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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Blossom Dearie』

Blossom Dearie アルバムを1枚だけ持っているジャズのフィメール・ヴォーカル、今回ここまで3枚聴いてきましたが、いい感じのものでもどこかに大きな弱点が…なるほど、だから1枚買って終わったんですね(^^)。というわけで、これまであまりいいことを書けなかったけど、果たしてこの人はどうでしょうか、ブロッサム・ディアリーです!
 この人は何が自分の性に合わなかったのかよく覚えていて、声がかなりの幼な声なんですよね。でも手放さずに取っておいたんだから、何か良いと思う所があったのかも、

 うわ、メッチャいいんですけど…あまりに気持ちよくて溜息出ちゃいます。この人はピアノ弾き語りですが、声はミックスヴォイスできちんとジャズヴォーカル出来ていて、リズムもピッチもよし、しかも技術をひけらかさずにしっとりと歌う白人女性ジャズヴォーカルの良さもばっちり。ピアノもコード押さえてガンガン引くしか出来ない弾き語りなんかじゃなくて、派手さはないけどきちんとジャズピアノしてました。リサイタル・ピアニストは無理でも、バンド抜きの弾き語りっぽいところでも結構やるぞ、みたいな。ついでにフランス語で歌ってる斧まであるんですけど…才女ですね、すごいなあ。。
 バンドはスモールコンボで、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、ジョ・ジョーンズ(dr) と達人揃い。これが派手さはないけど実においしい演奏をしていて、夜にこの音楽を聴いてしまったもんだから、お酒が進んでたまらないです(^^;)。ハーブ・エリスって、若い時は渋くてあんまり好きじゃなかったんですけど、このいぶし銀のギターは歳をとってから聴くとたまらないですね。

 これは57年発表のヴァーブ盤、たぶんブロッサム・ディアリーで一番有名なレコードだと思います。やっぱり幼な声で、こんな声の人に愛の歌を歌われるとなんだかロリコンか自分の娘と近〇相姦でもしてるような変な気分になってしまいますが…あ、それが売れた理由か!なるほど、だから若い時は嫌だったのか。間違いなくジャズのフィメール・ヴォーカルの名盤のひとつと思います。


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『Ruth Price / Sings with Johnny Smith』

Ruth Price Sings with Johnny Smith これも1枚だけ聴いた事のある女性ジャズ・ヴォーカルのアルバムです。ルース・プライスさんが、ギタリストのジョニー・スミスのカルテットを伴奏に唄ったものです。録音年がはっきりしないらしく、ジョニー・スミス・カルテットのメンバーから推測して1956年録音なんじゃないかという事らしいです。

 ジョニー・スミス・カルテットの編成が面白くて、ギター、ヴィブラフォン、ベース、ドラムです。そしてジャズギターとヴィブラフォンがどちらもあったかい音色なので、なんとも気持ち良い。。アレンジはそれほど凝ってないですが、それでもリードシートだけのセッションで済ませてはいなくて、アダルトな軽音楽感が出ていて良かったです。昔のアメリカのテレビ番組で流れてそうな軽さ(^^)。

 さて、ルース・プライスさんですが、歌唱はジャズのレッスンを受けたあとがあってなかなかでしたが、声がおばさんっぽいのと、発声自体が出来てないところがもう一歩に感じちゃいました(^^;)。昔、R&Bというかクラブ系というか、そっち系の女性ヴォーカリストさんと話していたら、「ジャズの人って歌がうまくない人が多い」なんて言っていて、ちょっと驚いたんです。何と比較するかにもよるんでしょうが、ロックやポップスに比べるとジャズってうまいと僕は思っていたので、R&B系のヴォーカリストがジャズを下に見ているのにビックリ。でもこういう歌を聴くと、なるほどそういう意味なのかな…なんて今さらながらに彼女の言っていた意味が分かる気がしました。

 ことヴォーカルに関しては、ジャズとポピュラーってアメリカの大衆音楽として未分化なものが多くて、歌唱法は真似できても発声法みたいな目に見えにくいものは教える土台自体がなかったのかも。いつか読んだナディア・ブーランジェの本でも、アメリカに西洋音楽の基礎を伝える事が出来たのはようやく50年代ぐらいからだったみたいですし、作曲家以外だと確かに良くも悪くも我流っぽい大衆音楽がアメリカの音楽で、この頃は見よう見まねだったのかも知れません。フランスやドイツだとクラシックのベースがあるからシャンソン歌手でもなんでも支えは作れるし頭声も綺麗で発声がしっかりしてると感じるんですが、アメリカって2次大戦での移民が根付くまでは、西洋音楽のベースが抜けた音楽後進国という感じだったのかも。

 色んな事を書いてしまいましたが、ジョニー・スミス・カルテットの演奏が、力が抜けていて気持ち良かったです!そういえばジョニー・スミスの歌伴はよく聴いたけど、リーダー作って聴いた記憶がないなあ。。


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『Rita Reys and the Pim Jacobs Trio / Marriage in Modern Jazz』

Rita Reys Marriage in Modern Jazz 白人ジャズ・ヴォーカルのリタ・ライスのアルバムです。伴奏はピアノのピム・ヤコブス…って誰だか知らなかったのですが、リタ・ライスの2度目の結婚相手だそうです。あ~なるほど、それでこのアルバムタイトルなのか。彼のトリオが面白い編成で、ピアノ、ギター、ベースで、録音はギターが左、ピアノが右。これだけでも聴いてみたくなりませんか…ならないか(^^;)。ちなみに、リタ・ライスはオランダの人で、これは欧州ジャズという事になるのかな?なるほど、だからレーベルがフィリップスなんですね。

 オランダとはいえ、ぜんぶ英語でど直球のジャズ・ヴォーカルでした。超大物のサラ・ヴォーンとかに届くほどではないけど、白人女性ジャズ・ヴォーカル系として普通にうまかったです。ただ、バンドはピアノもギターもヨーロッパのミュージシャンとは思えないぐらいに雑でした(^^;)。1960年の録音なので、当時のヨーロッパのジャズマンというのはこれぐらいだったのかも知れません。

 アレンジも特に凝ってるわけではないし、オケが表現力が弱いし、スタンダードナンバーだらけという訳で、悪くはないんだけど特に光るところは感じませんでした(^^;)。でも、この編成でやって意外とうまくやってたのが勉強になりました。ピアノとギターが一緒にいて上手くやってるバンドってあんまりないですもんね。


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『Jeri Southern / Coffee, Cigarettes & Memories』

Jeri Southern Coffee Cigarettes Memories 女性ジャズヴォーカルに嵌まっていた時期があります。中古屋で、面白そうだと知らないヴォーカリストでも片っ端から手を出していまして、アルバム1枚だけ聴いた人も結構います。これは、ジェリ・サザーンという白人ジャズ・ヴォーカリストの1958年録音です。

 日本盤についていたライナーによると、ジェリ・サザーンさんはクラシックやジャズのピアノをたしなんでいて、エージェントに「弾き語りを出来るともっと仕事があるんだが」と言われてヴォーカルにも手を出したんだそうです。で、そのヴォーカルなんですが…ちょっとビックリするぐらい音痴だった(゚∀゚*)エヘヘ。こもった声で呟くように歌うので、雰囲気はいいんですけどね…。

 バックはポピュラー・オーケストラで、レニー・ヘイトンという人が指揮、きっとアレンジもこの人でしょう。これが古いアメリカ映画の音楽みたいで、ムーディーでなかなかです。全曲とも聞き惚れてしまうほど素晴らしいオケとアレンジ。そして古いジャズなので、詞もムーディーで良かったです。「Detour Ahead」なんて、ビル・エヴァンスの演奏の印象しかなかったもんだから詞を知らなかったんですが、こんなにいい詞とは思いませんでした。
 というわけで、あとは歌さえ良ければすごく好きになったかもしれない、惜しい1枚でした(^^;)。


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『シューマン:ピアノ協奏曲 グリーグ:ピアノ協奏曲 ツィマーマン(p)、カラヤン指揮、ベルリンフィル』

Schumann Greig_Piano Concertos_Zimerman Karajan BerlinPhil シューマンとグリーグのピアノ協奏曲のカップリングものでは、こんなのも聴いたことがあります。録音は1981年、指揮はやっぱりカラヤンですがオケはベルリンフィルになって、ピアニストはアルゲリッチ以降のピアニストで僕がいちばん好きなピアニストのツィマーマン

 いやあ、リパッティの演奏とは大違い、なんと優雅なシューマンのピアノ協奏曲でしょう。細かい表現を捨ててまで勢いある演奏をピアニストに強要した若き日のカラヤンと大違い、こちらはツィマーマンのピアノにオケを従わせているかのようでした。人間、齢をとると、自分の意見ばかり押しつけるんじゃなくて、人のいう事もちゃんときくようになるんだな(^^;)。それにしてもツィマーマンさんのピアノは実に流麗、まるで女流ピアニストのようです。

 グリーグのピアノ協奏曲は、第1楽章の出だしがあまりに有名…って、僕が子どものころに親に買ってもらった「Hooked on Classics」というディスコ調のクラシック有名曲メドレーの企画レコードに入っていたから良く知ってるだけか(^^;)。グリーグはノルウェーの作曲家で、国民楽派に数えられていますが、基本はオーソドックスなロマン派。当時のヨーロッパ周縁にいた国民楽派の人が作る音楽って、ドイツ音楽8:地域音楽2ぐらいのブレンドで、ほとんどドイツロマン派音楽です。この曲もまさにそんな感じで、ちょっとだけ民族舞踊みたいなリズムが入ってますが、あとはおおむねドイツのロマン派音楽。ところが、これが実によく出来た協奏曲で、ピアノの見せ場はあるし、華麗なピアノと対比されたオケのアダージョの中間部は見事だし、ピアノ協奏曲の名曲のひとつだと思います。

