FIRE後の「愚痴SNS」が映し出す未来の危険信号

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FIRE(Financial Independence, Retire Early)は、早期リタイアを夢見る多くの人にとって魅力的なライフスタイルです。

しかし、少ない資金でFIREを実現し、SNSで日々「○○が高くなった」「△△の量が減った」といった老人と同じような不満を投稿している人々を見ると、そのライフスタイルの持続可能性に疑問を抱かざるを得ません。このような投稿は単なる愚痴に見えますが、実際には将来の購買力を失いつつある危険信号かもしれません。

SNSの「愚痴」が示す危機

SNSでの愚痴投稿は一見、個人のストレス発散のように思えるかもしれません。しかし、「物価が上がった」「買えるものが減った」という内容が頻繁に見られる場合、それはいまは良くても、将来、人生が計画どおりにいかず資産の減少で苦しくなることを無意識におそれている兆候かもしれません。

特に、少ない資金でFIREを達成した人にとっては、インフレ(物価上昇)の影響が直撃します。日本銀行は年2%のインフレ目標を掲げており、単純計算では10年後には資産価値が20%減少する可能性があります。この現実に直面しながら、限られたリソースで生き抜くのは、まさに綱渡りのような状況です。

FIREの「細分化」が生む誤解

ここ数年、FIREには「Lean FIRE」や「Barista FIRE」などの新しいカテゴリが生まれました。これらの分類は必要資金のハードルを下げることで、より多くの人が「FIRE達成」を宣言しやすくなったという利点があります。

しかし、この「手軽さ」は同時にリスクも孕んでいます。Lean FIREは資産が少ない分、将来的なインフレや想定外の出費に耐える余力が限られており、計画が崩れやすいという問題があります。さらに、これらの新しいFIREの形態を追い求める人々は、SNSで達成の喜びを共有する一方で、長期的なインフレとそれが及ぼす精神的な影響について十分に認識していないことが少なくありません。

自分は自由を謳歌しているつもりでも、心のどこかで(世界と日本の成長・発展を無視して)デフレと円高で物の値段が下がることだけを期待している可能性があります。それは決まった年金しか収入がないいまの老人たちとまったく同じ、いわば亡国への道なのです。世界と日本の経済成長なくして、社会保障の維持・向上などありえません。

インフレという見えない敵

インフレはFIREを目指す人にとって、最も見えにくく、そして最も致命的なリスクです。現在のささやかな資産とわずかな期待リターンでは、長期的なインフレを乗り越えながら生活費を捻出することは非常に難しいと言えます。

例えば、年間生活費300万円で生活する場合、インフレ率2%が続くと10年後には必要な生活費が単純計算で約360万円に増加します(複利で考えるとさらに増える)。この増加分を資産運用でカバーできなければ、資産は目減りし続けます。目減りしても生活に影響がないくらいの大きな資産を作ることが、本来必須であるはずなのです。それがないのに早々にFIREすれば、徐々に生活レベルを下げざるを得なくなるでしょう。

一生社畜でいろというわけではない

だからといって、いまの会社にしがみついて一生社畜でいろというわけではありません。未来をいまの延長線上ではなく、もっと現実的に評価して備えようということです。過去20年続いてきた日本のデフレ継続を前提にしてインフレに文句を言うのではなく、今後のインフレリスクを正しく理解し、将来の購買力を維持するための地に足のついた計画を立てることが重要です。

最も確実なリターンは「働くこと」です。どこかのCMではありませんが「世界は誰かの仕事でできている」のです。幸いにも、少子高齢化で人手不足が進むいまの日本においては、働こうとする人にとってまだまだやりようがあると思います。自分は働いて確実なリターンを得ながら、投資でお金には手間をかけずに働いてもらって、不確実ながらも「うまくいったらラッキー」なリターンも同時に狙うのが合理的です。十分な資産ができたら、FIREするもしないも自由です。

備えあれば憂いなし

くりかえしになりますが、少ない資金でFIREし、SNSで日々「○○が高くなった」「△△の量が減った」といった老人と同じような不満を投稿しているかた、自分の心が発信している危険信号かもしれません。手遅れにならないうちに、手を打っておきたいですね。
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