイ・チャールズが「最近の若いモンは、すぐに道具や機械に頼る。体も使わなければ、頭も使わん」と言い出し、ズボンのすそを上げて沼に入っていった。
さて、どうするのかと思いきや、
ナマズのつかみ取りを始めた。おいおい、体を使ってはいるが、結局それかよ と思っていたら。
俺の心が読めるのか
「手づかみだといって、バカにするもんじゃないぞ。魚だって、捕まりたくないからあれやこれや考えてる。その裏をかくってのは随分と経験と知恵が必要なんだぞ。」
と言ってきた。さっきから説教ばかりだな…
んで、その後、まあ大きなナマズを適当な数とって、レイ・チャールズの実家へ
そこに痩せた中年あたりの女の人が出てきた。まあ、これが彼らのお袋さんなんだろう。
料理には時間を要するので、その間俺は自分の自宅に一度帰ってきた。
そしたら、なんと今は現実、4匹ネコを飼っているのだが、それに付け加えて仔猫が3匹増えてる。
どうやら、ネコは水をかけると背中から毛玉のような「ネコの素」を飛ばすらしく、まあ俺の女房が誤って
三回、ネコに水をかけてしまったらしい。
まあ、いいか。賑やかでいいしな。そこで目が覚めた。
そうさなぁ。
特にこれって変わったことは身近な所ではないんだよ。ほんと…
とりあえず、最近あったことと言えば俺は警備員をやめて、今は空調の取り付け作業員をやってるってところだな。
昨日だったかな、会社の営業許可証みたいなものを見たら「配管工事業」みたいなことを書いていたのよ。
ま、スーパーマリオだな。
でも新築の家にクッパはいねえよ。モンスター・ペアレントならぬ、モンスター・カスタマーに会ったこともない。
でも、おとといだったかな。先輩が仕事終わりにもの凄く妙な臭いのするクーラーを持ってきたのよ。
どうやら、どこかのアパートから取り外ししてきたものを持ってきたわけだ。
ま、詳しくはあえて聞かない事にしたが、大筋の話ではアパートで孤独死があったらしく、気づかれぬままに何日も放置された所のクーラーの取り外しを頼まれたらしい。
とはいえ、こういった業種にはそう言うことも大して珍しい話ではないが…
介護をやってる人なんか結構多いのではないかな?
装甲車はグランド-アルファ分隊を後ろにし、正面に群がるスラムの死人達を機関銃で撃ちながら前へと進んでいった。
前方にはスーパー8の攻撃機が生存者のいるアパートの上空で待機していた。
装甲車の機関銃の銃声がさらに死人を呼び寄せているようだった。
「クソッタレ、群がるんじゃねえ!!」
装甲車の機関銃手は、死人達に横射した。
バーニーはエイリアスに「対地ロケットは使えないんですか?」と聞いた。
「州知事が爆発物の使用を許可してないんだ。街に大きな損害を加えるって理由でな。」
「あのアホ知事はこんな状況になって、まだそんなこと言ってやがんですか?大体にしてこのスラムは随分と放っておかれた所ですよ。死人が歩く以前から…」
「あれさ、権力者達はこういう時もある意味では冷静なのさ。あの知事だって、この状況を綺麗に解決したようにして、次の知事選で有利になりたいとでも考えてたんだろうぜ。どうせ、俺達はお国の捨て駒さ。」
装甲車の銃声が止むと、地上部隊は一気にアパートの入り口まで前進した。
装甲車をメインに歩兵達がアパートの入り口周辺を警戒すると、エイリアスは「バーニー、デイブ、オニール。お前達は救出に行け。」と言った。
デイヴィッド達は、その古くて汚れた安い造りのアパートの中へと入っていった。
「スーパー8。何階だ?」
「7階あたりだな。」
「了解。」
三人はアパートの階段を上がって行った。3階にさしかかった時、階段の踊り場に動きのぎこちない死んだ住人が立ち尽くしていた。
デイヴィッドが「生存者か?」と聞いたら、生気の失せた表情で階段を下りてきた。開いた口から呻き声が聞こえてきた所で、デイヴィッドは死人と判断してそれの頭を撃った。
頭を正面から撃ちぬかれた死人は、階段を転げ落ちてきた。三人はそれを避けると、さらに上の階を目指した。
