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諸田玲子「登山大名」(287)
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母はなにもいわなかった。が、英勝寺の尼に浄発願寺の話をしたのは母である。当然、罪人を匿(かくま)う寺だと知っていたはずだ。
母は、相模国の七沢温泉へ湯治に行ったとき、参詣客でにぎわう大山不動だけでなく、近場の寺へも詣でた。それが日向(ひなた)薬師や浄発願寺だったのだろう。さまざまな噂が聞こえていたはずで、日向薬師に縁起がないことや、浄発願寺が駆け込み寺であることも耳にしたにちがいない。
だとして...
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