EUや中国の補助金策が廃止・縮小されたことから、工場の再編、投資の先送り、人員削減などEV失速の動きがみられた。24年1~9月のEVとPHV販売台数伸び率では、EUが3%減、米国が8%増だった。EUでも国ごとの普及率に大きな差がある。新商品を早期に購入する消費者層の購入が一巡したことで、EVの世界販売が成長の踊り場を迎えた。 アーリーアダプターから大衆市場へと普及するネックは、充電インフラ、車両価格、航続距離であろう。世界のEV失速と言われながらも、中国では着実に拡大しており、米国でも安定成長してきている。これからクルマの進化、消費嗜好の変化に伴い、電動化やSDV化の方向性は変わらないだろう。
経済の減速や住宅価格の下落が家計の資産減少につながり、国民の節約志向が強まっている。「霊活就業者」と呼ばれる非正規雇用労働者が2億人に達し、出前・物流・動画の投稿などIT系が運営する新職種で働く方も増加。個人消費を示す小売額(10月)は3.5%増、コロナ禍前の19年(7%)と比べると大きく減速。 内需の低迷を受け、霊活就業者が収入源の確保に苦慮している一方、価格競争が激化する業種では、企業が人員削減に踏み切っており、新卒など若年雇用も悪化している。10月の16〜24歳の若年失業率は17.6%。やりたくもない仕事を仕方なくやっている若年にとっては将来の不安が残るため、「今節約しかない」と言える。
ソニーのエンターテインメントとホンダのモノづくりの融合に注目を集めるAFEELAは、高機能部品で自動運転レベル2+が可能となり、移動空間を楽しむための注目点も多い。ソニー・ホンダ連合は、業界にどれだけのインパクトを与えるだろうか。今後はテスラを上回るだけでなく、モビリティ企業を目指すことを軸に、量・サービスなどにおいて重要なものとそうでないものの取捨選択をしていく必要がある。 今、業界で起きている変化はかなり速い。スマートカーで台数を伸ばしたのが、テスラと中国勢だ。現時点で智能化においては他社の追随を許さない状態である。AFEELAに対する市場の評価は26年になるが、今後の動向に目を離せない。
電池は低温時で使用可能な容量が大幅に低下し、走行距離も短くなる。PHVはこうした場合でもエンジンを使って電池の走行距離を補える。 中国ではPHVを購入すれば車両価格の10%に相当する購入税の免除を受けることができる一方、ナンバープレート発給など電動車購入にかかわる有利な規定もある。各社はその特権が切れる時期を意識し、その前にエンジン車よりコスパの良いPHVでシェアを獲得しようとしている。 一方、PHV市場ではBYDと吉利が計70%のシェアを占めており、EREV市場では理想とセレスが計72%のシェアを占めている。新規参入する企業は高価格帯のPHVや中低価格帯のEREVを投入せざるを得ない状況だ。
昨年から中国ではEV(乗用車)の減速傾向が見え始めている。今年1~9月のEV生産台数は前年同期比11%増と、20%増だった23年からは大幅に減速。ただ販売台数は同18%増と、依然高い水準だ。EVの減速要因としては補助金制度の廃止、消費者から見た走行・充電の利便性の低さ等が挙げられる。 一方、EVの競争が激しい中国では、車両のデザインや乗り心地だけではく、運転支援機能も車選びの重要な要素になっている。SDVが増加する要因は、各社が差異化のために運転支援技術など車両機能を強化しているからだ。 EVからSDVに転換するなか、中国のBEV減速は一過性にすぎず、再び成長軌道に回帰することができるだろう。
湯 進
みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員・上海工程技術大学客員教授
みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員・上海工程技術大学客員教授
【注目するニュース分野】中国の自動車産業(EV、電池、部品、モビリティ)、日系企業の中国戦略
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