物言わぬ主人公のお話。 RPG考察モドキ
 ちょっと前にゼルダトワプリの感想を書いたんだけれども、わざと書かなかった部分がある。
 それは、プレイヤーキャラクターのリンクが喋らない事に関してだったんだけど、やはり書く気になったので書く事にする。

 やたら話の流れが非難がましいけれど、トワプリを非難する意図で無いです。あれは良い物です。

 日本でRPGを爆発的に広めたのはドラクエなので、それを元に話を進める。
ドラクエは頑なに主人公が喋らなかった。プレイヤーの意思表示は「はい・いいえ」によって行われる。

 当時のゲームは、アクションが殆どだったから、プレイヤーキャラは喋らないのが普通だったし、ハードの制約から、喋っても「ひらがな+カタカナ」が限界だったので、カタコトを喋らせるよりも「はい・いいえ」の方が想像力を刺激する。プレイヤーの没入度も考えて、そういう仕様が選ばれたのだろう。

「せかいの はんぶんを そなたにやろう」
「はい・いいえ」

 上記はドラクエ1におけるラスボスの竜王と主人公の会話。
 涙が出るほど見事です。
 別にコレは、本当に竜王に向かって「はい」とか「いいえ」とか言っているわけではなくて「何らかの受け答えをした」という意味なのは、プレイヤー全てが理解していたと思う。
 プレイヤーキャラの台詞をそのまま書いてしまわないのは、あくまでもプレイヤー=プレイヤーキャラとして、一体感を高める演出であり、べつにプレイヤーキャラクターが口がきけないとか無口であるという演出では無い。
 テキストすら満足にメモリに乗らなかったあの時代において、もっとも効果的な仕様だったと思う。


 で、その後ムービーとかも簡単に収録できる時代になり、モノによってはプレイヤーキャラクターがプレイヤーほったらかしで喋ったり勝手な事をしたりするゲームが増える。(この辺ファイナルファンタジーが大変意図的に行っていて巧い。)
 だが、プレイヤーの没入度を高める為に、プレイヤーキャラクターを喋らせないという仕様を選んだゲームも多くあり、ゼルダの伝説などもそうだろう。


 やっとゼルダに話が戻ったが、トワプリに関しては「物を言わぬ主人公はプレイヤーとの一体化の為の仕様」からは乖離してしまっている。

 トワプリのリンクは、プレイヤーの操作を離れ、ムービー内で勝手な動作をするし、無言のまま頷いたり、表情を変えたりと、意思表示をしてしまう。しかも無言である事を強調するかのように尺が長い。そしてその間操作が出来ない。
 その為にリンクはプレイヤーではなく、別個の喋らないナニを考えているか解らないキャラクターとして存在する。

 これはトワプリに限った事でなく、最近のゲームでは非常に多い。ドラクエですら、新しいものはこの傾向にある。

 最初期の「一体感の為の物言わぬ主人公」の理念の下で演出するならば、同じシーンでもキャラクター主観を多様したり、もっと細切れにしてプレイヤーに操作を返すなどする必要がある。それは演出面や、製作コストにおいて不利だが、そこまでしなくても、プレイヤーキャラクターが演技する尺を短めに切り詰めるだけでかなり印象は変わるハズだ。

 つまり、コストや演出の問題で、そうなっているというより、なんとなくそうなっちゃって見える。

A・主人公に喋らせない>プレイヤーとの同一化を計る。
B・主人公が勝手に動く>プレイヤーを客体化させる。

 やってる事はまったく逆なので、AとBを同時にやるならそれなりの演出の仕方があると思うわけで。
「プレイヤーキャラは無言」というのを選んだ時点で,無言である事をプレイヤーに意識されたら駄目なんじゃないのかと。


 えーそんな細かい事を気にするの?

 と思った人も多いと思う。…多いのかなぁやっぱり。

 実際、このエントリを書いたキッカケは同業の若いヒトと話してて「全然気にならない。むしろ普通」と言われたのがショックだったからなんだけれど。

 初期の理念からズレて継承されるって、一番悪い言い方を選ぶと、劣化コピーじゃないですか。
 「プレイヤーの操作できない状況が多くて長い、無言キャラ」のメリットが、旧来より有るのならソレは進化なんだけれども。

「何のためにプレイヤーキャラは喋らないか」って重要なポイントだと思っているんだがけど、どうも気にしてるのは自分みたいな少数派だけかも知れない。

 しかし、ゼルダの他作品は、わりとこの辺りに気を配っているし(というよりトワプリが特別なのかも知れず。単純に画のリアリティアップの結果、違和感を覚える箇所が増えたのかも知れない)逆にプレイヤーキャラクターが勝手に喋りまくる系のゲームでは最近演出面でこなれた物が増えていると思う。(プレイヤーとプレイヤーキャラの主観の混ぜ方に意識が払われている物が増えた)(プレイヤーの思っている事を代弁するようなキャラクターならソレが饒舌に喋っても、自己投影を阻害しないのは初歩)

 そんなわけで、意識している製作者は多いんじゃないかと勝手に思ってるんだけれども。どーなんだろ。


 出来上がったゲームを前にして、ああだこうだ言うのは大変簡単な事なので、それで何かをした気になっちゃいかんのですが。
 そーゆーのも含め、前回は書かなかった部分なんですけど。

 今回はどっちかというと「えええー気にしてるの俺だけ!?」っていうのが先に立っちゃったので「いやいや大事でしょ!」「他にも気にしてる人いるでしょ!」「えええ!それとも俺の気付かぬ何かがあるの!」みたいな感じでキーボードの滑るにまかせて。

 特にトワプリがどうという話でなくて一般論なんだけど、何作も出ているゼルダだけに比較が簡単だったので。
 不思議な帽子とか4つの剣とか、無言キャラだけど、無口に感じさせない巧い奴が同じフォーマットで存在すると比較されて大変よね。

2007/03/12(月) 05:08:28| 固定リンク|ゲーム| トラックバック:2 | このエントリーを含むはてなブックマーク|
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