連載
憂楽帳
50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。
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ちゃんと怒りたい
2026/5/18 13:06 446文字3日、東京・有明の防災公園で開かれた憲法大集会。毎日新聞はその空撮映像を配信した。私はヘリの下で、数万の人波にもまれていた。 「刀剣を2205年まで保存する会」というのぼり旗を手にした、着物姿の女性に声をかけた。ゲーム「刀剣乱舞」のファンだという。戦争への恐怖、高市早苗政権への疑問や不安。どう考え
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対立の行方
2026/5/15 13:03 443文字「多摩川格差」。東京と神奈川の間を流れる多摩川を境に、受けられる行政サービスの違いを指して、そう呼ぶという。川崎市に住み、多摩川を渡って都内に通勤する私はまさに当事者ということになる。 近年、豊富な財源を背景に子育て支援策などを次々打ち出す東京都と、そこまで余裕のない近隣県などの対立が続いている。
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30年の積み重ね
2026/5/14 13:08 449文字ツシマヤマネコは長崎の離島・対馬だけに生息する国の天然記念物で、生息数はわずか100匹弱とされる。絶滅の危険性もある中、赤ちゃん1匹が4月、福岡市動物園で生まれ、繁殖棟で母乳を飲みながら元気に育っている。 ツシマヤマネコは1994年、種の保存法によって国内希少野生動植物種に指定され、動物園など11
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「被爆者なき時代」を前に
2026/5/13 13:11 448文字191カ国・地域が核軍縮の進み具合を話し合う核拡散防止条約(NPT)再検討会議が米ニューヨークで開かれている。 NPT会議では、初めて大勢の被爆者が渡米した2005年が特に印象深い。広島の被爆者運動を率いていた当時79歳の坪井直(すなお)さんが「ノー・ニュークス(核反対)、ノー・ウォー(戦争反対)
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メダルの鉱脈
2026/5/12 13:05 469文字福岡県が全国に先駆け、2004年から取り組んできたスポーツ事業がある。運動能力の高い小中学生を集め、適性に合った競技に転向させ、世界を目指す「タレント発掘事業」だ。今春、その修了生が新たな一歩を踏み出した。 3期生だった福島史帆実(しほみ)さん(30)は陸上をやっていたが、高校からフェンシングに転
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ドラマを超えた現実
2026/5/11 13:11 447文字以前、取材先の元防衛省幹部から「戦闘機の描写がリアル」と勧められ動画配信サービス「ネットフリックス」で映画「トップガン・マーヴェリック」を見た。米軍機乗員が山岳地帯で撃墜され、生還を目指すストーリーに息をのんだ。一方、米・イランの軍事衝突では、山岳地帯で撃墜された米軍機乗員の所在を米中央情報局(C
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墓地向かいのディスコ
2026/5/8 13:09 453文字古いマンションの2階から裏通りを怪しく照らす緑の電光看板。向かいは墓地なので、ますます怪しい。新潟市の繁華街の外れにある「ソウル・ミニ・ピート」は、1970年代から続く、知る人ぞ知る老舗ディスコだ。 店内のホールは薄暗く、10人も入ればいっぱいだ。大型スピーカーから心地よく響くソウルのリズム。電飾
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これからの30年
2026/5/7 13:03 465文字「屋久島を世界自然遺産の国内1号に」。35年前、鹿児島県・屋久島の豊かな自然をどう生かすか話し合う「屋久島環境文化村構想」懇談会の席上、委員が発した提案に当時の県環境政策課長、小野寺浩さんはぼうぜんとした。 日本が世界遺産条約を承認さえしていない時代。環境庁(当時)からの出向とはいえ県の課長が国を
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未来に挑戦する街
2026/5/1 13:07 457文字JR御殿場線岩波駅(静岡県裾野市)のホームに降り立つと真新しいマンションなどの建物群が見える。歩いて15分ほどでトヨタ自動車が建設した「ウーブン・シティ」に到着した。 2025年9月開業の「フェーズ1」エリアは東京ドームとほぼ同じ広さ(約4万7000平方メートル)で、実験施設などが建ち並ぶ。箱根駅
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55回目の米作り
2026/4/30 13:08 467文字熊本、鹿児島と県境で接し、霧島連山を望む宮崎県えびの市では田植えの準備に入った。市内で主食用米を16ヘクタールで栽培する本坊農園を営む本坊照夫さん(75)が4月中旬に種もみをまいた苗床では今、芽立ち始めた。 「去年の米価が高すぎたから下がる予想はしているが、どうなることやら」。一方で、上がりそうな
