[社説]原発と再生エネ活用を競争力の土台に
エネルギー基本計画の見直しを議論する経済産業省の審議会が原案を示した。再生可能エネルギーと原子力発電をともに最大限活用すると明記した。依存度を下げるとしてきた原発政策の転換だ。
脱炭素時代のエネルギー政策は気候変動対策の高い目標を追求しつつ、安定・安価な供給を実現することが条件だ。新たな計画を日本の競争力を高める土台にしなければならない。
計画はエネルギー政策の中長期指針となり、約3年ごとに見直す。原案は2040年度の電源構成に占める再生エネの比率を4〜5割程度に引き上げ、最大の電源とする。原子力を2割程度とし、残る3〜4割程度は火力で賄う。
日本は50年に温暖化ガス排出の実質ゼロを約束する。原案はデータセンターや半導体工場の増加など経済のデジタル化に伴い、電力需要が一転して1〜2割程度増えると見込む。需要増にあわせて脱炭素電源を増やす必要がある。
需要に追いつかずにデータセンターなどの投資が進まず、鉄鋼や化学など電力多消費産業が電力コストの安い海外に製造拠点を移す事態は避けなければならない。
私たちは脱炭素と安定供給の両立へ特定の電源に頼るのではなく、原発を含む、あらゆる手段を総動員すべきだと主張してきた。
再生エネを最大の電源と位置付けるのは妥当だ。加えて運転中は温暖化ガスを出さない原発の役割は重要だ。原発への依存度を「可能な限り低減する」としてきたこれまでの表現を削除し、安全の確保を前提に最大限活用する。
運転期間を終え、廃炉となる設備も増える。どの程度の新増設が必要かの目安も示すべきだ。
ただし、東京電力福島第1原発の事故処理はまだ途上だ。使用済み燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物の最終処分地も定まっていない。国民の不信払拭と積み残しの課題解消へ国が強い決意で向き合う必要がある。
脱炭素はイノベーションの競争でもある。発電所や工場から出る二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する技術や燃焼させてもCO2を出さない水素やアンモニアなど脱炭素燃料の供給網整備など、火力を脱炭素化して使うための努力を怠るわけにいかない。
国際情勢の不透明感が増すなかで、石油や天然ガスを安定的に確保するためのエネルギー・資源外交の重要性も変わらない。
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