 これは素晴らしい1枚だと思います。しかし僕にとって不幸だったのは、リパッティを先に聴いてしまったもんで、どちらの曲もピアノを流麗に弾かれるより、ガッツリ突進して欲しいと思ってしまう自分がいてしまう事でした(^^;)。ピアノのタッチが弱いからか、ピアノがオケに負けて聴こえないところもありますしね。。カラヤンにしては珍しい、ゆったりと構成したピアノ協奏曲でした。


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『シューマン:ピアノ協奏曲 グリーグ:ピアノ協奏曲 リパッティ(piano) カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団』

Shumann Greig PianoConcert_Lipatti_Karajan 打ち合わせの帰り、中古盤屋をぶらっと眺めてたところ…うおおおおおおお、リパッティ&カラヤンシューマンピアノコンチェルトのレコードだああああ!!!!これを聴かずに済ますようでは60~70年代生まれの日本男子失格、速攻でゲットです!なんでこのレコードがそんなに大事かというと…ウルトラセブンの最終回で流れたコンチェルトがこの録音だからです(^^)。
 な~んて言いつつ、僕はリパッティの演奏をあんまり聴いた事がないのです。むかし聴いたものはとんでもなく録音が悪くて、演奏に浸る以前に聴音ですら困難でした。そしてこのレコード…うわあこれも録音が悪い、それでもピアノはなんとか聴こえますが、オーケストラが20人ぐらいしかいないように感じる、しかもチェロやコントラバスはまったく聴こえない(゚ω゚*)。おかしいなあ、ウルトラセブンの時はもっとよく聴こえたつもりだったんだけど…ダンとアンヌに気を取られて、聴いてるつもりで聴いてなかったのかも。

 というわけで、音楽のニュアンスや細かいオーケストレーションを聴き取るのは無理、でも怪我の功名でエッセンシャルな部分だけがきこえて、カラヤンの意図やリパッティの演奏の瑞々しさが強く伝わってくる気がしました。シューマンとグリーグのピアノ協奏曲って、けっこう似てると僕は思ってるんですが、若いころのカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団の方針はどちらも猪突猛進で勢い重視、フォルテも大きく、バシッビシッドカ~ンみたいなかんじ。ただ、このフォルテが大きいと感じるのが、ロックのギターみたいに音がグシャッと潰れてるから「フォルテが大きくてカッコいい!」と僕が感じてるだけなのかも。だって、録音的な意味での実際のダイナミックレンジはものすごく狭いですし…。
 ルーマニアのディヌ・リパッティは、17歳でウィーン国際コンクールで2位になるものの、「いや、どう考えたって彼が一位だろ、他の審査員は耳腐ってんじゃねえのか」とコルトーが怒り狂ったという逸話が残っている、伝説のピアニストです。また、他にも伝説になった理由があって、33歳で死んでしまったという事と、録音があんまり残ってないから。リパッティさんの演奏、僕の印象ではロマンチックすぎず、でもそっけないわけでもテクニック重視でもなく、正確だけど適度に歌う凛々しい演奏という印象があったんですが、ここでの演奏はどちらの曲もフォルテで攻めるところは歌い回しは犠牲にして一気に持っていって、アダージョになると巧みに歌う感じ。けっこうガッツリしています。ああ、僕のリパッティ観とけっこう違う、これは認識を改めるべきか、それともオケがけっこう突貫型なのでそれに付きあわされたのか…カラヤンって、自分が描きたいようにオケにもプレイヤーにも細かい要求をした人らしいですしね。カラヤンの要求だとすると、テンポの速さやドッカーンという所が、リパッティのセンスよりもすこし過剰気味なのかも。

 でも1947~8年の録音なんだから、高音質を求めたって仕方ない、21世紀に前世紀の天才ピアニストの演奏に触れる事が出来るだけでもすごい事だし、それを聴いて「ああ、これはいいなあ」と思えたんだから、それだけで充分。自分の死を知りながら、医者に止められてもステージにあがった夭折のピアニストの演奏は、妙に重くも変にムーディーでもなく、瑞々しく生き生きとした演奏でした!ああ、買ってよかった(^^)。


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『シューマン:ピアノ協奏曲 シェーンベルク:ピアノ協奏曲 ポリーニ(p)、アバド指揮ベルリンフィル』

Schumann Shoenberg_PianoConcert_Polini_AbbadBerlinPhil ポリーニのピアノ&アバド指揮ベルリン・フィルによる協奏曲集で、シューマンシェーンベルクのピアノ協奏曲がカップリングされています。僕はシューマンの協奏曲はヴァイオリンもピアノも好きなのに、なぜ交響曲は心に響かないんでしょうか。ちょっとピアノ協奏曲を聴いてみよう(ゴソゴソ)…うああ、シューマンの交響曲と協奏曲は、とても同じ作曲者とは思えません、協奏曲はメッチャ劇的かつ情熱的、メッチャいいです!シューマンのピアノ協奏曲は、以前にアルゲリッチ&アーノンクールのものを書いた事がありますが、こちらのポリーニの演奏も素晴らしかった!シューマンはピアノ曲や歌曲が有名ですが、本当はオーボエとピアノのための「3つのロマンス」みたいな室内楽や協奏曲みたいに、主旋律&伴奏型のロマン派音楽を作った時がいちばん素晴らしいんじゃないかなあ。

 しかし、僕がシューマン以上にひきつけられたのは、シェーンベルクのピアノ協奏曲でした。12音技法を採用した時のシューンベルクの曲って、無調時代ほどには好きじゃないと思っていたんですが、これはすごかったです。音列自体は12音ですが、構造は古典~ロマン派的で、第1楽章がソナタ、第2楽章がスケルツォ、3楽章が2部形式、4楽章がロンド形式です。線の音楽の構造にホモフォニーの伝統的な形式を持ってくると、こんなにも安定するのかとビックリしてしまいました。12音列技法の作品の中では折衷的なものかもしれませんが、良かったです!

 それにしても、シューマンとシェーンベルクとは、面白い取り合わせですね。両者ともピアノ協奏曲を1曲しか書いてないからこうしたのかな?そういう事情であったとしても、両方の曲が互いを引きたてあって、すごく良かったです(^^)。


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『トゥームレイダー 美しき逃亡者』

TombRaider_UtsukusikiToubousha.jpg プレステ2で3D世界を冒険しまくるゲームでは、これも遊んだことがあります。映画にもなったトゥームレイダーというゲーム・シリーズの中の1本。プレステ基準で考えると(たしかこのゲームは元々PC用だったはず)、PS1ですでに5作が出ていて、これは第6作。僕はこの前の5作品すべてをプレイしたほどこのゲームにハマっていたので、PS2になって初めてのリリースとなったこのゲームは飛びついたんですが…

 あれほど夢中になったシリーズなのに、面白くなかったです(^^;)。僕にとってのトゥームレイダーは、とても行けるとは思えなかった窓のひさしに飛び移ったりして、「え、こんなところもいけるの?!」「こんなところに通路が!」みたいに、アクションを駆使して大冒険して、謎を解いて先にすすむのが最高に面白かったゲームなんですが(謎が難しすぎて先に進めない事もけっこうあるんですけどね)、『美しき逃亡者』は冒険感がなくなってしまいました。前は沙漠の町をさまよってエジプト旅行している気分になれたり、ジャングル、ヴェネツィア、中国の古い寺院などなどを冒険できてワクワクしたんだけどなあ。。

 というわけで、PSの時は貧弱な3DCG(でも当時はすごかった!)でも最高に面白かったのに、PS2でCGがきれいになったら面白くなくなってしまった珍しいゲームでした。以降トゥームレイダーは遊ばなくなってしまったので、他のものは面白いのかも知れませんが、その後は分からず。そして僕はトゥームの代わりにスプリンターセルにハマったという…。


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『キングスフィールドIV』 PlayStation2 ゲーム

KingsField4.jpg プレステ2のゲームの中で、城の中の探索が素晴らしく感じたのは、ICO よりもこっちの方がだんぜん上でした。ビデオゲームに限らず僕がダンジョン探索に夢中になったものは、映画『ルパン三世カリオストロの城』の城内、ゲームブック『バルサスの要塞』での城内探索、そしてヒロイック・ファンタジー系の小説のグイン・サーガ・シリーズの『イリスの石』ですが、このゲームはそのすべてを凌ぐ素晴らしさ。そりゃそうですよね、実際に3Dで表現された異様にリアルな古城の中を自分自身で探索できるんですから、面白くないわけがありません(^^)。このゲームは凄すぎ、あまりの素晴らしさに暇さえあればこのゲームをしていて、かれこれひと月はこのゲームを毎日のようにやってたんじゃないかなあ。

 舞台は中世ヨーロッパ風のファンタジー世界。古い城からヤバい王冠を持ってきたら国全体に呪いがかかっちゃって、主人公は王様に頼まれてその王冠を元の場所に返しに行く…みたいな話だったと思います。この古い城というのがよく出来ていて、ゲーム以上にこの城の図面を引っ張った人に拍手を送りたい!って感じでした(^^)。
 その城の見事さとは…両側の高い塔から弓が降り注ぐ場所があるとか(これはグラフィックスもすごくて感動しました!プレステ2ってすげえな、みたいな)、城内にお濠があって、よく見ると水の底で骸骨が歩いてるとか。城を探検してるだけでワクワクする世界でした。

KingsField4_pic1.jpg また、城に仕掛けられている仕掛けが見事で、これもゲーム性だけじゃなく仕掛けの見事さに感動してました。廊下の両側に甲冑がいっぱい飾ってあって、こいつら動くんだろうな…と思ったらやっぱり動いたり、死体安置所みたいな所の土床から骸骨がいっぱい出てきて、どうしたらいいんだよと思ったら、近くにあった鐘を弓で撃って鳴らしたら骸骨が大人しくなって、ああなるほどな、と思ったり。道をふさいでいる巨大な石の門番をどかすために、兜を石像に嵌めるのを思いついた時は感動したなあ。あと、跳ね橋を下ろす事を考えて、そこから城がどうつながってるのかをよく覚えて…なんてこった、このゲームを遊んだのは20年以上前なのに、今やっても繰り上げ切る気がするぐらいよく覚えてるぞ!それぐらい夢中になったんですね。

