マンボと言えば
ペレス・プラードをイメージする僕ですが、
サルサと言えば真っ先に思い浮かべるのがこの人ティト・プエンテです!このアルバムは、名盤『
ダンス・マニア』に先んじる1956年発表。ティト・プエンテって1951年からTico というレーベルから10インチレコードやフルアルバムをリリースしていましたが。
56年に超がつくメジャー・レーベルのRCA に移籍。その第一弾がこのアルバムというわけです。すでに人気があったからこその移籍でしょうが、全国区での流通となった第一弾アルバムで、これだけのクオリティのものを作られたら、そりゃ人気だって全国区になっちゃいますよね(^^)。
ラテン・ビッグバンド編成で、音楽はキューバ系音楽を扱ったサルサといった感じ。サルサ風にアレンジされたとはいえ、このキューバ縛りがアルバムの強力なコンセプトになっていて、そこがダンス音楽を扱った『ダンス・マニア』との大きな差と感じました。といったって、チャチャチャとかもやってるんですけど、なんというか…エンターテイメントではあるんだけど、それ以上にアフロ・キューバンなグルーヴを強く感じるんですよね。アンサンブル隊は楽しげで心地よい音楽をやってるのに、リズム隊は狂喜乱舞、みたいな。この打楽器チームにあらわれたキューバ色の強さが、エンターテイメントといってその質に影響を与えているように思いました。
熱気で人を魅了するようなアプローチの音楽が多かったんですよ!
その熱気って、つまりはティト・プエンテ楽団の演奏の凄みやレベルの高さという事なんじゃないかと。M6「Yambeque」みたいな楽しげな曲ですら、打楽器隊がとんでもなく熱く凄まじい演奏をしてるもんで、「楽しい」より先に「すごい」ってところに意識が行っちゃいます。いやあ、軽そうなジャケットや、ぼんやり聴いてると「ラテン音楽だね」というだけで通り過ぎてもおかしくない音楽だというのに、集中して聴くと、ものの見事にプレイの壮絶さに体ごと持っていかれてしまいます。思いっきりアフロ・キューバンなM3「Pa Los Rumberos」の高速でグルーヴしまくる打楽器陣のカッコよさなんてヤバすぎ、なかでも御大
ティト・プエンテのティンバレスがすごすぎる、神かよ…。 また、すごい演奏をしているのはティンバレスのプエンテ御大だけじゃなくて、パーカッションチーム全体がすごいです。クレジットを眺めていると、しれっとモンゴ・サンタマリアにウィリー・ボボと、とんでもない人まで入ってました。こんなのずるい。それにしても、モンゴ・サンタマリアって
ペレス・プラード楽団にもティト・プエンテ楽団にも参加して、のちにチャランガのバンドまで結成しちゃうんだから、50~60年代のラテン音楽隆盛の影のキーマンという感じがしますネ。。
プレイだけでなく、アレンジや作曲面でもチラリと本物を感じるものがありました。
冒頭曲「Elegua Chango」なんて、構成は組曲で、いきなりインストです。楽しげなショー・バンドのくせして最初にこれを持ってくるか…。エンターテイメントの裏でチラチラと実力をちらつかせてくるあたり、カッコいいなあ。
ラテン音楽の50年代のプロ楽団って、ペレス・プラード楽団にしてもティト・プエンテ楽団にしても、あるいはアルゼンチンの並み居るタンゴ楽団にしても、フォークロアや学生バンドではなく、レベルの高いプレーヤー揃いのプロ楽団なんですよね。だから、やっている事が仮にエンターテイメントであったにしても、演奏が正真正銘のプロフェッショナル。音楽好きが始めた程度の60年代英米ロックやポップスとはスタートラインが違いすぎます。ここがプレスリー登場以前と以降のアメリカ世界のエンターテイメント音楽の大きな差ではないかと。
このアルバム、ニコニコとエンターテイメントをやりながら演奏もアレンジも超プロ級のバンドがたまらなくカッコよく見えてしまった夏の午後でした(^^)。そうそう、ティト・プエンテって、陽気で熱いサルサばかりの人かというとそうでもなくて、もっとパーカッション自体を追求したような硬派なアルバムも作ってまして…その話はまたいつか(^^)。
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