端午の節句の5月5日を迎え、今年は例年に増して柏餅がよく動き、
とんでもないことになったわけでございますが、
コロナによって歳時記のお菓子が盛り上がるようになったのは事実。
海外旅行や帰省などで、すっかりその存在を忘れ去られていたお菓子たちが、
密かに復権していることは、紛れもない事実ではある。
もちろん、コロナウイルスの蔓延を好意的に受け止めるわけではない。
大きな闇の中で、歳時記のお菓子が、少しだけでも心を和やかにしてくれたなら、
僕は何よりも嬉しいなあと思うばかりでございます。
そんな端午の節句は、柏餅や粽だけではなく、全国的に見れば、
さまざまな郷土菓子が節句のお菓子として愛されているのです。
それこそ新潟県では名物の『笹団子』や『笹 粽』が重宝され、
北海道では『べこもち』が一斉に姿を表すわけです。
また柏餅も、土地によっては柏葉ではなく、サルトリイバラの葉を使うなど、
まあ、これが地方によってさまざまであったりするわけでございます。
そんな中、長崎ならではの節句菓子の存在を忘れてはいけません。
ひな祭りには『桃かすてら』があちこちのカステラ屋さんで作られますが、
端午の節句には、『鯉菓子』というお菓子が存在します。
そう、この時期になりますと、長崎の和菓子屋さんには、
とっても手間のかかる本物の鯉そのままのお菓子が顔を見せるのです。
もともと中国の故事では、黄河の急流にある竜門の滝を鯉が昇り、
龍に化身したことから、立身出世の象徴とされていることから、
端午の節句には、日本でも鯉のぼりが勇壮に空を舞うわけです。
と言うこともありまして、鯉の形をした餅菓子が登場するのです。
上新粉と餅粉をミックスにして仕上げた煎り餅に、
上品な甘さの白餡を包みまして、そこから彩色を施すわけです。
緋鯉と真鯉を対にして、木型で押し出して象ります。
岩永梅寿軒では、丸まって急流を飛び跳ねているような丸鯉と、
一本の長鯉がありまして、鱗や鰭の筋まで再現されておりまして、
細密に掘り上げられた木型を受け継いで作り続けているのです。
その形状はお店によってはデフォルメされたり、リアルであったり、さまざま。
黄色、赤色、黒色で彩色を施して、目を入れましたところで、
最後にツヤ天して、体表が濡れている生き生きとした鯉の姿を表現しています。
いやはや、これまた食べてしまうのがもったいない気持ちになるわけですが、
精巧に作られたその『鯉菓子』をじっと見つめました後、
まな板の上の鯉と申しますか、切り分けて味わうわけでございます。
これがね、白あんが、とっても上品な仕上がりで、美味しいんですよね。
鯉菓子 丸鯉1対 税込2,200円 / 長鯉1対 税込3,100円
◆ 本 店/ 長崎県長崎市諏訪町7-1 TEL:095-822-0977
◇ 販売店/ 基本的に本店のみ
※ 製造する機会が少ないので、事前予約・お問合せをオススメします。
※ 丸鯉と長鯉の二つのタイプがあります。
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