
フラメンコ・ギターです。フラメンコを西洋の民族音楽にいれるか、ラテン音楽に入れるべきか迷いましたが、まあどちらでも正解であると思うので、ラテン音楽の源流という事で、地域的区別よりも音楽的区別を優先して、ラテンに入れる事にしました。
フラメンコ・ギターには、技巧としてとんでもなく凄いものを感じます。フラメンコギターを聴いて「すげえ」と思わない人なんていないんじゃないでしょうか。僕はギターが弾けないので、それがどのぐらいすごい事なのかは分かりませんが、クラシックで神的な扱いを受けているセゴビアよりも、ジャズで神的な扱いを受けているパット・メセニーよりも、ロックで神扱いのジミヘンよりも、アンダルシアの街中でギターを弾いている名もないフラメンコ・ギタリストの方が上なんじゃないかと感じてしまいます。それも、とんでもなく凄いと感じてしまう。
ところが、いざCDでフラメンコギターに手を出すと…なんかフュージョンっぽい方に走ってしまって、僕のイメージしているフラメンコの凄さを伝えているものというのが、なかなか見つかりにくい。例えば、フラメンコと言って真っ先に名前のあがるだろうパコ・デ・ルシア。これが、まあ上手いは上手いんでしょうけど、演奏が凄く平坦。例えば、16分音符が続いたとして、それを正確に等間隔かつ同じ強さで弾いてしまうような感じなのです。エモーショナルにしたいんだったら、弱いところから始めて強くしていくとか、遅いところから速くしていくとか、右手の表現をこそ重要視しそうなもんですが、これが全然ない。フュージョンの人の演奏みたいで、表現というものを分かってるのかな…と疑問に思えてしまいます。
逆に、クラシックの人がフラメンコを弾くと、リズムもアタックも弱すぎて話にならない。グルーブしなくちゃいけないところでルバート気味に叙情的に表現しちゃったり。そんなこんなで、いざ探してみると「これぞフラメンコ!」というCDに行き当たる事は結構難しかったりします。
古い人というのは、クラシックやジャズの世界では技術がなかったりするのでチョット敬遠気味だったのですが…このニーニョ・デ・リカルドという人の演奏は素晴らしかった。素晴らしすぎました。天才じゃないかろうか。。ベースノートを引きながら旋律を刻むとか、「ズジャララララン!!」という連続のストロークみたいなやつの迫力が凄いとか、あのフラメンコ独特の凄さがあるのは勿論なのですが…表現が素晴らしいのです。。音楽全体からもの凄く強いリズムが溢れ出てきているし、またそれがうねるように歌います。学生時代、僕はいろんな理由で別の楽器を選択してしまいましたが、もしその頃にこのギターに出会っていたら、ギターを選択していたかもしれません。
ニーニョ・デ・リカルドという人は、伴奏楽器であったフラメンコ・ギターを、独奏楽器にまでした大人物だそうです。このCDに収められている曲のいくつかは、彼が書いたギター独奏曲で、今でもフラメンコ・ギターというとみんなこの曲から練習するそうです。また、俳優顔負けの2枚目で、フラメンコの女性ダンサーがみんなして彼に熱をあげ、彼もまたプレイボーイで野暮なことは言わずに片っ端から手を出したそうで。。そういう不良なところも、この音楽のやさぐれたような表現に繋がっている気がします。
フラメンコ・ギターを聴いてみたいけど、何を聴いて良いんだかわからないという方は、ぜひここから入る事をおススメします。。凄いです。