
用があって図書館に行ってきました。ついでにつらつらとCDの棚を眺めていると…おおお、こんなCDがあるではありませんか!!ザ・ベストテンか、懐かしいなあ。当時の歌謡曲ランキング番組の、1980~81年のヒット曲のオムニバスですね。何はともあれ、収録曲を。
1. ザ・ベストテンのテーマ
2. ミラーゲートのテーマ
3. 異邦人 (久保田早紀)
4. 大都会 (クリスタルキング)
5. 贈る言葉 (海援隊)
6. ランナウエイ (シャネルズ)
7. 昴 (谷村新司)
8. ダンシング・オールナイト (もんた&ブラザーズ)
9. 哀愁でいと (田原俊彦)
10. 青い珊瑚礁 (松田聖子)
11. パープルタウン (八神純子)
12. さよならの向う側 (山口百恵)
13. ルビーの指環 (寺尾聰)
14. 長い夜 (松山千春)
15. お嫁サンバ (郷ひろみ)
16. スマイル・フォー・ミー (河合奈保子)
17. ハイスクールララバイ (イモ欽トリオ)
18. ギンギラギンにさりげなく (近藤真彦)
19. ハロー・グッバイ (柏原よしえ)
20. セーラー服と機関銃 (薬師丸ひろ子)
いやいや、オープニングテーマと「今週のスポットライト」が懐かしすぎる。。オープニングテーマでの久米さんと黒柳さんの「ザ・ベストテ~ン!!」の掛け声って、収録されたものだったとは。いつもあの後に、毎週の抱負のフリートークが挟まっていたので、毎週生で言ってるのかと思ってました(^^;)。あと、「今週のスポットライト~」も、あの名前が回転して変わっていく仕掛けパネルの「パタパタパタ…」っていう音、あれもBGMにあらかじめ収録してあったのか。。いやあ、トリックを知ってしまったようで、ちょっと感心してしまいました。。
そして、音楽以前に、何といっても懐かしさが全てに優先して、涙が出てきてしまう(T_T)。もう、楽しかった幼少期の思い出が次から次に浮かんでくる。。
以下、収録曲で、勝手に僕が聴いて思った事をつらつらと。
まず、冒頭に入っている久保田早紀さんの「
異邦人」。詞の世界がえらく大人で、ビックリしてしまいました。失恋した女性の歌なんですが、その女性の年齢って、20代~40代のいずれに想定してもハマります。ハマるんですが…すごく思慮深くて、ガキのいう所の好きとか嫌いなんていう所にはもういない感じ。今のAKBやら何やらにはとても歌う事なんてできないだろうな、と。いや、AKBが悪いとかそういう事じゃなくって、1980年なんてポップカルチャーど真ん中という時代だと思うんですが、その時代の歌謡曲ですら大人の文化だったんだろうな…と思ってしまいました。
そういう意味は、谷村新司さんの「
昴」も同じ。ガキにはこの歌を歌う事なんて出来ない。谷村さんって、今ではただのスケベおやじにしか思えませんが、僕が子供の頃は、悪そうだし、ギターをかき鳴らしてうたってるしで、メチャクチャかっこいい人だと思ってました。僕はまだ小さかったですが、小学生の友達のおにいちゃんが、二人でフォークギターを持って「チャンピオン」を歌ったときは、マジでかっこいいと思いました。自分みたいな子供とは全く別次元の世界、お兄ちゃん世界の文化という感じで、あれはカルチャーショックだった。
シャネルズ「
ランナウェイ」。曲想は完全に50’s。当時の日本の歌謡曲って、50’sのリバイバル的な側面がすごく強かった気がします(チェッカーズのデビュー曲とかね)。間接的に表現されたセックスの曲に聴こえますが、これも高校~大学生ぐらいが持っている世界観の、今とのギャップを感じてしまいます。今みたいに冷めていないというか、もっと中高生が独立心旺盛だった気がするんですよね。で、そういう背景が歌の中にも少し出ているというか。
もんた&ブラザーズ「
ダンシング・オールナイト」。いやあ、今と全然違って、歌謡曲界にタレントが揃ってるわ。英米のロック文化も似たようなところがあって、もともとは職業音楽家が作っていたチャート音楽が、それを聴いて育った若者が独創性たっぷり表現したところで、いきなり商売から外れたフォルクローレ化した歌音楽(=ロック)になってしまう…という。英米の場合、それが63~70年ぐらいだったのが、日本は75年~85年ぐらいだったのかも。もんたさんのヴォーカル、素晴らしすぎる。。
意外や意外、びっくりしたのがとしちゃんの「