4階の廊下には2、3人の死人が徘徊していた。オニールがその死人達を撃った。救出した帰りに彼らに襲われないためだった。
6階にたどり着いた時、6階から7階は死人で溢れかえっていた。
「何でこいつらこんな所に群がってやがんだ?」
とバーニーが言った。
「ここに生存者がいるからだろうな。ライオンはシマウマの群れから離れねえっていうしな。」
とオニールは銃を構えた。
アパートの狭い廊下を死人達がこちらに向かってきた。
三人は一斉に正面に向かって、銃を連射した。廊下に詰まった死人達は次々と前に歩いてきた。どうも、彼らは銃というものが一体どんなものだったのかを忘れていたように、躊躇することなく撃たれに進んできた。
廊下の壁や床が彼らの頭から散った血で染められると、そこには動かなくなった死体で埋め尽くされた。
三人は足でその死体を廊下の端に避けると、端の部屋から一つずつノックをした。
「救出隊です。いませんか?」
アパートの壁は薄かったらしく、3つ目のドアをノックした辺りで、そこから2つほど離れたドアから生存者が出てきた。
「こっちよ。」
なかから出てきた女はデイヴィッド達を呼ぶと、血で染められ脇に死体が敷き詰められた廊下を見て、驚いたようだった。
「我々は陸軍の救助隊です。生存者はいませんか?助けに来ました!!」
スピーカーの声がスラムの閑散とした街にこだました。
「聞きつけて集まってくるのは死人だけか…」
とオニールは言った。
デイヴィッドは隊列の側面から来る死んだ住人達の頭部を撃った。
「こちらスーパー8。スラムを低空で一周した。建物の屋上に生存者は見当たらない。」
2機目の攻撃機から地上部隊に無線が入った。
「屋内に隠れているかも知れない。こっちはスピーカーで呼びかけながらスラムを歩いてる。」
「了解。でも、あんたらハチの巣を突いたようだぜ。スラム中の死人があんたらの方に集中して来てる。気をつけろ。」
スーパー8の攻撃機が地上の歩兵隊の頭上を通り過ぎて行った。
「こちらスカウト24。エイリアス、お前さん達の正面、後方、右側から死人達が集まって来てるぜ。今のトコ、左側のほうが敵は薄い。」
「了解。スカウト24。何かあったら、手薄な方から逃げる。そのまま、俺達の退路を見張っててくれ。」
「了解。」
地上部隊はそのままスラム街をさらに進んだ。装甲車はスピーカーでいるかどうか不確かな生存者に呼びかけながら、機関銃を正面の死人達に向けて発射していた。
「全く、頭がおかしなっちまいそうだよ。」
オニールがデイヴィッドに言った。
「死人が歩いているからな。仕方ねえんじゃねえか?」
「世界中がこんな感じなのかねえ?何だか俺は…閉塞感を感じるよ。」
「ああ、まさにな。いつもなら戦線から出ちまえば、普段の生活に戻れるがな。今は、どこに逃げたってこの調子だからな。」
「早く、女房の所に帰りてえよ。」
「まあ、それには死なないでここから出るのが第一条件だな。」
オニールは水筒の水を飲んだ。
「こちらスーパー8。生存者を発見。あんたらから見て大体、2時方向だ。アパートの窓から布切れを振ってるぜ。」
上空の攻撃機がスラムの生存者を発見した。
「こちら、グランド-アルファ。了解した。」
エイリアスはそれに返事をすると、一度足を止め、装甲車の車体を叩いた。
装甲車は前進を止め、上部のハッチから装甲車のリーダーが出てきた。
「聞いての通りだ。救出に行く。俺達と来てくれ。」
「了解です。」そのリーダーは装甲車に戻った。
「HQ、こちらグランド-アルファ。生存者を発見。マシン-01と現場へ向かう。」
「こちらHQ。了解した。」
それを聞くと、エイリアスは、グランド-アルファ分隊と装甲車を引きつれ、生存者の待つアパートへと向かって行った。
まあ、最近は飽きもせずにゾンビの話ばかりしてるなと思って、嫌気が差してるかもしれないが…
とりあえず、今はそれしか考えられねえんだ。
ゾンビ繋がりの話なのだが、日本の小説で「ステーシー」だったか「ステーシーの美術」だっただろうか?
