格安スマホ踊り場に 「フリーテル」運営会社破綻
格安スマートフォン(スマホ)「フリーテル」ブランドの端末を製造・販売するプラスワン・マーケティング(東京・港)が経営破綻した。4日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約26億円。格安通信サービスと端末の両方を手がけ、注目を集めたものの、業績が振るわず11月に通信サービスを売却。端末事業のみで存続を目指したが、資金繰りが悪化した。急成長してきた格安スマホが踊り場に立たされている。
「営業中にこんな対応することは初めてだ」。東京都内の家電量販店で、スマホ売り場の店員がつぶやいた。同店では4日午前から、フリーテルの端末や看板を撤去。ヨドバシカメラでも全店で、「フリーテル」のスマホ売り場が姿を消した。
プラスワンは4日、民事再生法の申請について「資金繰りの悪化により、債権者の皆様に対して従前どおり支払いを継続することが困難になった」と説明した。
プラスワンは、デルで携帯電話事業を立ち上げた経験のある増田薫社長が2012年に設立した。増田社長はかねて「25年までに出荷台数で世界一を目指す」と語り、ヨドバシに加え総務省の官民ファンドから計30億円の出資を受けた。日本人技術者が設計した端末を中国で生産。自社で取り扱う格安の通信サービスと組み合わせることで、月額299円からと割安なプランで人気を集めていた。
だが、拙速な経営がプラスワンにひずみを起こした。17年4月に「業界最速」とうたった広告が事実と異なるとして消費者庁が指摘し、信用が失墜。新規顧客を集めることができず、収益が悪化した。
プラスワンは「日本品質」をうたい、一時はヨドバシカメラでも目立つ場所に売り場を構えていた。だが最近は購入に訪れる客の数もまばらで、「フリーテルはお薦めできません」と説明する店員もいた。
市場環境が厳しくなるなか、中国での端末の開発費用もかさみ、プラスワンの2017年3月期の最終損益は55億円の赤字と、3期連続のマイナス。そこで手をさしのべたのが顧客数の獲得を求めた楽天だった。11月、楽天はフリーテルの通信サービス事業を負債を含め36億円で買収。36億円は負債の返済などに充てられたが、再建の道筋は立てられなかった。
フリーテルの通信サービスの契約者は既に楽天へ移行しており、「契約者には安心してサービスを使ってもらえる」(楽天)としている。18年1月にはフリーテルと楽天ブランドを統合する。
人材派遣・ITサービス会社のMAYA SYSTEM(東京・新宿)がプラスワンのスポンサー候補に名乗りを上げるという。ただ、今後の顧客のサポート体制などは不透明だ。