連載
水説
毎日新聞朝刊に毎週水曜に掲載している記者コラム。2026年4月からは宮川裕章記者が担当します。
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迷惑施設問題の解決策=宮川裕章
2026/5/13 02:01 1026文字<sui-setsu> 迷惑施設の建設を巡っては、不利益を被る地域に対する、恩恵を受ける地域の住民の無関心が問題をこじらせる。原子力関連施設が集中立地するフランス北西部の都市では2022年、使用済み核燃料の貯蔵プール新設計画に反対する大規模な抗議運動が起きた。中央政府や都市部の人たちが、安易に迷惑
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現在の「1984年」とフランス=宮川裕章
2026/5/6 02:03 1024文字<sui-setsu> 英作家ジョージ・オーウェル(1903~50年)が全体主義の監視国家を描いたディストピア(反理想郷)小説「1984年」(49年刊)がフランスで異例の売り上げを記録している。書籍販売統計の目安となる200位以内に、67週にわたって入り続けている。その人気は何を示唆するのか。 日
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捕虜と家族をつなぐ人=宮川裕章
2026/4/29 02:01 1029文字<sui-setsu> ロシアとウクライナは24日、193人ずつの捕虜の交換を実現した。祖国に帰還した捕虜の累計は、それぞれ約7000人に上る。ウクライナの首都キーウで、捕虜交換を我がことのように喜ぶロシア人女性がいる。イリナ・クリニナさん(39)。戦場で行方不明となったロシア兵を捜す家族を支援し
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ロシア原油の棚ぼた=宮川裕章
2026/4/22 02:01 1025文字<sui-setsu> 漁夫の利はどこまで続くのか。米国とイスラエルの対イラン軍事作戦に伴うロシアの利益のことである。中東からの原油輸送の停滞や先行き不安などでロシアの代表的油種ウラル原油の価格は高騰した。イランへの攻撃開始前日の2月27日に1バレル=58ドル(約9040円)だったのが、4月7日に
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陽気なリーダーの憂鬱=宮川裕章
2026/4/15 02:00 1019文字<sui-setsu> 8日にワシントンでトランプ米大統領と会談した北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長の表情がさえない。米・イスラエルによるイラン攻撃を巡り、欧州の協力を求めるトランプ氏と、これを渋る加盟国との板挟みにあっている。 ロシアが軍備を拡張する中、ルッテ氏は最大の加盟国である米
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外交の場での英語=宮川裕章
2026/4/8 02:01 1040文字<sui-setsu> 米国での勤務経験がある高市早苗首相は3月の訪米で、英語をほとんど使わなかった。英語でトランプ米大統領とわたり合う姿をみたかった半面、ささいなミスから誤解を招くリスクを考えると、妥当な選択だったようにも思える。 大統領執務室でのトランプ氏との会談の映像をみて頭をよぎったのが、
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15年目の港町から/4止=赤間清広
2026/4/1 02:02 976文字<sui-setsu> 黒潮と親潮がぶつかる三陸沖は日本でも有数の好漁場を形成している。獲物を狙って全国から漁船が集まり、カツオやサンマなど季節ごとに豊富な海の幸を三陸各地に水揚げしてくれる。 そんな漁船員をもてなし続けた場所がある。 「おばちゃん、ただいまー」 「おかえりなさーい」 宮城県の気仙
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15年目の港町から/3=赤間清広
2026/3/25 02:07 1042文字<sui-setsu> 岬と入り江が複雑に入り組んだリアス式海岸は三陸ならではの景観を作り出している。穏やかな入り江は天然の良港となり、そこで暮らす人々の営みを支えてきた。 しかし、ひとたび津波が起こると表情が一変する。岬に挟まれた狭い入り江に津波のパワーが集中し、波高が一気に増すからだ。東日本大
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15年目の港町から/2=赤間清広
2026/3/18 02:02 969文字<sui-setsu> 「スタジオは、かなり揺れています。落ち着いてください」 「火事が心配です。ガスがついていませんか。ストーブは消しましたか」 スタジオに入ると、地震発生時に読み上げるアナウンスの内容が大きく張り出されていた。 「ラジオやテレビを切らないでください」 「こちらはラジオ石巻です」
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15年目の港町から/1=赤間清広
2026/3/11 02:08 1002文字<sui-setsu> あの日、宮城県気仙沼市に本社を置く三陸新報の記者、今川悟さんは街にサイレンが鳴り響く中、漁港の魚市場を目指していた。 魚市場の屋上駐車場は、災害発生時の避難場所になっている。 「あそこに行けば、押し寄せる大津波の写真が撮影できる」。それが記者の使命だと思っていた。 屋上には
