米、原油輸出を一部解禁 「精製品」の解釈を拡大
【ワシントン=矢沢俊樹】米オバマ政権が、原則として禁止している米国産原油の輸出を一部の米石油会社に許可したことが24日、わかった。一部メディアが報じた。原油に最小限の加工をした超軽質油と呼ばれるほぼ未精製の原油について、米商務省が輸出可能な「精製品」と認めた。米国内では原油生産量の急増から輸出解禁を促す圧力が強まっている。
米メディアによると、米商務省がテキサス州の石油会社2社に許可。8月にも輸出を始める方向だ。
米国では第1次石油危機と国内消費量の増大を踏まえ、1975年に制定したエネルギー政策・保存法(EPCA)で原則、未精製の米産原油の輸出を禁止した。現在はカナダの国内消費向けなど一部例外を除くと輸出ができない。
今回許可したのは、成分がガソリンに近い超軽質油と呼ばれる種類の原油。法改正をせずに、「精製品の解釈を拡大することで事実上、原油輸出の道を開いた妥協案」(米政府関係者)とされる。
米産原油の増大や国内での原油消費量減から、米石油業界や有力な米経済団体は輸出解禁で足並みがそろう。米上院の野党・共和党議員らを中心にオバマ政権への働きかけが活発になっており、複数のオバマ政権高官が解禁に向け検討を進める意向を表明していた。
ただ、原油価格上昇を懸念する米石油精製業界や環境団体は反対姿勢を強めており、与党・民主党内を中心に慎重論も強い。石油業界など推進派はEPCAの抜本改正による輸出拡大を求めるが、「2016年の次期大統領選前にオバマ氏が法改正を伴う全面解禁に踏み切る可能性は低い」(米エネルギー当局者)との見方がある。
今回の輸出許可を巡っては、イラク情勢緊迫化で不確実性の強まる国際原油市場への影響は当面は限定的とみられている。