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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Prince / Emancipation』

Prince_Emancipation.jpg なんでプリンスをそんな好きでもないという割に、アルバムを持っているかというと、ギターがメチャクチャうまいという事なので、ギター音楽好きとしてアルバムを買ってしまっていたからです。で、プリンスをそんなに好きでもないという癖に、他に大好きな人が多いというブラック系の音楽で、なんでプリンスを先にとりあげるかというと、持っているプリンスのCDを手放そうかどうか、これを判断するために今聴いている最中だからです(゚ω゚*)。で、このアルバム、前の記事でとりあげた「the GOLD EXPERIENCE」の翌年である1996年発表、3枚組です。ギターは全然大したことありません(というか、ほとんど弾いてない)が、曲やサウンドの作りが恰好良かったです。

 プリンスというのは、音楽オタクっぽい人なんじゃないかという気がします。部屋に籠って、面白い音のするシンセやサンプラーをずっといじっていたり、ギターをチャラチャラ弾いて、それがそこそこうまく弾けちゃったり。作曲も音楽の深いところに行くんじゃなくって、簡単な和声進行とメロディのセットをどんどん作るタイプなんじゃないかと。そんなタイプだから、アメリカの商音楽の舞台であれば、どのタイプの音楽も作ろうと思えば作れるんじゃないかと。それでも、プレイで魅せようとすれば結構労力を割かないといけないと思うのですが、プレイなんか人にやらせるばっかりで、ギターですらアドリブで単旋律を弾く程度なので、労力なしで大量生産できるんじゃないかと。
 じゃ、プリンスの何がいいのかというと…このアルバムでいえば、センスが良いんだろうなという気がします。例えば、クラブサウンド的な音作りとか、インダストリアル系のサウンドのサンプリングとか。90年代当時っていうのは、こういうサウンドが格好良かったんですよね。でも、メジャーなレコード会社が作る如何にも商音楽なものは、こういうところから離れて上滑りしているような感じでした。ほら、日本でもそういうところ、ありますよね。ポピュラー音楽ですら、アンダーグラウンドでは結構格好いいサウンド作ってるのに、エイベックスとかは同じ手法で作ってるはずなのにえらくカッコ悪くなってしまったり。シンセとかサンプラーとかって、90年代にはプロ・ミュージシャンの専売特許じゃなくって、一般の人にも簡単に手が届くようになって、音楽理論とかの分かっていない人でも、切り貼りして誰で音楽が作れるようになった頃。そんなアマチュアがクラブでやってた音楽の中に、サウンドとか手法とかの格好いいものが出て来てました。ただ、それらは音楽的にはバックボーンが本当に弱くって、サウンド勝負とかアイデア勝負とかみたいな部分が強かったように思います。そういう新しいサウンドをプロが取り組んで調理するとどうなるか…それがこのアルバムのような音楽なんじゃないかと。

 いやあ、今聴くと、こういうサウンドって、懐かしいな。90年代、こういうサウンドがカッコよかったんですよね。今でも、聴いていて気持ちいいなあ。


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『PRINCE / THE GOLD EXPERIENCE』

prince_GoldExperience.jpg このブログですが、基本的に自分が凄く大好きなCDやLPを紹介しています。が、今回はちょっと違う感じ。これをいい音楽なんて全然思ってません(^^;)。ただ、アメリカという国の俗っぽい側面を感じることが出来るという、僕の中ではそういう位置づけにあるアルバムで、その俗っぽいアメリカの匂いを僕が決して嫌いなわけではないという。

 マクドナルドって、ありますよね。僕は、あれを美味いなんて思いません。でも、あそこのフライドポテトとストロベリーシェイクは、たまに食べたくなるし、中学生の時に、友達と連れ立って騒いでいたという楽しい思い出とも関連した場所でもあります。そういう位置づけのものって、ありませんか?音楽でいえば、テーマパークで掛かっているキラキラした音楽とか。あれを最上の音楽とも思わないけど、でもテーマパークで過ごした楽しい時間というものの一部として僕は記憶しているし、そういうものとして言えば、決して嫌いではないのです。

 で、このプリンスという人の音楽は、僕にとって音楽的な良さは感じないんだけど、僕がもしアメリカ人で、ニューヨークとかシカゴとかの労働者としてアパート暮らしをしていたら、こういう音楽がテレビやラジオから流れてきて、プリンスのような価値基準を持った文化の中に自己を確立していくんだろうな、とか思っちゃうのです。…何言ってるのか分かりませんね(笑)。僕の価値基準の上で評価できるものではないんだけど、僕が持っていない価値観を持っている異文化のものの象徴として、聴いていて楽しいのです。アメリカのテレビドラマを見たりする時、日本に無い風習とか、日本に無い住宅の作りとかを見るだけで、楽しくなりませんか?そんな感じ。

