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ちょっと時間ができましたので、宮川筋を下って、松原通り沿いにある松寿軒へ。
基本的に予約しておかなければ、菓子にありつくことができないのですが、
それほど期待することなく、11月末の昼過ぎ、本店にひょっこりとお邪魔したのです。
先のお客さんがちょうど3日後の生菓子を注文しているところだったのですが、
生菓子はあるのかなあ・・・・と首を伸ばしていた僕を優先してくださって、
素敵な女将さんが用意できる生菓子を確認して戻ってきてくれた。
ここで登場しましたのが、定番となっている『やぶれ饅頭』なのです。
いやあ、今年はこの名前を何度耳にしたことでしょうか。
一般的には『うすかわ饅頭』と呼ばれることもある、あんこが見える饅頭。
宮崎県の虎 屋の『破れ饅頭』が全国的には非常に有名で、
九州の旅路で長崎にも存在することを教えてもらったわけですが、
京都でもこの松寿軒で作られていて、逆にどうして?と思ってしまうのです。


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本来ならば、この手の庶民派のお饅頭は、京都ではおまん屋さんの担当。
昭和7年創業と、まだ京都では若いお店ではありますが、
茶席に向くような上生菓子には大変定評があって、お寺の御用も受けていらっしゃる京菓子司。
ならば、どうして、このお饅頭が存在するんだろうかと疑問に思いつつ、注文すると、
女将さんがこういうお饅頭をどうして作ってないんだろうと思いまして、
それで作るようになりまして・・・・と、確かそんなお話をされたのです。
ひょっとして九州からお嫁にいらっしゃったのかなあと勝手な想像をしてしまいました。
真偽のほどは定かではないのですが、いわゆる田舎饅頭の部類で、
しっとりとした薄皮の饅頭皮に、たっぷりと野趣味溢れる粒あんが包まれているのです。
いやあ、素直に安心できる美味しさに頬が緩んでしまいます。

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黄身しぐれはないかなあと尋ねてみますと、これも運良くありました。
以前にも黄身しぐれを頂いたことがあって、また味わいたいなあと思っていたのです。
晩秋ということもあり、『深山しぐれ』という銘で、 はっきりとした黄色に染められ、
崩れてしまいそうなほどに、大きくひびが入っているのですが、まさに崩れる寸前!
いやあ、この限界点で、よく留めたなあという正直な感想です。
ふんわりとして、ほろりと口の中で溶けていくような味わいは、何とも上品。 
多くの場合が、ほんの少しひびが入っている程度ですが、
もう真っ二つに割れてしまうんじゃないかというほど、あんこが見えるほどに溝が開き、
でも、決して崩れてしまうものではなく、ちゃんと形を留めているのです。

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脆そうに見えて、でも、揺らして崩れることはない。
しっとりとした黄身しぐれとは対照的に、空気を含んだよなほわっとした黄身しぐれ。
松寿軒の『深山しぐれ』を味わって、ほっとひと息ついたところで、休憩は終わり。
そして、何よりも温かい女将さんの応対にほっこりして店を後にし、
自転車に乗って、また京都の菓子屋を順番に廻っていく僕でありました。

やぶれ饅頭 1 個 税込250円
深山しぐれ 1 個 税込320円

◆ 本 店/ 京都府京都市東山区松原通大和大路西入弓矢町19-12 TEL: 075-561-4030
◇ 販売店/ 本店のみ
  ※ ご紹介した2種類は、11月下旬に製造されていた生菓子になります。
  ※ 生菓子各種をお買い求めの際は、ご予約をオススメします。