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日本経済の立ち位置=赤間清広
2026/3/4 02:01 1032文字<sui-setsu> 国家間の経済力を比べるには、どうすればいいのか。 最もよく使われるのは名目国内総生産(GDP)だろう。その年に国内で生み出した全ての商品やサービスの価値を合計した指標である。世界銀行など国際機関も各国の名目GDPを公表している。 課題もある。国際比較に用いられる名目GDPは
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鉄道が生んだ「うどん店」=赤間清広
2026/2/25 02:01 1010文字<sui-setsu> うどんが日本に広まったのは、いつごろだろうか。一説には空海が中国から伝えたともされるが、少なくとも室町時代には現在に近い形で食べられていたようだ。 地域ごとに製法も、形状もさまざま。個人的なイチオシは、強いコシと、なめらかな喉越しが魅力の「讃岐うどん」である。 中でも東京に
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納豆業界の風雲児=赤間清広
2026/2/18 02:00 1003文字<sui-setsu> 「物価の優等生」とも言える食品がある。納豆である。 食料品の値上げラッシュが続く中、3パックで平均100円超とかなり安い。スーパーの特売などでも目玉商品となることが多い。 それも、そのはず。業界団体の調査によれば、納豆を買う際、重視するのは「価格」という回答が約6割と突出し
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レアアースの暗部=赤間清広
2026/2/11 02:00 996文字<sui-setsu> 中国がレアアース(希土類)の戦略的な重要性に気付いたのは今から30年以上も前のことだ。 「中東には石油がある。中国にはレアアースがある」 当時の最高指導者、鄧小平はこう訴え、国家一丸となって生産強化を推し進めてきた。 先見の明があったと言うべきだろう。いまや中国にとってレア
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名門企業と兄弟げんか=赤間清広
2026/2/4 02:00 996文字<sui-setsu> 産業界で最も有名な兄弟げんかと言っていい。 舞台となったのはドイツ南部にあるヘルツォーゲンアウラハという小さな街である。ここにある靴工房からすべては始まった。 経営を支えていたのはダスラー兄弟。兄ルディは外交的な性格で主に販売部門を担当し、弟アディは工房にこもって靴作りに没
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「現実を見よ」世界の忠告=赤間清広
2026/1/28 02:00 1006文字<sui-setsu> 旧チェコスロバキアで1989年に起きた無血革命「ビロード革命」を主導したバツラフ・ハベルは、著書「力なき者たちの力」の中で共産主義政権が長年、続いた理由をこう考察している。 例にあげたのは街の青果店である。店主は野菜とともに「万国の労働者よ、団結せよ」という共産主義のスロー
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ジュークボックスの復活=赤間清広
2026/1/21 02:02 1010文字<sui-setsu> 戦後の日本を席巻したアイテムがある。ジュークボックス。硬貨を入れて好きな曲を選ぶと、自動でレコードを再生してくれる。米国製を中心に、街の至るところで音楽が響いていた。 カセットテープやCD、カラオケなどの普及に伴い、1980年代に入ると徐々に姿を消していったが、いまも現役で
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首都圏「まいばす」旋風=赤間清広
2026/1/14 02:04 1012文字<sui-setsu> 小売業界に激変が生じている。嵐の中心にいるのは「まいばすけっと」。「まいばす」の愛称で呼ばれる小型スーパーである。 「何をいまさら」と思ったのは首都圏の在住者だろう。それ以外の地域の人は「初めて聞いた」というケースが大半ではないか。 それも、そのはず。2005年に誕生した「
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企業と本社ビル=赤間清広
2026/1/7 02:02 1012文字<sui-setsu> 年末年始は帰省せず、東京で過ごした。ふと、思いついた。そうだ、間もなく取り壊される企業の本社ビルを見に行こう、と。 ホンダが約40年にわたって本社を置いてきたのが、東京・南青山にあるホンダ青山ビルだ。現地に着くと既にビル全体が解体工事のシートに覆われていた。 創業者の本田宗
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アナログと手帳=赤間清広
2025/12/24 02:01 992文字<sui-setsu> デジタル全盛の時代である。私のようなアナログ人間にとっては何かと肩身が狭い世の中だ。 そんな中、心に張りが出るニュースに接した。デジタルが当たり前の若い世代を含め、まだまだ「手書き派」は健在のようだ。 「実は1990年代より、いまの方が売れ行きがいいんです」 教えてくれたの
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