エキスパート一覧

湯 進

みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員・上海工程技術大学客員教授

みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員・上海工程技術大学客員教授

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務に従事後、中国と日本の自動車業界の知見を活用して日系自動車関連企業の中国事業を支援。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員、上海工程技術大学客員教授も務める。著書に『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版)など多数。(投稿は個人的見解であり所属組織とは無関係)
【注目するニュース分野】中国の自動車産業(EV、電池、部品、モビリティ)、日系企業の中国戦略
みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務に従事後、中国と日本の自動車業界の知見を活用して日系自動車関連企業の中国事業を支援。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員、上海工程技術大学客員教授も務める。著書に『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版)など多数。(投稿は個人的見解であり所属組織とは無関係)
【注目するニュース分野】中国の自動車産業(EV、電池、部品、モビリティ)、日系企業の中国戦略
湯 進

大都市では雇用と職場環境が厳しいなか、恋愛をする機会や時間がなく、住宅価格の高騰や結婚費の上昇に加え、結婚へのマイナスイメージを抱える若者は増加。初婚年齢は10年間で4歳近く遅くなっており、婚姻登録者は24年に700万組割れ、10年間で半減。価値観の多様化で結婚への拘りがなく、子供を持ちたくない人も増加している。 人口が減れば不動産需要が減るだけでなく、消費も縮小する。さらに労働力も確保できなくなり、経済成長が大幅に鈍化する恐れがある。 政府は定年年齢を引き上げ、人口減を緩和する一方、製造業のデジタル化を推進し生産性の向上を図ろうとしている。”中所得国の罠”を回避できるのかが問われる状況だ。

湯 進

EUや中国の補助金策が廃止・縮小されたことから、工場の再編、投資の先送り、人員削減などEV失速の動きがみられた。24年1~9月のEVとPHV販売台数伸び率では、EUが3%減、米国が8%増だった。EUでも国ごとの普及率に大きな差がある。新商品を早期に購入する消費者層の購入が一巡したことで、EVの世界販売が成長の踊り場を迎えた。 アーリーアダプターから大衆市場へと普及するネックは、充電インフラ、車両価格、航続距離であろう。世界のEV失速と言われながらも、中国では着実に拡大しており、米国でも安定成長してきている。これからクルマの進化、消費嗜好の変化に伴い、電動化やSDV化の方向性は変わらないだろう。

湯 進

経済の減速や住宅価格の下落が家計の資産減少につながり、国民の節約志向が強まっている。「霊活就業者」と呼ばれる非正規雇用労働者が2億人に達し、出前・物流・動画の投稿などIT系が運営する新職種で働く方も増加。個人消費を示す小売額(10月)は3.5%増、コロナ禍前の19年(7%)と比べると大きく減速。 内需の低迷を受け、霊活就業者が収入源の確保に苦慮している一方、価格競争が激化する業種では、企業が人員削減に踏み切っており、新卒など若年雇用も悪化している。10月の16〜24歳の若年失業率は17.6%。やりたくもない仕事を仕方なくやっている若年にとっては将来の不安が残るため、「今節約しかない」と言える。

湯 進

タイでは、日産がブランド認知度を保持していることは間違いないが、”移動手段としての日産”以外の提供価値に長らく踏み込まなかった。中国勢のEVやSDVの登場により、クルマの価値が一転して、生活をサポートする様々なアプリが搭載された便利なツールとして広まっている。動力源に拘らず、乗車体験を求めるタイの若年層消費者にとっては、タッチパネルや自動音声に対応するスマートカーが新た選択肢だ。 欧米でEV退潮の動きがあるなか、中国勢はEVの価格競争力を生かし、新興国市場への開拓を急いでいる。特に重要な戦略拠点として位置付けられているタイで成功できれば、その経験を他新興国に移植しやすくなるだろう。

湯 進

ソニーのエンターテインメントとホンダのモノづくりの融合に注目を集めるAFEELAは、高機能部品で自動運転レベル2+が可能となり、移動空間を楽しむための注目点も多い。ソニー・ホンダ連合は、業界にどれだけのインパクトを与えるだろうか。今後はテスラを上回るだけでなく、モビリティ企業を目指すことを軸に、量・サービスなどにおいて重要なものとそうでないものの取捨選択をしていく必要がある。 今、業界で起きている変化はかなり速い。スマートカーで台数を伸ばしたのが、テスラと中国勢だ。現時点で智能化においては他社の追随を許さない状態である。AFEELAに対する市場の評価は26年になるが、今後の動向に目を離せない。

湯 進

フル電動化宣言、競合や異業種との協業など、技術力で勝負する“孤高”なホンダは大胆な変革に取り組んでいる。一方、SDV専業やテック企業といった新たな競合が業界の概念を覆すような新製品・サービスへと成長している。ホンダにとってはこれまで想定していなかった業界と競合する事態が起こっている。 電動化を契機とした業界変動に際し、ホンダは急進的な電動化計画を推進する一方、社内の変革を通じて自社の伝統を維持しようとしている。リスクをチャンスと捉える姿勢で前進する新しいホンダが期待される。 日経の古川・田邊両記者が徹底取材でホンダの挑戦を明かす一冊、「ソニー×ホンダ革新を背負う者たち」を一読する価値がある。

