日米首脳、貿易交渉で基本合意 9月下旬に署名へ
農産品関税はTPP並み
【ビアリッツ(フランス南西部)=甲原潤之介】安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)にあわせてフランスのビアリッツで会談し、日米貿易交渉で基本合意した。トランプ氏は会談後の共同記者発表で「(9月下旬にニューヨークで開く)国連総会をメドに署名できるようにしたい」と語った。
首相も「9月に首脳会談し(貿易協定案に)調印することを目標にしたい」と表明した。両首脳は9月下旬に交渉を決着させることで一致した。トランプ氏が1回目の会談後に「非常にいい話なので、一緒に会見したい」と提案し、急きょ共同記者発表を開いた。
貿易交渉は閣僚級協議で23日、重要品目の扱いに関して大枠で合意した。トランプ氏は25日「基本合意できた」と述べた。会談に同席した茂木敏充経済財政・再生相は記者会見で、農産品と工業品、デジタル経済の3つの分野で「意見の一致をみた」と説明した。
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は25日、70億ドル以上の市場開放につながるとの考えを示した。首相は首脳会談で、貿易協定とは別に、米産の飼料用のトウモロコシを購入する考えをトランプ氏に伝えた。
茂木氏は記者会見で米農産品の関税下げについて「過去の経済連携協定の範囲内で米国が他国に劣後しない状況を早期に実現する」と明らかにした。関税の下げ幅は環太平洋経済連携協定(TPP)以下になる。
日本が米国産牛肉にかけている38・5%の関税は段階的に引き下げ、2033年4月に9%にする。TPPと同水準になり米国はTPP参加国と競争条件がそろう。
米国の農家は中国との貿易摩擦の影響で、輸出が急減している。20年の米大統領選で再選を目指すトランプ氏は日本の農産品の市場開放を自身の政権運営の成果として訴える見通しだ。
日本が米国に要請してきた工業品の関税引き下げでは自動車本体の関税撤廃を先送りする。今回の貿易交渉とは別に、今後も協議を続ける。米国は離脱したTPPで「自動車関税を25年で撤廃する」と合意した経緯がある。
日本は米国による「通商拡大法232条」に基づく自動車への追加関税は受け入れられない立場だ。昨年9月の首脳会談の共同声明では貿易交渉中は追加関税の発動は回避すると明記した。
トランプ氏は共同記者発表で「中国について高関税はかかっているのは変えない。一方で日本についても変えない」と語った。茂木氏は「最終の仕上がりの段階できちんとした対応をしたい」と語り、9月下旬の交渉決着時に今後も発動を回避するようトランプ氏に確約を求める考えを示した。
今回の日米首脳会談について外務省は当初、会談が2度開かれたと発表したが、2度目は共同記者発表の打ち合わせだったと訂正した。