 僕は、プリンスという人を詳しく知りません。合衆国在住の黒人で、しかし白人文化も拒否ぜず受け入れるタイプの都市生活者で、そういう意味では僕の中ではイメージがマイケル・ジャクソンとかと被ってます。で、ここにある音楽の特徴を挙げていけば、ラップ調の歌い回し、シンセサイザーやデジタルドラムの使用、ディストーション・ギター、ライブで演奏できないだろうスタジオ制作前提の音楽、「プッシー・コントロール」なんていう歌詞、奇抜なファッション…要するに、80年代から90年代にかけての、アメリカの商業音楽に含まれるキーワードが全部入っているという感じ。もう外連味タップリで、傍から見ればばアホみたいな恰好して、作った後に「これヒットするかな」とか言ってそう。文化自体に倫理とかの哲学的な深度を深める歴史も時間的余裕もなかったアメリカって、本人たちも知ってか知らずか、経済的な価値観が何にも増して優先しちゃったような世界だと思っているのです。特に都市部。で、善悪は別にして、その中で人が動いている、その喧騒感がこの音楽には溢れているように感じるのです。
 安っぽい価値観の上にある、意味よりも金に振り回される資本主義の現代病理の上に成り立っている空元気のような音楽。でも、そこがいい。僕がアメリカに生まれて、工場労働者として疲れてアパートに帰ってきて、ピザとかコーラとか飲み食いしながら、ぼんやりテレビをつけたら流れてくるような音楽…そういう想像をすると、楽しくなってくるのです。





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『JIMMY LIONS, ANDREW CYRILLE / BURNT OFFERING』

JimmyLions_BurntOffering.jpg フリージャズのレコードです。ジミー・ライオンズ(アルト・サックス)とアンドリュー・シリル(ドラム)のふたりは、セシル・テイラーのバンドの最強メンバーでした。セシル・テイラーのバンドにはサニー・マレイとか、有名な人の参加も多かったのですが、しかし実力的にはこの二人が凄かったです。モンク・バンドのフランキー・ダンロップとか、チャールズ・ミンガス・ユニットのジミー・ネッパーみたいなもので、ピンで名前が売れる事はなかったが、実力的にはその辺のソロイストよりも凄いというタイプですね。こういうタイプの人って、格好良く思えてしまいます。知る人ぞ知る真の実力者みたいな感じで。

 さて、このCDは、セシル・テイラーという脈からではなく、レコード屋でたまたま知りました。「うおおお、すげえ!!!」と思って、即買いしてしまったのでした(^^)。以前の記事で、ジョン・コルトレーンとラシッド・アリというサックス&ドラムのすさまじいフリージャズのアルバムを紹介した事がありますが、それに匹敵するほどの凄まじさ。録音の良さでいえば、こちらの方が上なぐらいです。
 最初は、かなり慎重にというか、丁寧に音楽を作っていきます。ここで、やたらめったらに感情表現にしてしまわず、丁寧に音を積み上げていくところは、さすがはセシル・テイラー・ユニットのメンバーだけはあると思わされます。そしてその音は、音楽を作っていくという方向も向いているし、お互い同士の会話にもなっている感じです。で、これがどんどん高みに上り詰めていく。こういう高揚感は、フリージャズを聴くときの醍醐味だと思います。ウワーッとくる感じです。

 もうひとつ。このCDは、BLACK SAINT というイタリアのジャズ・レーベルから発売されています。ジャズと言っても、かなりフリー寄りの作品のリリースが多く、またセッション的なものが多いです。ジャケットを見ても、このフォント、このデザイン、乱造感がハンパでない(^^;)。。そんな感じのレーベルなものだから、とにかく当たりはずれが多いです。これは、ヨーロッパのジャズレーベル全般に言える傾向の気がします。しかし、このアルバムは大当たり。フリージャズ未体験の友達が僕の部屋に遊びに来た時に、このCDをBGMにかけていたら、興奮して「うおお~燃える!」と叫んでいたのはいい思い出です(笑)。





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『CECIL TAYLOR ensemble / ALWAYS A PLEASURE』

CecilTaylor_AlwaysPleasure.jpg 同じくドイツのFMPから出た、セシル・テイラーのリーダー作です。ところで、FMPって最近聞かなくなったけど、潰れたのかなあ。好きなレーベルだったのに。まあ、良い音楽を出すレーベルが短命な事はよくある事なので、仕方がないのかも。音楽の内容に拘って、売れるかどうかを度外視するからでしょうか?

 さて、このCDは7重奏団ということで、前の記事までに紹介したバンドよりかなり大きめ。で、フリー色の音楽をやるので、かじ取りがとっても重要になるんじゃないかと思うのですが、これが実に見事。何の決め事もナシにフリーでやってこんなにうまくいくはずがないので、何らかの仕掛けがしてあるとは思うのですが…これが僕にはよく分かりません( ̄ー ̄)。なんか、パートごとに作曲してあって、それと即興が重ねられているのか、パート自体も即興で、枠組みが指定してあるのか。とはいえ、セクションごとに3管がトゥッティするとか、そういうのではないです。いずれにしても、音楽のパートパートの相関関係という作曲の良さを生かしたまま、即興演奏ならではの複雑な感じとか爆発力を活かすという意味では、手品のようにうまくいってて、素晴らしい。

