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野村証券、役員10人が報酬返上 元社員の強殺未遂で

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野村証券は3日、広島支店に所属していた元社員が強盗殺人未遂などの罪で起訴された事件に関し記者会見を開いた。奥田健太郎社長ら役員10人が役員報酬を自主返上すると発表した。金融機関では顧客の信頼を失いかねない不祥事が続いており、トップ主導の立て直しが重要になっている。

奥田氏は会見の冒頭で「被害者の皆様、多くの関係者に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げる」と陳謝した。

元社員は7月に広島市の80代夫婦宅で妻に睡眠作用のある薬物を飲ませたうえ、現金約1787万円を奪い、放火して殺害しようとしたとして強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で11月に起訴された。夫婦は元社員の顧客だった。

野村証券がこの事案で記者会見するのは初めてで、事件判明後に元社員が担当していた208口座を調査したところ、ほかに被害は確認できなかったという。

奥田氏は「顧客の大切な資産を預かっている金融機関として絶対にあってはならない事態であり大変重く受け止めている」と語った。「辞任は考えていない」と述べた。

奥田氏や個人向け営業部門を担当する杉山剛取締役専務ら役員5人は報酬の30%を3カ月分返上する。奥田氏を除く代表取締役5人は20%を3カ月分返す。金額の水準は社外取締役を含む監査等委員会や外部の弁護士と話し合って決めた。

野村証券は事件を受けた対応策も公表した。奥田氏は「金融機関は信頼、安心してもらえる環境をつくることが使命であり、このようなことを二度と起こさない運営をする」と話した。

不正行為の予兆把握と社員の行動管理の2点に力点を置いた。営業担当者が顧客宅を訪問する際は当面の間、管理者が同席するか、訪問前後に電話面談を設ける。

今回の事案は休日の顧客訪問に必要だった事前承認を取らず社内ルールに違反した行動だった。

顧客に直接接する社員を対象に、行動を厳格に管理するために会社貸与の携帯電話やドライブレコーダーのデータ確認で不審な動きを検知する。

年に1回、一定期間連続での休暇取得も義務付ける。顧客への接触を遮断している間に他の社員が担当することで、不正が潜んでいないかをチェックする。休暇中には必要に応じ、管理者が取引内容を顧客に確認する。

人事評価の面で職業倫理やリスク管理などをより重視する運用に改める。上司のほかに部下や同僚からも評価を受ける「360度フィードバック」について、個人営業部門は管理職に加え、全社員を対象にする。

不正行為を抑止し、顧客本位の業務運営を徹底するため副社長をトップとする「業務改革推進委員会」も新たに設置した。対応策の実効性の検証や実践に必要な社内規則などを定める。

野村証券は日本国債の先物取引で相場操縦をしたとして、金融庁から2176万円の課徴金納付命令を10月に受けた。相次ぐ不祥事を踏まえ、内部管理体制も含めた社内の再構築が必要になっている。

野村証券以外でも金融機関の不正が続けて発覚している。職員や社員によるインサイダー取引の疑惑は、金融庁、東京証券取引所、三井住友信託銀行で明らかになった。いずれも企業などからの未公開情報を扱うことを主な業務内容としており、信頼関係を揺るがす事態となっている。

三菱UFJ銀行は11月22日に、元行員が東京都内の2支店の貸金庫から顧客の現金や貴金属を盗んだ事案を公表した。被害は顧客約60人分、総額十数億円に上るという。

野村証券の奥田氏は12月3日の記者会見で「私自身が先頭に立って信頼回復に努め、再発防止を社員全員に理解してもらう」と強調した。金利ある世界への回帰や株価上昇によって業界に追い風が吹くなかだからこそ、不正を抑えるリーダーシップが求められている。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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