映画 ブレードランナー 2049 感想
 ブレードランナー 2049 を見たので感想を描く。
 ネタバレしない範囲での感想としては、面白かったし長かった。

 前作が好きな人はほっといても見に行くだろうからそれはよしとして、見に行くつもりだが前作を見ていない人は見ておいた方がより楽しめると思う。(というか見てないとポカーンも無きにしも非ずだろう)
 いまならamazon100円だしな。

 以下ネタバレバリバリでゆくので未視聴の人は回れ右で。


 今回は、ほんとうに躊躇なくネタバレを書くぞ。
 なぜかといえば、それはもう『ブレードランナー好きの人はみんな知ってるが、知らない人は全く知らないネタ』に触れないと、感想なんて書けない映画だからだ。

■あらすじ
 近未来。
 労働力としてつくられた人造人間レプリカントは、人間と見分けがつかない。
 過酷な環境で使役されることの多いレプリカントは 製造から期間がたつと反逆したり不安定になったりするため、4年の寿命と生殖できないという生物的なブレーキを内包する。
 ブレードランナーとは、そういった人造人間レプリカントを「解任」する職業の俗称である。

■タテツケの感想
 ガッチガチの続編である。前編を見てから見ないと面白いと感じる要素が減る。
 前作で、撮影ミスから複数の解釈の余地ができた部分(リドリースコット自身が後付けでどの解釈を支持するかを明かしているが)を確定させるシナリオとなっている。
 要するに、逃げたレプリカントの数が合わない問題から発展した、デッカードがレプリカントではないか問題だ。
 いちおう今作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴはそこにも含みを残したとか言っているが、もう全く残ってないレベルだ。

 ディックの原作にはそういう描画はない。
 もっとも、もともとブレードランナーという職業名も、レプリカントという造語も原作では使われておらず、リドリースコットがイメージ合わせのために用意したもので、巨大なデジタルサイネージが酸性雨にけぶる未来世界のデザインも、カーデザイナーとして参加したシドミードの影響が強くディックの原作をことさら神聖視するのは、ブレードランナーという映画を語るのには片手落ちになるのだが。

 とはいえ、リドリースコット自身撮影初期には、デッカードがレプリカントだとは考えておらず、後から思いついて気に入ったアイデアだと明かしているわけだから、それすら初期映画から読み取るのはおかしな話なのだが。

 その、アイデアに基づいた続編である。
 前作の物語のコア付近のお話。

 ガッチガチの蛇足である。骨太筋肉質の蛇足。

 例として最適ではないのだが。
 ダイターン3というTVアニメで、人類以上の存在としてメガノイドが設定されている。主人公、波乱万丈はメガノイドを絶対的に敵視する。メガノイドの野望を打ち砕くためにはどんな犠牲でも払う。だが状況証拠だけを集めれば、波乱万丈はメガノイドなのだ。
 なのだが、最後まで言及はされない。

 デッカードとレプリカントの関係は、そういうものだと思っていた。(我ながらひどい例だが、他にちょうど良いものが思いつかない)

 だが、今回はガッチガチの蛇足でその先に話を進めてしまった。

 であるからして、前作のブレードランナーの、面白さの奥行を作っていた部分はパァである。
 そのタテツケ自体には自分は残念さを感じる。

 感じるが、映画としては充分な面白さであったので、前作と本作は、ガンダムとZガンダムのような、正当な続編とはいえ別に同じ世界としてみなくていいや、というスタンスで見ることにした。
 蛇足なんだけど、蛇足自体は食べたらわりと独特な珍味で旨い。みたいな感じだ。
 ただし蛇足として無駄に長い。

■タテツケは置いておいての感想
 長い。
 歳をとってこらえ性がないのと、膀胱の限界が近いことから、長い映画は苦手である。なのでそこはツライ。
 長さをつかっての、長尺の演出は。重要でない部分に尺を割くことによって物語を曖昧にする役に立っており、本筋自体のシンプルさを糊塗し、複雑なニュアンスを持たせるのに成功している。
 だが、自分は、前作ブレードランナーでも自分はディレクターズカットであるファイナルカットより初期版のほうが短く含みがあって好きなのだ。今作ももうちょっと、血も涙も無い人が、フイルムカッターを持ってバッサバッサ斬りまくったほうが、含みがあって面白くなったのではないかと思う。ちょっと描き過ぎなのだ。
 後半、もうここで終わっていいんじゃない?ってところからズルズルズル話が続くのでえええ?と思った。

