連載
男の気持ち
読者の皆様からの投稿欄「男の気持ち」。「女の気持ち」「わたしの気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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シチューの味 北海道苫前町・山田裕一(無職・65歳)
2026/1/30 02:02 539文字60年前、わが家の食卓に欧米の味を運んできたのはクリームシチューでした。 ちょうどルータイプのシチューのもとが発売されたころで、うちは農家だったのでジャガイモやニンジン、タマネギは売るほどありました。鶏肉の代わりにかまぼこが入ることもありましたが、クリームシチューは定番の洋食メニューになりました。
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飛行機に託す夢 京都市南区・山崎剛資(無職・81歳)
2026/1/28 05:21 532文字石川啄木の詩集「呼子と口笛」に、「見よ、今日も、かの蒼空に飛行機の高く飛べるを」という一節がある。私は毎朝、犬と散歩をしながら大空を見上げるのが習慣だ。決まって北東の空から北西へと進む飛行機が見える。天気のよい日には、朝日を浴びた機体が、銀色に浮かぶ月へ向かって飛んでいくように見えることもある。方
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ヅケ料理に思う 京都府舞鶴市・松本吉人(無職・90歳)
2026/1/26 05:05 562文字私が馴染(なじ)みにしている魚屋の店主Mさんは「魚は心で売るもの」と昔気質(かたぎ)で気っ風(ぷ)が良く、一心太助ばりである。明るくお人好(ひとよ)しの奥さん、店頭販売だけでなく、SNS(交流サイト)を駆使して全国に販路を広げる息子さん夫婦、それを数人のパートさんが支える、新鮮な商品と良心的な接客
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神の与えた試練 山口県下関市・嶋田利武(91歳)
2026/1/24 05:06 562文字あれは町の文化協会の芸能発表大会を鑑賞していた時、突然の悪寒と吐き気を催し退席した。気がついたら病院のベッドの上だった。40度近い高熱に、医師は新型コロナウイルス感染を疑われたようだが、2度の検査でコロナやインフルエンザの疑いはなかった。しかし、左足の激痛と赤い腫れが出て、思いもよらず蜂窩織炎(ほ
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甘いものが苦手 長崎県南島原市・末吉貴浩(元自営業・64歳)
2026/1/22 05:04 552文字私は甘いものが大の苦手だ。とりわけ干し柿や粒あん。口に入れると、その甘さに身震いするほどだ。以前こんなことがあった。ある日、上司のお宅におじゃました。すると「君、これ食べないかい?」と粒あんがびっしり入ったお菓子を出してくれる。 その上司はかなり気難しい人で、自分の意に沿わないと、所構わずキレるこ
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白寿の年賀状 福岡市早良区・藤江駿一(農業・78歳)
2026/1/21 05:13 548文字元日の10時ごろ、年賀状が届いた。年々、年賀状が少なくなってきている。朝のおとそが済んでから、こたつの中で一枚一枚読んでいくと、珍しく筆書きのものがあった。差出人は、なんと今年白寿のWさんからだ。 裏を返してみると、朱墨で「賀」と真ん中に書き、字の右側には薄く影がつけてあり、立体感のある奇麗な字で
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豆大福 埼玉県久喜市・岡田孝道(無職・85歳)
2026/1/21 02:02 558文字孫娘が「今日の昼、ばあばたちは家にいるか」と電話で聞いてきた、と妻が言う。大学の授業が休講になったのかと思いつつ楽しみに待っていると、昼過ぎにやって来た。 居間に入るなり私に「1日早いけど誕生日おめでとうございます」と言い、思いもしなかった誕生日の祝いを渡してくれた。85歳の誕生日など、もう年は取
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今年の目標 広島県竹原市・宇原稔(非常勤職員・71歳)
2026/1/16 05:04 554文字2026年は我が家にとって忘れられない一年になりそうだ。2人の孫娘が受験を控え、それぞれ目標を持って努力している。昨年10月、妻が肺炎で入院した。医者から「1週間ぐらいの入院になります」と言われ、「何とかなるだろう」と言い聞かせたが、現実は予想以上に厳しかった。明かりのついていない部屋に帰り、一人
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孫の帰省 長崎市・松下清(77歳)
2026/1/16 05:04 577文字年末から年始にかけ、東京の次男夫婦が2歳10カ月の孫を連れて帰省した。長崎に出発する3日前、次男の嫁から孫が「ジージ、バーバの所に早く行く」と話す動画が来た。私たちにはただ一人の孫で、年に数回しか会わないが、この言葉は最高だった。 ところが、その夜に孫が鼻水と熱を出し病院に行くと連絡があった。薬を
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午年生まれ 大阪府貝塚市・小出良一(無職・71歳)
2026/1/14 05:06 588文字私は午(うま)年生まれで今年72歳の年男である。生まれたのが大阪・岸和田の春木競馬場の目と鼻の先にある産院。そして母が春木競馬場の従事員であった。子どもの頃は、近所の悪ガキと、大人にまぎれて競馬場に忍び入った。高い観覧席、積みあがった外れ馬券の山など、絶好の遊び場であった。また、一獲千金を狙う男た
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やっと言えた 静岡県伊東市・今野了一(無職・84歳)
