以前もこのブログで同じような試みを行った。
ほんとうは、これをモチーフにしたキャラクターでも描こうかと思っていたのだが、
それは明日以降から着手しようかね。
そんで、今回はこの歌からAtomic
町に空襲警報がけたたましく鳴り響いた。町の人間たちは今回は本当に来たかと思った。かねてからここ数日間、核戦争への突入が懸念されてはいたが、町はいたって平常運転といったところであった。可能性はあるかもしれないが、世界はそこまで理性を失ってなどいないし、この懸念はかなりのとりこし苦労に終わり、平穏な毎日続くはずだ。この国の人たちの多くがそのように考えていた。
核の炎に人類全てが焼かれるとするならば、逆に万に一つ、それが起こらず何も変わらぬ毎日が続くことへの備えと考えれば、それはある意味で正しかったかもしれない。
だが、今回ばかりはそうはいかないようであった。この国の人たちが思うほど、世界というのは理性的ではなかったし、慎重ではなかった。いや、本当は理性的だったかもしれない。事を始めようとしている上層部は、この事態において冷静なのかもしれない。ともすれば、今回のこのことは冷静に決断されたことかもしれない。彼らの中では通用する彼らの論理によって。
自分達の社会の上層では一体どんなやり取りがなされているのか、知る由もない町の人間たちとって、この切迫した状況を右往左往するするしかないの状況が、目の前の現実であった。
パニックに陥った町の中を十数人の幼い子供たちを引き連れて走り回る女がいた。子供たちはこの町の小学校の生徒たちであった。核戦争の危険が差し迫っていながら、学校は例によって休校することがなかったのだ。
学校側は生徒たちの親に連絡を取り、迎えに来させるように教師たちに指示したのだが、教師の指示に従わずに十数人の生徒が学校を飛び出したのだった。親が迎えに来る頃には、すでに爆風が吹き荒れ、キノコ型の雲も上がってることだろうに。
女はこの学校の新任の教師であった。彼らを追って、学校の敷地内を出たところで核ミサイルの発射予想時間が町内に放送された。
学校に戻り、生徒たちの親たちを待っていられる時間などあるわけがなかった。
彼女のはこのままこの十数人の生徒たちを連れて、核シェルターに避難することに決めた。このままでは恐らく一人も助からない。
迎撃ミサイルか何かは彼女には分からなかったが、ミサイルの着弾もなく無事に済めば、それはそれだ。
とにかく、この目の前の十数人を何とか助けなければ、そのように考えた。
十数人の生徒の連れて町を走っていると、野太い男の怒鳴りが呼び止めた。
彼女はその方を向くと、男がシェルターの入り口で急げととばかりに手招きしている。
彼女は生徒たちとそのシェルターへと駆け込んでいった。男は彼女と生徒が入ったのを確認すると、シェルターの扉をぴったりと閉めて内側からロックをした。
彼女は男にまだ町には人がいることを話した。男はそんなことは分かっていると答えた。
彼女はミサイルが発射されるまでの僅かな時間でも、より多くの人間をこのシェルターの中に入れるべきだと食ってかかった。男はそれは現実的ではないと一蹴した。付け加えて、もし彼女が沢山の子供を連れず一人で走り回っていたのなら、そもそもシェルターに招きいれなかった。入ろうとしたら、一撃で刺し殺していたと刃物を見せつけた。
彼女は何がどう現実的でないのか、男に問いただした。
男は彼女にミサイルの着弾後、シェルターの外が通常の環境に戻るまで、どのくらいかかるか知っているかを尋ね返した。彼女にはわからなかった。男にも分からなかった。だからこそ、男はこの広いシェルターにこの人数だけを入れて閉鎖したのだといった。人数が増えれば備蓄された食料や医薬品の数も不安であったし、人数が多くなれば消費の割合も増えるからだ。
そして、いつになったら外に出られるのか不確定であったからだ。
男はこの状況でかなり冷静で冷徹であった。顔つきもどこか人好きしないそんな感じであった。
ミサイルの発射がラジオから知らされた。
一分足らずで、この国のそこかしこに核弾頭が着弾したようだった。中央都市の放送局からこのラジオに届いていた臨時ニュースもノイズ音とともに途切れた。中央都市に着弾したらしかった。
男はシェルター内のテレビを付けた。直撃を免れた地方の放送局のチャンネルは臨時ニュースを流していたようだった。
女は男に半ば憎しみの目を向けながら沈黙していた。生徒たちは家族や他の生徒たちがどうなったのか口々に騒ぎ始め、中には泣き出すものさえいた。
男は別な部屋に移ると、地面に置かれたリュックサックから中身を出した。このリュックサックは彼のものではなかった。これはこのシェルターを開放し、発電機を稼働させた行政の人間のものだった。
