PSAが資本提携交渉 増資引き受け、中国・東風と仏政府有力
【パリ=竹内康雄】経営再建中のフランスの自動車大手プジョーシトロエングループ(PSA)は複数の関係先と資本提携に向けた交渉に入った。PSAが増資して、事業面でつながる中国の東風汽車と仏政府が引き受ける案が有力だ。欧州債務危機による販売不振で業績が落ち込み、自力再建は難しいと判断。実現すれば世界的な自動車メーカーに中国企業が資本参加することになる。
PSAは14日発表した声明で「複数のパートナーと、財務上の措置を含む産業・商業プロジェクトを研究している」と表明。具体的な提携先は明示していない。22日の取締役会で詳細を議論するとみられるが、PSAの広報担当者は日本経済新聞に「動きが出るのは数週間後ではなく年内だ」と述べ、調整には時間がかかると説明した。
資本提携の有力案はPSAの増資を東風汽車と仏政府が半分ずつ引き受ける内容だ。ロイター通信は増資額が30億ユーロになると報道。増資が実現すれば東風と仏政府の出資比率は各20%程度になる見込み。一方、中国紙は東風がPSAの株式30%を16億ドルで取得する準備を進めていると伝えた。
PSAは東風汽車と1990年代から中国で合弁事業を手掛け、生産規模を昨年の45万台から2015年には75万台に拡大する計画。PSAの中国事業の1~6月期の売上高は前年同期比33%増と好調だ。両社には新興国市場を開拓する合弁企業をつくる構想もあり、PSAには急増する需要を取り込み、業績反転につなげる狙いもある。
もっとも提携交渉には曲折もありそうだ。増資で既存株式の価値が希薄化することが嫌気され、14日の欧州株式市場ではPSAの株式は前週末比一時10%超下げた。金額や株式数などの協議も始まったばかりという。
中国企業の経営参画に「心理的な抵抗もある」(仏系証券)。PSAの筆頭株主は38.1%(議決権ベース)を保有するプジョー創業家。増資が実現すれば重要な決定事項を拒否できる3分の1の議決権を割り込むのは確実。仏政府は創業家と合わせて5割超の議決権確保を目指すとされる。
最大の懸念は、12年2月に資本・業務提携を決めた米ゼネラル・モーターズ(GM)の対応だ。PSA株の7%(議決権ベースで5.9%)を保有するが、GM子会社の独オペルとPSAの統合計画も実現していない。GMの対応次第で交渉が難航する可能性もある。