方言としゃべり方の癖
ドラマや映画で方言をしゃべる人物が登場する時、その方言をネイティブにしゃべる人が「違う」とクレームをつけることがある。
私も気になることはあるが、同じドラマに出ているA・B二人の役者の関西弁を比較して「Aは良いけどBは違う」と言われても区別がつかないことが多い。
その時ひっかかるのは、「A・Bの違いはしゃべり方の癖の違いじゃないのか」ということ。
個人によってそして役者の表現方法の違いによってしゃべり方(特にイントネーション)は異なるはずだ。
それと方言のイントネーションの微細な違いに差があるんだろうか?
それを踏まえて評価している人がどれだけいるだろうか?
特に、船場言葉も河内弁も大阪弁でひとくくりにするような連中には方言の批評してほしくないと思う。
「細雪」の吉永小百合の船場言葉と、「悪名」の朝吉の河内弁を同列に大阪弁と呼ぶような輩にはね。
「関西弁のアクセント~声調」でも話した通り、関西弁のアクセントは実に多彩だ。
歴史が長く自然発生のものだから、半人造語の標準語とは違い、元々バリエーションが豊富な上、一見他の方言に比べて頑なに形が保たれているように見えながらも、実はその標準語の影響も受けている。
関西弁の習得の難しさは標準語との違いよりも、そのバリエーションの多さによると思われる。
様々なパターンに対応するのは経験しかないので。
その証拠に他地域出身の俳優達は典型的な京都弁や船場言葉の方が、標準語とは違っていても対応できているようだ。
その代わり、その中に標準語アクセントが混じった場合の気持ち悪さはたまらない。
殊に自分は関西弁できてると思ってる風情のベテラン俳優に、自信満々でやられるとげんなりだ。
また、現代の一般人の日常のやり取りに古い京都弁や船場言葉的なアクセントを持ち込まれるのも「そんな奴おらんやろ」って感じだ。
どうも彼らの頭には関西弁のステレオタイプしかインプットされていないようだ。
地域、年齢、性別、状況による違いに、個人による差異も加わることを考えれば様々な関西弁があり得るので演者には難しかろうが、そこを汲み取るのは役者のスキルの一つのはず。
中にはよく聞くと変な関西弁だけど、シーンの中では違和感がない場合もある。
見る側もそこに留意せず一様に比較して論評すれば、Aの言うように的外れなものになるだろう。
とは言え、バリエーションを孕みながらも、関西弁という一定の括りがあるのも事実だが、そのポイントを端的に言い表す術を私はまだ持っていない。
- 関連記事
-
- イントネーション (2019/10/05)
- だじゃれ (2019/07/12)
- 方言としゃべり方の癖 (2019/06/22)
- 「ばえる」 (2019/05/08)
- 関西弁はなまりなのか? (2019/05/06)