男はふき取り忘れていた血が手についていることに気づいた。リュックサックの中にあったタオルでその血を入念にふき取っていた。この状況下では生徒はおろか彼女も、このシェルターを開けたのが一体誰だったのか気づく由もないだろう。
ここを開けて避難生活の準備をした職員の頭数よりも、子供の数のほうが多かった。男はつり銭はあまる程だと考えた。
数日間、子供たちは不安や悲しさ、寂しさ、過度なストレスを抱える日々を過ごすこととなったが、女が何とか子供たちを落ち着かせた。男はシェルター内の機械を使い方を調べたり、食料や医薬品などの種類と数を数えていた。
たまに男は生徒たちを呼びつけ、倉庫の物資の把握を手伝わせた。いずれ、これらの仕事をお前らが率先してやることになるのだと言い聞かせながら。
女は子供たちに勉強を教えたり、母親のような役目を務めていたが、彼女もストレスのせいかある晩、吐血した。男はシェルターの医療対応マニュアルを読みながら、治療にあたろうと努力したが医学知識も薬学もない彼には、彼女を助けることが出来なかった。
生徒たちは義理の母親を亡くした悲しみに暮れていたが、シェルター内の火葬装置で彼女の遺体を焼いたあとで男は彼女の仕事を引き継ぎ、子供たちの教育に勤しんだ。彼女の死から彼は焦っていた。急いで子供達に病の前兆と予防を教え込まなくてはならないと。そして、男は子供達の体の状態には常に気を配っていた。
それから、数年。子供達は10代の半ば頃まで成長していた。途中数名の生徒が病によってこの世を去ったが、シェルター内で見つけた農業セットでやり始めた食料の生産が順調に進み、詳しいメカニズムまでは分からないが医療的な対応の知識や技術も身についていた。
男は彼らに教えるべきことがもはやないと安堵を感じると、力を失ったように床に倒れこんだ。男はベッドにふせた。子供達は治療をするように男を説得するが、男は有限な医薬品は自分たちのために使えの一点張りで、彼自身への治療を許さなかった。
彼は若い彼らの見守る中、息を引き取った。
シェルターの中には、彼らだけとなった。旧時代を知る世代は男の死をもって終わりとなり、新たな世代の者たちが生き残った。
さて、彼らはどんな未来を創り出していくのだろう。
ほんとうは、これをモチーフにしたキャラクターでも描こうかと思っていたのだが、
それは明日以降から着手しようかね。
そんで、今回はこの歌からAtomic
町に空襲警報がけたたましく鳴り響いた。町の人間たちは今回は本当に来たかと思った。かねてからここ数日間、核戦争への突入が懸念されてはいたが、町はいたって平常運転といったところであった。可能性はあるかもしれないが、世界はそこまで理性を失ってなどいないし、この懸念はかなりのとりこし苦労に終わり、平穏な毎日続くはずだ。この国の人たちの多くがそのように考えていた。
核の炎に人類全てが焼かれるとするならば、逆に万に一つ、それが起こらず何も変わらぬ毎日が続くことへの備えと考えれば、それはある意味で正しかったかもしれない。
だが、今回ばかりはそうはいかないようであった。この国の人たちが思うほど、世界というのは理性的ではなかったし、慎重ではなかった。いや、本当は理性的だったかもしれない。事を始めようとしている上層部は、この事態において冷静なのかもしれない。ともすれば、今回のこのことは冷静に決断されたことかもしれない。彼らの中では通用する彼らの論理によって。
自分達の社会の上層では一体どんなやり取りがなされているのか、知る由もない町の人間たちとって、この切迫した状況を右往左往するするしかないの状況が、目の前の現実であった。
パニックに陥った町の中を十数人の幼い子供たちを引き連れて走り回る女がいた。子供たちはこの町の小学校の生徒たちであった。核戦争の危険が差し迫っていながら、学校は例によって休校することがなかったのだ。
学校側は生徒たちの親に連絡を取り、迎えに来させるように教師たちに指示したのだが、教師の指示に従わずに十数人の生徒が学校を飛び出したのだった。親が迎えに来る頃には、すでに爆風が吹き荒れ、キノコ型の雲も上がってることだろうに。
女はこの学校の新任の教師であった。彼らを追って、学校の敷地内を出たところで核ミサイルの発射予想時間が町内に放送された。
学校に戻り、生徒たちの親たちを待っていられる時間などあるわけがなかった。
彼女のはこのままこの十数人の生徒たちを連れて、核シェルターに避難することに決めた。このままでは恐らく一人も助からない。