まあ、作者は大槻 ケンヂ っていう元ロック歌手の人間が書いたゾンビ小説がある。
興味があったらどうぞ。ちなみにそれは漫画にもなっていたなあ。長田ノオトっていう漫画家が描いたやつだ。
ま、このステーシーは映画になっているのよ。加藤夏樹だったかが出てたな。ゾンビ役で…
この「ステーシー」は筋肉少女帯というバンド、これは大槻ケンヂのいるバンドなんだが、「ステーシーの美術」っていうアルバムに「再殺部隊」という歌にもなっている。
まあ、ご興味があれば…ね。
今日はMOZ84はとても嫌なことがあった。落ち込むとこんな顔になるのだ。
口角を無理にでも上げて、笑顔を装うのだ。兎角、人の世は生きずらいのだ。
エイリアスは向こう側から走ってくるデイヴィッドとオニールを見つけた。
装甲車はあと1台来ればスラム街に進む事ができる。
「よう、デイブ。どうだった?」
「さっきの牧師のじいさん、スラムの死人達を預かっていたみたいで…。んで、納骨堂に7人、死人がいまして、始末してきました。」
「そうか、ご苦労だな。」
「装甲車はどうですか?」
「あと1台、まだ来ない。」
「そうですか。生きている奴なんているんですかね?」
「さあな。どうだろうな…。無駄足のための犠牲もある程度は覚悟しなきゃな。」
「お上は、スラムをどうするつもりなんです?」
「まあ、まだ決定ではないんだが…。一人も生存者がいなければ、空軍がスラム全域を爆撃することになっている。聞けば、もう空軍基地じゃあ、攻撃機がサーモバリック弾(燃料気化爆弾)を積んで命令待ちの状態だとか言ってたな。結局、軍と州知事との話だろうぜ。俺達はさっさと吹っ飛ばしてしまいたいが、知事としては市民の財産を破壊する真似はしてほしくないっていう感じのな。まあ、どちらにせよ策を講じる時間が遅れれば遅れるほど、状況は不利になってくるぜ。」
「お上には現場は分かりませんから…」
「そうさ。いくらご立派なゴタクを立て並べたって、現場が泥沼なのには変わりはねえよ。」
エイリアスは装甲車の中から取ってきた散弾銃に弾薬を込め始めた。
周りには、来ない装甲車、一向に始まらないスラムへの進撃に苛立ちを隠せない兵士達が待機していた。
まだ20代そこそこの若い兵士はメモ帳にペンで遺言を書いていた。
エイリアスの無線が急に鳴り出した。
「グランド-アルファ。こちらHQ。」
「こちらグランド-アルファ。どうした?」
「マシン-03は急遽、他の現場に急行することになった。スラムにはそこにある装甲車2台で行ってくれ。」
「おいおい、勘弁してくれよ。装甲車が3台あっても足りないくらいだぞ。」
「装甲車に空きが出来たら、すぐにそっちに回す。それまで、我慢してくれ。以上だ。」
といって、無線は切れた。
「チクショウめ」とエイリアスは呟くと、部下達に向かった。
「変更だ。装甲車はこの2台で行くぞ。本部からの命令だ。」
兵士達がざわめいた。
「とりあえず、空から攻撃機とヘリのサポートはある。陣形を崩さずに一塊になって動くぞ。いいか?虚を突かれたら一気になし崩しだ。隊列を絶対に乱すな。」
兵士達は不満そして不安そうに立ち上がると、2台の装甲車の横に隊列を組んだ。
エイリアスは上空の攻撃機に「スラム作戦開始だ。」と無線を入れた。その無線を受けた攻撃機は先立って、スラム街の所定の位置の上空へと向かった。
「よし、こっちも行くぞ。」というエイリアスの号令に歩兵達と装甲車も前へと進み出した。
2台の装甲車と共に歩兵達がスラムへと進んできた。そのエンジン音や大勢の足音に気付いたスラムの死人達が、ゆらゆらとした緩慢な動きと鈍い歩き方で、スラムの大通りに集まって来た。
装甲車の上部に据え付けられた機関銃が、その正面に集まりだした死者の群れに火花を吐き散らした。
大通りを埋め尽くし始めた緩慢なスラムの住人達は、装甲車に近づいた順番に血を霧吹きにしながら、地面へと倒れていった。
