遠山和宏

無実の叫び　袴田事件

検察は控訴を断念し、無罪を受け入れる決断を　袴田さん再審無罪判決

　4人をあやめたとして逮捕された袴田巌さんがその疑いを晴らすまで、実に58年もの月日を要した。　検察が立ち止まる機会は何度もあった。まず「5点の衣類」が逮捕から約1年後に発見されたタイミング。袴田さんは犯行着衣をパジャマと「自白」していた。にもかかわらず、検察はこの矛盾を無視し、5点の衣類が犯行着衣

記者の目

「性別変更手術」違憲の最高裁決定　性的少数者、向き合う契機に＝遠山和宏（東京社会部）

　最高裁大法廷が10月、生殖機能を無くす手術をしなければ性別変更を認めない性同一性障害特例法の生殖不能要件を違憲・無効とする決定を出した。最高裁が法令を違憲とするのは史上12例目で、人権救済の一歩となった。だが、当事者の意思に反して手術が必要なケースは依然として残る。この司法判断をどう受け止めればよ

選挙違反で当選無効　最高裁「議員報酬に全額返還義務」と初判断

　公職選挙法違反（買収）で有罪が確定して当選無効となった元大阪市議に支払われた報酬や手当、活動費の返還が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷（林道晴裁判長）は12日、全額返還義務があるとの初判断を示した。その上で、元市議に全額分となる約1410万円の返還を命じた。1、2審は一部返還しか認めて

性的少数者への中傷「生の声聞いて」　極端な言説、放たれる日本

　1990年2月、東京都が管理する宿泊施設「青年の家」（東京都府中市）で、同性愛者の団体「動くゲイとレズビアンの会」（通称・アカー）が1泊2日の合宿を開いた。10～20代を中心とする男性18人が参加し、同性愛への偏見を解消するための勉強会が目的だった。　「ホモの集団だ」「オカマがいる」――。同宿のサ

男女じゃなくても「大切な人」　司法に影響?　変わる若者の意識

　性同一性障害特例法の生殖不能手術要件を違憲とした25日の最高裁大法廷決定は、性的少数者を取り巻く社会状況の変化や手術を事実上強制する法律の過酷さを重視し、憲法判断を変更した。国会は特例法の見直しを迫られるが、議論の停滞も予想される。　◇ICUの両親見て不安に「私は…」　東京都内に住む会社員、一橋穂

性別変更、なお残る壁　生殖不能手術は違憲、外観要件は差し戻し

　性同一性障害特例法の生殖不能手術要件を違憲とした25日の最高裁大法廷決定は、性的少数者を取り巻く社会状況の変化や手術を事実上強制する法律の過酷さを重視し、憲法判断を変更した。国会は特例法の見直しを迫られるが、議論の停滞も予想される。　◇申立人側、高揚感無く　「予想外の結果で大変驚いています。性別変

性的少数者に目を配り始めた司法　最高裁、特例法を違憲判断

　性同一性障害特例法を巡る25日の最高裁大法廷決定は、性的少数者（LGBTなど）の権利に関する法律を初めて違憲と判断した。特例法の成立から20年。性的少数者を巡る社会的状況が変化する中、司法は多数者の陰に埋もれた少数者の存在に目を配り始めた。　憲法は、法令が憲法に違反していないかを審査する権限（違憲

性同一性障害特例法の子無し要件　過去に「合憲」も撤廃求める声強く

　生殖機能を無くす手術を性別変更の条件とする性同一性障害特例法の要件の憲法適合性が争われた家事審判で、最高裁大法廷が生殖不能手術要件は違憲とする決定を出した。特例法は申立人側が違憲だと訴えた二つの要件の他に、18歳以上▽現在結婚していない▽未成年の子どもがいない――の3要件を規定している。非婚と子無

「性別変更に手術必須」の特例法　25日に憲法判断　違憲なら初

　生殖機能を無くす手術を性別変更の条件とする性同一性障害特例法の要件が個人の尊重を定めた憲法13条などに違反するかが争われた家事審判で、最高裁大法廷（裁判長・戸倉三郎長官）は25日、決定で憲法判断を示す。違憲となれば生殖不能手術要件は無効となり、国会は特例法の見直しを迫られる。性的少数者（LGBTな

