
1971年発表、メンバーを総入れ替えして生まれ変わった第2期
ジェフ・ベック・グループの最初のアルバムです。目立った有名プレーヤーはドラムの
コージー・パウエルですが、彼に限らず演奏がみんな素晴らしかったです!あいかわらずヴォーカルはいるけど、このアルバムから古いロックの匂いが消え(僕の主観ですけどね^^;)、音楽がかなりインスト・フュージョン時代のジェフ・ベックに近づいて、ここがカッコよかったです!
ワウを噛ませたカッティング・ギターや、転調を絡めたソング・ライティングに、ファンクやモータウンやニューソウル、そしてフュージョンといった同時代のブラック・ミュージックの匂いを感じました。このアルバムがリリースされた71年って、フュージョンの世界では、ジョン・マクラフリン擁する
マハビシュヌ・オーケストラや、
ウェイン・ショーターやジョー・ザヴィヌル擁する
ウェザー・リポートがデビューした年です。
チック・コリアが『
リターン・トゥ・フォーエヴァー』を発表したのも翌72年なので、
エレクトリック・マイルスのような尖鋭的なエレクトリック・ジャズではなく、ロックな弾きまくり系フュージョンが全盛になった時期でもあったんですよね。
このフュージョンのブームは、ソウルをはじめとしたブラック・ミュージックにも影響していて、フュージョン系のミュージシャンを起用していました。
スティーヴィー・ワンダー『トーキング・ブック』のリリースは翌72年だけど、プレイヤーにはデヴィッド・サンボーンをはじめフュージョン系のミュージシャンの名前がありますし、。
ロバータ・フラックがいよいよ注目され始めた71年のアルバム『クヮイエット・ファイア』は、ビルボード誌ではR&B部門だけじゃなくてジャズ部門にもはいっていました。
ジェフ・ベックはこのアルバムから、そういう音楽にも反応しはじめて、ジャズやフュージョンで使われていた作編曲技法の導入は、このアルバムにも大々的に取り入れられていました。特に部分転調を多彩に織り込むソング・ライティングはかなりイケていて、60年代までのロックとは隔世の感。これらの曲の書いているのは、そのほとんどがジェフ・ベック自身でした。へえ、ペンタトニックを多用するギタースタイルなのに、そういうスタイルだとなかなか演奏が難しそうな曲を自分で書いちゃうんですね。そういうクリエイティブなところ、素晴らしいです。
そして、こういう音楽なのに同時代のブラック・ミュージックのコピーバンドに聴こえないのは、ジェフ・ベックのギターの個性ゆえと感じました。たとえば、これでギタリストが
ナイル・ロジャースやカーティス・メイフィールドだったら、真っ黒な音楽に感じたと思うんですよね。
ジェフ・ベックって、タッピングをするときも綺麗に整えるのではなくて、1音1音が立つようバシバシとタップするし、トレモロアームを使う時も綺麗なヴィブラートをかけるのではなく、
リッチー・ブラックモアもビックリなほど極端に振幅を大きくするじゃないですか。ベンドにしたって、やっぱりそうです。
うまさよりもインパクトを優先するからこうなると思うんですけど、これこそジェフ・ベックのセンスだと思うんですよね。
ギターをえげつなく弾くもんだから、良い意味ですごくロック、クソカッコいいです…ジェフ・ベックって本当に素晴らしいなあ。。
ジェフ・ベックを聴いていると、ロック・バンドのフロントマンは、うまく演奏するより強烈なインパクトを与える事の方がだんぜん重要なんだと思わされます。このバンドだって相当うまくて(ヴォーカルのボブ・テンチが弱いって言う人をたまに見かけますが、声質を含め素晴らしいと思うんだけどなあ)、もしかするとジェフ・ベックが一番下手なんじゃないかとすら思うんですが、でももしこのバンドのギタリストがトミー・ボーリンあたりだったらどうだったかと考えると、普通すぎてフックのない平均点の音楽になっていた気がします。フュージョン時代のジェフ・ベックのアルバムがあまりに素晴らしすぎて目立たない時期ですが、いやいや素晴らしいアルバムでした!
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