湯 進

中国は“25年に半導体自給率70%”との目標を掲げているが、海外勢の中国製を除くと24年の自給率は10%に過ぎない(工業省幹部)。パワー半導体では国産品が採用されているものの、演算処理や制御で使うチップではエヌビディアやクアルコムが寡占。装置の自給率も低い(EUVは1%)。 中国工業省は、”30年までに70種類以上の車載半導体の技術標準”を策定し、米国の制裁の影響を受けない独自の半導体供給網の構築をめざしている。政府の手厚い支援を受け、中国企業は速いスピードで成長している。 短期的には最先端品の国産化は難しいが、5〜10年間かけて技術的に難しい製品でも国産化での代替を実現できると予測れる。

湯 進

今後、世界のAI業界は米中2強時代となり、部分的には中国が米国を凌駕している可能性もある。日本は生成AIの研究や開発基盤の強化に向け、AI予算を増やしているものの、米・中の予算額と比べると少なく、大学や研究機関の基礎研究力の弱体化が懸念されている。 機械・ロボット、スパコン・半導体などの分野で蓄積をもつ日本企業は、これまで数々のヒット商品を生み出してきた。熟練技術者がもつ技術やノウハウは企業にとって財産だ。しかし、日本企業のAIに対する認識にはバラツキがあり、官民挙げての取り組みは容易に進まない。AIの研究開発における遅れを取り戻さなければ、日本製造業の競争力はこの先徐々に低下しかねない。

湯 進

電池は低温時で使用可能な容量が大幅に低下し、走行距離も短くなる。PHVはこうした場合でもエンジンを使って電池の走行距離を補える。 中国ではPHVを購入すれば車両価格の10%に相当する購入税の免除を受けることができる一方、ナンバープレート発給など電動車購入にかかわる有利な規定もある。各社はその特権が切れる時期を意識し、その前にエンジン車よりコスパの良いPHVでシェアを獲得しようとしている。 一方、PHV市場ではBYDと吉利が計70%のシェアを占めており、EREV市場では理想とセレスが計72%のシェアを占めている。新規参入する企業は高価格帯のPHVや中低価格帯のEREVを投入せざるを得ない状況だ。

湯 進

技術者の外部採用に加え、異なる文化を持つ者同士で開発を進め、26年には納車ができれば、従来のリードタイムで考えると、かなり早いペースで進んでいる。ホンダとの分業でAFEELAがインテリジェンスに注力し、EQEやモデル3など競合車と差別化を図ろうとしている。販売価格は1000万円前後になりそうだ。 生産の最低ロットを勘案すれば、コスパで水平分業はテスラやBYDの垂直統合に太刀打ちできないだろう。特にインフォテインメントが差別ポイントがないほどコモディティ化に進むと、趣味性の高いEVは、E2Eなど大規模AIモデルを搭載するテック系EVに対抗できるかどうか、ホンダ・ソニーの底力が大きく問われる。

湯 進

広州MSでは、「電動化」と「智能化」を巡る競争が激しさを増している一方、中国のNEVシフトにおいてトレンドの変化も読み取れる。BYDが公開した豹8、騰勢N9、仰望U7、夏などの高級車から当社の技術の自信が反映されている。ファーウェイは「界」を使用したスマートカー4ブランドを展示し、Tier0.5 の実力を示した。 広州MSは、IT・コネクテッド・自動運転といったいくつの大きな枠組みが一層動きを強めている。単一のメーカーの垂直統合型から複合水平型に移り変わっていこうとしている流れが顕在化。日本勢はコスト削減だけでなく、異業種とも連携した新たな乗車体験でクルマの魅力を高めていく必要があるだろう。

湯 進

中国では“新質生産力”を意識して地方政府間で激しい企業誘致競争が繰り広げられている。かつては、ホンハイが深圳で40万人規模の工場を展開していたが、人件費高騰で労働者を集め難くなり鄭州に工場移転した。近年“ホンハイの鄭州撤退論”が聞こえてくるなか、鄭州市はサプライチェーンの定着を意識し、過去の労働集約型から技術や資本集約型の集積の形成を急いでいる。 一方、コロナ禍による地方債の増加、不動産市場の低迷に伴う土地の売却収入減などを受け、各地方政府は優遇条件を提示し、有力企業の投資誘致に必死になっている。一部税金の減免や土地使用権の提供などの優遇は中国EVメーカーや電池メーカーにとって追い風だ。

湯 進

中国の駆動システム市場では、ニデックが22年に外資独立系で1位、10%のシェアを占めていた。23年以降、EVの価格競争が激化するなか、電動アクスルの低価格化や部品の共通化も進められている。BYD傘下のFinDreams(1位)、ファーウェイ(2位)が"X in1"アクスルを投入し、部品点数の削減や制御機能の向上を果たした。 ニデックの主要取引である広州Aios と吉利汽車は、地場のINOVANCE製 やVIRIDIE製の低価格品を採用しはじめ、ニデックのシェアも23年に4.5%、24年1~9月には約2%にとどまっている。今後ニデックが中国でシェアをどれぐらい挽回できるか、引き続き注目したい。

