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パイオニア、AV手放す グループ2200人削減へ

DJ売却、車分野に資源集中

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オーディオの老舗がまたひとつ消える。パイオニアは16日、家庭用AV(音響・映像)機器事業の分離とディスクジョッキー(DJ)向け機器の売却方針を発表した。かつて「オーディオ御三家」と賞されたが、AV機器から事実上、撤退することになる。今後はカーナビゲーションシステムなどの自動車分野に注力する計画だ。名門復活を車に託す。

「今がパイオニアが変わる最後のチャンス」。同日の記者会見で、小谷進社長は「不退転の決意で臨む」と強調した。

ブルーレイ・ディスクプレーヤーなど家庭用機器を手掛ける子会社をオンキヨーに統合させるほか、DJ機器事業を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを正式に発表。今後も両事業には少額出資を通じ関与を続けるが、連結対象からは外し、事実上撤退する。これに伴い、グループ従業員の1割にあたる2200人の削減計画も明らかにした。

凋落した御三家

祖業に別れを告げ、カーエレクトロニクス分野に注力する構造改革だ。

オーディオ「御三家」の歴史
1938年福音商会電機製作所(現・パイオニア)を設立
46年春日無線電機商会(現・JVCケンウッド)設立、60年にトリオに社名変更
47年山水電気設立
81年パイオニア、レーザーディスクプレーヤー発売
97年パイオニア、世界初の民生用50インチ型プラズマディスプレーを発売
2008年日本ビクターとケンウッドが経営統合
10年パイオニア、プラズマテレビ事業撤退
14年山水電気、破産手続きの開始決定
パイオニア、AV機器、DJ機器事業の売却を発表

パイオニアの創業は1937年。国内では珍しかった高音質スピーカーを開発し、翌年に前身の「福音商会電機製作所」を設立したのが始まりだ。アンプの山水電気、チューナーのトリオ(後のケンウッド)とともに「オーディオ御三家」と呼ばれ、高度成長期には家庭の居間に鎮座するオーディオセットはあこがれの対象だった。

3社の優位性は徹底した音質へのこだわりにあった。かつて山水電気の技術者が「工場の柱のカビひとつひとつが音を作り出している」と誇ったように御三家は他社の追随を許さなかった。

しかし、CDが登場、微妙な音質を再現できるアナログからデジタルに音源が変わると急激に存在感が薄れた。外に持ち出せる「ウォークマン」や手ごろな価格のミニコンポにも押され、御三家は居場所をなくした。

今や音楽はスマートフォン(スマホ)で聞く時代。国内のオーディオ機器市場は88年の6620億円をピークに、2013年には6分の1以下の1017億円にまで縮小している。

ケンウッドは08年に日本ビクターと経営統合、JVCケンウッドとなるが、市場縮小にあえぐ。山水電気はブランド力目当ての香港資本などの傘下で再生を目指したものの断念、14年7月に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。

復活の好機逃す

パイオニアには復活のチャンスがあった。1度目は高品質の音と映像を一枚のディスクで提供するレーザーディスク(LD)のヒット時。81年に国産初のプレーヤーを発売すると高級クラブやカラオケボックスを席巻した。しかし、覇権にあぐらをかき、ディスクを使わず通信で楽曲を提供する方式への転換に遅れ、ドル箱を失った。

97年には民間用の大型プラズマテレビを世界で初めて発売。一時は圧倒的な国内シェアを獲得したが、大型化が困難とされた液晶テレビの技術進歩で価格競争に巻き込まれ、またしても技術革新の前に辛酸をなめた。

AV機器事業のリストラで目指すのは、「カーエレクトロニクス事業への経営資源の集中」(小谷社長)だ。

市販用で人気の「カロッツェリア」ブランドを生かし、独自で培ったカーナビ用のクラウドコンピューティング技術などを武器に手薄だった自動車メーカーへの納入を強めるという。スマートカー時代をにらみ、市場拡大が本格化するカーエレ分野に今後を託す。

ただ、カーナビもスマホ技術との融合が急速に進む。パイオニアはIT(情報技術)大手との連携で勝ち残りを目指す。車とスマホを連動させる米アップルの「カープレー」対応機を今秋にも欧米向けに出荷。米グーグルが主導する車載情報システムの開発組織にも参画し、変化の芽をいち早くとらえる戦略だ。

技術革新に敗れてきた過去の教訓を生かせるか。パイオニアの将来はそこにかかっている。(広沢まゆみ)

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