迎撃ミサイルか何かは彼女には分からなかったが、ミサイルの着弾もなく無事に済めば、それはそれだ。
とにかく、この目の前の十数人を何とか助けなければ、そのように考えた。
十数人の生徒の連れて町を走っていると、野太い男の怒鳴りが呼び止めた。
彼女はその方を向くと、男がシェルターの入り口で急げととばかりに手招きしている。
彼女は生徒たちとそのシェルターへと駆け込んでいった。男は彼女と生徒が入ったのを確認すると、シェルターの扉をぴったりと閉めて内側からロックをした。
彼女は男にまだ町には人がいることを話した。男はそんなことは分かっていると答えた。
彼女はミサイルが発射されるまでの僅かな時間でも、より多くの人間をこのシェルターの中に入れるべきだと食ってかかった。男はそれは現実的ではないと一蹴した。付け加えて、もし彼女が沢山の子供を連れず一人で走り回っていたのなら、そもそもシェルターに招きいれなかった。入ろうとしたら、一撃で刺し殺していたと刃物を見せつけた。
彼女は何がどう現実的でないのか、男に問いただした。
男は彼女にミサイルの着弾後、シェルターの外が通常の環境に戻るまで、どのくらいかかるか知っているかを尋ね返した。彼女にはわからなかった。男にも分からなかった。だからこそ、男はこの広いシェルターにこの人数だけを入れて閉鎖したのだといった。人数が増えれば備蓄された食料や医薬品の数も不安であったし、人数が多くなれば消費の割合も増えるからだ。
そして、いつになったら外に出られるのか不確定であったからだ。
男はこの状況でかなり冷静で冷徹であった。顔つきもどこか人好きしないそんな感じであった。
ミサイルの発射がラジオから知らされた。
一分足らずで、この国のそこかしこに核弾頭が着弾したようだった。中央都市の放送局からこのラジオに届いていた臨時ニュースもノイズ音とともに途切れた。中央都市に着弾したらしかった。
男はシェルター内のテレビを付けた。直撃を免れた地方の放送局のチャンネルは臨時ニュースを流していたようだった。
女は男に半ば憎しみの目を向けながら沈黙していた。生徒たちは家族や他の生徒たちがどうなったのか口々に騒ぎ始め、中には泣き出すものさえいた。
男は別な部屋に移ると、地面に置かれたリュックサックから中身を出した。このリュックサックは彼のものではなかった。これはこのシェルターを開放し、発電機を稼働させた行政の人間のものだった。
男はふき取り忘れていた血が手についていることに気づいた。リュックサックの中にあったタオルでその血を入念にふき取っていた。この状況下では生徒はおろか彼女も、このシェルターを開けたのが一体誰だったのか気づく由もないだろう。
ここを開けて避難生活の準備をした職員の頭数よりも、子供の数のほうが多かった。男はつり銭はあまる程だと考えた。
数日間、子供たちは不安や悲しさ、寂しさ、過度なストレスを抱える日々を過ごすこととなったが、女が何とか子供たちを落ち着かせた。男はシェルター内の機械を使い方を調べたり、食料や医薬品などの種類と数を数えていた。
たまに男は生徒たちを呼びつけ、倉庫の物資の把握を手伝わせた。いずれ、これらの仕事をお前らが率先してやることになるのだと言い聞かせながら。
女は子供たちに勉強を教えたり、母親のような役目を務めていたが、彼女もストレスのせいかある晩、吐血した。男はシェルターの医療対応マニュアルを読みながら、治療にあたろうと努力したが医学知識も薬学もない彼には、彼女を助けることが出来なかった。
生徒たちは義理の母親を亡くした悲しみに暮れていたが、シェルター内の火葬装置で彼女の遺体を焼いたあとで男は彼女の仕事を引き継ぎ、子供たちの教育に勤しんだ。彼女の死から彼は焦っていた。急いで子供達に病の前兆と予防を教え込まなくてはならないと。そして、男は子供達の体の状態には常に気を配っていた。
それから、数年。子供達は10代の半ば頃まで成長していた。途中数名の生徒が病によってこの世を去ったが、シェルター内で見つけた農業セットでやり始めた食料の生産が順調に進み、詳しいメカニズムまでは分からないが医療的な対応の知識や技術も身についていた。
男は彼らに教えるべきことがもはやないと安堵を感じると、力を失ったように床に倒れこんだ。男はベッドにふせた。子供達は治療をするように男を説得するが、男は有限な医薬品は自分たちのために使えの一点張りで、彼自身への治療を許さなかった。
彼は若い彼らの見守る中、息を引き取った。
シェルターの中には、彼らだけとなった。旧時代を知る世代は男の死をもって終わりとなり、新たな世代の者たちが生き残った。
さて、彼らはどんな未来を創り出していくのだろう。