 プレステ2って、僕はもうゲームしなくなっていた頃で(仕事が忙しくてゲームどころじゃなかった)、そんなにゲームを遊んでません。でも、すごいと思ったゲームがいくつかありまして、この「キングスフィールド4」のほか、「ワンダと巨像」、「スプリンターセル」あたりは本当にすごいと思いました。でもこのゲームには弱点がありまして…ものっすごい3D酔いするんですよ(>_<*)。。乗り物にも酔わない、ましてゲームなんかで酔った事なんてない僕が、このゲームではゲロゲロでした。最高に面白かったけど、もう一度やりたいと思わないのは、ほとんどこの3D酔いのせいです(^^;)。でも面白いからやめられなかったなあ。


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『ICO』 PlayStation2 ゲーム

ICO.jpg 『ワンダと巨像』を作ったチームが制作したゲームです。いけにえとして神秘的な古代の城みたいな所に閉じ込められた男の子がプレイヤーで、その城の中で出会った真っ白な美少女を連れて一緒に城からの脱出を図る、というゲームでした。

 迷宮状の巨大な城をうろつきまわるという設定だけで僕のハートは鷲づかみにされました。この城がまたよく出来ていて、ゲームの攻略上は知らなくても大丈夫かもしれないけど、「あれ?ここからこういくとトロッコの先に出るのか」とか、もう冒険心でゾクゾク(^^)。ときどき攻略を忘れて探索に夢中になったりして。
 そして、PS1からPS2で格段に進化した3DCGが見事!ものすごい高い所にある橋を渡るときなんて、映像がいいだけにタマヒュンでした。またこれを生かして、高いところから落ちそうになって手でつかまるシーンとかあるんですよね(^^)。また、中庭とか、暗い城内とかのデザインも見事でした。ゲームだけじゃなくて、実際には自分で行く事の出来ない古代の西洋建築見学みたいな楽しさもありました。

ICO_pic1.jpg 物語も引き込まれるものがありました。城の中を探検していく過程でだんだん謎が分かってきて、一緒に連れている言葉の通じない美少女って実は…みたいな。ただパズルを解いて先に進むんじゃなくて、「どういう事なの?」と、先が見たくなりました。パックマンの頃からゲームをやってる身としては、ゲームってここまで来たのか、すげえな、と思いました。しかも、何を言ってるか分からない少女の言葉は、2周目で分かるよういなる、みたいな…僕は社会人になっていたもんで時間がなくて、2周目はやらなかったけど、やったらもっと話の内容が深く理解できたんだろうなあ。最後、僕は浜辺に放り出されちゃったけど、あれってバッドエンドだったのかな…。

 ゲーム自体は、定期的に襲ってくる影みたいな敵との戦いがワンパターンで若干だるかったですが、それ以外の部分は、「こういうゲームが出てきたら、インディジョーンズみたいなアドベンチャー系の映画ってもう流行らないんじゃないか」な~んて思ったほど。僕がゲームをやったのはプレステ2までなので、今だともっとすごいのもあるんでしょうが、おじさんの僕にはこれ以上の映像美はもういらないな、テレビゲームもこのへんが飽和状態、このへんのハードで考えられる限りのものがひと通り出たらあとは衰退するんじゃないかと思ってました。その予測はある程度当たってたんじゃないかなあ。そこまでフェイバリットなゲームでもないんですが、心に残ってる1作ではあります。


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『ワンダと巨像』 PlayStation2 ゲーム

Wand to Kyozo 子供のころからビデオゲームが好きだった僕は、成人してからもゲームにちょくちょくハマりました。さすがに大学や社会人になるとゲームやってる時間が無くなってあまり出来なくなったけど、たまに面白そうなゲームがあると現役復帰する、みたいな。面白い事に、自分でテレビゲーム機を買った事はあんまりないのに、いつの間にかうちにあるんですよね。スーパーファミコンは別れた彼女がそのまま置いてって、プレステ2はめぐりめぐってうちに来た、みたいな。というわけで、プレステ2のゲームでどハマりしたのがこのゲームでした。ちなみに僕は、プレステ2以降のハードは持ってません。

 ゲームの内容は単純。人間がどでかい巨像を倒すというもの。この巨大感が凄くて、昔のゲーム機と違ってプレステ2はグラフィックスが綺麗で凄い迫力でした!ものすごくでかい巨像が、自分の前にヌオーッと立ちはだかるんです。この凄さといったらちょっと言葉では言いあらわせません。大魔神で、お城の窓の外から大魔神のでかい顔がヌーッと見えた時の衝撃、ウルトラマンでラゴンがホテルの窓からでかい手を突っ込んできた時の恐怖…ああいう凄さでした。しかもこっちは襲われてるのが他人ではなく自分ですから、もう興奮しまくりました…子どもか俺は。

Wand to Kyozo_pic1 巨像を倒すのもスリリングでした。空を飛んでいる巨像にしがみつけば「堕ちたら即死じゃん」という恐怖が凄かったし、海の中を泳ぐ巨大なウミヘビみたいな巨像の背中にしがみつけば、濁った海中に潜るのも窒息の恐怖。神殿みたいな建物の影に隠れていると巨像がのぞき込んできて、その顔に生えたひげにしがみついて巨像の頭頂部にある弱点に剣を突きたてて…ああ、書いてるだけで思い出してまたやりたくなってきました。。
 こういう「自分が当事者」というバーチャル体験って、映画よりゲームの方が有利、ハードの性能をいかした素晴らしいエンターテイメントと思いました。いや~面白かったなあ、なんでも今は最新ハードでリメイクされてさらに綺麗になったみたいです。


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『ジョー・パワーズ – 青木菜穂子 / Jacaranda en flor』

JoePowers NaokoAoki_Jacaranda もしかすると『遥かなる午後』だけが例外なのかもと思い始めた青木菜穂子さんでしたが、それでも『遥かなる午後』の感動が忘れられず、バンドだと駄目でソロとかデュオぐらいだといいのかもとポチったのがこのCDでした。これ外したら僕はもう青木さんをあきらめよう、そうしよう。2014年録音、青木さんと、ハーモニカのジョー・パワーズさんのデュオです。レーベルは、『遥かなる午後』とおなじビショップレコーズ。この「日本のインディーズ・レーベル」というところが鍵で…

 買っておいてなんですが、実はどこかで諦めるために買った節があったのに、思っていたよりはるかによかった、やっぱり素晴らしいピアニストでした!演奏の表現が素晴らしい、曲が素晴らしいです!6曲のうち3曲がオリジナルでしたが、オリジナル曲のクオリティが高くて感涙。アルバムのラストが連発でオリジナルなんですが、演奏が繊細で切なくて『遥かなる午後』なみに心を掴まれてしまいました。ちょっと俺は涙が出るわ…。
 ほかには、リリアン・サバ(モダン・フォルクローレの人…でしたよね?)の曲「Saramani」がいなたくもモダンにも感じて、なんとも独特の抒情性。いやいや、青木さんって実はタンゴやらない時の方が素晴らしくないかい?単なる僕の趣味なのかな…。

 インディーズ録音でお金がないのか、同じ部屋で録音したみたいでピアノの音がちょっと遠いけど、音楽ってそういう事じゃないですよね、これって録音が捉えているものがいいのかも。Trio Celeste のCDはいい音だと思ったのに、なんでポップスと感じたのかというと、タッチや音色の表現をつぶしてお化粧した音なのかも。でもこのCDや『遥かなる午後』の音は、プレーヤーのタッチとかダイナミクスとか、そういう演奏表現がきちんと録音されてる感じ。もしかしたら、実は『遥かなる午後』と、オルケスタ・アウロラやトリオ・セレステって、やってることに大きな違いがあるわけじゃなくて、録音の方針だけが違って、それが音楽の差に感じるのかも

 古いジャズがいい例ですが、ブルーノートにしてもESPにしても、弱小レーベルって録音の条件は悪そうだけど、録音エンジニアやレーベルにすごく音楽愛があって、大手レコード会社の作ったアルバムより断然いいものを作り上げてきたじゃないですか。それって、その音楽のどこがいいのか自分たちの中ではっきりしてるから、多少のハンデがあっても、聴かせどころをしっかり聴かせる事が出来たんだろうと思うんです。
 今回、青木さんのレコードを聴き漁っていて、ネット上に青木さんへのインタビュー記事を見つけました。そこで青木さんがこのCDを作ったディレクターさんに関して、「音作りはもちろん、演奏以外の全てにおいてご意見いただきまして、このアルバムは私の名前になっていますがほとんど近藤さんとの共作です」と言っていました。なんとなくジョン・コルトレーンとインパルスみたいな関係を想像してしまいましたが、作品の制作のこういう姿勢や信頼関係が、こういう作品を生み出してるのかも。こだわりある職人が集まったアトリエみたいな独立系レーベルっていいなあ、こういうレーベルを自分でも作ってみたかったなあ。まあ、独立系レーベルって、中には単なる音楽ファンが作ったひどいものもありますけどね。。
 ところでこのレーベル、青木さんの作品を4枚作ってるんですけど、そのうち2枚がすでに廃盤で買えない…さんざん持ち上げておいてなんですが、独立系レーベルもこういう所はマイナスですね(^^;)。


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『Trio Celeste & Sayaca』

Trio Celeste and Sayaca タンゴは編成の大きいバンドがガシガシ弾くものが好きなので、青木菜穂子さんの録音はオルケスタ・アウロラを中心に聴いていこうと思ったんですが、そう思って買ったCDの録音がかなりアレな仕上がり_| ̄|○。怖くてオルケスタ・アウロラの他のCDを買えなくなってしまいました。というわけで、他にバンド編成のものはないかと探すと、こんなCDが!2016年録音、バンドネオン、ピアノ、コントラバスという編成のトリオ・セレステに、何曲かでヴォーカルのSayacaさんが入ったアルバムです。