記者のこだわり

「違憲状態」の真意は?　同性婚訴訟で見えた裁判官のためらい

　それは弁護団にとっても予想外の判決だった。同性カップルの婚姻を認めていない現行制度の違憲性が争われている同性婚訴訟で、これまでに出た5地裁判決のうち2件は「違憲状態」にあるとして、白黒を決めなかった。違憲状態は、選挙区間の1票の格差を巡る訴訟で使われてきた法的判断で、これまで他の訴訟では持ち出され

「供述調書至上主義」特捜検察の悪癖、今も　元市議に利益誘導か

　参院選広島選挙区を舞台にした元法相の河井克行元衆院議員（60）らによる大規模買収事件で、東京地検特捜部の検事が、元広島市議への不当な取り調べで捜査に有利な供述を引き出した疑いが発覚した。　　2010年9月に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受け、検察当局は捜査対象から強引に供述を得ようとする

経産省トイレ利用制限訴訟　性同一性障害の原告逆転勝訴　最高裁

「正しい理解広がる判決を」願う性的少数者　経産省トイレ制限訴訟

　女性トイレの利用を制限された性同一性障害の経済産業省職員が国に処遇改善を求めた訴訟の上告審で、最高裁は11日に判決を言い渡す。性的少数者の職場環境に最高裁が判断を示すのは初めて。多数者とともに仕事をする中で苦悩を抱え、時に傷つく性的少数者は少なくない。「正しい理解が広がる判決を」。当事者たちは心か

見通し良い道路、車体損傷激しく　目撃者「まさか」　北海道バス事故

　北海道八雲町で道内各地を結ぶ都市間バスとトラックが衝突し、5人が死亡、多数の負傷者が出た。仕事や観光など幅広い目的で利用され、住民の足となっている交通手段が関連した事故。目撃した人は「まさかこんな大事故が」と驚きの声を上げ、多くの命が失われたことにバス会社の担当者は肩を落とした。　現場は札幌市と函

高速バス乗客が犠牲、各地で相次ぐ重大事故　北海道で5人死亡

　18日正午ごろに北海道八雲町野田生の国道5号で高速バスとトラックが正面衝突した事故で、道警は計5人の死亡を確認したと発表した。多くの乗客らが犠牲となるバスが絡んだ事故はこれまでも各地で起きている。　2012年4月、群馬県藤岡市の関越自動車道でツアーバスが防音壁に衝突し、乗客7人が死亡、38人が重軽

最高裁の消極姿勢が全国の「風土」に　記録保存に「外部の目」導入を

　最高裁が25日に公表した重大少年事件などの記録廃棄を調査した報告書は、記録の保存に対する最高裁自身の消極的な姿勢が全国の裁判所に浸透していたことを強く自戒する内容となった。海外では、記録の保存に当たって「外部の目」が取り入れられており、日本でも同様の仕組みの構築が求められる。　◇特別保存は形骸化　

自傷、適合手術、副作用…　トランスジェンダーが性を変えるまで

　23歳の時、女性から男性に性別変更するため卵巣を摘出した。生殖機能を無くさなければ性別変更を認めないと性同一性障害特例法が定めているためだ。それから約10年。「あの時、手術をすべきだったのだろうか」と後悔が消えない。出生時の戸籍の性と自認する性が一致しないことに苦しんできた一人のトランスジェンダー

「原告6連敗」からの逆襲　旧優生保護法訴訟で崩れた“時の壁”

　旧優生保護法下で不妊・中絶手術を強制されたとして被害者が国に賠償を求めた訴訟は、序盤の「原告6連敗」の流れが一変し、各地で国に賠償を命じる判決が出ている。通算成績は7勝7敗のイーブンになった。何が流れを変えたのか。今後の救済の可能性を探った。　「やっとここまでたどり着いた。政府は上告を取り下げるべ

保釈中の被告にGPS　相次ぐ海外逃亡、保釈のあり方どう変わる

　保釈中の被告に裁判所が全地球測位システム（GPS）端末を装着させることを可能とする刑事訴訟法改正案は13日、衆院本会議で可決され、衆院を通過した。事件を否認する被告らの身柄拘束が長期化する「人質司法」からの脱却が近年図られる中、保釈率が上昇しており、被告の海外逃亡を防ぐ狙いがある。改正が実現した場

「いくら何でも3カ月は長すぎる」　袴田巌さん弁護団が検察批判

　1966年6月に静岡市（旧静岡県清水市）で一家4人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん（87）の裁判のやり直しに向け、裁判所、検察、弁護側の初の三者協議が10日、静岡地裁で開かれた。静岡地検は再審公判での具体的な立証方針を明らかにせず、方針を示すのに3カ月の期間を設けるよう求め