AI事業者を調査・指導しやすく 新法整備へ報告書案
政府は26日、人工知能(AI)規制のあり方を議論する「AI制度研究会」の会合を開き中間とりまとめ案を公表した。国民の権利を侵害する悪質な事態が生じた際には国が実態を調査し、事業者への指導や国民への情報提供を実施すべきだと提起した。2025年1月召集の通常国会での法整備をめざす。
会合に出席した石破茂首相は「イノベーション加速とリスク対応を両立させる新たな法案」の早期国会提出を指示した。AI政策の司令塔機能を強化する一環として全閣僚で構成する「AI戦略本部」を設置すると表明した。
これまで日本はAI規制に関して法律ではなくガイドラインの策定で対応してきた。
とりまとめ案は国内外の事業者から情報提供の協力を得られるよう「法制度による対応が適当だ」と指摘した。一方で「事業者の自主性尊重」を重視し、法規制は「自主的な努力による対応が期待できないものに限定」する考え方も示した。
AI政策を担当する城内実科学技術相は同日の記者会見で「スピード感をもって世界のモデルになるような制度を構築していく」と説明した。技術開発で先行する海外事業者を念頭に法整備を急ぐ必要性を語った。
とりまとめ案はAIに関する基本的な考え方として「イノベーションの促進とリスクへの対応を両立させることが重要だ」と唱えた。リスクとしてサイバー攻撃に悪用される事例や「ディープフェイク」の作成、偽・誤情報の拡散などを列挙した。
安全性の向上を促す施策として第三者による認証制度の活用も提案した。政府の司令塔機能の強化を求め、安全・安心な研究開発や利活用、安全保障リスクへの対応を盛り込んだAI戦略を策定すべきだと提起した。
日本では個人や企業によるAIの活用は他国と比べて進んでいないとの指摘がある。とりまとめ案は国際競争力を強化する観点からも政府が積極的にAIを活用すべきだと強調した。政府調達のガイドラインを整備すれば、民間事業者の参考にもなると説いた。
日本が23年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で提唱した「広島AIプロセス」にも触れた。相互運用性を高めるために国際的な指針に準拠した形での制度設計を要求した。「各国のモデルとなるようなAI制度を構築し、世界に向けて発信していくべきだ」と主張した。
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