 今度は音もよさそう!楽器の音量のバランスもいい!音楽もなかなか良さそう、これはいいぞ…と思ったら、あ、あれ?バンドネオンがふたりいる、ダビングかな…いやいや、これってもしかして、バンドネオンのマイクを左右に立てて、パンを思いっきり左右に振ったのか?!そう思い始めたら、1曲目では左寄りにいたと思っていたピアノが、気づいたら右寄りに。なんで日本のレコーディング・エンジニアって機材オタクなだけで音楽シロウトみたいなのが普通にいるんでしょうか。バンドネオンが左に右に行って気持ち悪いと思わないのかなあ。音質と音量バランスしか聞いてないのか…というわけで、僕は何十年ぶりかでアンプについているmonoボタンを押してこのCDを聴く事に。

 音楽はタンゴに限定したものではなくて、モダンアレンジのフォルクローレ、日本の古い歌「水色のワルツ」(アルゼンチンでも知られた曲らしいです)、オリジナルなど、色々でした。僕は学生時代に宮野弘紀さんや赤木りえさんなど、ブラジル音楽寄りの日本人ミュージシャンの音楽にハマった事があるのですが、そういう音楽に共通するものを感じました。なんだろ、アメリカの産業音楽ではない、音楽的で上質な西洋ポピュラー音楽、みたいな感じなのかも。ブラジルやアルゼンチンの人だと、そこに何か文化的な背景がくっついてくるんでしょうが、日本人がやるとそういうものはなくなって、良くも悪くも地域音楽ではなくポピュラー音楽に聴こえてくるのかも知れません。
 演奏では、数曲だけ歌っていたヴォーカルのSayacaさんが素晴らしかったです。半月ほど前(2022年3月)、テレビで小松良太さんが司会を務めた2時間のピアソラ特集番組を放送していたのですが、そこで「このヴォーカルは素晴らしいな」と思ったのがSayacaさんでした。日本のタンゴ歌手は決してメジャーな職業じゃないと思うんですが、こうして短期間で何度も出会うなんて運命を感じるなあ。ただし、スペイン語はしびれるけど日本語で歌うと…まあそれはいいや(^^)。

 素晴らしいんですが、これはあくまでポップス…おかしいな、『遥かなる午後』ではもっとゾクッと来るものを感じたんだけどなあ。演奏って人数が少ないほど表現が素晴らしくなるものだとは思いますが、そういう事なのかな。それとも…自分なりにこの結論に達したので、それは次回!


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『オルケスタ・アウロラ / プエルト・ア・プエルト』

OrquestaAurora_Puerto a Puerto 青木菜穂子さんのアルバム『遥かなる午後』に感動して、思わずアマゾンで青木さんがらみのCDを色々ポチってしまいました(^^;)。タンゴを聴くならやっぱりタンゴ楽団の編成かな…というわけで、こういうCDにも手を出しました。2009年録音、青木さんとヴァイオリンの会田桃子さんがダブル・リーダーを務めるタンゴ楽団のデビュー・アルバムだそうです。編成は6重奏で、ヴァイオリン2,バンドネオン2,ピアノ、コントラバス…おお、タンゴっぽい(^^)。曲は、半分がアルゼンチンのタンゴ・ミュージシャンのカバー、半分が会田さんまたは青木さん作曲で、編曲もふたりのどちらか。

 あら?音がやけに軽いな、リヴァーブがいやらしいぐらいについてるし。ポップスならそれもアリかもだけど、生楽器の楽団の演奏で、現実にはあり得ない響きを作られると引いちゃうんですよね、僕。スタジオ録音でもライブなんかのリアルな音を想定した音を作って欲しいなあ、これじゃ「ビートルズの曲を弦カルで演奏しました」みたいなライトクラシックと変わんないよ…。
 さらに聴いていると、ピアノとコントラバスの音量がとんでもなく小さい事が判明。最初なんて、ピアノとベースがいた事に気付かないほどでした(^^;)。このミキサーさんはタンゴどころか音楽というものをよく分かってなさそう、音楽がメロディと伴奏にしか聴こえてないんでしょうね。ついでに、ピアノをあんなに小さな音にしてるくせに、フォルテになったところでピアノを突き上げて、音が思いっきり歪んでました…ポップスみたいに何でもかんでもコンプかけてやたらと音を突っ込むからこういう事になるんですよね、楽器の音を歪ませてまで音量上げるって馬鹿じゃないかと思います。。

 日本の録音って、機材はいいけど音楽的でないものがけっこうあると感じます。特にメーカー所属エンジニアのミックスがね。。このCDもそうで、スタジオもマイクも一流のものを使ってるっぽいけどまるで音楽的でなくて、アンサンブルなんてあったもんじゃないバランスで、音楽を楽しむところまで行けませんでした( ;∀;)。ピアソラの曲もやってたけど、全体的にはオリジナルも含めて古き良きタンゴみたいな匂い。よさそうな音楽やってるみたいなんだけどなあ…。これで怖くなってしまって、この楽団のほかのCDをポチれなくなってしまったという。。


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『青木菜穂子 / 遥かなる午後』

AokiNahoko_HarukanaruGogo.jpg 新譜を買うなんて5~6年ぶりのご無沙汰。そんな僕がJazzTokyoに載っていたPVを見てひとめぼれしたのがこれ、日本のタンゴ系ピアニストの青木菜穂子さんの新作、2022年発表です!僕は古い人間なのでストリーミングやダウンロードは苦手で、レコードやCDみたいにフィジカルがあって欲しい人なもんで、CD発売というのも良かったです(^^)。

 タンゴ・ピアニストと聞いていたし、実際にも半分ぐらいはタンゴの作曲家の曲を取りあげていましたが(でも僕が知っていた曲は1曲しかなかった^^;)、聴こえてくる音が僕のイメージするタンゴとはぜんぜん違って、クラシックのピアニストが西洋ポピュラーを演奏したかのように感じました。タンゴ自体がそういう知性面を持っている音楽ではあるんでしょうけど、それがライト・クラシックやイージーリスニングにいくんじゃなくて、かといって形だけのなんちゃって洋楽かぶれ日本人ミュージシャンになるんでもなくって、もっとレベルが高いというか。
 とくに演奏表現がメッチャクチャすばらしかったです!インテンポのところでも常に歌っていて、それが繊細でゾゾ~ッとくる、みたいな。僕の趣味よりはちょっとロマンチックすぎるきらいがあるけど、でもこれだけロマンチックで繊細だからこそ感動したのかも。この切なさ、女流ピアニストならではなんじゃないかなあ。

 個人的には、タンゴやフォルクローレの曲(少し前に書いたアリエル・ラミレスの曲をやってる!)よりも、青木さんのオリジナル曲が素晴らしかったです。僕がPVを観て一瞬で心を奪われてしまった曲は、ヴィブラフォンとの二重奏「Florece en la madrugada」、青木さんのオリジナル曲です。メゾピアノから徐々に上げてクライマックスに達する構成力と表現がもうね…。僕はたいがい仕事をしながら音楽を聴いてるもんで、普段は小さな音で音楽を聞くんですが、この曲ばかりは大きな音で聴いてしまいました。録音も込みなのかも知れないけど、大きい音で聴くと音が美しすぎ。魂を持ってかれてしまいました。

 音楽の道で生きてきたピアニストが、自分の言葉で語った自伝か私小説のように感じました。ミュージシャンって、独学で楽器弾いて作曲して…みたいなタイプもいますが、その手の人は実際のところ音を言語的に使う事が出来ず、本当の音楽家とはちょっと違うと思っています(それが悪いとは言ってません)。一方で、音感を持ち、音楽を音の言語として理解できる人、これが僕が思うところの本当のミュージシャン。このCD、一聴して「これはミュージシャンだわ」と分かるレベルでしたが、こういう正式に音楽教育を受けてきた人って、プロ・ミュージシャンになって、音楽の仕事で呼ばれて演奏して、いつの間にか情熱をうしなって自分の音楽を作る前に歳をとって…みたいなことも多いと思います。ミュージシャンとアーティストであることは別なんですよね。
 青木さんもそういう人生を送ってきた人の気がしますが(あくまで僕の勝手な想像です^^;)、そういう人生の中で、自分を音でしっかり語ったのがこのアルバムな気がしました。「いつか私の人生も終わっていくけど、こんな風に私はこの世界を感じていたんですよ」、みたいな。私小説みたいな作品なので、大名盤みたいに言われる事はないかもしれないけど、音だけで語れるレベルの人ならこのアルバムの素晴らしさは分かるんじゃないかと。ピアニストの人間そのものが音ににじみ出たような、嘘のない素晴らしいアルバムでした、これは推薦!


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『Todd Rundgren / Faithful』

Todd Rundgren Faithful 1976年発表のトッド・ラングレンのソロ・アルバムです。でもバックバンドはユートピアのメンバー。トッド・ラングレンって、ソロとユートピアをどうやって使い分けてたんでしょうね。このアルバムはA面が60年代ロックのカバー、B面がオリジナル曲でしたが、ヤードバーズの「Happenings Ten Years Time Ago」を冒頭に持ってくるあたりが、ロックオタクっぽい(^^)。あとは、ビーチ・ボーイズ「Good Vibration」とかビートルズ「Rain」など。

 前半のカバーは、知ってる曲ばかりだったし、特に変わったアレンジをしているわけでもなかったので、音楽自体を楽しむというよりもオリジナルとの差を楽しんでしまいました。でもこれは別に褒めるほどのものでもないかな?
 おもしろかったのはB面のオリジナル曲で、すごくテクニカルなポップロックや、カーペンターズキャロル・キング当たりの匂いのする曲をもう少し軽くまとめた曲など、これは70年代型ポップロックの最先端だったんじゃないかというアレンジやプレイのオンパレード。僕は作り手としてポップロック方面に進んだことはありませんでしたが、もしポップロック方面に進む方がいらっしゃったら、トッド・ラングレンのサウンド・アレンジは一度は聴いてみるだけの価値があると思います。
 ただ、トッドさんはサウンドアレンジに気を取られすぎて、曲自体がもう少しだと思ってしまう事が多いです。メロディにしてもカウンターラインにしても何にしても、それぞれの音楽のパーツと他のパーツのつながりが希薄なので、バラバラに作った各パーツをつなげただけに聴こえてしまう事もしばしば。とはいえ、サウンドアレンジの素晴らしさだけでも70年代ポップロックの名作と呼ぶに値するアルバムと思うのもたしか。

