初期
キング・クリムゾンは大きく分けると3回大きなメンバーチェンジをしていますが(つまりバンドは4つ)、
71~72年前半のアイランズ期(サード・ラインナップ)のライヴ音源は、オーディエンス録音含めてけっこう残っています。その頃のライヴやラジオ放送用のスタジオ・ライヴを集めたCDがこれ。ディスク2枚組で、ディスク2は「21世紀の精神異常者」だけが11テイク入っているという(^^;)。
で、この「寄せ集め」音源というのが判断の難しい所で、ディスク2の精神異常者ラッシュを除くと、音源は以下の4つです。
・71.4.13 Zoom Club, Frankfurt, Germany
・71.5.11 Guildhall in Plymouth, UK
・71.11.13 Eastown Theatre, Detroit, Michigan, US
・72.3.12 Summit Studios, US *ラジオ番組用のスタジオ・ライヴ
アルバム『
アイランズ』の録音は、71年の7月からなので、ドイツとイギリスの公演は録音前。アイランズ期クリムゾンの音源って、72年のものが多いんですが(たぶん、アルバムが71年12月にリリースされたから)、それだけに71年のパフォーマンスをきけたのは、色んな意味で興味深かったです。
そして…72年当時
公式発表されたライヴアルバム『Earthbound』より圧倒的に音が良くてびっくり!単なるジャム曲も入ってないし、曲のセレクトも万遍なしといった感じ。初期4枚のアルバムそれぞれから選んだだけでなく、オリジナル・メンバー時代にライヴだけで演奏されていた曲も演奏していたんですね。なるほど、過去のレパートリーもライヴでしっかり取りあげていた事と、ライヴではかなりインプロヴィゼーションを重視していたのがよく分かります。正直、『アースバウンド』を買うなら、こっちを選んだ方が…とすら思いました。
ただ、このライヴ演奏をどう感じたかというと…僕の場合、マイケル・ジャイルズやイアン・マクドナルドがいた頃のキング・クリムゾンや、この編成の後に組まれたジョン・ウェットンらが入ったクリムゾンのライヴには完全にノックアウトされたんですが、この時期のライヴである本盤には、そこまで感動を覚える事が出来ませんでした。スマヌス。
さすがにロック史上でも最高峰レベルと言えそうな、マイケル・ジャイルズがいた頃や、この後のジョン・ウェットンらが入った時と比べたら可哀想ですが、それでも下手なバンドじゃないとは思うんですよ。ただそれって、「ロックだけやってたバンドマンが演奏するには手こずりそうなクリムゾンの曲を、ライヴでよくここまで頑張ったな」ってぐらいの感じ。でもそういう感想って、もう聴いているこっちが上から目線になっちゃってるじゃないですか。そうじゃなくて、「うわ、すげえ」って引っ張りまわして欲しいんですよね(^^;)。何でそうなるんだろう…
色々あるけど一番のポイントだけを言うと、楽曲が暗に示している方向の即興を演奏するだけの能力がない、これに尽きるんじゃないかと。言い方を変えると、即興がただのジャム・セッションなんですよね。。
例えば、テーマ部分はニュージャズと言っても良いぐらいの曲「Groon」も、ブローイングコーラスに入るとFのドリアン1発、みたいな。これだったらテーマも曲想も関係ないですよね。アマチュアのロック好きさんたちが、初対面でスタジオ入ってやるあれです(^^;)。オープンに入った瞬間にスケール一発のジャムになってしまうのは、「Get Thy Bearing」も同じ。実際にはスケールどうこうより、そうやって即興で音楽を組み立てるかという部分なんですが、まあ分かりやすい所だけ指摘するならそんな感じです。またよりによって、スタジオ盤と差別するためか、このコンピに収録された曲って、即興多めのものが敢えて選ばれたようにも感じるんです。
このバンド、良いものも持ってたと思うんです。ドカドカ来るイアン・ウォーレスのドラムは結構な迫力だし、長いサステインを活かしたロバート・フリップのギターソロは時として耳を奪われるし。ただ、もっと大きい所で、これまでのクリムゾンが創り上げてきたものをリアライズできるだけのレベルに達していなかったバンドなんでしょうね…なーんて思ったんですが、次に取りあげるライブ盤で僕は手の平を返すことになったわけですが(^^;)。。
ちなみに、
このCDに収録された先述の4つのライブなりラジオなりの音源って、今はそれぞれ単独でリリースされてます。元々はブート、のちにそれをクリムゾンがファンクラブ限定でリリース、みたいな形で。だから、今からこの編集アルバムを楽しもうとするのであれば、アイランズ期のクリムゾンのライヴをどこまで追うつもりがあるのかで判断するといいかも知れません。