 本当に、4人以上のグループで統制力のあるフリージャズって、音楽家としての高度な能力を感じます。メンバーの中には、チェロのトリスタン・ホンジンガーとかウッドベースのシローンとかの有名どころの名前も見えますが、言っちゃ悪いが楽譜ら読めないんじゃないかと思えるプレイヤーも混じっている気がする(^^;)。いや、プレイ自体はいいんです。ただ、そういうメンバーが結構混じってるバンドを、どうコントロールすればこれほどの音楽にまでたどり着かせることが出来るのかという所にマジックを感じるわけです。そうそう、その意味でいうと、楽譜にばっかり囚われちゃって演奏が死んでいる事にすら気づかない一部クラシックのプレイヤーに比べれば、楽譜なんて関係ない、音楽はサウンドとエモーションだぜ!!っていうようなジャズやロックのプレイヤーの方が、音楽には向いているのかもしれませんね。。
 おっと、話が逸れましたが、『GREAT PARIS CONCERT』が絶妙バランス、『NAILED』がややプレイ志向とすれば、これはやや様式寄りと言えるかもしれません。とはいえ、ものすごいフリーですけど(^^)。これも素晴らしいCDでした!!




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『CECIL TAYLOR: the quartet / NAILED』

CecilTaylor_nailed.jpg セシル・テイラーの1990年のカルテットによる音楽です。まず、メンバーが凄い。セシル、テイラー(ピアノ)に、エヴァン・パーカー(サックス)、バリー・ガイ(ベース)、トニー・オックスリー(ドラム)。いや、もうこのメンバーである時点で、ある程度以上のクオリティは保証されたようなものですが、これが予想を上回るほどの良さです。まず、セシル・テイラーの音楽の狙っているところを、バンドが理解している。これ自体がなかなか無い事で、伝統的な西洋音楽の音楽構造&前衛的な和声&これを即興で実現させる&演奏のテンションもハイレベルに保つ…口でいうと簡単ですが、これを実現できるという時点で、もうプレイヤーが限られてくる気がします。そして、セシル・テイラーとエヴァン・パーカーの演奏のテンションがものすごい!

 エヴァン・パーカーというサクソフォニストは、フリー・インプロヴィゼーションの世界では超有名な人。ノンブレスでの循環呼吸奏法(鼻で息を吸いながら口から息を出し続ける奏法で、だから息継ぎなしで延々音を出し続ける事の出来る奏法)とか、普通のアンサンブルでは使いにくいような色々な奏法を駆使しながら、かなり変わった音楽をやっている人なんですが、僕はこの人の音楽があんまり好きじゃない…のですが、このCDでの演奏はもの凄かった!!もしかすると、このバンドではバンドマスターの音楽の方向性を最も理解できてないんじゃないかという気がしますが(^^;)、ここではリーダーや他のメンバーがそれを逆手にとって、パーカーにはバンドの熱っぽい部分を表現してもらう役回りを与えて、勝手にやらせてます。これが良い方に出た感じです。

 あと、90年のライブという所にも注目です。セシル・テイラーって、50年代からアメリカのジャズ・シーンで活躍していますよね。しかも、その中ではかなり先鋭的というか、芸術的な方面のトップランナーとして。でもアメリカって、実際に行ってみると、都市部であってもかなり保守的です。ニューヨークなんかも芸術の街みたいに思えて、実際にジャズのライブハウスに行くと、スタンダードとか、そんなのばっかり。ましてや田舎に行くと、ジャズどころじゃないぐらいに保守的。70年代末ぐらいになると、もうセシル・テイラーのような前衛芸術のような方面に伸びていく人には生きにくい国だったんじゃないかと思います。で、60年代とか、良くて70年代ぐらいを最後に、テイラーの音楽はアメリカでの居場所を失ったんじゃないかと。その頃、テイラーの音楽を理解できたのは、ヨーロッパだったんじゃないかと。ヨーロッパって、知的なものを受け入れる文化が浸透しているし、また聴衆もそれだけの耳に育っている地域である気がします。このCDはドイツのFMPというレーベルからリリースされているんですが、FMPはセシル・テイラーのCDをかなりたくさん出しています。これが玉石混合で、お粗末で状態の悪いセッションも片っ端から出してみたり、歴史的名演といってよいぐらいのものも出してみたりで、買う側としては翻弄されっぱなしです(笑)。で、これはその中でも大当たりの1枚。要するに、70年代以降のテイラーの音楽がつまらなくなったわけではなくて、あのダメダメな80年代以降のアメリカ音楽シーンの中に、テイラーの生きる場所がなかったというだけの事なんだと思います。

 それにしても、このCDはいい!セシル・テイラーの音楽を聴くとき、僕はたいがいその作曲センスと演奏のバランスの見事さに感服してしまう事が多く、ハイテンション一本槍の演奏のものは好きじゃないんですが、これは例外で、デザインは最低限にとどめた上で演奏を活かしきったもの凄いパフォーマンスと思います。マジで凄い。。大おススメです!が…手に入れにくいかも。