「こちら、陸軍の救出隊です。生存者はいませんか!?」
と装甲車のスピーカーが呼びかけた。
そのスピーカーはかなりの範囲に声を響かせたらしく、その声を聞いたスラムの生きていない住民がさらに、歩兵達の方へと引き寄せられていった。
スラム街の路地からも血の気の引いたような住民達がフラフラと歩き出してきた。
歩兵達はその住人達を見つけると、そこに向かって何人かが一斉に銃を発砲した。
上空に漂っていた攻撃機は、地上部隊の進行する先に群をなしている死の集団に機銃の弾を浴びせかけていた。
攻撃機の大きな口径から発射され続けた弾丸はその死人達の体を引き裂いていった。
「こちら、陸軍です。誰かいませんか!?」
その呼びかけに集まって来たのは、緩慢な動きの死人達ばかりであった。
三人は車から降りた。教会の周辺にも死者達が数人歩いていた。
「入ってくれ。」老牧師はデイヴィッド達を教会に案内した。教会の礼拝堂には中年の黒人の女と若い娘が座っていた。
「姪とその娘だよ。」
老牧師はそう言いながら礼拝堂を抜け、裏口を通りすぎ教会の横の墓地へと抜けた。
デイヴィッド達はその墓地を見るなり、一度歩みを止めた。
「大丈夫だ。ここに埋まってるのはみんな火葬されたものだ。」
老牧師は二人に言った。
「わかっちゃいるがな…」とオニールは言った。
「こっちだよ。」
老牧師が手招きした。二人は再び歩き始めた。
三人は墓地の脇にある納骨堂にさしかかった。
「この納骨堂はわしがこの教会に来る前からあった。」
老牧師はポケットから鍵を出すと、納骨堂の扉を開けた。開けた瞬間に吹き込んだ風がカビ臭かった。
「一応、電気は通ってるんだ。」
老牧師が入り口の壁に取り付けられた電灯のスイッチを入れると、そこには地下に通じている階段があった。
「この地下が納骨堂になってるんだ。」
といって老牧師は階段を下りた。二人もそれに続いた。
階段を下り、まるでレンガ造りの下水道のような地下を曲がると、そこには金網で封じられた納骨堂があった。
金網の向こうには老牧師の預かった死者の7人が麻袋を頭から被せられ、その上からロープで縛られていた。
「手荒なことはしたくなかったのだが、何分こうでもしないと手に負えなくてな。」
その麻袋達は呻き声を上げながら、芋虫のようにモゾモゾと動いていた。
「いや、賢い選択だぜ。」
デイヴィッドは言った。
「ちょっと、待っててくれ。」
老牧師は小さな手帳ほどの革で装丁された本を取り出し、金網の前に立った。
「御国の王、我らが主よ。この哀れなる者達の魂を御手に委ねます。彼らに常しえの命あらん…」
老牧師は一瞬、悩んだようだった。
「彼らが永に憩わんことを。主の御名において、アーメン」
と言って十字を切った。
老牧師は暫く沈黙すると、デイヴィッド達に向き直った。
「さあ、後を頼むよ。君達の仕事をしてくれ…」
「ああ、牧師さん。あんたは上にいっててくれ。」オニールはそういいながら、銃の弾倉を取り替えた。
老牧師は金網の南京錠を開けると、納骨堂を出て行った。
「デイブ、OBは出すなよ。」
オニールはそういうと、芋虫のように動く麻袋を見下ろした。
そして、照準を定めトリガーを引いた。
デイヴィッドも無言で自分の足元で蠢く麻袋達に銃弾を貫かせていった。
オニールは最後の7人目の麻袋をおよそ頭と思しき部分に狙いを定めると、「お互い、運がなかったな。」と言って銃弾を発射した。
「さ、行こうぜ。デイブ。」
「ああ…」
二人は納骨堂から出ると、墓地を通り過ぎて教会の礼拝堂に入った。
そこでは老牧師と黒人の女、そしてその娘が荷物の前に立っていた。
「床に多少、穴を開けちまったかも知れないが、壁には当たらないようにしておいたぜ。後は、落ち着いたら死体回収に誰かが来るだろう。」
「すまん。世話をかけた…。」
老牧師はうつむいた。
「これから逃げるのか?」
デイヴィッドか聞いた。
「そのつもりだ。」
