NY市場で急速にしぼむ植田日銀への期待感
やはり、日銀の金融政策選択のインパクトは限定的であった、との虚無感が米ニューヨーク(NY)市場に漂っている。7月28日の日銀金融政策決定会合後、日銀もいよいよ金融正常化の出口に向け動き出した、とのNY市場の認識は数日で後退した。日銀に関しては、何事もなかったように、報道も会話も減った。
日銀が28日に長期金利の上限を事実上1%まで引き上げ、31日に新発10年物国債利回りが0.6%程度まで上昇したところで、日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)に踏み切ったことで「日銀の政策修正のスピード感は、氷河の動きを想起させる」とのコメントも聞かれた。米連邦準備理事会(FRB)が0.75%刻みの利上げを連発したこととの対比が鮮明だ。
ヘッジファンドは割り切ったもので、それなら円売り攻撃を再度仕掛けるチャンスと受け止めている。
米株式市場では、連想的に日本の株式市場改革への本気度が問われ、日本株熱に水を差された。とはいえ、米株式市場では27日発表の4〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が市場予想を上回ったサプライズを契機に米経済の軟着陸シナリオが急速に台頭しているので、相対的にムードがポジティブだ。これまで手付かずの日本株もポートフォリオに加える心理的余裕がある。日銀政策修正のスロースピードも、株式市場では緩和継続ゆえ買い要因と化す。これまで「日銀は永遠のハト」と言われたが、今では「日銀のタカへの変身はスローモーション」と語られている。
先週、あれほど舞い込んだ日銀に関する問い合わせがパッタリやみ、筆者も短期間の変化を体感している。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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