2026/1/10 02:00 523文字夜、外食からの帰り道のこと。妻が突然「あなたは私じゃない人と結婚したほうがよかったのかな」とつぶやいた。 食事中、友人夫婦が不仲になったことが話題になった直後のことだった。私にとって予想もしない問いかけだった。 結婚して53年になる。妻が大学生のときに結婚し、在学中に子どもが生まれた。妻はおしめや
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友とのメール 鹿児島県出水市・谷口歩(団体職員・55歳)
2026/1/8 05:06 550文字小中学時代の同級生と久しぶりに再会した。彼の子供が高校受験が近いこと、彼自身はがん切除後に経過観察中であることなどを話してくれた。その後メールでやりとりをしているが、時候のあいさつや近況報告は抜きだ。今シーズン初めての強い寒波が南下した日に「初雪?」と送った。何も返信がなかったのは想定内だ。 私は
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丙午生まれの妻 東京都世田谷区・来住裕志(会社員・63歳)
2026/1/1 02:00 535文字今年は60年に1度巡ってくる丙午(ひのえうま)である。「丙午生まれの女は夫を食い殺す」という迷信がある。該当者は、わが家に1人いる。同じ屋根の下で暮らして30年余。あっという間の結婚生活であった。おかしいな。安心してプロポーズできたのは、おとなしそうに見えたからだ。 新婚のころは楽しくて仕方がなか
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若者たちの歌 兵庫県相生市・林幹夫(高校講師・77歳)
2025/12/31 05:03 556文字「♪雲が流れる丘の上 花の乱れる草むらに……」。テレビドラマ「青年の樹」の主題歌。テレビがあまり普及していなかった時代、テレビがある近所の家で見た。そして、花の都に憧れた。 「♪赤い夕陽(ゆうひ)が校舎をそめて ニレの木陰に……」。舟木一夫の「高校三年生」。自転車通学の友と大きな声で歌い、昼休みに
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亡き妻とともに 川崎市幸区・辻田紀一郎(無職・84歳)
2025/12/27 02:01 539文字妻は62歳で亡くなり、20年になる。ともに暮らしてきたパートナーがいなくなる。こんなに悲しく、寂しく、つらいことはない。沈む気持ちを奮い起こし、明るく生きようと歩んできた。急いだわけでもないが、あっという間に時は過ぎた。折に触れ、妻の面影が浮かんでくる。 名古屋に住んでいたころ、2人でカラオケ喫茶
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揺れる豚肉 北海道苫前町・山田裕一(無職・65歳)
2025/12/25 02:00 556文字生家は農家で、田畑で取れた米と野菜を食べ、飼っていたヤギの乳を飲んで育った。年末年始の食卓にも自給の食材が並んだ。年越しそばは自家製のそば粉を手打ちしたもので、だしと具は卵を産まなくなった鶏。昆布巻きの中身は川で釣ったウグイだった。 正月が近づくと、家の納屋に大きな豚肉の塊がつるされた。そして暮れ
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晩年の使命 福岡県水巻町・松尾高林(92歳)
2025/12/21 05:07 563文字◇松尾高林(たかもり) 私は今年8月で92歳になった。日本人男性の平均余命は80歳で8・96年、90歳で4・27年である。平均余命のことが頭をよぎったのは、現代日本を代表する俳優の仲代達矢さんが私と同年配で死去されたからである。 私は八幡製鉄所に入社して勤め上げ、定年退職して35年になる。この間、
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感謝 北九州市小倉北区・田中勝(89歳)
2025/12/20 05:06 581文字過日、地域の敬老福祉大会に出席した。可愛い小学生の合唱や沖縄県学生会の皆さんの伝統芸能エイサーが披露され、あまりの素晴らしさに沖縄の観光気分を味わった。 小倉祇園太鼓の皆さんの「祝い太鼓」は、心を奮い立たせる迫力ある太鼓の振動が、眠っていた五臓六腑(ごぞうろっぷ)や細胞を目覚めさせた。眼前で響く「
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妻のほほ笑み 大阪府高槻市・森健祐(無職・84歳)
2025/12/19 05:08 535文字施設での生活もまもなく4年になる。部屋のテーブルで妻は写真になって、いつも優しくほほ笑んでくれている。 家族、親族、友人たちに恵まれた妻であったが、晩年は認知症を患い、体力も衰えた。転倒して骨折し、入院やリハビリを経験した。病院から自宅には戻らず、私が車椅子を押して直接、施設の2人部屋に入り、つい
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学びたかった父 青森県平川市・鈴木啓修(社会福祉士・71歳)
2025/12/18 02:05 537文字8日本欄「大おじと酒」を感慨深く拝読しました。投稿者の大おじ様が敗戦後、ソ連の捕虜となったお話。酒の醸造知識があり焼酎造りを命ぜられたこと。そしてかの地で亡くなった戦友に思いをはせた晩年だったとも。シベリア抑留という経験者にしかわからない大変なご苦労に、頭が下がる思いです。 投稿には大おじ様の生ま
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思い出ノートの作り方
昔を思い出してノートに書きとめることは脳の活性化にもつながります。公益財団法人「認知症予防財団」の監修の連載です。
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今週の気持ち
投稿コラム「女の気持ち」「男の気持ち」から1本を選び、担当記者が紹介します。