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『Cecil Taylor / Great Paris Concert』

cecil taylor great paris concert セシル・テイラーという人は、フリージャズのビッグネームとして名の知られた人です。私は、この人が大好き。もしかすると、ジャズとかフリージャズという枠を取り払った中でも、飛び抜けて好きなミュージシャンのひとりである気がします。音楽家としてのレベルが高すぎて尊敬すらしています。中でもこのアルバムが特に好きです。絶対の1枚です。

 しかし、日本のメディアとかジャズファンの中で、セシル・テイラーという人は凄く勘違いされている人なんじゃないかと思えてなりません。これが僕にはとても悔しい。「思いついた事を自由に弾く」「フリーだ」、ひどいのになると「デタラメだ」…。ところが、実際のセシル・テイラーの音楽というのは、楽曲構造的には、西洋音楽の典型的な手法を馬鹿丁寧なほどに踏襲しています。第1主題、第2主題、対立…というように、各パートの役割が恐ろしいほどに明確。構造面でいえば、スタンダードジャズよりもよほど強い構造なのです。いや、これを「フリーだ」とか「デタラメだ」という人って、構造なんてまるで見えてないんだろうと思います。
 で、セシル・テイラーの音楽というのは、こうした構造にジャズならではのオープンパートが付け加わる感じ。オープンになると、考える時間もないぐらいの物凄い速度で、一気にピアノを弾き切る。ここはフリー的というか、かなり迫力ある表現になる事が多いのですが、同時に調的重力も強く感じます。ただし、これはピアノだから否が応にもそうなってしまうだけなのかもしれません(たとえば、白鍵だけ弾いていれば7音音階的な色彩は発生してしまうわけで…)。
 そして、この楽曲の構造という側面と、苛烈なオープンパートのバランスが素晴らしいのです。このアルバムでいうと、1曲目の「STUDENT STUDIES 1」という曲のテーマの作りがまず鳥肌モノ。これ、絶対に即興じゃないだろ…。あるテーマとそのオブリ、対立、展開部。こういう構造がもの凄く鮮明なんですが、それぞれの要素にかなりアドリブが入っていて、これが音楽を迫力あるものにしていきます。このアドリブの格好良さというのは、その場で新しモノを作るから格好いいんじゃなくって、完成度の高いデザインされたの形を、更に表現力あるものにするためにはどうすればいいか…という形で行わる感じだから、音楽がどんどんい生々しく動き始めるんじゃないかと思うのです。デザインとしては「タタタタタン」みたいな音を、「ズジャララァジャァ~~」と弾くみたいな感じ。そこにインタープレイも加わって、時に音がつけたされたり間引かれたり。音楽が生き物ののように跳ねまわりながら、しかし最初からデザインしていなければ絶対にこんな見事な構造は絶対に出来ないという形がどんどん彫り上げられていく。かなり集中して聞いていないと、テーマパートからオープンパートへの意向も、あまりにスムーズ過ぎて分からないぐらいに良く出来ている。同じような見事さは、4曲目「NIGGLE FEUIGLE」でも聴くことが出来ます。こちらは、発展させやすい形の主題の作り方が素晴らしすぎます。この発展性は、ベートーヴェンの5番を上回るんじゃなかろうか。。

 芸術音楽のような表現で、音楽が一番生きる形にしようと思ったら、構造面だけをきれいにデザインして、あとは優れた演奏家の器量に任せて好きに演奏してもらう、というのが最上の方法なんじゃないかと思えてしまいます。作曲を頑張りすぎると、それを再現するだけでアップアップになって演奏が死ぬし、ジャズみたいに演奏家の個人技披露大会みたいにすると、楽曲がえらく退屈なものになるし。しかし、ここに聴かれる音楽は、作曲と演奏とか、フォームとフリーとか、そういう境界が見えなくなるぐらいのレベルにまで達してます。もの凄い音楽です。

 僕は、セシル・テイラーをフリージャズの人と思っていません。音楽の最後の領域に踏み込んだ、まじめに音楽を追及すれば辿りつく場所に踏み込んだ人なんだと思います。当たり前そうに見えて、商業音楽に溢れかえったレコード産業界の中で、こういう人に辿り着くのは結構大変です。セシル・テイラーはジャズ系の演奏家でもあるので、好不調の波が激しかったりして(特にプレイのアイデアは躁鬱なんじゃないかというぐらい^^)、当たり外れの多い人でもあります。セシル・テイラーは僕にとって絶対の音楽家ですが、人に薦めるならまずこの1枚なんじゃないかと思っています。



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『John Lee Hooker / sings BLUES』

JohnLeeHooker_singsBlues.jpg 中学生の頃、僕が初めて買った、戦前ブルースのレコードです。これがもの凄い衝撃で、「うわ、こんな音楽があるのか…」と、痺れてしまったのを今でも覚えています。