 僕にトッド・ラングレンを薦めてくれた友人はふたりいて、ひとりはシンセ奏者としてバンドをお手伝いさせてもらった時のヴォーカルで、ユートピアとかプログレっぽいポップスとかのトッドのCDをたくさん貸してくれたのは彼。もうひとりが中学生の時の同級生で、彼が貸してくれたのは、ナッズやこのアルバムなどの上質なポップロックなアルバム群。つまり、よく知られているプログレ・ポップなトッドではなく、上質ポップなトッドに触れた事の方が僕は先で、なおかつ今ではもう会えなくなった中学時代の友人の思い出もあって、このアルバムは思い入れがあるんですよね。音楽そのものではなく、その友人との思い出や、まだ若かった自分に泣けてくる、みたいな。「歌は世につれ」なんて言いますが、本当にそういうところってありますよね(^^)。


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『Todd Rundgren's Utopia』

Todd Rundgrens Utopia トッド・ラングレンが作ったプログレッシブ・ロック・バンドがユートピア。これは1974年発表のファースト・アルバムです。学生時代に一緒にロック・バンドを組んだヴォーカリスト君がユートピア好きで、無理やり演奏させられたのが昨日のことのよう(^^)。当時のPCMシンセでは、このカッコいい音は出せなかったなあ。リングモジュレーターなんて、今ならマルチ・エフェクターに入ってそうなもんですが、当時は高くって手を出せませんでした。

 アルバム1枚で全4曲、4曲目は30分超。プログレというだけあってインスト志向が強く、14分超の1曲目は歌が始まるのはようやく7分過ぎ、しかも歌はおかず程度でした。でもこれはソフト・マシーン『4th』とかキング・クリムゾン『Starless and Bible Black』のようなプログレではなく、フォーカスとかリック・ウェイクマン期のイエスとかフィル・コリンズ期のジェネシスとかラッシュみたいなもんで、演奏重視であちこちにトゥッティや展開を作ってるけど、あくまでドミソのポップなプログレ。

 音楽を豊かに響かせたいなら、もっと根源的なところで鳴らさないといけないものがあると思ってます。たとえばアッチェルさせたり、音色に変化をつけたり、和声自体をもっと深く探求して刺激的な響きを作ったり、とにかく色々。でもこの手のピコピコしたプログレやフュージョンって、16分音符を並べてトゥッティさせるとか、そんな小手先の事ばかりに夢中になるじゃないですか。どこまで行っても「もっと音を感動的に鳴らす」という所を無視するので、そういうのを本当に知らないのではないかと疑ってしまうんですよね。正しく16分音符を弾くとか、テクニカルな運指を弾けるようになるとか、そういうのに夢中になる時期があってもいいけど、そんな所は10代のうちに卒業してほしいよな…みたいに思う人がいたっていいですよね。というか、いないとおかしいと思うわけです(^^;)。


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『Todd Rundgren / Todd』

Todd Rundgren Todd 1974年にトッド・ラングレンが発表した2枚組アルバムです。また2枚組か、全部ひとりで作曲して、すべての楽器の半分を自分で演奏して、2枚組アルバムを連発で発表って、スーパーマンか何かでしょうか(^^;)。しかも、曲もアレンジも録音も丁寧に作り上げて、さらに74年にユートピアという決して簡単な演奏でないバンドを並行してスタートさせて。これだけ忙しいと、それぞれの作品のクオリティが落ちても仕方なしと言う所ですが、僕的にはこれがトッド・ラングレン最高傑作…やっぱりスーパーマンだな。

 メドレーで連なる冒頭3曲があまりに見事。イントロダクションからクライマックスへと連なっていく見事な構造、テープの逆回転から始まってムーグのモジュレートが続き、歌に抜けたあとでもう一度このシンセパートに戻ったかと思うとそれが循環して雄大な模様を編みあげ…ELP『トリロジー』の冒頭に匹敵する見事さ、これは素晴らしい。。このシンセ・パートは冒頭のメドレーのみならずアルバムに一貫性を保つことになって、あいかわらず完成度の高いポップ・ロック・ナンバーをひとつの物語につなげていました。室内オペラ調の曲も多かったので、自覚してコンセプト・アルバムを作ったのではないかと。そうそう、このアルバムを作る前にトッド・ラングレンはシュタイナーなどのオカルト書籍を読みふけったそうで、精神性の高いものに惹かれたそうです。なるほど…。
 ポップスやバラードといった和声進行に工夫を凝らしたいい曲を書くトッドさんが、リフを強調したロックにより近づいたのも印象に残りました。「Everybody's going to the heaven」から「king kong reggae」へとつながる相当にハードなロックのメドレーは見事!

 70年代初頭のトッドさんのアルバムに共通していたあたたかく幸せな世界観は薄れましたが、少なくともこのアルバムに関してはそれが音楽に深さを与えたのも確かで、それが良かったんだと思います。僕的には間違いなくトッド・ラングレン最高傑作。ポップ・ロックのコンセプト・アルバムとしてもビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』をも超える大傑作と思います。若いころから何度聴いたか分からないアルバムだけど、久々に聴いてまたしても興奮してしまいました。ポップスやロックが好きで、このアルバム未体験の方は、ぜひ聴いて欲しいです!


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『Todd Rundgren / Something/Anything?』

Todd Rundgren_SomethingAnything 1972年発表、ナッズ解散の翌年にトッド・ラングレンが発表した2枚組セカンド・アルバムです。レーベルはフォガットやジェシ・ウィンチェスターの在籍したベアズヴィル。ベアズヴィルってウッドストック近くののどかな田舎町って聞いたことがありますが、フォガットを除く所属アーティストはたしかに温かい音楽が多かった印象。このアルバムも明るく上質なポップロックでした。
 
 4ピース・バンドにブラスなりフルートなりをダビングしていく形の音楽。曲が良く出来ているうえに明るくほんわかした曲想が多いから、なんとも心地よいポップ・ロックに仕上がっていました。難しい事をしているわけじゃないけど、曲もアレンジも丁寧に作り込まれていて、聴いていて心地よいだけでなく感心してしまうほど。あ~これはいい…。ヴァンプの挟み方、大サビの作り方、曲中でのリットの使い方、オーバーアレンジに感じさせない上物の挟み込み方など、アメリカン・ソングフォームでのポップスの作編曲を勉強したいなら、これは研究する価値のあるアルバムじゃないかと。

 70年代って、カーペンターズやポール・サイモンやバート・バカラックなど、こういう丁寧に作り込まれた良質なポップ・ロックのアルバムがいっぱいありましたが、なんで今は無くなっちゃったんでしょうね。丁寧に作られた音楽は耳にしますが、のどかで平和を感じる音楽がなくなったのかも。でもそれも分かる気がしなくもないです。だって僕自身が若いころにこのレコードを聴いて「退屈だな」とも思ったんですよね。つまり時代がそういうあたたかいものを「良い」と思わなくなったのかも。それはトッド・ラングレン自身もそうだったのかも知れず、70年代なかばから上質なポップ・ロックから少しずつ外れていきました。というわけで、のどかで優しい質感の上質なポップ・ロックを作っていた頃のトッド・ラングレンを聴くなら、個人的にはナッズのサードとこのアルバムを推したいです!


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『James Bond 007: 13 Original Themes』

James Bond 007 13 Original Themes 最近みたら「あれ?こんなに子供だましだっけ?」と思ってしまったものの、中学生の頃に見た映画「007 ゴールドフィンガー」の面白さはたまらないものがありました。おもしろいだけでなく、子供が見てはいけないアダルトな世界を感じ、洋画にハマるきっかけになった映画のひとつでした。これはそんな映画007シリーズのテーマ曲を集めたベスト盤。1983年の13作目「オクトパシー」までの主題歌が収録されています。好きと言っておきながら、007は3つ4つぐらいしか見てないんです(^^;)。

 ギターがメロディを刻む例のテーマ曲のカッコよさは、スタートレックのテーマと並ぶ60年代サントラ名曲!それはもちろんとして、60年代の作品の主題歌群がまたいいです!第2作「ロシアより愛をこめて」、第3作「ゴールドフィンガー」、そしてトム・ジョーンズが歌う第4作「サンダーボール」あたりは、007を見た事がない人でも知ってる大有名曲じゃないかと。日本や欧米の60年代のテレビ/映画の音楽って、あの時代にしかない独特のムードがあって好きです。ストリングスと歌伴バンドのミックスとか、独特のストリングスの音色とかね。でも、後半になると、シーナ・イーストンとかポール・マッカートニーの産業ポップスのオンパレードになって、僕的にはつまらなかったです(- -*)。

 映画が圧倒的な力を持ってた最後の時代の作品は、音楽も素晴らしいです。俗っぽいと言えば俗っぽいですが、ちゃんとお金をかけていいものを作りだすその根性がいい!007のサントラは初期だけで良くて、それを1枚で済ませたかった僕にはうってつけのレコードでした!


