相続財産、借金も対象に 死亡保険金・香典・お墓は?
マネーの知識ここから 相続とは(2)
・香典は相続財産にならない。死亡保険金は相続税の課税対象に
・被相続人の保有株式や契約していた生命保険はまとめて照会できる
相続では、亡くなった人(被相続人)が残した財産を相続人が引き継ぎます。対象となる財産については法律の規定があります。相続の対象となる財産には、どういったものがあるのでしょうか。
預貯金や不動産、有価証券が対象に
相続財産は、被相続人が亡くなった時点で保有していた資産と負債のすべてをさします。身近な資産では、現金などの預貯金や自宅の建物・土地といった不動産、株式などの有価証券が挙げられます。自動車や美術品、宝石などの貴金属、借地権やゴルフ会員権なども含まれます。
相続の対象となるのは資産だけではありません。被相続人が抱えていた負債も対象になります。例えば、自動車ローン、教育ローンといった金融機関からの借り入れや個人間の借り入れがあります。被相続人が保証人や連帯保証人になっていた債務も相続財産になります。
未払いの債務も対象です。水道光熱費など公共料金、税金、病院代などの未払い金が挙げられます。被相続人が自営業者だった場合、営業上の未払い代金なども含まれます。
こうした債務を相続した場合、相続人が返済義務を引き継ぐことになります。
香典は遺族の収入
一方、相続財産にならないものもあります。例えば、墓地などの祭祀(さいし)財産は相続財産ではありません。墓地や仏壇、家系図といった祭祀財産は民法上、祭祀承継者が引き継ぐことになっています。祭祀承継者は亡くなった人が指定するほか、親族間での話し合いや、地域の慣習などによって決まります。相続人以外の人が祭祀承継者になることも可能です。
葬儀で受け取る香典も、相続財産にはなりません。香典は亡くなった人の財産ではなく、遺族の収入になるためです。
民法の規定では相続財産ではないのに、相続税の課税対象になるものもあります。被相続人が亡くなったことによって得られた生命保険の死亡保険金や、死亡退職金です。こうした財産は「みなし相続財産」と呼ばれます。
ただし、死亡保険金や死亡退職金は、残された相続人の生活を保障するためのものでもあるため、一定の非課税枠があります。受取人自身の財産となるため、遺産分割の対象にはなりません。財産を引き継ぐ権利を放棄する相続放棄をしても受け取れます。
財産の把握、多くは相続人が自力で
相続手続きを円滑に進めるためには、被相続人がどんな財産をどれだけ保有していたかを把握することが重要になります。多くの場合は、相続人が自力で財産を調べることになります。現在は被相続人の財産すべてを一括で調べられる仕組みはありません。
預貯金なら、通帳などを手掛かりに金融機関に口座の有無を問い合わせます。不動産なら、固定資産税の納税通知書などを確認します。
負債の場合、個人の借入額や返済状況などが登録されている信用情報機関に問い合わせる方法もあります。借入先が銀行なら全国銀行個人信用情報センター、カード会社ならシー・アイ・シー(CIC)、消費者金融なら日本信用情報機構(JICC)が照会先の選択肢となります。
株式や生命保険については、それぞれまとめて調べられる制度があります。株式は証券保管振替機構(通称ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、口座のある証券会社などが開示されます。開示対象は、上場株式や上場投資信託(ETF)などの保有口座です。外国株や上場していない投資信託のみの保有口座は対象外です。
生命保険は「生命保険契約照会制度」で、被相続人が契約者や被保険者になっている契約がある保険会社がわかります。ただし、すでに支払いが始まった年金保険契約など、照会対象にならない保険もあります。
いずれの制度も、個別の保有銘柄や保険の契約内容といった詳細までは開示されないため、各会社に問い合わせる必要があります。開示対象を知って制度を利用することが大切です。
誰かが亡くなると、親族は故人の財産などを引き継ぐ相続に直面します。相続で「誰が・何を・どう分けるか」については法律で決まりがあります。対象となる財産にはどんなものがあるのか、相続人はどう決まるのかなどをわかりやすく解説します。
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