この記事は会員限定記事です
書評『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』アグラヤ・ヴェテラニー著
サーカス一家 理由なき苦難
[会員限定記事]
著者は、1960年代にルーマニアの圧政を逃れ西側に亡命し、放浪の日々を送ったサーカス一家の娘である。彼女は、のちに作家となったが、39歳の若さで自死した。
本著は、そんな彼女が書き残した唯一の自伝的作品である。
実は、彼女がサーカス団で暮らしていた同じ時期に、私も4歳の息子を連れ日本のサーカス団で暮らしていた。
わずか1年ほどの経験だったが、風で膨らんだ大天幕、その梁(はり)から下がった綱でのア...