ビッグバンド・ジャズがそこまでに好きじゃない僕でも、このレコードだけは人に推薦したい、そんな1枚です。そんなに有名じゃない1枚と思うんですが音楽も演奏も見事、なんてったってウディ・ハーマン・ビッグバンド全盛期の演奏ですから!僕はスウィング期までの白人ビッグバンドで特に素晴らしいのは、ウディ・ハーマンとバディ・リッチのビッグバンドだと思っています。なんで伝説の
グッドマンや
グレン・ミラーよりも好きかというと、ひとえにこのアルバムによるのです。LPを持っていてお気に入りの1枚だったんですが、ボーナストラック14曲入りのCDがある事を発見し、つい最近買い直しました。そして…あまりに良くってヘヴィーローテーションです(^^)。
クラリネット&サックス奏者であるウディ・ハーマンの作ったビッグバンドは、「ハード」と命名され、コンセプトやメンバーが大幅に変わるたびに「セカンド・ハード」「サード・ハード」と名前が変わっていきます。
全盛期はファースト・ハードからサード・ハードまでで、中でもズート・シムズや
スタン・ゲッツを擁したセカンド・ハードが音楽的最盛期なんて言われています。ところが僕が若い頃の80年代日本だと、ファースト~サード・ハード時代の録音が手に入れにくくて、中古盤屋にぜんぜん出ないしCDも全然復刻されない(T_T)。。60年代以降のアルバムは買おうと思えば買えたんですが、どうせなら1番いいと言われてる50年代前後から聴きたいじゃないですか。そんな時に見つけたのがこのLPでした。LP1000円まで、CD1400円まででゲッチュするのが自分的なルールだった若い頃の僕にとって、3000円以上の値がついていたこのアルバムの購入は二の足を踏みました。でも、
1945年から54年までの録音でウディ・ハーマン楽団の全盛期だし、代表曲「フォー・ブラザーズ」も入っていたので、思い切って買ったのでした。当然、数日間昼飯は抜き(^^;)。しかし大当たりだった!
2次大戦前後の白人ビッグバンドなので、陽気でエンターテイメントな分かりやすいポピュラー音楽なジャズを連想するじゃないですか。実際、グッドマンもミラーもベイシーも、「古い音楽」を聴く感覚で聴いてましたし、このアルバムもファーストハード時代はそうです。でも、セカンドハード以降はぜんぜん違う、
もうほとんどクールジャズでした。コンボと言っても信じてしまいそうなぐらいに洗練されたアンサンブルとスコアで、思いっきり知的な音楽だったのです。この楽団を代表する曲「フォー・ブラザーズ」は、セカンド・ハード時代にバンドが誇った木管セクション在籍のズート・シムズやスタン・ゲッツのアンサンブルとソロを大フューチャーした曲なんですが、エンターテイメントだけでなくライティングが見事。大味えエンターテイメントなアメリカ音楽もここまで来たかという感じでしたが…
おお~ジミー・ジュフリーのアレンジか!!他にも見事なライティングが随所にあって、やっぱりクラシックを修めた人が1枚噛んでないと、この時代のアメリカでこのアンサンブルは無理だよなと思う所が随所にありました。そういう意味でいうと、凄いのは、ウディ・ハーマンよりも影武者ジミー・ジュフリーや、そのアンサンブルを成立させるところまで成熟してきていたプレイヤーの音楽レベルかも。
他にも素晴らしい曲とアレンジと演奏が満載で、クールジャズ色の強い曲の中では、ミドルナンバー「Early Autumn」が、コード・プログレッションも木管のアンサンブルも素晴らしくて、魅了されました。ほとんどコンボのような綺麗なアンサンブル、これをビッグバンドで実現してしまうのは、戦後間もなくでありながらすでに
ギル・エヴァンスや
ジョージ・ラッセル登場一歩手前という感じです。
けっきょく僕は、ウディ・ハーマン全盛期の録音はこの1枚で済ませてしまいましたが、少なくともこの1枚は、
僕が聴いてきた40年代のビッグバンドの中で、音楽的に明らかに他よりも上を行くバンドだと思います。有名じゃないかも知れないけど、大推薦の1枚!アナログ盤の音にこだわらないなら、ボーナス14曲追加のCDが特におすすめです(^^)。