「だったら、陸軍の基地に逃げな。陸軍第14大隊戦闘団の基地だ。あそこは周りが防護壁で囲われているし、武装した兵隊達がしっかり守っているしな。」
「ああ、ありがとう。あんたらは?これから、どうする?」
「これから俺達はスラムだよ。生存者がいるのかいないのか、それをしらみつぶしに確認しに行くんだよ。」
「なんと…。」
「じゃあな。牧師さん。充分、気をつけて逃げるんだ。」
「ありがとう。神のご加護を。」
デイヴィッド達は教会を後にした。
まあ、最近ちょいと忙しくてなあ、SNRは更新できなかったなあ。
今週辺りから、更新するかね。
また、まあ登場人物について触れておくかな。
サイラス
ま、ラスタフィカで名前だけ出てきた麻薬王の名前だな。これは「ウォリアーズ」っていう昔の映画の登場人物からとった。この映画は漫画「バナナ・フィッシュ」やマイケル・ジャクソンの「ビート・イット」「バッド」のファンなら結構楽しめる映画だと思うが。内容的には、ブロンクスだったかの不良グループの話。「ベースボール・フューリーズ」が出てくるのはこの映画。
サイゼックス-L
これは、俺が考えた名前。英語のスペルにすると「SIZEX-L」となるのだが、これは実は「SIZE-XL」つまりは「サイズがXL」ということ。転じて、「ビッグな男」ってなもんだ。
ま、MOZ84の心の中では彼は、名前とは裏腹な細マッチョな黒人で髪型はブレイズ。サングラスをかけていて、白いスーツを着ているのだ。まあ、本編では名前しか出てこないけれど。ラスタフィカの麻薬戦争の張本人。
バロン
本当はプリンスにしたかったのだけれど、それではあまりにもパープル・レインなので「王子様」ではなく「男爵」にした。エレキギターが趣味の麻薬男爵。紫のスーツがよく似合う。
デイヴィッド
この人は口数の少ないタフガイをイメージしている。元々はホワイト・トラッシュ、つまりは貧困層の白人。実はこの方は出身は不明で、元々は孤児だったのだ。衣食住に困り、軍隊に入隊したのだ。30代中頃の男性ですな。
まあ、この方の過去について言えば、子供の時は孤児院にはいたものの脱走の常習犯。10代の始め頃に同い年で未成年の売春婦をしていた女の子が恋人だったのだが、彼が軍隊にいる間に麻薬中毒で死んでしまったのだ。
そしてまあ、20代の時に婚約した女性がいたが、成王の核攻撃で失ってしまう。元々他人に心を許さない性格が益々偏屈になってしまった部分もある。
彼のお兄さんもいるの。でも、このお兄さんは除隊後に犯罪を働いて刑務所にいるのだ。
エイリアス
まあ、名前を聞いてピンと来る人間もいるだろう。映画「プラトーン」に出てきた登場人物「エイリアス軍曹」から取った。
老牧師
まあ、これは風みたいな存在なのだが。一応ね。彼の名前はブラウンとしておくか。ジェームス・ブラウンから取るとしよう。スラムの近くに教会を構える貧乏牧師。大体のスラムの住人の結婚式や葬式は、彼が執り行うのだ。
本編でも書いてあるが、ゾンビになったスラムの住人を預かった。
まあ、この人もまたスラムの出身で兄弟は結構多いのよ。彼もそこそこの不良青年で、随分と周囲に迷惑をかけたクチなのよ。なかなかに長続きしない性分で、色んな職を転々としてきた。まあ、大概は雇用主とケンカして止めるパターンが多かったのだがね。そんである日、神の啓示を受けたらしくそれがきっかけとなって、信仰の道にはいったのだが、その修行時代も周囲とは折り合いが非常に悪かった。紆余曲折の末、今の貧乏教会に落ち着いたワケだ。それで歳を重ねるごとに性格も丸くなったのだ。
まあ、例の注文されていた絵が完成した。
まま、年増な感じになったマリアといった所か…
まあ、出来ればの注文の有無に関わらず、これからも個人的にこの手の絵を描いて、在庫として置いておこうかね。
ああ、やっぱりルネッサンス期の絵の描き方を勉強せねばならんな。