 リズムを刻む「カツン、カツン…」という靴の響き、2ビートで「ジャッ、ジャッ…」というギターのカッティング、これがずっと聞いているうちに呪術的な陶酔感を引き起こしていく感じ。そして、「umm...」という唸り声から始まる、低音で歌われる、唸るような呟くような声がズシッ、ズシッと体にしみこんでくる。。詞の部分はメロディがない呟くような、あるいは叫ぶような歌い回しもけっこうあって、ものすごい個性。うう、すげえ。。で、ギターのサウンドも独特で、これはたぶんアコースティックギターじゃなくって、昔のギブソンとかのエレキギターを直でアンプにつないでるんじゃないかと思うんですが、これが潰れたような独特のサウンドなんです。スチール弦のギターというと、高音が伸びる感じのイメージなんですが、これはハイが全然伸びずに、中域が「ビーン」って響いている感じ。なんか、独特の感触で、これが歌の合間にすごい合いの手のフレーズを挟み込んできて、すごい格好いい。ギターに関して言えば、こういうタイプのブルースというのは他に聴いたことがありません。ジョン・リー・フッカーのオリジナルな表現という感じなんじゃないかと。

 こんな歌、ちょっと他では聞いたことがありません。なんか、病み付きになる感じで、聴き始めると、どんどん引き込まれてしまいます。ジョン・リー・フッカーという人は人気があったらしく、色んなブルースのレーベルからアルバムをたくさん出しているんですが、音楽はどれも同じ(笑)。その全部を聞いたわけではないのですが、有名な作品を4~5枚聴いた中では、このレコードが出色の出来なんじゃないかと思います。一番生々しい迫力があって、おススメです。
 ところで、ブルースマンというのは、外連味タップリな名前の人が多いですね。ライトニン・ホプキンス(稲妻ホプキンス)とか、マディ・ウォーターズ(泥水)とか。ジョン・リー・フッカーなんて、「売人ジョン」ですよ(゚ω゚*)。いや、そういう俗っぽいところも、ブルースという音楽の良さのひとつなんじゃないかと。




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『Sleepy John Estes / The Legend of Sleepy John Estes』

SleepyJohnEstes_Legend.jpg 同じく、戦前ブルースの名録音です。このスリーピー・ジョン・エステスという人は、ライトニン・ホプキンス以上に声がしゃがれていて、高音になると音がふらついて、しぼりだすような声になるんですが…これが実に味わい深く、渋いのです。初めて聞いた時「うわあ、すごくいい…」と、一発で引き込まれてしまいました。

 そして、このアルバムで特に心を揺さぶられたのが、1曲目の"rats in my kitchen" という曲でした。「台所のネズミが俺の食い物をみんな食っちまう ~ネズミが俺に言うのさ、おいジョン、食い物が欲しいなら出直してこい ~俺は人に言われたようにガンバってきたが、体を壊して目も見えなくなった。そうなると親友も俺を見捨て、家族ですら俺を構わなくなる ~街角に立ち、壁に身をもたれ…」だいたいこんな詩です。いやあ、こんな詩を歌われると、目の前に、綿花農場ばかりの当時の南部アメリカの黒人の生活が一気に広がってきます。で、この音楽がまたいい。ギターのほかに、ピアノ、ウッドベース、ハーモニカがつくんですが、これがいずれも素晴らしい。曲のテンポは、普通のブルースよりもさらに遅い感じで、フワーッとした感じ。ピアノはブルーノートをたゆたい、ベースは凄く柔らかい音で「ポーン、ポーン」という感じ。レイドバックした心地よさと、暗鬱とした感じの両方を含んだような、独特なムードです。そして、ハーモニカのハミー・ニクソンという人のプレイが泣ける。ブルースハープにしろハーモニカにしろ、ブルースで使われる吹きものの味わいといったら、何とも言えない情感に溢れかえっています。

 スリーピー・ジョン・エステスという人は、戦前のブルースマンの中で、それほど大御所というわけではないと思います。しかし、このレコードは本当に素晴らしい。あまりに聴きすぎて、随分と擦り減ってしまいましたが、僕はこのレコードを死ぬまでにあと何十回も聴くんじゃないかと思います。




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『Lightnin' Hopkins / The Complete Aladdin Recordings』

LightninHopkins_aladdin.jpg ブルースです。ギター弾き語りが中心のアコースティック・ブルースです。僕にとってのブルースの中心は、ギター弾き語りのアコースティック・ブルースです。もろに産業音楽化した戦後のバンドブルースになるとかなりつまらないと感じてしまうんですが、ギター一本、低音で唸るように歌われるフォークロアの混じったアコースティックなブルースには、暗澹たる迫力を感じます。陰鬱としながら、それだけではないあの渋い質感というのは、ちょっと他の音楽では聴く事の出来ないものだと思います。そして、私にとってのアコースティック・ブルースの最高峰の一角が、アコースティック・ギター弾き語りをしていた頃のライトニン・ホプキンスです。

