1月28日いよいよ浜松の巌邑堂が新店舗オープンということで、
その前日、プレオープンにお邪魔して参りました。
いやあ、年明けすぐには本店の営業を終えるのを前に、
今一度、思い出を噛み締めたくて伺ったわけですが、
今度は新たな一歩を踏み出す姿を見届けたくて、浜松へ参りました。
年明けに伺った時には、まだ工場にオーブンや蒸し器、製餡の釜などは入っておらず、
販売スペースにもショーケースなどソフト面はなかったのですが、
それらが短期間で移設されたり、搬入されて、キレイに出来上がっていました。
L字のショーケースは、生菓子を中心にして、その角に新作『袖紫ヶ森』が!!
菓銘の字は、ワカタクで共演した女流書家の寺島響水さんによるもの。
いやあ、それらしいステキなパッケージで、神社の鳥居が見えますが、
これは新店舗の真後ろに蒲神明宮という神社がございまして、この地だからこその菓子。
その神社には内宮と外宮があり、まさにあの伊勢神宮を思わせるのですが、
実は全く関係がないわけではなく、不思議な逸話が残されているのです。
その昔、越後守藤原静並公が伊勢神宮を参拝していると、
その本殿から一匹の白蛇が出てきて、左の袖を登っていったあと、
そこに「蒲開発本願主」という紫色の文字が浮かび上がったのです。
静並はこの地に蒲神明宮を創建し、この伝説から袖紫ヶ森という地名になったのだとか。
ということで、紫の紋様が入っている箱は、霊験あらたかに思え、お守りにしたい気分。
菓子は、巌邑堂には珍しい半生タイプの干菓子。
短冊に切り出した削ぎ種に赤い寒天を挟んでいるのですが、これが静岡県産のいちご寒天。
でも、いちごジャムのような甘ったるさがなく、むしろすっきりしているのですが、
それはいちごの酸味によるものではなく、バルサミコ酢を加えることで、
甘みをグッと引かせ、さっぱりと頂けるように工夫されているのです。
そして、そのいちご寒天は、あの山形の佐藤屋の8代目よりアドバイスを受け、
銘菓『乃し梅』同様の製法で、薄く仕上げられているのだとか、いやはや面白い。
ある意味、ワカタクがなければ、生まれはしなかったかもしれないのですから・・・・。
熊本の香 梅が守り続ける『加勢以多』に似てはいますが、
もっとソフトで、甘味が少なく、軽やかに感じられる菓子に仕上げられています。
写真上:『椿 餅』/写真下:『初 音』(上)と『波の花』(下)
まだまだ満足のいく仕上がりではないご様子の5代目ではありますが、
さらに進化させて、きっとこの菓子もまた看板商品に成長してくれることを祈っています。
ってなわけで、もちろん、生菓子もしっかりとチョイス。
やっぱり、ここで深緑と真っ白なコントラストが実に美しい『椿 餅』の登場は嬉しく、
名古屋同様に、柔らかい羽二重餅にこしあんを包んでいる。とっても優しい口当たり。
またきめ細やかな美しいきんとん『波の花』が何よりも目を引きます。
淡い緑色のそぼろに、白と薄いブルーも入って、これがとっても素敵なのです。
京都の嘯 月などを思わせる繊細さで、じっくりと味わう舌を魅了してくれます。
もちろん、巌邑堂らしい鹿の子や多色のぼかしの生菓子も健在でございます。
それぞれに厳しい冬に可憐に咲く梅の花を表現し、しっかりと見る人の心を引き付ける。
上写真:『窓の梅』/下写真:『冬ざれ』(上)と『銀 河』(下)
魅せることを忘れはしない職人の表現力に、さらなる飛躍を祈りつつ、
翌日のオープン当日も見守りたかったのですが、慌ただしく東京へ引き返し、
夕方には日本橋髙島屋にて、京都航空便のご紹介をするため舞い戻ったのです。
行ったり来たりで落ち着かない週末ではありましたが、
それでも、こんなめでたい門出の日に立ち会えましたのは光栄でございます。
さあ、次は横浜タカシマヤで実演される時には、またどんな菓子を魅せてくれるか、
今年もじっと楽しみにして、見つめ続けていきたいと思います。
袖紫ヶ森 6枚入 税込864円
波の花・ 椿 餅 各1個 税込303円
◆ 新 店/ 静岡県浜松市東区神立町字袖紫ヶ森136-10 TEL: 053-545-3232
◇ 販売店/ 新宿・玉川・横浜髙島屋、新宿伊勢丹・銀座三越(催事販売) 他
※ 1月10日に本店の営業を終了して、1月28日より新店舗の営業を開始。
※ 登場しました生菓子は、1月末に製造・販売されていた生菓子です。
コメント