まあ、一応 半分くらいは今日で終わった。まあ、良ければ明日の昼間に完成と行きたい所だな。
とにかく、まあ、主題となるマリアの方は完成した。
絵の具を塗ってみたら、比較的年配な顔のマリアになったが、まあいいか。
人生経験豊富な熟女ってな所に救いがあるかも知れんしな。
今日はSNRはちょいと無理だな。すまんな。
今日は、そうだな…
まず、頼まれた絵を先に進めてから、夜にSNRの更新と行こうかね。
まあ、よろしくな。
溜め込んでいた仕事をそろそろ片付けなければならないな。
先週の日曜日から昨日までにシャツのデザインを2つを終わらせた。
まあ、これは 高校生や中学生のハンドボールの大会や部活に使うシャツで、盛岡の中小企業の被服メーカーさんから頂戴した仕事なのだが…
さあて、これからまた絵の具を使って絵を描かなければならないのだが、ちょっとどうしようか随分と悩んでいる。
絵を所望の人は、どうやらその絵を祈る対象として使いたいようだ。
マリア様の絵か…?・
デイヴィッド達のアルファ分隊、ブラヴォー分隊の第1歩兵小隊は、機械化部隊のマシン-01と03の装甲車を待っていた。
第2歩兵小隊のチャーリー分隊、デルタ分隊は第1歩兵小隊と合流するため、市街地を死人を掃討しながら移動中であった。
「スカウト-24、こちらグランド-アルファ。そっちはどうだ?」
エイリアスはスラム街の上空を偵察しているヘリコプターを呼び出した。
「こちらスカウト-24、スラムも死人だらけだぜ。半端ねえ。屋上にもウロついてやがる。」
「そうか、こっちは第2小隊と装甲車待ちだ。着き次第、スラムに入る。攻撃機も来るが、そっちも空から支援してくれ。」
「了解、お前さん達の最後は俺が上から看取ってやるから安心しろ。」
「そっちこそ、低空飛行しすぎて俺達の上に落ちてくるなよ。」
「了解、イエス・サー」
エイリアスは無線を切った。
混沌とした街の奥から一台の古い年式の乗用車がゆっくりと走って来た。そこを救助活動に忙しい消防士達が道路を横断しようとしていたのでその車は一旦停止し、消防士達を横断させた。
その古めかしいエンジン音にデイヴィッド達は目をやった。
その運転手はデイヴィッド達を見ると、車を歩兵隊が待機するマンションの前へと停車させた。
中から、白髪の黒人の老人が降りてきた。その老人は全身黒ずくめの、スラム街の近くに建つ貧乏教会の牧師であった。
その老牧師はデイヴィッドと目が会うと、急ぎ足で近づいて「頼みがある」と言った。
「どうした?」デイヴィッドは老牧師に近づいた。
「わしも姪を連れて逃げるところなんだが、どうにも捨て置けんことがあってな。」
「何だ?」
「車に乗ってくれ。」
デイヴィッドはエイリアスの目を見た。エイリアスは頷くと横にいた兵士を向き「オニール、お前も行け」と言った。
二人は、老牧師の車の後部座席に乗った。老牧師は運転席に座り、車を発進させた。
「一体、何があった?」
オニールはハンドルを操る老牧師に聞いた。
「先月の話だ。死体が生き返り始めてまだ間もない頃、貧民街の住人がわしの所に来た。」
「んで?」
「その住人はわしに自分達の息子を預けに来たのだ。」
「その息子がどうした?」
「その息子はこの街のゴロツキだったのだが、どうやら仲間内でモメたらしくてな。銃で撃たれたらしい。」
「そいつが、化物になったってわけかい?」
「そうなんだ。結局、死んで生き返った息子は人が違ったように暴れるて手が付けられなかったらしく、だからと言って手に掛けることも親としては出来なかったようでな。だからと言って警察に連れて行かれたくもなかった。」
「それで、じいさんの所に預けようってことになったんだな。」
「ああ、そうだ。だが…」
「何だ?」
「預けに来たのはそれだけではなかった。その住人からひそかに聞いた連中も、わしの所に預けに来た。わしも神の元から返された者達を再び死に追いやることも出来なかったし、それに…わしも人の親だった経験がある。子供や家族を収容所に送られたい人間がどこにいようか…」