 ブルースというと、ジャズの曲調でいうブルースとか、日本のムード歌謡なんかで使われるちょっと悲しげな曲を指して言う「ブルース」とか、色々な使われ方をする言葉ですが、大元は奴隷貿易でアメリカ合衆国に連れてこられたアフリカン・アメリカンが弾き語りしていた音楽です。同じ時代のアメリカのフォルクローレでも、白人が歌うカントリーやフォークソングやカウボーイソングというものは、「美しいテネシーで…」とか「ここがあなたの故郷よ」とか、すごく郷愁をそそるようないい歌が多いですが、黒人の歌ったブルースは「38口径の銃でお前を殺さざるを得なかった」とか、かなり陰鬱な内容のものが多いです。で、白人は澄んだ声で大らかに歌いあげるようなものが多いのに対し、ブルースは酒焼けした声で唸るように歌ったり。これって当時の合衆国の黒人の置かれた状況をそのまま反映しているのではないでしょうか。
 そして、ライトニン・ホプキンス。この人は、後にエレキギターも弾いたり、バンドブルースを演奏したりもするんですが、レコードデビュー初期はギター弾き語りでした。ライトニン・ホプキンスのレコード・デビューは1946年ですが、そのデビューEPを録音したのがこのアラジンというレーベルでした。曲によってはピアノなどほかの楽器も入っているものもありましたが、あくまでギター弾き語りが凄かったです。僕ははエレキ・ギターを弾くライトニンを先に体験していたのですが、アコースティック・ギターの演奏を聴くやその素晴らしいテクニックにくぎ付けになってしまいました。うまいと言っても、速弾きのテクニックとかそういうのではなくて、伴奏と旋律を同時に弾く、ギター独特のあのテクニックです。僕は、ギターで単旋律をいくら速く弾かれてもぜんぜんすごいと思わないんですが、和声と旋律を同時に弾かれると、ものすごくひきつけられます。ピアノだったらできますが、ギターって、旋律と和声を片手で同時に弾いているわけですよね。すげえ。。で、歌の間に入れてくる合いの手とか、歌につけるオブリとかがもの凄いセンス。これを歌いながら弾いているというのが、信じられない。。
 そしてこの声。今の西洋のポピュラー音楽から見れば、1オクターブは低い低音で、唸るように声を絞り出します。この語りに近いような歌とギターが一体となって、何とも言えない情感ある音楽に。いや、音楽という感じじゃないんですよね。伴奏つき物語という感じ?いや、うまく言えません。暗いとか、重いとか、言葉では言い当てられないような。映画でいうと、ヒッチコックの『サイコ』って映画がありますよね。サスペンスで、すごく陰鬱としているんですが、見終わった後になんかすっきりした気分になるという、不思議な映画です。ブルースって、それに近いものを感じます。暗鬱としているんですが、じゃあ聴いて暗くなるかというと、ちょっと違う感じ。一種のカタルシスなんでしょうか。

 ライトニン・ホプキンスはブルースマンの中でも結構人気のある人なので、録音が結構残っています。ライトニンの録音はけっこうたくさん聴きましたが、このアラジンの録音と、ゴールド・スターの録音が一番好きです。アラジン録音のEPをまとめたレコードって、昔は何枚ものアルバムに分かれていましたが、今はそれらをコンプリートしたこの2枚組で決定じゃないかと。


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『ビセンテ・アミーゴ / 魂の窓』

VicwnteAmigo_imaginadas.jpg フラメンコ的な凄さって、昔の大御所の方がその本質を捉えている気がします。でもだからといって、新しい世代の人のフラメンコ・ギターがダメかというと、そうとも思いません。パコ・デ・ルシアは5枚も6枚も聴いて全部ダメだったので諦めましたが。。で、かなり若い世代でいうと、このVICENTE AMIGO という人のギターは、すごく格好良かったです。

 あくまで歌とバイレがフラメンコの中心にある重要である事がその理由かと思うのですが、フラメンコのギターが新作をジャンジャン作るというわけにはいかないんじゃないかと。フラメンコの曲種って、ソレアとかファンダンゴとか決まってるんですよね。例えば、ソレアだったらリズム(フラメンコではコンパスというそうです)はこうで楽曲構造はこうでスケールはこう…って感じで決まってる。バイレ(バレエ)からすれば、いかにフラメンコのあの情熱的なところに入っていくかが重要なんであって、ギターの新作なんて望んでもいないし、またコンパスを変えられるのなんてむしろ弊害ですらあるんじゃないかと。これがフラメンコの曲種がずっと固定されたままである理由なんじゃないかと。だから、オーソドックスなフラメンコのCDを買うと、プレイヤーこそ違うものの、演奏している曲はみんな同じです。アドリブの要素が少なからずある音楽ではあるので、それでも楽しめるんですが。。これが、若い世代になると、フラメンコギター独奏というジャンルがだんだん開拓されていって、またそれがジャズとかクラシックなんかの他の音楽の影響も受けたりして、独立した器楽音楽という側面が出てきます。こうなると、だんだん「フラメンコ的」なものからは離れていく事になるわけですが…いや、それはそれで良い事なんだと思います。

