「2期目を迎えようとしているトランプ氏は1期目より劣化が進んでいる」。そう分析するのは、世界情勢に詳しい日本総合研究所の寺島実郎会長だ。20日に米大統領に就任するドナルド・トランプ氏(78)は「操り人形」化していると言う。操ろうとしているのは誰か。日本はそんな米国とどう向き合うべきなのか。【聞き手・宇田川恵】
1期目よりも劣化、操り人形化の恐れ
――新たに発足するトランプ政権をどう見ますか。
アイゼンハワー元米大統領が1961年、退任演説で「米国は『産軍複合体』になりつつある」と警鐘を鳴らしました。産業や軍事が一体となる力学が米国の針路を誤らせるかもしれないという警告でした。
米国は今、「デジタル金融複合体」に変わりつつあります。現にハイテク産業の集積地、シリコンバレーを総本山とする「デジタル資本主義」、金融の中心地、ウォールストリートを総本山とする「金融資本主義」の二つが米国をけん引しています。
大統領に就くトランプ氏自身が不動産業界の業界人です。その右腕となる新政権の財務長官にはヘッジファンド出身のスコット・ベッセント氏を指名しています。
象徴的なのがイーロン・マスク氏。電気自動車(EV)のテスラで台頭し、「ツイッター(現X)」を買収したうえ、仮想通貨(暗号資産)をビジネスの柱の一つにしようとしています。
マスク氏は昨年7月、突然トランプ氏支持を表明し、180億円超もの大金を献金しました。まるでカネでポストを買うかのように、新政権では歳出削減や規制緩和を推進する「政府効率化省」のトップになる予定です。
そんな陣容を見ても、トランプ氏は1期目よりも劣化が進んでいると私は見ています。
――劣化とはどういうことですか。
トランプ氏は彼を奉り、ちやほやする人たちを率いて専制君主になるかのように捉えられていますが、現実はその逆です。さまざまな…
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