「んで、じいさんの教会は死人だらけになったってコトか?」
「面目ない…」
老牧師はハンドルを握りながら少しうつむいた。
「まあ、話は分かった。牧師さん、特別あんたが悪いわけじゃないだろうぜ。その時、あんたはギリギリの所でそういう選択しか出来なかったってことさ。こんな事、誰にも想像できなかった。」
デイヴィッドは言った。
「大洪水、硫黄の業火、イナゴ…黙示録は近づいた。主は時として手酷い仕打ちをなさる…」
「子供の時、さんざん婆さんに読まされたよ。罪ある者は地獄へ、善なる者は永遠に…これじゃあ、あべこべみてえだな。悪人か善人か知れたモンじゃないが、とにかく生き返って歩きまくってる。まさか、神が与えたもうた永遠の生ってのは、これのことじゃあ、あるまいな…」
「全ては神の御心。だが、わしは生き返って人を喰うような永遠は耐えられん…」
車は老牧師の教会の前に着いた。
マンションから出たデイヴィッドは辺りを見回した。
街では軍人の他に警官や消防士達も生存者の救出活動を行っていた。その上空では、軍の攻撃機とヘリコプターが生存者の空からのために辺りを飛び回っていた。
生存者の数に関しては、その殆どが未確認であった。一体、どこにどれだけの生存者が残っているのか、分からないままに決行された救出作戦だった。
彼らが目指すのはこの市で最も死人が大量発生したスラム街だった。途中で生存者を救出しながら、スラムの生存者を捜索するのが任務だった。
デイヴィッドはサブマシンガンの透明な弾倉を見て、残弾数を確認した。
その横ではエイリアスが無線をかけていた。
「戦車をこちらに都合できそうですか?」
「いや、無理だ。全部出払って、まだ一台もそっちには回せない。」
「装甲車は?」
「それもまだ空き無しだ。」
「了解。」
エイリアスは溜息をつき、横にいたデイヴィッドに気付いた。
「デイブ、状況は最悪だ…」
「今まで、好条件な所なんてありませんよ。最悪な所に行くのが俺達ですから…」
「まあな、命令されれば、例え天国にでも突撃するのが仕事だからな。しかし余裕だな、お前は」
「慣れただけです。」
と言ってデイヴィッドは静かに笑った。
エイリアスはタバコの灰を落とすと、「問題はスラムだ。」と言った。
スラム街はこのニューファスト市の東側に位置する貧民街で、この市の歩く死人達はここを起点として大量発生し始めたのだった。
警官ですら街の奥深くまではパトロールには来ない程の犯罪率の高さで、それ故に強盗や殺人、行き倒れも多く、道端に名も知らぬ誰かの死体が倒れているのも日常茶飯事な地域であった。
その適正に処理されなかった死体が動き出し、この市の混乱を招く一端となった。
歩く死人達は次々とスラムの住人達を襲い、それによってまた新たな死人が発生し、ついにはスラム街のほぼ全域が死人街という極めて危険な地域と化してしまったのだ。
「戦車なし、装甲車3台、攻撃機2機 まあ、丸腰でネクロポリス(死都や廃墟、「死んだ街」)に突撃するよりはマシか…」
「ニュースでしか見ていませんが、あそこに生存者がいますかね?」
とデイヴィッドはいぶかしんだ。
「そこがお上の考えさ。一応、軍隊を送って、やるだけのことはしたっていう世間へのパフォーマンスさ。まだ、生きている奴がいるか、死人だけか正式には確認が取れていないしな。俺達の主戦場は元々スラムだ。」
「みんな生きて帰られますかね?」
「…どうだろうな…」
エイリアスは自分の頭の上を通りすぎて行ったヘリコプターを眺めた。
「リヴァイデも、どうなっちまうんだか…かつてのメトロポリスがネクロポリスに…か」
しばし二人は無言のまま立ち尽くした。
「デイブ、お前は生き残れるか?」とエイリアスが聞いた。
「さあ、どうでしょうね。でも、今まで死んだ経験がありませんので…」
エイリアスはふっと笑った。