24年度の実質成長率は0.3%、25年度は1.1% NEEDS予測
民需が緩やかに拡大し、持続的な成長に
日本経済新聞社の経済・金融データサービス「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が11月15日に公表した2024年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測によると、24年度の実質成長率は0.3%、25年度は1.1%の見通しとなった。
7〜9月期は民間最終消費支出(個人消費)が景気を押し上げ、2四半期連続のプラス成長だった。10〜12月期以降も個人消費は増加が続き、設備投資も回復に転じる見通し。輸出・輸入ともに伸びるため、外需の成長への寄与は小さく、民間需要(民需)中心の成長を見込む。
2四半期連続のプラス成長――24年7〜9月期
7〜9月期の実質GDPの前期比成長率は0.2%だった。個人消費は前期比0.9%増と、成長率を0.5ポイント押し上げた。住宅投資は同0.1%減、設備投資は同0.2%減だった。民間在庫変動と合わせた民需の成長率への寄与度は0.6ポイントとなった。
政府消費は3四半期連続プラスの前期比0.5%増、公的固定資本形成(公共投資)は2四半期ぶりマイナスの同0.9%減で、公的在庫変動と合わせた公需の寄与度は0.1ポイントだった。
輸出は前期比0.4%増と2四半期連続のプラス。財輸出は同1.9%増だったものの、インバウンド(訪日外国人)消費などのサービス輸出は同4.2%減だった。輸入は2四半期連続プラスの同2.1%増だった。
個人消費は所得環境の改善が下支え
自動車の業界団体が公表した10月の国内新車販売台数(乗用車、軽自動車含む)は、NEEDS算出の季節調整値で前月比1.6%増と、2カ月連続の増加となった。春季賃上げ率の大幅上昇を反映し、所得は堅調に増加している。厚生労働省が公表した毎月勤労統計(調査産業計、5人以上、確報)では、9月の所定内給与(共通事業所ベース)は前年同月比2.7%増と2%台後半の伸びが続いている。
予測期間中の個人消費は、所得環境の改善により、前期比0.2〜0.3%程度のプラスを維持する見通し。年度ベースでは24年度に前年度比0.9%増、25年度は同1.3%増と予測している。
海外経済底堅く、輸出は緩やかな増加に
輸出の先行きは緩やかな増加を予測している。海外経済は減速に向かうものの、底堅く推移する見通し。米国では、米商務省が公表した10月の小売売上高(季節調整値)が前月比0.4%増となるなど、個人消費を中心に景気は堅調に推移している。これまでの利上げの影響により成長ペースは鈍化していくが、米連邦準備理事会(FRB)が適切に利下げを実施し、緩やかな成長を維持できる見込み。中国は不動産部門の調整が続いているものの、10月の社会消費品小売総額(小売売上高)や工業生産は堅調だった。
日本のGDPベースの輸出は、24年度は前年度比1.6%増、25年度は同3.3%増と予測している。輸入は内需の堅調さを反映して24年度同4.5%増、25年度同3.2%増の見通し。予測期間中の四半期ベースでの外需の前期比成長率に対する寄与はマイナス0.1ポイント〜0.1ポイントとなる。
設備投資、10〜12月期以降は回復
内閣府が公表した機械受注統計では、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」の10〜12月期見通しは前期比5.7%増と、3四半期ぶりのプラスが見込まれている。また、経済産業省が公表した特定サービス産業動態統計調査によると、「ソフトウエア開発・プログラム作成」の売上高(確報、NEEDS算出による季節調整値)は、7〜9月期に前期比0.9%増で、デジタル投資は増加基調だ。
日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)など各種設備投資調査では企業の投資意欲は強い。人手不足で建設投資などに工期の長期化がみられるものの、デジタル化・省力化を中心に設備投資は緩やかな増加が続くとみている。GDPベースの設備投資は24年度に前年度比1.9%増、25年度は同1.8%増と予測している。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが11月に公表した短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 山崎理絵子、情報サービスユニット 渡部肇)
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