湯 進

OEMが主導する開発に対し、ティア0.5のソフト会社が仕様を決め、その仕様に基づいてティア1が設計する主従の逆転だ。実際ファーウェイは「HIMA」モデルを打ち出し、SDVを加速させている。ソフト開発を担当する一方、コックピット、ECU、駆動系などハード部品も供給。車両には「HIMA」のロゴが貼られることから、ファーウェイが業界を主導する地位を築こうとする狙いだ。 ファーウェイが、大規模言語モデルを搭載する車両を25年に投入し、AIが担うE2Eで高度な自動運転の実現を図ろうとしている。システムが人の能力をはるかに超えてしまえば、ティア0.5の存在感が益々高まっていくことが予測される。

湯 進

販売不振で09年に日本から撤退した現代自は、22年に日本の乗用車市場に再参入し、中価格帯EVを発売した。販売店を設けずオンラインで売る現代自に対し、BYDはディーラと契約しながらの実店舗販売を行っている。23年の現代自の日本販売は約500台、BYDの3分の1にとどまる。 日本の消費者が現代自に抱えるブランドイメージはコスパの良さだ。一方、低価格を武器とする小型EVを投入するが、ライバルの日本車やBYDに勝つには、差別化を出す必要がある。特に初めての韓国車やEVを購入する場合、従来のように対面方式で売り、お客様との信頼関係を築いていくことは欠かせないだろう。

湯 進

昨年から中国ではEV(乗用車)の減速傾向が見え始めている。今年1~9月のEV生産台数は前年同期比11%増と、20%増だった23年からは大幅に減速。ただ販売台数は同18%増と、依然高い水準だ。EVの減速要因としては補助金制度の廃止、消費者から見た走行・充電の利便性の低さ等が挙げられる。 一方、EVの競争が激しい中国では、車両のデザインや乗り心地だけではく、運転支援機能も車選びの重要な要素になっている。SDVが増加する要因は、各社が差異化のために運転支援技術など車両機能を強化しているからだ。 EVからSDVに転換するなか、中国のBEV減速は一過性にすぎず、再び成長軌道に回帰することができるだろう。

湯 進

中国でエンジン車とBEVの二刀流を展開するトヨタの巻き返しは、現実のものとなるだろうか。中国勢と比べ、BEVに出遅れたトヨタは、中国の合弁先や大手テック企業との協業を通じて、段階的に電動化戦略を進めている。25年に投入する「bZ3X」「bZ3C」の2車種ともにTOYOTA PILOT(自動運転レベル2に相当)システムを搭載し、中国勢の技術を取り込みながら巻き返そうとしている。 一方、中国でトヨタが勝ち残るにはEV対応だけでなく、智能化も求められる厳しい状況になっている。特にSDVの開発スピードを上げ、トヨタにしか作れないEVブランドの価値を構築する必要があるだろう。

湯 進

中国国内でエリートの採用や、新卒採用の”天才計画”を推進しているファーウェイの任CEOは、外国人専門家や留学帰国者を集めるため、上海で研究センターの建設を決めたようだ。 中国のユニコーン企業やハイテクベンチャー企業は主に北京、上海、深セン、広州に集積しているものの、”魔都”と呼ばれる上海は、海外企業の経験者や留学帰国者に一番人気の都市だ。中国の最大の経済都市・金融センターだけではなく、”江南文化”の中心地として多くの若者を惹きつけている、 また、敷地内に100カ所以上のカフェをつくる目的は、若手技術者のコミュニケーションを活性化させ(新しい発想が生み出す)、モチベーションを引き上げることだ。

湯 進

BYDの10月販売台数が、ブランド別の単月実績で独VWを超え、トヨタに次ぐ2位となり、業界の勢力図を塗り替えている。この勢いが続けば、24年のBYD販売台数が400万台、売上高は約15兆円に達すると予測される。 1~10月のBYDの海外販売は、前年同期比1.6倍の約30万台。進出先の増加と販売網の整備、海外工場の稼働を勘案すれば、来年以降はグローバル販売が大幅増と見込まれる。BYDが幅広い価格帯のEVとPHVを展開し、新興国市場を侵食している現実は、中国・中国企業の影響力が強まっていることを示している。今後、日・韓・米・印の4市場を除くと、BYDは日本車の競合相手になりそうだ。

湯 進

BYDはASEAN、中南米、中東など、ローカルブランドが弱い市場に優先進出し、コスパの良い中低価格車を投入している。EU市場には、BYDが中高級車6モデルを投入しているものの、足場を築くのは容易なことではない。24年1~9月のEU販売台数は約3万台にとどまっている。 一方、ユーロ2024の公式パートナーを通じて、EUにおけるBYDの認知度がかなり上昇している模様。特にBYDの実質No.2、Stella.Liが欧州事業を統括し、販売網の整備や新車投入を加速させる方針を示した。25年末にはハンガリー工場を稼働させ、欧州第2工場の建設も計画中。EUにおけるBYDの動向から目を離せない。

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