大企業製造業の景況感、小幅改善 日銀短観12月
日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回9月調査(プラス13)から小幅改善となるプラス14だった。認証不正問題で低迷していた自動車生産の回復や、人工知能(AI)関連の半導体製造装置の需要増加などがプラス材料となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。12月調査の回答期間は11月11日〜12月12日で回答率は99.4%だった。
大企業製造業の業況判断DIの改善は2四半期ぶりで、2022年3月(プラス14)以来の高水準だった。認証不正問題で低迷していた自動車生産の回復で、自動車がプラス8と前回調査から1ポイント改善した。自動車用部品などが含まれるはん用機械も前回調査から6ポイント改善し、プラス29だった。
AI関連の半導体製造装置の需要増加などで生産用機械もプラス21と前回調査から8ポイント改善した。一方、中国や欧州の景気減速による海外需要の伸び悩みで、鉄鋼や金属製品などでは業況感が悪化した。
先行きの業況判断DIは1ポイント悪化のプラス13だった。2025年1月に米大統領に就任するトランプ氏は関税引き上げ策を打ち出しており、その動向が懸念材料の一つとなった。
大企業非製造業の業況判断DIは前回調査(プラス34)から小幅悪化のプラス33だった。2四半期ぶりに悪化したものの、1991年以来の高水準は維持している。小売りは15ポイント悪化のプラス13だった。前回調査では猛暑による夏物衣料や台風の影響で災害関連の需要が伸びたが、今回は残暑が続いた影響で、秋冬物の衣料品の需要が伸び悩むなどの反動が出た。
宿泊・飲食サービスは12ポイント悪化し、プラス40だった。引き続きインバウンド(訪日外国人)需要は好調で業況判断DIも高い水準が続いているが、人手不足による人件費の上昇や原材料の高騰が悪化の要因になった。建設や運輸・郵便などでは人件費を価格転嫁する動きが進展し、業況感の改善がみられた。
中小企業では原材料や人件費の上昇を販売価格に転嫁する動きがみられた。販売価格判断DIは中小企業非製造業でプラス27と前回調査から1ポイント改善した。先行きのDIもプラス31と改善傾向にある。日銀関係者は「中小企業でも価格転嫁の裾野が広がってきている」と話す。
企業の事業計画の前提となる24年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=146円88銭だった。1ドル=145円15銭としていた前回調査から円安方向に修正された。
企業の物価見通しは全規模全産業で1年後は前年比2.4%、3年後は2.3%、5年後は2.2%となった。いずれの期間も前回調査と比べて横ばいだった。企業は政府・日銀が掲げる2%物価目標近くで推移するとみている。
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