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『Shirley Bassey / Live At Carnegie Hall』

Shirley Bassey Live At Carnegie Hall ジェームス・ボンドの映画主題歌と言えば、何はなくともイギリス(ウェールズ)の歌手シャーリー・バッシー!僕的には、「ゴールド・フィンガー」のテーマソングは、007のテーマよりも印象が強いです。「ゴ~~ルドフィンガ~~」の振幅の広いヴィブラートが病みつき(^^)。このレコードは2枚組のライブ盤で、伴奏がなんとウディ・ハーマン楽団!それでいて、エレキ・ベースが入っていたり、ストリングスもいたりして、相当な豪華さです。

 声の張りも声量もピッチも、そしてあのヴィブラートも見事。おおーこれは本物のプロ・シンガーだ、ウディ・ハーマン楽団を前にして全然ビビらずにここで歌えるのか、すげえ。僕だったら、カーネギー・ホールでバックがウディ・ハーマン楽団ときたら、ビビッて声も出ないんじゃないかなあ(^^;)。この手のシンガーさんって、微妙なニュアンスとか何とかより、なによりストリングスやビッグバンドに負けないだけの声量と通る声を出すのが重要なんでしょうね。色としてはカーメン・マクレエとかダイナ・ワシントンとか、ああいう感じで、「バンドのみんなも弦のみんなも、フロントは私に任せなさい!」みたいな迫力。こういう人って、映画音楽だけじゃなく、ラスベガスのステージとか、そういう所に立っても楽器としての声で歌えてしまうんでしょうね。20世紀の英米エンターテイメント音楽の本物のプロ歌手だと思いました。

 ただ、バックバンドのアレンジがなんとも歌謡ショー的で、ちょっと萎えました。。なるほど、昔は売れてる歌手のバックバンドをビッグバンドが支える事がありましたが、ああいうのって日本だけじゃなかったんだな、みたいな。アメリカにもイギリスにもフランスにも、そういう作り方をするステージってあったんですよね。

 というわけで、せっかくウディ・ハーマン楽団まで使ったのにオケが残念でしたが、歌が凄い!シャーリー・バッシーのアルバム、僕はこれしか聴いたことがありませんが、エンターテイメントな歌謡ショーといえど、超一流プロ・シンガーが歌うとここまで凄くなる事を思い知ったライブ・アルバムでした(^^)。ライブで聴いたゴールドフィンガーの迫力も凄かったです。。


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映画『007 ゴールドフィンガー』

007 goldfinger 1964年制作、スパイ映画007シリーズの第3作です。僕がはじめて観た007シリーズの映画はこれでした。ちなみに僕は、シャーリー・バッシーが歌ったこの映画の主題歌「ゴールドフィンガー」が大好き。「デンデケデンデ~デデデ」というジェームス・ボンドのテーマより好きかも(^^)。

 金の密輸を行って莫大な利益を得ている商人ゴールドフィンガー。イギリスのスパイ007は彼の調査を命じられるが、同じく彼を狙っていた女は全身に金峰を塗られて窒息死させられ、ボンドは囚われの身となる。ゴールドフィンガーの企むグランドスラム計画の全貌を知ったボンドだが…

 この映画、中学生の時にはじめて観たんですが、その時はすごく面白いと感じたんですよね。ところがおっさんになった今見ると、なんというか…つまらないわけじゃないけど子供っぽい?車のホイールからドリルが伸びてきて隣の車をパンクさせるとか、なんかね(^^;)。ストーリーもひねられたものではなく、巨悪がいてそいつの企みを潰す勧善懲悪の一直線。あれ?こんな映画だっけ?

 そう思い始めると、女たらしですぐ女に手を出す描写も知性的とは思えず、視聴者のオッサンを喜ばす目的で用意されただけで、高度な推理映画なんてものじゃなくて単なる下世話だな、みたいな。

007 goldfinger_opening でもこういった007のスパイの秘密兵器的な描写って、僕が子供のころ夢中になって見た子供むけ番組の手本だったのかも知れません。兵器化した車は「ウルトラセブン」のポインターがこれとそっくりだったし、車からドリルが出るのは「マッハGo!Go!Go!」。鉄格子に電気を流して強すぎる敵用心棒を感電させるのはルパン三世第2シリーズの第1話が同じ事をしてました。僕が子供の頃の週刊少年漫画雑誌の広告欄では、色んな小道具がついたスパイキットなんてものが売られてましたし。いま見るからあれこれ思うだけで、1960年代は発振器もレーダー型カーナビも、大人がみても「おお、すげえ!」と思うものだったのかも知れません。

 007シリーズはMI6を扱ったスパイ映画なので、国際政治が絡んだり高度な推理小説っぽかったりするのかと思ってたんですが、少なくとも初期はかなり脳筋なアクション映画でした。そうそう、大人になってから見ても素晴らしかったのは、オープニング・クレジット部分の、金粉をあしらった女性をイメージショットの合成。この芸術性の高いタイトルシーンを作ったのはロバート・ブラウンジョン、その筋では有名な人ですが、これはその傑作のひとつじゃないかと。初期007はオープニングのアートフィルム的なイメージショットがいいです!


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映画『007 ドクター・ノオ』 ショーン・コネリー主演

007 DrNo 1962年公開の英米合作映画、大ヒットスパイ映画シリーズの第1弾です!最近は『ドクター・ノオ』で通ってますが、日本初公開時は『007は殺しの番号』という邦題だったそうです。

 合衆国のロケット発射を妨害する電波が発せられ、英国秘密情報部MI6のスパイが謎の死を遂げる。コードナンバー007のジェームズ・ボンドは事件解明の命を受けてジャマイカに入国。殺し屋たちの襲撃をかいくぐり、人の入れぬ資源採掘場が怪しいと睨み、CIAと協力して資源を採掘する島へ潜入。島には竜がいるという噂があり、そんな馬鹿なと否定するボンドだったが、他のスパイや学者も「竜を見た」と言い…

 ロケット発射をめぐるサスペンス・アクションで、話は直球。謎が解明されていく推理要素は意外に少なかったです。日本の推理小説でいえば横溝正史より江戸川乱歩に近くて、ストーリーの深さよりもアクションや迫力やテンポで魅せる感じ。妻と一緒に「ドクター・ノオの正体って、あの人かな?」とか色々言いながら見ていたのに、それまでに出てきた誰でもなかった…じゃ、なんで途中まで顔を映さなかったんだって話ですよね(^^;)>。でも面白かったです。

 圧倒されたのはセット。この映画、007シリーズの中で最も低予算らしいですが、それでも広いミサイル発射基地や通風孔のセットなど、戦後の日本やドイツの映画では作れない大規模なセット続出で凄かったです。あの時代にこういう事をやれるのは、戦勝国アメリカやイギリスぐらいだったかも。またこれだけの巨額なお金を使って作るものが娯楽というところが資本主義世界といった感じ…これは良い面も悪い面も両方ですね(^^)。資本主義枢軸国の巨大資本で作られる娯楽映画って、僕たちが生きてる時代にしか成立しないんじゃないかなあ。だって、本当ならその余裕を貧しい国や環境問題なんかに回せればもっといいですもんね。いつかそういう時代が来て、こういう映画は作られなくなるんじゃないかなあ。今のロシアとウクライナの戦争を見ていると、そんな気がします。

 僕が映画を観る時の僕の楽しみのひとつ、世界旅行に時間旅行もばっちりでした。舞台はジャマイカ、撮影は60年代…いや~マジでタイムスリップして楽しむ中米旅行気分、ラテン音楽も流れていて最高でした!まだスカやレゲエの登場以前のジャマイカを記録したフィルムってメッチャ貴重じゃないですか!

 この映画の制作は1962年。着ている服にしても車にしても、少なくとも先進国は60年代の方が豊かだったんじゃないかと思ってしまいます。僕は007シリーズはそんなに見ていなくて、『ドクター・ノオ』はその中でも最高傑作とはいいがたいし何度も観なくていいとは思いましたが、それでもなかなか面白かったです(^^)。


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『Sergio and Odair Assad / Alma Brasileira』

Sergio and Odair Assad AlmaBrasileira クラシック・ギター・デュオで一世を風靡したアサド兄弟によるブラジル音楽集です。1987年録音、日本盤タイトルは『ブラジルの魂』。アサド兄弟はブラジルのギター・デュオなので、ブラジル音楽集はようやく登場した企画(^^)。しかも、選曲がいいんです!ヴィラ=ロボスみたいな大御所から、ジスモンチ、ノブレ、パスコアルといった現代作曲家もの、そしてオリジナルと、バランスが素晴らしいアルバムでした。クラシックって人の曲やるものがほとんどだから、選曲でやりたいことを表現する事って重要だと思いますし、器楽曲なら自作曲を何曲か入れるべきだと思うんですよね(^^)。

 あ、あれ?このアルバム、僕は昔ふとしたきっかけで耳にして、大感動して自分で買ったもので、アサド兄弟の最高傑作と思っていたほどでした。それほど感動したのに、久々に聴いたらそんなに感動しないぞ?!なぜだろう…。
 こういうことなのかも。クラシック・ギターの曲はほとんどが超絶技巧といっていいほどなので、作曲はその入れ子細工の職人技の作曲技術に感動するし、演奏は一流のプレイヤーのものだとどれも技術に感動するんですよね。さらにクラシック・ギターほど多彩に音色を使い分けられる楽器もなかなかないので、指の速さやメカニカルなテクニックばかりじゃなくて、表現をきちんとしに言っているプレイヤーさんの演奏だと、表現に感動するのです。まず、若い頃に僕が感動したのはこんな感じだったんじゃないかと。

 一方、なぜ昔ほど感動できなかったかというと…音楽のベースにあるものが機能和声だらけなんですね、現代の新曲なのにこれだと、ポップスをクラシック・ギターの超絶な編曲と演奏技巧でやったものに聴こえてしまったのでした(^^;)。こういう傾向って南米全般に感じるもので、モダン・タンゴ、モダン・フォルクローレ、そして南米のクラシック・ギター曲のすべてがこうなりがちなんですよね。

 なぜこうなるかというと、ヨーロッパの作曲家が書いたギター曲と違って、南米のギター曲ってギタリストが書いたものが多いからなのではないかと思ってしまいます。つまり、現代の作曲技法を通過しないまま作曲している事が多いんじゃないか、みたいな。このアルバムで唯一7音音階などの「ふつうの」西洋音あくの和声法を外れているものは、ニャタリ作曲「サンバのリズムによるトッカータ」でしたが、ニャタリはピアニストですしね。。考えてみたら、僕が好きなクラシック・ギターの現代曲って、武満徹さんやブリテンなど、ギタリストがついでに作曲しているものではなく、プロの作曲家が書いたものばかりでした(^^)。このあたりは、ギタリストがギターを書く事が当たり前と思っているブラジルなりの文化があるのかもしれません。


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『Sergio and Odair Assad / Plays Piazzolla』

