アーミテージ氏、中国への対抗「ASEANとも連携を」
日経・CSIS共催シンポ
日本経済新聞社は23日、米戦略国際問題研究所(CSIS)と共催の第17回シンポジウム「日米新政権と米中相克の時代」を開いた。オンラインで参加したリチャード・アーミテージ元米国務副長官は、南シナ海などで軍事行動を活発にする中国に対抗するため日米は「東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携するのも選択肢だ」と指摘した。
日米と中国は人権問題や安全保障問題などで対立が深まっており、アーミテージ氏は「基本的価値観や利害が絡む問題では協力すべきでない」と強調した。日米が外交協力を進めるオーストラリア、インドとの4カ国の連携に加え、ASEANなどと多国間の連携を強化する必要性を訴えた。
菅義偉首相が初の外遊先としてベトナムとインドネシアを訪問したことについても「敬意を表したい。菅首相の取り組みは中国の傘下に入らず中国との共生を目指す全ての国の支援につながる」(アーミテージ氏)と評価した。
中国についてはジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授も「東シナ海や南シナ海で中国が海洋進出を進めていることについては反対だ」と述べた。基調講演したジョン・ハムレCSIS所長は習近平(シー・ジンピン)国家主席が「中国の実力を大々的に世界に見せつけた方がよいと考えている。国家資本主義のもと、政治的なアジェンダ(行動計画)を前進させている」と述べた。
ただナイ氏は「(中国と)どこで対抗し、協調するかは是々非々で考えるべきだ。冷戦時代は白か黒かという時代だったが、今は違う」と話した。アーミテージ氏も「新型コロナウイルス対策や気候変動問題では協力可能だ」と中国との連携も訴えた。
日米関係についてナイ氏は「輸出規制など同盟国の資本を守ることでも、技術の研究開発でも連携を深めることができる」と強調し、サイバー防衛や人工知能(AI)技術の連携を呼びかけた。アーミテージ氏は「日本が(5カ国が機密情報を共有する枠組みである)ファイブ・アイズと連携することも必要だ」と述べた。
11月3日に控える米大統領選についてアーミテージ氏は「トランプ大統領が再選した場合、同盟国は安心できないだろう。(トランプ氏は)米国第一主義を貫く。長期的な国益にはかなわないだろう」と話した。ナイ氏は民主党候補のバイデン前副大統領が勝った場合「同盟国を安心させるべきだ。耳を傾け何を考えているかを知らなければならない」と指摘した。
環太平洋経済連携協定(TPP)に関してはナイ氏が「個人的には米国にはTPPに入ってほしい」と述べた一方、アーミテージ氏は「短期、中期的に米国がTPPに復帰する可能性は低いと思う。国民や政治家には多角的貿易制度を嫌がる人もいる」と指摘した。