 語り過ぎる映画は余韻が足りない。もうちょっと寡黙で良かったんじゃないか。
 だって、このエピソードいるか?というエピソードがめっちゃあるのだ。
 前作のファンであるならこういうシーン欲しいと思うよね、みたいなところを全網羅しに行った感じで、饒舌に過ぎる。
 今回のお話ならこういう見せ場も作っとこう、みたいな感じで、無批判に居れたんじゃないかというカットが大量にある。
 思わせぶりカットで長々引っ張るのは「ブレードランナーはこういうもんだ」という先入観で見るとカットしにくいと思うが、カットすべきだと思うのだよなー。俺が長い映画嫌いってだけの可能性は高いが。

 さて、長さ、冗長さへの愚痴はさておき。

 絵作りはとても良い。
 主演の、ライアン・ゴズリングは、細甘いマスクの男前だが、神経質で打たれ弱そうな感じのレプリカントのブレードランナーをうまく演じている。弱そうなので話がどっちに転ぶかわからない感じがあり、物語にマッチしている。
 ヒロインのジョイは、ある種の男性願望を凝固したようなルックスなのだが、演じるアナ・デ・アルマスはそれほどのルックスでもないので、メイクか撮影かCGか。いやはやお話の立ち位置に非常に合致している。
 さよならジュピターという昔の映画で無重力ラブシーンというのが売りだったのだが。本作では、レプリカントとホログラムのシンクロラブシーンが存在する。
 デッカードを演じるハリソンフォードはどこに出してもハリソンフォードで、ちょっと前作のデッカードというよりは、別キャラっぽい気もしないではないが、まぁハリソンフォードなので全く問題なく連続性を保ってデッカードである。
 他のキャラはイマイチな気もするがさておく。

 そして、ブレードランナーといえばもっとも重要な背景美術だが、前作から35年、スチームパンク的SFシティの原風景としておおくの作家の魂に宿り再生産されてきたブレードランナー的な都市は、大きく姿を変えずにまた我々のもとに現れたのである。
 スターウォーズ新三部作が現れたとき、文化的、技術的なものがゴッソリ変化しておりその世界の変容に大変ガッカリした感情はまだあるのだが、ブレードランナーはほとんど変わらない。もちろんアップデートされているのだがまったく予想の範囲であり、35年のあいだその街に触発されてつくられた無数の模倣と比べても、ぶっちぎっていたりしない。
 だがまぁ、ブレードランナーだもんここが着地点であるべきだ。
 前作より予算がかかっているので、室内などはとてもリッチな映像になっているが。

 お話は。
 好き嫌いが分かれるが、自分はソコソコ好きだ。
 特に大きい解決を見るわけではなく、ゴール地点として設定されたそれは、物語の序盤に提示されたものではないので、すっとぼけに近いのだが。雰囲気映画としては上々だと思う。(長くなければ)

 ディティールは。
 各所のディティールは、凝りすぎだったり甘すぎだったりするのだが、個人的には記憶屋のディティールは甘すぎると思う。
 全体的な物語にしまりの悪さを感じさせるレベルで記憶屋の仕事風景にリアリティが足りない。
なのに長回しで撮影してしまう。一瞬しか見せなければ問題もないだろうに。最後にまた記憶屋に出会うまで描いてしまう。そこ要らないだろうと。
 他全体的に、そのディティールを思いついたのがうれしいのは解るが、長々見せるのやめようよ、そういうのはシレっと流すからいいんだよ。謎の「4つくれ」「2つで十分ですよ」の丼物も、初期映画ではなんだか全然分からなかったからよかったんだ。

■まとめ
 前作が好きならほっといてもみな見に行くのだろう。
 ちょっと興味があって、みるかどうか決めかねてる人は、見るなら前作を見てからの方が良いと思う。
 もっかいリンクしておくが、いまならamazon100円だしな。



蛇足
 流石に、ダイターン3のネタバレを云々つっこむ人はいないと思うが、カンベンしてほしい。もうちょっとで40年前の作品だ。

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