Sergio and Odair Assad Plays Piazzolla クラシック・ギター・デュオとして一世を風靡したアサド兄弟による、ピアソラ作品集です。う~ん、ひとつ前に取り上げた『Sergio and Odair Assad / Latin American Music』とは「タンゴ組曲」がダブってるぞ、アレンジも表現もを変えているわけでもなさそうだったので、こういうのはちょっとね。。

 うまいです。そして、クラシック・ギターというジャンルはあいかわらず超絶技巧のオンパレードですごいなと思ってしまいました。でも、なんというか…心にグッと来なかったのです。なんでだろ…。
 理由はピアソラの音楽というところにあったのかも。ピアソラが自分のバンドで演奏しているモダン・タンゴって、ものっすごく熱いじゃないですか。ピアノなんて潰したような音がガシャーンと入ったりグリッサンドなんて当たり前の世界で、リズムもアクセントがかなりはっきりつけられて「ザンッ!ザンッ!ザンッ!ジュワン!!!」みたいな。でも、このギターデュオのピアソラは、指先で難しい事を色々やってるけど、ちまちました音楽に聴こえてしまって、ピアソラのダイナミックな表現とまるで違うと感じてしまったのです。似たようなことを、クレーメルが演奏したピアソラ作品集でも感じたことがあったなあ。。

 でもダイナミックさに欠けるのって、クラシック・ギターあるあるかも知れませんね。ブリームやジスモンチや山下和仁みたいにギターをダイナミックに演奏できちゃう人の方が珍しいのかも。というわけで、僕的にはこれはナシでしたが、それにしてもべらぼうにうまいです。意外と、フュージョンやプログレが好きな人に受ける演奏かも。


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『Sergio and Odair Assad / Latin American Music』

Sergio and Odair Assad Latin American Music ブラジルのクラシック・ギター・デュオのアサド兄弟によるラテンアメリカ音楽集です。取り上げている作曲家が面白いので、思わず買ってしまった1枚でした(^^)。日本のメジャーレコード会社が作るクラシック演奏家のCDって、「またアルハンブラの想い出かよ」みたいに、有名人の有名曲ばかりの上に古くさかったりしますが、ラテン系クラシックって、有名無名を織り交ぜ、しかもそのセンスがいいものが多い印象。さすがにワーナーが力を入れて売り出しただけの事はあるギターデュオ、本物でした(^^)。

ピアソラ:タンゴ組曲Tango suite
・ブローウェル:ミクロ・ピエサスMicro piezas
・パスコアール:ベベ Bebe
・ジナタリ:組曲<肖像>から Retratos
・S.アサド:珊瑚の市レシーフェRecife dos corais、ヴァルセアーナValseana、大鬼蓮Vitoria Regie、跳躍 Pinote
ヒナステラ:バレエ《エスタンシア》から「たそがれの牧歌」(J.M.サラテ編)

 ピアソラ「タンゴ組曲」は、アサド兄弟に献呈された曲だそうです。というわけで、これぞオリジナルですね(^^)。いかにもピアソラ風タンゴといった感じでした。

 ブローウェル「ミクロ・ピエサス」。ブローウェルの作品は時代によってけっこう作風が変わるんですが、これは初期の作品で、けっこう前衛性が強くてメチャクチャカッコいい!前衛といっても理屈だけの音楽ではなくて、かなり熱いんですよね、さすがはキユーバ。

 パスコアールはブラジルのマルチ楽器奏者で、なんともいえない音楽を大量に生み出しています。「ベベ」はかなり有名な曲で、いかにもブラジル的なポピュラー音楽風の曲ですが、ギター二重奏版を聴いたのは初めてでした。すっごい速さで演奏していてビックリした!

 ジナタリ「組曲<肖像>から」。ジナタリって聞いてピンとこなかったんですが、ニャタリの事なんですね。ニャタリはブラジルの作曲家で、クラシックとポピュラーの両方で活躍している人です。というわけで、曲はけっこうポピュラー音楽的な機能和声。

 セルジオ・アサドの曲は、プレイヤー作曲家の曲と馬鹿に出来ないほどよく出来ていて、むしろギターを演奏できる人じゃないと、こういうギター的な奏法を駆使した曲はかけないんじゃないかと感じました。ただ、クラシックギターのプレイヤー作曲家の曲って、やっぱり普通の長調/短調か、モードぐらいのものが多いんですよね。。

 ヒナステラはアルゼンチンの作曲家で、このCDで取り上げられた作曲家の中では唯一の作曲の専門家です。ある時期以降のラテンアメリカの作曲家は、ラテンアメリカのアイデンティティというものを相当に意識して作品を書いていて、ヒナステラのこの曲もそういう印象でした。でもその作曲はあくまでロマン派音楽の中でどう南米を表現するか、みたいな感じでした。

 ギターがとんでもなくうまいもんで、耳がついつい細かい技巧的なところばかりにひきつけられてしまうんですが、よく聴くとラテンアメリカのギター音楽って和声面が19世紀的なものが多くて、そこがちょっともう一声かな、って思ってしまいました。ハートとかアイデンティティとかそういうところを重視するのは分かるんですが、それを言い訳にして作曲技法の追求が雑になってる気がしてしまうんですよね…。良かったのはブローウェルの曲の1曲目、これは素晴らしかったです!


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書籍『ウイルスの意味論』 山内一也

Virus no imiron_YamauchiKazuya コロナ禍となり、「ウイルスって何なのか、僕はよく分かってないな」と思って読んだ山内一也さんの本『新版ウイルスと人間』が分かりやすくて素晴らしかったので、山内さんが書いたウイルス関係の本をもう一冊読んでみました。先に読んだ本が入門的な内容だったので、もう少し学術的に踏み込んだ内容のものを探して選びました。

 まずは、もし自分がウイルスの基礎知識を持っていないと思うなら、この本を読む前に、入門編のウイルス本を読んでおいた方がいいと思いました。ウイルスはDNA型とRNA型があるとか、代謝機能を持ってないとか、ウイルスは宿主の動物には悪さしないどころかいい働きをする事すらあるとか、そういう事はあらかじめ知っている前提で書かれているようでした。
 そして本文。11章に分かれていて、各章それぞれがテーマに掲げた内容を詳述する形でした。僕の目に留まった記述は、以下のような所でした。

・生物は死んだら生き返る事は無いが、ウイルスは「多重感染再活性化」という現象で死んでも再生する事がある(1章)

・生物の定義のひとつが自己複製であるなら、ウイルスは生物ではない。ウイルス粒子は外界にいるうちはたしかにそうだが、しかし細胞内に入るとそれは生きている。つまり、ウイルスの存在によって生物の無生物の境界があいまいになった。(4章)

・ヒトのゲノムには約25万のHERV(ヒト内因性レトロウィルス)が入り込んでいる。このうち、HERV-Wというファミリーの働きによって、父親の遺伝形質を受け継いた胎児が母親のリンパ球により排除されずに住んでいる、つまり、ウイルスがもたらした遺産によって人間は生まれる事が可能となっている。(5章)

・アメリカのイエローストーン国立公園にあるパニック・グラスという植物は、土壌の温度が50度ともなる環境でも生きる。その理由はクルヴラリア・プロトゥベラータというカビが寄生しているためで、このカビに強制しているウイルスによってパニック・グラスは高温でも生き延びる事が出来ている。(6章)

・ウイルスは海中にも数多く存在し、ウイルスによって生態系の有機物の配分が強く影響を受ける。(8章)

・水中では太陽光と微細藻類が光合成により二酸化炭素を有機物に変換しているが、その際分解された自らは酸素が放出される。こうした海の炭素循環で発生する酸素の量はちきゅうの2/3を占める。ウイルスは二酸化炭素を吸収する微細藻類を死滅させるため、ウイルスは地球温暖化に影響を与えていると考えられる。(6章)

・ウイルスの多くは、恐らく数百万年から数千万年にわたって宿主生物と平和共存してきた。それが人間社会と派手に接触したのは20世紀から。これは人間にとっても激動だが、ウイルスにとっても激動。(11章)

 そして、最後にこれらを総括してウイルスの意味を問う…というのがこの本が狙った所だったと思うのです。だってそれをやらないと意味論にならないのでね。でも総括されていなかったので、単にウイルスの知識をバラバラに語ってるだけになっちゃってる気がしました(^^;)。
 というわけで、僕が勝手に総括して意味を立ち上げておくと、以下のような感じ。ウイルスは人間が思っているところの生と死を乗り越えた存在であって(1・3章を帰納)、人類の誕生にも生きるためにも必要なウイルスもあって(5章を帰納)、地球の生命環で大きな影響を持っている(6章を帰納)。最後の、「(ウイルスは)地球の生命環で大きな影響を持っている」が、地球や生物にとってのウイルスの意味、というところなのかな、と思いました。

 コロナ禍にあって、WHOにしても各国政府にしても、ワクチン研究を進めるとかワクチンを打つとか、家から出ないようにするとか、せいぜいそんな対策しかしないじゃないですか。でも僕が読んだウイルス関係の本によれば、ウイルスはある一定割合で変異するし、もし人間が集団免疫を得るというのは、政府がやってることとはぜんぜん違う事。だから、応急処置としてはワクチンや戒厳令を敷くとかしかないだろうけど、根本的にはそれは付け焼刃であって、人間がこれまで接触してこなかった生物と接触しないで済むぐらいまで地球全体の人口を抑制するとか、それをしないのであれば大きく見たら本当に集団免疫獲得のために一定数の人が死ぬのを覚悟するとかをしないといけないのだと思います。だいたい、根本のところで「ウイルスは今の人間にとって良かろうが悪かろうが、地球の生命環の一部となっている」のだから、それを排除するなんてこと自体が方途として大間違いだとしか思えないんですよね。「人間は水に溺れるから、地球から海を無くすようにする」とか、しないですよね?それと同じことだと思うんだけどなあ。
 そういう重要な事を考えるベースになる生命/ウイルスに関する教養を与えてくれる良い本だと思いました!


