非入所者遺族、二審も敗訴 ハンセン病国賠訴訟 松江
ハンセン病患者で療養所に入らず亡くなった「非入所者」女性の息子(72)=鳥取県=が、国の強制隔離政策などで家族も偏見や差別の被害を受けたとして、国と県に計1925万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、広島高裁松江支部であった。栂村明剛裁判長は請求棄却の一審・鳥取地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。
原告側によると、非入所者の遺族が国に賠償を求めた訴訟で高裁判決は初めて。元患者の家族ら500人以上が熊本地裁で起こしている集団訴訟にも影響しそうだ。原告側弁護団は「ハンセン病問題に無理解で欠陥がある判決だ」と上告する方針を示した。
判決理由で栂村裁判長は、隔離政策により療養所以外での治療の機会が制限され被害を受けたのは患者で、家族ではないと判示。原告男性について「近隣住民の嫌がらせを受け、母親の治療のため生活が困窮し、仕事が制約されたとは認められない」とし、国に偏見や差別を除去する法的義務はなかったと判断した。
また男性が母親から相続した損害賠償請求権についても時効の成立を認めるなどし、国や県の賠償責任を否定した。
2015年9月の一審判決は「国は遅くとも1960年には患者の子供に対する社会の偏見を排除する必要があった」と患者家族への行政責任に言及したが、男性が母親のハンセン病罹患(りかん)を死亡前に認識していなかったなどとして請求は棄却した。
判決などによると、母親は59年に鳥取県内の病院でハンセン病と診断されたが、周囲の差別を恐れて療養所に入らず、男性を連れて移住した大阪で通院治療を続けた。らい予防法廃止(96年)前の94年2月に死亡した。〔共同〕