河野氏「将来シックス・アイズに」 日経・CSISシンポ
日本経済新聞社は23日、都内で米戦略国際問題研究所(CSIS)と共催の第17回シンポジウム「日米新政権と米中相克の時代」を開いた。河野太郎行政改革・規制改革相(前防衛相)は民主主義と独裁主義の分断が進む中で、英米などとの連携を深めることが重要だと話した。
ビデオで基調講演した河野氏は具体策として5カ国が機密情報を共有する枠組みである「ファイブ・アイズ」との連携強化を提唱。日本が一段と密にし「ゆくゆくは(日本を含めた)『シックス・アイズ』にしていきたい」と述べた。
河野氏は講演で「中国は過去30年間に軍事支出を44倍に増やし、戦闘機や潜水艦、船舶数でも明らかに(日本との間で)差がついているのが現状だ」と指摘。香港への統制強化などの動きを念頭に「一方的な力を背景に現状変更の試みを中国が行おうとしている。国際社会が一致団結してどう向き合うかが非常に大きな問題」とした。
北朝鮮も「相変わらず短距離の弾道ミサイル発射を繰り返し、国連安全保障理事会の決議に明確に違反している」と批判し「ミサイル開発で新たな能力を身につけようとしており、国際社会に脅威だ」と話した。
河野氏は中国や北朝鮮などの動きも踏まえて「(日米)両方が日米同盟の重要性をしっかり認識し、日米同盟を今までにまして強くしていく」と日米関係の重要性を訴えた。
河野氏の講演後、「米中新冷戦と日本の選択」をテーマにしたパネル討論にはカート・キャンベル元米国務次官補がオンラインで参加。現在の米中関係について、競争と協調が併存しており「『新冷戦』と呼ぶことはできない」と指摘した。
キャンベル氏は「冷戦という言葉は黒か白かという印象をもたらすが、今は世界がつながり合っている」と指摘した。米ソ対立当時と現在の構図は全く異なるとした。
同じくオンラインで出席したジェームズ・スタインバーグ元米国務副長官も「新冷戦と捉えるのはかなり危険だ」としたうえで、米大統領選後には新型コロナウイルス対応や気候変動といったテーマで米中が歩み寄れるとの見方を示した。
北岡伸一東大名誉教授は「自由で開かれたインド太平洋構想を、より実効性のある強靱(きょうじん)なものとしなければならない」と述べた。
パネル討論後にはクリントン政権で米国防副長官を務めたジョン・ハムレCSIS所長がオンラインで講演した。米中の対立について「軍事分野もあるが経済面の競争の方が大きい」と話した。中国の国有企業は「日米の企業と違い、利益を追求しなくていい。潜在的な顧客も中国がスパイを使い見つけてくれる」と指摘した。
ハムレ氏は経済や貿易に関する「より高いレベルの規範を中国に提示することが重要」と強調した。そのうえで菅義偉首相に「安倍前首相のもと、日本はアジアでリーダーになった。菅首相も同様の戦略を続けてくれると信じている」と期待を込めた。
マイケル・グリーンCSIS上級副所長が司会を務め、リチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授がオンラインで討論した。アーミテージ氏は「トランプ大統領が再選した場合、同盟国は安心できないだろう。米国第一主義では、長期的な国益にはかなわないだろう」と話した。
ナイ氏は大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領が勝った場合「同盟国を安心させるべきだ。耳を傾け何を考えているかを知らなければならない」と指摘した。