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出世魚
2026/4/28 13:16 432文字ブリ、お茶、牛肉――。鹿児島県が米国に輸出する主力産品のトップ3だ。4月中旬、塩田康一知事が米首都ワシントンを訪れ、トップセールスを展開した。県産農林水産物の輸出総額は約471億円(2024年度)。そのほぼ半分を米国向けが占める。中でもブリは、他を大きく引き離す稼ぎ頭だという。 米国ではすしブーム
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五感に訴える
2026/4/27 13:06 445文字長崎市の長崎原爆資料館で29日から、ラムネ飲料が販売される。企画したのは九州産業大の教授、伊藤敬生さん(63)。商品名は「ヘイワノラムネ」という。長崎の飲料卸売会社「古田勝吉商店」などと連携し、進めてきた。 社会課題解決のためのソーシャルデザインが専門の伊藤さんは被爆3世。戦禍の記憶が遠のく中、五
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代々木の踏切
2026/4/24 13:33 440文字東京・代々木駅近くの「青山街道踏切」は埼京線や湘南新宿ライン、りんかい線などが通過し、すぐそばの高架を山手線が走行する。別路線の列車を一枚の写真に収められることから、訪日外国人にも人気のスポットとなっている。 近くでかばん店を営む木内俊行さん(61)によると、踏切はSNSを通じて知られるようになり
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ある母親の便り
2026/4/23 13:01 459文字どんな方が聴いてくださっているのだろう? 毎日新聞ポッドキャストのMCの一員として、ニュース解説や取材の裏側を音声で伝えている。感想が届くとリスナーの存在を感じてうれしい。ただ、そのお便りは痛みに満ちていた。 3月27日配信「母親はなぜ追い詰められたのか 障害児殺害事件を追って」。母親が障害児を殺
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自慢にならない
2026/4/22 13:33 481文字奈良市にある自宅から世界遺産・唐招提寺の南大門まで、370歩ほどで到着する。 そんなご近所さんといえる名刹(めいさつ)で、毎年5月19日にあるのが「うちわまき」。鎌倉時代を起源とする伝統行事で、病魔退散、魔よけの御利益があるという「宝扇(ほうせん)」(うちわ)が宙を舞う。だが、その争奪戦を繰り広げ
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来たれ小学生
2026/4/21 13:08 457文字ここ数年、男子バレーボールのブームが続いている。流れに乗り、各選手が個人のファンクラブを設立しているが、対象は「バレーを見る」層の成人女性が中心だ。その中で、2024年パリ・オリンピック代表のセッター関田誠大選手(32)=サントリー=は「バレーをする」層も意識し、競技の普及に力を入れている。 そも
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選択的別姓、自民議員の啖呵
2026/4/20 13:13 464文字高市早苗首相が慎重姿勢を示す「選択的夫婦別姓」だが、自民党内にも推進派はいる。衆院選で毎日新聞が実施したアンケートでも、小泉進次郎防衛相や河野太郎元外相らが「賛成」と回答した。ただ、実現に向け法案提出などを仕掛ける野党と比べ、積極的な動きは見られない。 ある推進派議員は、地元弁護士との会合で、自民
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生と死と祖父の蓄音機 /新潟
2026/4/19 05:01 457文字重厚なローズウッドをぜいたくに使った1970年代の英国製スピーカー。「バイタ・ボックス」(命の声)というメーカー名通り、ピアノトリオでもビッグバンドでも、レコードをかけてもらうと生演奏のような迫力だ。 新潟市の喫茶店「ジャズ・フラッシュ」の店内の左右に配置され、独特の存在感を示す。持ち主は店主の佐
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生と死と祖父の蓄音機
2026/4/17 13:01 454文字重厚なローズウッドをぜいたくに使った1970年代の英国製スピーカー。「バイタ・ボックス」(命の声)というメーカー名通り、ピアノトリオでもビッグバンドでも、レコードをかけてもらうと生演奏のような迫力だ。 新潟市の喫茶店「ジャズ・フラッシュ」の店内の左右に配置され、独特の存在感を示す。持ち主は店主の佐
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タクシードライバー
2026/4/16 13:00 469文字ほろ酔いで最終列車に間に合ったはいいが、寝過ごした。慌てて降りたのは無人駅。途方に暮れていると運良くタクシーが通りかかった。 ドライバーは70代とおぼしき男性。行き先として自宅近くの神社を伝えると「寝過ごしましたね」と同情するように笑った。二十数キロ先の小さな神社だ。知っていることに驚くと「30年
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