哀愁でいと」の歌詞の素晴らしさ。としちゃんって、まだ小学生だった僕たちの間ですら「マジで音痴だわw」とかいって笑いものになってました。「スチュワーデス物語」に匹敵するぐらいの嘲笑の対象だったわけですが、今聞くと…意外にも詞が素晴らしい。「その日だけの恋なら 優しさなんてない方がマシ」…いやあ、女に遊ばれ、でも自分は本気だったときの複雑な心情を歌った歌だったとは。これは、としちゃんに歌わせるのに無理があったんじゃないかと。
逆の意味でびっくりしたのが八神順子の「
パープルタウン」。子供の頃、楽器弾きながら歌を歌ってて、しかも曲も自分で書いているという所が「すげえっ!アイドルとは全然違う!これが本物のミュージシャンというやつか…」なんて思ってました。曲もサビしか聞いたことがないんだけど、すごくカッコいいと思ってたんです。が、今聞くと…平歌とサビがつながってねえ(T_T)。転調にしても何にしても、もう少し勉強してからデビューしろよ。なんだよこのデタラメ、シロウトじゃねえか。。また、詞にも「NEW YORK~すぐ戻るわ~」みたいな感じが出てくるんですが、このニューヨークをカッコいいものとして扱っているところ、そこにいる私もカッコいい、みたいな感じが逆にカッコ悪すぎる。。これは、80年代の軽薄さが逆に出てしまったかんじ。八神順子さんってもう1曲ヒットがありましたよね。そっちは大丈夫なのかな…ちょっと、怖いもの見たさが出てきてしまいました。
山口百恵「
さよならの向こう側」。キャンディーズ以降、解散や引退をひとつのイベントにして、ラストシングルを美しいバラードで飾るというフォーマットが完成した気がします。で、これはその山口百恵バージョン。これも詩の世界が大人すぎて、そういうあざとさとは無縁のところに歌が存在している感じで素晴らしい。詞が素晴らしいとしか言いようがない。
寺尾聰「
ルビーの指輪」、これも大人の歌、素晴らしい。「気にしないで行っていいよ」と優しい口調で言いながらも、つぎの「はやく消えてくれ」という鋭い口調が、実際の心情を見事に表現しています。まじで、恋愛歌にしても失恋歌にしても、今よりも80年代の方が大人だわ。。
松山千春「
長い夜」。おおお~、歌がうまい!!80年って、タレントぞろいだなあ。。しかし、それ以上の感想がないという事は…いやいや、口にするまい、それだけで十分じゃないか。
イモ欽トリオ「
ハイスクールララバイ」。おお、テクノだ(^^;)。アレンジは誰なんだ、これ…やっぱり細野晴臣さんか。しかし、それ以外の面では、テレビ局やタレントに充てられた商品という感じ。この「音楽のシロウトがビジネスを基準に偉そうなことを言って大きな顔をする」という構図が、以降の日本の商業ヒットチャートをダメにしたことを考えると、その悪しき先駆けだったのかも。
近藤真彦「
ギンギラギンにさりげなく」。マッチって、人として相当に好きです。としちゃんの1000倍は好き。しかし…なんだこの薄っぺらい歌詞は。。「哀愁でいと」との歌詞対決ではコールド負けレベル。そして、この歌詞にあらわれている世界観って…2014年現在の日本のお子様歌謡曲文化と完全に地続きだと発見してしまいました。
薬師丸ひろ子「
セーラー服と機関銃」。クズ映画を量産して日本映画界をどん底に突き落とし、自分はいち早く撤退するという、何をしに来たんだ馬鹿野郎感が強かった角川映画の主題歌だったと思います。タイトルはアホすぎて逆にカッコよく感じないこともありませんが、歌のまずさはとしちゃんと双璧かも知れん。詞も、映画に合わせて書いたんだろうな、という無理やり感が切なすぎる。しかし…この曲、実はいい曲なんじゃないかい?アレンジ次第では更にいい曲にできる気がする。アンバランスなぐらい、作曲家ひとりだけがプロだわ、と思ったら…来生たかおさんか、それはプロだわ。
総じていうと、歌謡曲という文化の所有者に大人がいた時代だったんじゃないかと思います。僕は小学生で、これらのヒット曲は聞いてはいましたが、それって聴いているだけで、歌われている言葉が何を示しているのかとか、その背景で何が暗示されてるかとか、そんなのは聴き取れていたハズがない。「ああ、これなら20代でも聴けるわ」というものどころか、「30代でも40代でも聴けるわ」というものまである、詞の世界が素晴らしかったです。一方で、完全に子供相手のビジネスと化していくことになるJポップとやらの先駆みたいなものもチラホラ。。それが80-81年ごろの、日本の商歌謡の実情だったのかも。しかし、このCDは楽しかった!実は、「ベストテン78-79」というのも借りてきたので、明日にでも聴くぞ~!!