 で、そうしたフラメンコの新しい局面を見事に音楽に反映させているひとりが、このビセンテ・アミーゴという人だと思います。純粋フラメンコをやっているCDとしては、彼のデビュー作があるのですが、例によって古典フラメンコの、知っている曲種ばかり。いや、フラメンコ右派の人は、これを望んでいるんでしょうが…。それに対比するように、このCDは、古典曲にエレキベースやカホンを入れて編成してみたり、フラメンコ的なアイデンティティを保ちながら他の音楽の要素を取り入れた、という感じです。ベースや打楽器を入れると、リズム部分は他に任せられるので、ギターは各パッセージごを弾き切る事に集中できるという長所が出たんじゃないかと。1小節とか2小節ぐらいで作られているそれぞれのパッセージの切れ味と言ったらありません。
 他にも、古典フラメンコから外れながらも、スケールなんかにフラメンコの香りを残している曲とか、色々なアプローチを楽しむ事が出来ます。フラメンコが伝統音楽化して形骸化してしまわないために、こういう挑戦を続けるラインというものも必要なんじゃないかと思わされます。ことヴィセンテ・アミーゴに関しては、古典をやるよりもこういうフュージョン的なアプローチをしたパフォーマンスの方が、なんだか似合っている気がします。

 …う~ん、なんかエラそうな文章になってしまいましたが、フュージョン的なアプローチが良い方に出た、素晴らしい音楽だと思います。これは、ソニーというメジャーレコード会社と契約したからこそ出来た音楽なのかもしれませんね。小さなレーベルでは、こういう音楽を作るだけの金銭的な体力はないでしょうから。しかし、ジャケット写真、いい目をしているなあ。







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『サビーカス / フラメンコの世界』

Sabicas_FlamenkoSekai.jpg ニーニョ・デ・リカルドに並んで、昔の大御所フラメンコ・ギタリストで「これはすげえな…」と思わされたのが、サビーカスという人です。ロックとかジャズに比べたら比較にならないぐらいに指が速いんですが、フラメンコとしてはまあ普通ぐらいなのかもしれません。しかし…やっぱり表現が凄いんです。変幻自在、曲全体を通しての構成力がハンパではない。落とすところは落として、そこから一気に持っていくから、グイグイ来ます。それでいて舞踊音楽フラメンコのあの強烈なリズムは残っているという。

 このCDには『サビーカス / フラメンコ・ギターの至芸』という姉妹盤がありまして、どちらのCDもおススメです。今回こちらを選択したのは、フラメンコの基本編成である、ダンス、歌、ギターの編成での録音がたくさん入っているから。『至芸』の方はギター独奏です。でも、そちらも素晴らしい。
 僕は音楽からフラメンコに入っているので、どうしてもギターを中心に聴いてしまいますが、実際のフラメンコというのは歌が重要で、次に踊り、ギターは最後みたいです。日本に「パセオ・フラメンコ」というフラメンコ専門誌がありますが、これなんかは完全に踊り中心。で、フラメンコの踊りや歌も物凄い。このCDには踊りのサパテアード(足さばき)の靴音や、パルマ(踊り手や歌い手や観客の手拍子)なんかも入っていて、また歌の強烈な煽り(「オレ~」とか有名ですよね。でも、そんな生易しいものじゃなくって、極端にアッチェルしていく曲中でで「ア~ヤ~ヤ~!!!」みたいな絶叫のあおりがもの凄いリズム感で叫ばれる時なんかは、ウオオ!!てなります^^)が聞けたり、ギターだけでない、フラメンコ全体の迫力が伝わってきます!!それがスタジオ録音のせいで妙に整って聞こえてしまう所だけが少し残念ですが。。
 クアドラ・フラメンコ(ダンスや歌も含めたフラメンコのフル編成)だけでなく、ギター独奏も入ってます。だから、2枚のうち1枚だけ選ぶなら、こっちの方がお得かなと。これにハマったら、もう1枚の方も買う、というのが賢いかと。。しかし…ジャケットがだせえ(笑)!!





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『ニーニョ・デ・リカルド / LE CHANT DU MONDE』

NinoRicardo_LeChant.jpg フラメンコ・ギターです。フラメンコを西洋の民族音楽にいれるか、ラテン音楽に入れるべきか迷いましたが、まあどちらでも正解であると思うので、ラテン音楽の源流という事で、地域的区別よりも音楽的区別を優先して、ラテンに入れる事にしました。

 フラメンコ・ギターには、技巧としてとんでもなく凄いものを感じます。フラメンコギターを聴いて「すげえ」と思わない人なんていないんじゃないでしょうか。僕はギターが弾けないので、それがどのぐらいすごい事なのかは分かりませんが、クラシックで神的な扱いを受けているセゴビアよりも、ジャズで神的な扱いを受けているパット・メセニーよりも、ロックで神扱いのジミヘンよりも、アンダルシアの街中でギターを弾いている名もないフラメンコ・ギタリストの方が上なんじゃないかと感じてしまいます。それも、とんでもなく凄いと感じてしまう。

