危機感に拍車、金融庁も動く 東証・大証が来秋合併
東京証券取引所と大阪証券取引所が統合合意に向けて最終調整に入った背景には、日本の証券市場の地盤沈下に対する強い危機感がある。関係者は、統合による相乗効果の大きさを考慮すると、協議が難航していた合併比率の面でも歩み寄りは可能とみており、月内にも基本合意に至る可能性が高い。成長企業にとって魅力のある市場となることで世界の投資マネーを呼び込む。
東証と大証の統合協議は現物株で圧倒的なシェアを握る東証とデリバティブ(金融派生商品)に強い大証が一緒になり、負担の重いシステム費用などを効率化。投資家や上場企業の利便性を高めることで、世界の中で地盤沈下が進む日本の証券市場の競争力を回復させる狙いから始まった。
金融庁も背押す
だが、未上場企業の東証と上場企業でもある大証の統合という難易度の高さも影響し、統合交渉は当事者らの想定以上に長引いていた。両社の経営陣はこれ以上、結論を先送りすることは日本の証券市場にも悪影響を与えかねないと判断。取引所の監督当局である金融庁も水面下で早期決着を迫った。合意をめざして両社の協議が急速に進展することになった。
現在の再編構想では、持ち株会社の傘下に「現物株」と「デリバティブ」の2つの市場のほかに「決済機関」、上場審査や市場の監視などを担う「自主規制機関」を収める案が有力。東証と大証の1部・2部市場などを一本化することでシステムの投資や運営費などのコストを削減できる。
相乗効果大きく
こうした市場統合の相乗効果は、合併新会社の企業価値を数百億円から1000億円程度も押し上げるとみられている。交渉の焦点のひとつになっている合併比率については当初、両社に大きな隔たりがあった。8カ月の交渉期間を経て、現在は「仮に相手側に譲ったとしても株主に説明が付く」(関係者)水準まで収束してきた。
欧州債務問題などで株式市場が先行きの不透明感を増していることも、両社を早期の合意にせき立てる。東証の株主には業績悪化に苦しむ証券会社も少なくない。「東証と大証のシステムが一本化すれば、証券会社にとっても運営コストや投資費用が下がる」(中堅証券)と早期の決着に期待する声が上がっている。