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『John Coltrane / Impressions』

John Coltrane Impressions 1961年から63年の録音を集めたアルバムで、4曲中2曲が61年11月3日のヴィレッジ・ヴァンガードでの演奏です。という事は…そうなのです、2曲が日本編集の『John Coltrane / "Live" at the Village Vanguard 11-03 & 05-1961』とダブるわけです。レコード会社は同じものを2度買わせるような事はやめてほしい、これで僕はビクターという会社が嫌いになりました(- -*)。それでも買ってしまったのだから、若い頃の僕はそれだけコルトレーンにハマってたんだなあ。

 「India」と「Impressions」はCD『"Live" at the Village Vanguard 11-03 & 05-1961』で感想を書いたので割愛。残りは「Up 'gainst the wall」(62.9.18録音)と「After the rain」(63.4.29録音)です。前者はピアノレスのトリオでのミドルナンバーで、大したソロもとってないし何よりサックスが音痴(^^;)。。これは特に書く事もない…かと思いきや、サックスが左でドラムとベースが右なんですね、面白い定位です。そういえば、インパルス盤の方の『Coltrane』もこんな定位だった気がします。
 良かったのが、「After the Rain」。「Peace on Earth」や「Naima」系のバラードなんですが、これ系の曲は自分のツボで、「ああ、いい曲だなあ」と思ってしまいます。特に派手な演奏やアドリブをしているわけでもないんですけどね。

 マッコイ、ギャリソン、エルヴィンが揃った黄金カルテット時代のコルトレーンのアルバムとしては、中の下くらいのアルバムでしょうか。悪くはないけど、強烈な何かがあるわけでもない、みたいな。ヴィレッジ・ヴァンガード・セッション11/3盤をもっているのであれば、僕的にはあと「After the Rain」さえあれば大丈夫。逆に、このレコードを持っているのであれば、ヴァンガードの11/3は不要。というわけで、これは残してヴァンガード11/3を整理で良いか…と思ったんですが、ヴァンガード11/3は11/5とセットで、その11/5が鬼気迫る演奏なんだよなあ。ジョン・コルトレーンやジミ・ヘンドリックスは、ライブを部分収録して発表したアルバムの整理が難しい所が悩ましいです(^^;)。


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『John Coltrane / "Live" at the Village Vanguard 11-03 & 05-1961』

John Coltrane Live at the Village Vanguard 11-03and05-1961 コルトレーンとドルフィーの顔合わせになったヴィレッジ・バンガード・セッション、第3集は11/3と11/5の2枚組です。このCDを聴くのは大学生のとき以来で、内容をまったく覚えてなかったんですが、もの凄かったです!いや、ヤバいだろこれ。。ちなみに、11/3の4曲のうち、「Spiritual」が1枚物『"Live" at the Village Vanguard』に、「Impressions」と「India」が『Impressions』に収録されています。

 なにが凄いって、2曲で約36分の11/5のパフォーマンスが凄すぎました。この日の編成は最大オクテットになって、ウードにアブドゥル・マリク、オーボエまたはコントラバスーンにギャヴィン・ブッシェルが参加。ベースも1曲目ではギャリソンとレジー・ワークマンの2台ベースになったりします。こういう大き目のコンボだとアンサンブルをまとめる事に腐心してしまいそうなもんですが、まずはドラムが最初から大爆発。あまりにラフで「これ、ビート合ってるのか?」というほど。そして、コルトレーンのソロ。これ、同じフレーズをヴァリエーション化させて延々と繰り返したりするんですが、これがリズムがよれよれ、でもものすごい集中力だったり、そう思ったらピアノソロ後には大爆発の超高速になったり…何かが憑いたような演奏、これは完全に決めてますわ(^^;)。。「India」のテーマ前のギャヴィン・ブッシェルのオーボエのアドリブも見事。この11/5の冒頭から暴発しまくったパフォーマンスが凄すぎて、何度も何度も繰り返して聴いてしまいました。いやあ、これは言葉が出ないよ。。

 一方、11/3のパフォーマンスは11/2のDisc2や11/5に比べたらかなりオーソドックスで、演奏もおとなしめでした。といっても、「india」でのコルトレーンやドルフィーのアドリブは素晴らしいし、「Impressions」のエルヴィン・ジョーンズもリズムをキープしているだけで凄いんですけどね。
 少し面白く感じたのは、僕が「月並みだし大人しいし、これは特にどうという事もないな」と思った11/2のDisc1や11/3のパフォーマンスがわざわざ選ばれてレコードになってた事です。つまり、ライブでは色んな挑戦や熱い演奏もあったんだけど、ジャズのレーベルが選んだテイクは型通りのものが多かったわけです。ワンホーン・カルテットのテイクを選んだのかも知れないけど、左派のインパルスですらこうなんだから、他のレーベルなんて推して知るべし。50~60年代のジャズって、ライヴではレコードよりもっと色んな挑戦があった音楽だったんだろうと思います。

 コルトレーン&ドルフィー伝説のヴィレッジヴァンガード・セッションは、僕的には11/2のセカンド・セットと11/5が至高。どちらもCDでコンプリート盤が出るまでは未発表だった音源です。というわけで、「『Impressions』も1枚物『"Live" at the Village Vanguard』も持ってるからな」という方でも、11/2のディスク2と11/5は聴く価値ありじゃないかと。11/1は個人技は良かったけどもういいかな(^^;)。それにしても11/5は興奮しました、これはすごい。


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『John Coltrane / "Live" at the Village Vanguard 11-02-1961』

John Coltrane Live at the Village Vanguard 11-02-1961 エリック・ドルフィー在籍時のコルトレーン・コンボの61年ヴィレッジ・バンガード・セッション、次は2日目となる11/2のライブ録音、これは11/1とは違ってCD2枚組です!メンバーは、コルトレーン (ts,ss)、ドルフィー (as,b-cl)、マッコイ・タイナー (p)、レジー・ワークマン or ジミー・ギャリソン (b)、エルヴィン・ジョーンズ or ロイ・ヘインズ (dr)。曲によってゲストが入るものもありました。ちなみに、Disc1に収録されている3曲のうち、「Softly As In A Morning Sunrise」と「Softly As In A Morning Sunrise」は、1枚物としてリリースされていた『"Live" at the Village Vanguard』にも収録されています。

 ディスク1は3曲。曲は違えど、すべてテーマが終わったら似たようなコード・プログレッションの上で延々とアドリブという音楽なので、演奏の出来が価値のすべてじゃないかと。1~2曲目はマッタリ気味の演奏だったので、もう手放してもいいと思ったんですが、3曲目が凄かった。面白かったのは、1曲目「Chasin' Another Trane」と3曲目「Chasin' the Trane」はほとんど同じ曲なんですが(テーマのメロディが違うぐらいでプログレッションは同じ)、3曲目はすごいと感じました。演奏が違うのはもちろんですが、同日の演奏で何故そこまで印象が違うんだろうかと思ったら、編成自体が違いました。1曲目はドルフィーとマッコイ参加のクインテットで、ベースとドラムがレジー・ワークマンとロイ・ヘインズ。一方の3曲目はトレーンとギャリソンとエルヴィンのトリオ。アドリブでブイブイと突っ走るならギャリソン&エルヴィンは最強のリズム隊という事なんでしょう。頭の中でトレーンのソロを間引いて鳴らしてみましたが、このリズムセクションの勢いが凄いんですよ。。あと、そうやってガシガシ行くなら、成立している以上のものは付け足さない方が良いという事かも。トリオで成立してしまってるんだから、ピアノも2本目のサックスも蛇足になってしまう、みたいな。それにしてもドルフィーやマッコイが邪魔と感じてしまうトリオってすごい。。

 ディスク2は、曲ごとにいろいろな工夫があって、曲自体が面白かったです。この時期のコルトレーンはモード調の曲でひたすらアドリブしまくるアルバムのオンパレードで、演奏は凄いけどなにも全部聞く必要はないと思うんですが、こうやって楽曲自体に仕掛けをしてくれるとやっぱり楽しいです。ディスク2はいいなあ(^^)。
 1曲目「India」はタンブーラみたいなドローンの音がずっと入っていて(クレジットによるとアーメッド・アブドゥル・マリク演奏のウード)、曲想もインド音楽的。音階即興の音楽という意味では、モダン・ジャズとインド古典芸術音楽は相性がいいんでしょうね(^^)。
 切れ目なくつながる2曲目「Spiritual」は、マイナーペンタのブルース・フィーリングな曲。なるほど、この時期のトレーンは7音階とそのモードでのアドリブだけじゃなく、色んな音階や音楽のうえでアドリブできるようになる事を考えていたのかも。この曲はドルフィーのバスクラ・ソロが面白かったです。なるほど、こうやって短いブローを発展させるだけでもカッコよく出来るんだな。と思ったら、続くトレーンのソプラノサックスのフレーズが超高速。やっぱりコルトレーンの高速プレイはそれだけで金が取れるな、すごい。。
 3曲目「グリーンスリーヴス」は、若い頃に聴いた時は、この曲をジャズでやるだけで面白いと思ったものでした。またこれがいい演奏なんですよ、特にマッコイ・タイナーがいい(^^)。
 4曲目「Impressions」は、マイルスデイヴィス「So What」系のツーコードだけで進行させるモード上でアドリブ熱く演奏する曲で、この頃のコルトレーンが良く演奏してました。曲はシンプルなので演奏するだけなら簡単、問題はどれだけ熱く即興できるかだと思うんですが、これはいいテイクだ!コルトレーンが即興を始めるとマッコイが伴奏をやめちゃうのもいい(^^)。これ、ライブで聴いたらぶっ飛ぶだろうなあ。ドルフィーのソロもとんでもない凄さ。ギャリソンのピチカートとエルヴィンのドラミングのグルーヴが凄い!う~んこれは名演だ。。

 というわけで、11月2日のヴァンガード・セッションは1日目より確実に上。特にディスク1の3曲目とディスク2ぜんぶは売るわけにはいかない素晴らしい音楽、またCDの整理が進まない(^^;)。カッコよかったです!


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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