 ところが、いざCDでフラメンコギターに手を出すと…なんかフュージョンっぽい方に走ってしまって、僕のイメージしているフラメンコの凄さを伝えているものというのが、なかなか見つかりにくい。例えば、フラメンコと言って真っ先に名前のあがるだろうパコ・デ・ルシア。これが、まあ上手いは上手いんでしょうけど、演奏が凄く平坦。例えば、16分音符が続いたとして、それを正確に等間隔かつ同じ強さで弾いてしまうような感じなのです。エモーショナルにしたいんだったら、弱いところから始めて強くしていくとか、遅いところから速くしていくとか、右手の表現をこそ重要視しそうなもんですが、これが全然ない。フュージョンの人の演奏みたいで、表現というものを分かってるのかな…と疑問に思えてしまいます。
 逆に、クラシックの人がフラメンコを弾くと、リズムもアタックも弱すぎて話にならない。グルーブしなくちゃいけないところでルバート気味に叙情的に表現しちゃったり。そんなこんなで、いざ探してみると「これぞフラメンコ!」というCDに行き当たる事は結構難しかったりします。

 古い人というのは、クラシックやジャズの世界では技術がなかったりするのでチョット敬遠気味だったのですが…このニーニョ・デ・リカルドという人の演奏は素晴らしかった。素晴らしすぎました。天才じゃないかろうか。。ベースノートを引きながら旋律を刻むとか、「ズジャララララン!!」という連続のストロークみたいなやつの迫力が凄いとか、あのフラメンコ独特の凄さがあるのは勿論なのですが…表現が素晴らしいのです。。音楽全体からもの凄く強いリズムが溢れ出てきているし、またそれがうねるように歌います。学生時代、僕はいろんな理由で別の楽器を選択してしまいましたが、もしその頃にこのギターに出会っていたら、ギターを選択していたかもしれません。

 ニーニョ・デ・リカルドという人は、伴奏楽器であったフラメンコ・ギターを、独奏楽器にまでした大人物だそうです。このCDに収められている曲のいくつかは、彼が書いたギター独奏曲で、今でもフラメンコ・ギターというとみんなこの曲から練習するそうです。また、俳優顔負けの2枚目で、フラメンコの女性ダンサーがみんなして彼に熱をあげ、彼もまたプレイボーイで野暮なことは言わずに片っ端から手を出したそうで。。そういう不良なところも、この音楽のやさぐれたような表現に繋がっている気がします。
 フラメンコ・ギターを聴いてみたいけど、何を聴いて良いんだかわからないという方は、ぜひここから入る事をおススメします。。凄いです。





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『グラズノフ:クレムリン、組曲《中世より》、叙情的な詩 クリムト指揮、モスクワ響』

Glaznov_poemeLyrique.jpg 20世紀前半のクラシック音楽が激動の変換期、前の時代の音楽と現代音楽が交錯します。R.シュトラウスの「変容」を真ん中とすれば、マルタンはもう少し現代寄り。そしてこのグラズノフはその逆で、ロマン派寄りの音楽という事になるかと思います。しかし、帝政ロシアがロシア革命という世界史上でも最大規模の市民革命で滅びる瞬間を生きた、まさにロマン派最後の輝きを見せた音楽…僕にはそう思えて仕方がありません。

 帝政時代のロシアというのは、ヨーロッパに憧れ、ヨーロッパの後を追っている所があります。またそれを自覚してもいるから、自文化の良さを探して国民楽派みたいなものも出てくる。後追いだからブームがちょっと遅い。ドイツやフランスが音列技法や4度積みの和声に突入しているときに、ロシアではようやくロマン派音楽で良いものを書く作家が出てくるぐらいの状況。しかし、後追いの良さというものもあって…元祖であるヨーロッパ中心地よりも完成度の高いものを作っちゃったりするわけです。更に、厳しい時代に突入していく落日の帝政ロシアという時代背景なんかもあって…ロシアの世紀末ロマン派音楽は、独特の美しさを放つ。

 僕にとっては、グラズノフの書いた「叙情的な詩」(poeme lyrique, Op.12)がまさにそれです。なんという美しさ、なんという叙情性。。10分ほどで終わってしまう短い曲ですが、息をのむ美しさ、息をのむ切なさです。ハードロック、フリージャズ、現代音楽…音楽の極致を辿ってきたと自分では思っていますが、しかしこれらの音楽では、世紀末ロマン派のこの儚さ、この美しさを響かせることは不可能でしょう。

 グラズノフという作曲家自体が、いまではもう歴史の中に埋もれかかっているのではないかと思われます。しかし、ショスタコーヴィチも彼に学んだという、ロシア音楽の中で重要な役割を果たした素晴らしい人です。その代表作として「叙情的な詩」を挙げる人は見た事ありませんが、僕はこの曲が一番好き。それは、グラズノフの作品の中で、というだけでなく、すべてのロマン派音楽の中で、そうなのです。
 ロシア世紀末ロマン派音楽の美しい響きは、埋もれてしまうにはあまりに惜しい音楽です。このCDを手に入れた当時、グラズノフの「叙情的な詩」の録音は、日本最大のレコード店でもこれしかありませんでした。NAXOSという廉価レーベルの出したCDなのでちょっと怖かったのですが、そのリスクを冒してでもCDで聴きたかった。そして…これが演奏も録音も意外と素晴らしかった!!クリメッツ指揮、モスクワ交響楽団の演奏、そしてモスクワ映画スタジオでの収録(!)…こういう所にも、色々な背景を感じました。


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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