【衆議院本会議 2013年5月9日(木)】
【マイナンバー4法案、5党修正で可決】
マイナンバー関連4法案(183閣法3号、4号、5号、7号)が衆院で起立採決され、参院に送られました。今国会中に成立する見通し。
これは、昨年6月の自公民3党の「社会保障と税の一体改革3党合意」の低所得者対策を実現するために必要な法案。
そして、政府CIO(統括責任者)の設置根拠法となり、行政手続きを簡素化するという根っこからの行政改革に必要な法案。
この、「自公民の社保・税3党」と、「民維み・行革3党」の利害が一致。民主党主導の5党修正と速やかな可決が実現しました。
【社会党が衆院予算委で質問時間を失った初めての国会】
第183回通常国会は記念すべき国会です。
ついに日本社会党(社会民主党に改称)が衆・予算委から消えました。沖縄の小選挙区と、村山大分社会党の比例復活の2議員がいますが、予算委(50人)、内閣委(40人)に社民党の議席はなく、ついにテレビ入り予算委に登場することは衆議院ではありませんでした。吉田茂内閣からNHKラジオ「国会中継」が始まったようですが、テレビ放送史上初めてのことではないでしょうか。
社会党は万年野党で、スキャンダル追及と自衛隊問題に明け暮れてきました。過去の予算委の議事録をみると、スキャンダル質疑を正当化するために、防衛庁関連の予算細目はよく聞いていますが、それ以外の役所、たとえば、建設省や厚生省の予算書の中身についてはほとんど議事録に残っていません。財政民主主義において、1000兆円の財政赤字の責任は社会党にもあります。
なかには改良主義の江田三郎元書記長や、田辺誠・初代シャドウ首相(ネクスト首相)が率いる「政構研派(政権構想研究会)」が政権をめざしていたことは間違いありません。が、政権獲得に必要なはずの過半数の議席につながる候補者を擁立したのは一度だけ。執行部は憲法96条の「改憲発議の3分の2条項」に目を付け、「3分の1の候補者を立てたら改憲を阻止できる。執行部(中執)の責任問題にならない」との理論で、「憲法9条を守る護憲で戦争をしない政党」というイメージを打ち出しました。政構研ですら、「自分の中選挙区に2人目3人目の社会党公認の新人候補が立たなくて済む」という本音もあったでしょう。
とはいえ、日本社会党は、片山内閣、芦田内閣、細川内閣、村山内閣、橋本内閣、鳩山内閣などで政権を担いました。しかし、いずれも、途中で連立離脱をしています。公明党が立党から30年間野党でしたが、3回の政権はいずれも投げ出していません。今振り返ると、PKO国会での社会党の牛歩戦術に対して、公明党がPKO法とりまとめに舵を切ったという「わずかな違い」が存亡を決したことになります。それはベルリンの壁崩壊直後でした。震災後の今、新しい政治体制をつくるときです。
これからは、デモクラシー、モナーキー(立憲君主制)のもと、自由主義経済と米中韓との親密かつ対等な外交関係にもとづく2つの政治勢力が交代で天皇陛下と国民をお守りする国会にしていかなければならないし、なりつつあります。
【社会党による自民党のチェックから、立法府が行政府をチェックする本来の姿に】
そのなかで、「憲法を改正すると日本は戦争をする」、「国民総背番号制を導入すると、国家が国民を監視する」という洗脳によって、のうのうと国有地の党本部で既得権益を貪ってきた社会党が消えました。では、日本は今すぐ戦争をするのでしょうか。今すぐプライバシーがなくなるのでしょうか。遅きに失したとはいえ、新しい日本となりました。もちろん、戦争の危険も、独裁の危険も残っています。自民党だけではありません。民主党も必要なのです。
そして、国会中心主義という考え方を持ちたいものです。私たちがアクセスしやすいのは国会です。例えば、国会議事堂というのは、金属探知器をくぐれば、誰でも入れます。金属探知器があるから敷居が高いのではありません。逆にいえば、金属探知器をくぐれば、誰でも入れるということです。
国会によって、内閣提出法案が修正されました。少し引用が長くなりますが、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案、マイナンバー法案の第1条です。
[政府提出法案から引用はじめ]
第一条 この法律は、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより、これらの者に対し申請、届出その他の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるほか、個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)及び個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)の特例を定めることを目的とする。
[引用終わり]
これが衆・内閣委で次のように修正されました。
[衆議院修正後の法案から引用はじめ]
第一条 この法律は、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより【行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図り、】かつこれらの者に対し申請、届出その他の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるほか、個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)及び個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)の特例を定めることを目的とする。
[引用おわり]
このように、第1条にマイナンバーの導入で「行政運営の効率化」。そして、もっとも重要な「より公正な給付と負担の確保を図る」こと。この2つの文が挿入されました。法律が施行されれば、衆参の内閣委はいつでもマイナンバーが「行政運営の効率化」と「公正な給付と負担の確保」につながっているかどうか、国政調査することができます。
そして、第3条。
[政府提出法案から引用はじめ]
第三条 個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として、行われなければならない。
一 行政事務の処理において、個人又は法人その他の団体に関する情報の管理を一層効率化するとともに、当該事務の対象となる者を特定する簡易な手続を設けることによって、行政運営の効率化を図り、もって国民の利便性の向上に資すること。
[引用おわり]
これが、次のように修正されました。
[衆議院修正後の法案から引用はじめ]
第三条 個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として、行われなければならない。
一 行政事務の処理において、個人又は法人その他の団体に関する情報の管理を一層効率化するとともに、当該事務の対象となる者を特定する簡易な手続を設けることによって、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資すること。
[引用おわり]
このように、
(閣法)行政運営の効率化を図り、もって国民の利便性の向上に資すること。
(5党修正)国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資すること。
に国会が書き換えました。「行政運営の効率化が国民の利便性の向上だ」という上から目線が「国民の利便性の向上」「行政運営の効率化」が並べました。
このような委員会修正。
かつての自民党と社会党の国対委員長の料亭政治では、社会党が国会での修正を受け入れやむなく賛成に回るというシナリオが事前に用意されていた時代もあるようです。そして、一部の省では官僚が社会党が修正するための「のりしろ」を付けて法案を書いていたとも聞きます。
今回の修正。客観的に官僚がわざと書いて、野党議員を回って「先生、これでお願いします」と用意したのりしろにはとうてい思えません。仮にそうなら大物過ぎます。ただ、5党とも、それぞれの支持者から後で不満を言われることに敏感になっているなあ、という気配は審議を聞いていて感じました。
政治を国民の手に取り戻す。国会中心主義はどんどん進んでいて、この日の衆院では、災害が起きた後に、復興基本計画をつくる手順などを定める法案も審議入りしました。言うまでもなく東日本大震災の教訓にもとづくものです。この法案は昨年6月に改正された際に、事前に衆議院の付帯決議で「抜本改正」が盛り込まれていました。「3・11」の前には戻れませんが、なんとか次の震災に備える段階までノンストップ国会はやってきました。
マイナンバー法案の5党修正と付帯決議による可決。討論なしで、あっさりと起立採決で終わりました。
社会党が消えた第183回国会。
三文雑誌とワイドショーの政治はきょう、完全に終焉しました。
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