ウルトラセブンの舞台裏を追った本やビデオはたくさん存在しますが、この本は、それらをガッツリまとめて話として読みやすくした感じでした。これも2017年刊、新しいです!テレビ番組でもプロレスでも、こういう過去のコンテンツの舞台裏をガッツリ書いた四六判の厚めの本ってよく目にします。流行ってるのかな?
資料集やインタビュー集ではなくて、ルポライターさんがまとめたウルトラセブンという番組の制作の一部始終が書かれていました。ライターさん自身のインタビューが資料になっている所も少しありましたが、色んなセブン関係の本やビデオに目を通してきた僕には、知っている話が多かったです。だから、
新しい証言を知る事が出来るというより、今までの裏ネタ本の情報を総括した本として楽しかった!まとめ方と文章がうまいんですね(^^)。本は4部に分かれていて、第1部は番組が始まるまでのアウトラインのまとめ。怪物番組ながら制作が追いつかずに打ち切りとなったウルトラマンからウルトラセブンに繋がっていくテレビ局側と制作会社側のやりとりとか、実際に企画が固まっていく過程とか、すごく面白かったです。
2部から4部までは、実際にクランクインしてからのドキュメント。これも面白くて、一気に読んでしまいました。特に面白かったのが、準備稿やボツ脚本の詳細が書かれている事。
詳しく知らなかった未映像化脚本でも、「赤い群獣」「認識票NO.3」「300年間の復習」(これはTVドラマ「私が愛したウルトラセブン」で映像化)は、活字で追っているだけでもメッチャ面白かった!もし映像化できていれば大傑作になったんじゃないかなあ。そして、いいものを作ろうという制作者サイドの熱意が凄くて、脚本の修正が半端ない(^^;)。物語の焦点がぼやけてるからここは切るとか、マニアックになりすぎてるからもっと娯楽性を高めるとか、いいものを作るための手間暇のかけ方がすごいです。「まあこんなもんだろ」とせず、いいものを作るためには徹底して何度も修正を加えていくんですね。これはものすごくいいことを教わった気がしました。
そしてこの本、変に太鼓持ちにならないで公平な視線で書いている所が良かったです。特撮の神様円谷英二自身が、「これまで子ども番組だと思って多少は目をつぶってきたが、特撮班のレベルが低すぎて、これでは駄目だ。これからは、もっと現場に足を運んで後進を育てないと」とか、「台本がまったく駄目」とか、けっこう手厳しい事を日記に書いているんですが、それもありのままに載せてありました。番組終盤になって、だれてしまった特撮班の雰囲気とか、ウルトラセブンと並行して始まった社運をかけて制作された番組「マイティ・ジャック」の大ゴケで会社の将来を危ぶむ会社の首脳陣の焦りとかまで、実に詳細に描かれていました。なるほどなあ、「恐怖の超猿人」とか「ダン対セブンの決斗」とか、子どもの頃にクソつまんないなと思って観てましたが、そういうダレがあったのか、そりゃそうだよな(^^;)。
ウルトラセブンの人気に火がついたのは再放送からで、初回放送時はけっこう厳しかったそうです…って、それでも第2クールまでずっと30%越えなんだから、今から見れば怪物番組ですよね。制作の最初から「大人の観賞に堪える」「心理的サスペンス、恐怖、意外性の重視」という基本が制作会議で話し合われていたそうですが、初回放送時のメインの視聴者は、制作者が狙った年齢ではなく、やっぱり小学校低学年だったんだそうです。そんな子どもにはセブンの複雑なテーマやハードなドラマ展開は理解不能、その面白さがやっとわかったのは、その子供たちがもう少し大きくなってからだったみたいです。自分がそうだったので、分かる気がします。僕自身は幼稚園の頃から「ウルトラセブンは特別、ウルトラマンの中で別格の作品」と思ってましたが、そんな僕でも本当にセブンを面白いと思ったのは、小学2年で一度特撮ヒーローを卒業後、改めて再放送を見た5年生の時だった気がします。再度見た時に面白いと思った話って、ウルトラセブン「ノンマルトの使者」「盗まれたウルトラアイ」「第4惑星の悪夢」「散歩する死者たち」、新マン「悪魔と天使の間に」あたりでした。要するに、ドラマを面白く感じて観ていたわけで、これが幼年層に伝わらなかったとしても自然かもしれませんよね。
円谷英二やたくさんの脚本家や監督の日記やインタビューなどにあたりながら、丁寧に書かれた見事なウルトラセブン制作現場のドキュメントでした。いや~楽しかったです!