ついになくなるか婚外子差別
古くから日本の法律に残る差別がついになくなる。そう期待していいだろう。「婚外子(非嫡出子)の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法900条の規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうか、最高裁が大法廷で審理することになった。
15人の裁判官全員が審理に加わる大法廷は、最高裁が一度出した結論を再検討する必要があるときに開かれる。大法廷は1995年に民法のこの規定を「合憲」とする判断を示した。今回は「違憲」の結論が出る可能性が高い。
Aさんに子が2人いて、1人は法的な配偶者との子B、もう1人は結婚していない相手との子Cだとする。Aさんが死んだとき、遺産の相続分はCがBの半分になる、というのが民法の規定だ。
家族はそれぞれである。遺産配分にもそれぞれの事情があろう。それは遺言で指示すればいい。生まれたときの親の立場だけで法が人を差別していいはずはない。
この規定は、男性が正妻でない女性との間にも子をつくった場合、その子にも相応の相続の権利を認める、という趣旨で明治時代につくられた。
しかし、当時と今とでは家族や結婚をめぐる環境は大きく変わった。事実婚や国際結婚が増え、戦前の「家」を基本にした家族制度は法的には姿を消している。そうした中で残っているのが婚外子の相続差別なのである。
この規定をなくすと、家族の結びつきを弱め不倫も助長するという反対意見がある。だが、そもそも「お妾(めかけ)さんの子」を想定してできた規定なのだから説得力はない。むしろ、社会の婚外子に対する有形無形の差別につながる弊害を問題にすべきだろう。
規定にはかねて批判が多く、最高裁が合憲判決を出した翌年の96年、法制審議会はこの規定をなくす法改正を求める答申を出した。しかし、政府や国会は今まで差別を放置してきた。動かぬ政治の尻を司法がたたくというのは、決して望ましい姿ではない。