【写真】池口修次・民主党参院国会対策委員長、本人公式ホームページから。
【参議院決算委員会 2013年5月20日(月)】
本来ならば、第180通常国会会期末で間に合いそうだった「平成22年度決算」の総括質疑が行われました。昨年9月に参議院本会議が「野田首相問責決議」を可決したため、あと一回のところで、1年遅れになっていました。
平成22年度決算、2010年度決算、企業風に言えば「2011年3月期決算」は、鳩山由紀夫内閣が編成し、菅直人内閣が補正、執行したものです。
討論では、自民党の二之湯智筆頭理事が「鳩山内閣で公債依存度が上昇した」「八ツ場ダム(やんばだむ)で前原大臣が中止したのに、馬淵大臣が見直し、前田大臣が再開するなど混乱した」「鳩山内閣の米軍基地に関する迷走のすえ政権を投げ出し、菅内閣が無責任に執行した」とこてんぱんに批判。そして、「(自民党)政府は民主党政権の失政を教訓として、政治を前に進めることを求め、私たち(参議院自民党は)責任ある政府与党の一員として、決算を是認する」 と我が耳を疑う、賛成討論をしました。
この結果、平成22年度決算は、民主党、自民党、公明党、社民党の賛成、みんなの党、日本共産党の反対で、「是認(認定)」されました。次の本会議で可決される見通し。
社民党の又市征治決算委員はテレビ入り総括質疑で総理に向かって「俺は12年間、決算委員をやっているんだ」と気色ばんだ上で、討論では「平成22年度決算は私たち社民党が3党連立政権として予算編成に参加した」とし、「未来の担い手である子どもへの給付も手厚く、地域自主戦略交付金(地方一括交付金)などで地方財政にも手厚い」と評価し、「賛成する。が、誰が編成したかは別として問題点は指摘したい」とし、防衛費、原子力、特別会計の3点を指摘しました。
正直、決算に自民党が賛成するとは思わなかったので驚きました。
政府に対する警告決議は今回も全会一致で可決。
1、東日本大震災復興に関する一般会計と特別会計のけじめ。2、政府の主要な会議での議事録や議事要旨の未作成、3、国が補助金で支援する大学の不適正な会計管理、4、特許庁の情報システムの(東芝グループの不始末による)中断と厚労省の情報システム開発の失敗、5、原子力発電所・研究施設における事業者依存の検査マニュアルの改善ーーを政府に全会一致で警告しました。とくに「科研費」に関しては、平成17年(2005年)に参・決算委が政府に改善を勧告し、平成20年(2008年)に政府が「改善した」と報告した後も、不正使用があったと激しく指弾しました。
政権交代の実現で、参議院事務局委員部は諸外国議会の事例をていねいに調べたと、複数の決算委員から聞いています。その中で、「民主党政権の失敗を自民党政権で前に進めるんだ」という二大政党のバトンリレーが参・決算委で実現したことは、歴史的な出来事だと評価します。実は決算というのは国会、地方議会とも、否決(不認定)されたところで、政治的責任だけで法的責任は生じません。だから、自民党は反対してもよかったはずですが、賛成したうえで警告決議に加わったことは、政権交代ある二大政党政治の参議院会派としての今後の存在意義を見いだした気がします。
第183回通常国会では、池口修次さんが民主党・新緑風会国対委員長、脇雅史さんが参議院自民党国対委員長を務めています。
民主党・新緑風会では伝統的に新人議員を決算委員にしています。池口さんも最初の通常国会で2回だけ決算委員会で質問していますが、その後は決算委員にはいなかったようです。池口さんは参議院始まって以来の本田技研(ホンダ)の労組出身です。「日産リバイバルプラン(ゴーン・ショック)」に揺れていた日産労連の寺崎昭久さんの引退に伴う後継者として参院議員になりました。この間、裏は全トヨタ労連の直嶋正行さんが好成績で当選を重ねています。そして、民主党は第23回参院選で12年ぶりに日産労連の新人が公認されています。伝統的に国対委員長は質疑に立たない不文律があるので、今国会で池口さんのラスト質疑を聞くことはできないのかもしれません。池口さんのホームページには「他人の喜びは自分の喜び」とあります。野党時代の池口さんの国土交通委員会や環境委員会の質疑は、ひたすら自動車総連の働く仲間と経営者の声を代弁し続けているわけですが、私は参議院というのはそれでいいし、そうあるべきだと考えています。
まあ、池口国対委員長が参・決算委にどれくらいかかわっているかは正直知らないのですが、いずれにしろ、蓮舫筆頭理事はすばらしい配置だと考えます。
衆議院の二大政党が与党経験を糧に議論する時代になりました。今国会で衆参がともに空転したのは一日もありません。衆議院での二大政党対決のなかに、かつて参議院が果たしていた役割が移りつつある気配を感じます。もはや参議院は問責の院ではありません。政権獲得合戦に明け暮れる衆議院を横目に、「全会一致で警告決議」をする、そういった地方議会的なオール野党意識があっていいように感じます。
さて、本来エントリーを改めるべきかもしれませんが、伊藤忠治さんがきのう亡くなったそうです。享年79。伊藤さんは総評系全電通の出身で、社会党公認で三重県第1区から当選を重ねました。平成2年2月18日の第39回衆院選では5人区の三重1区で社会党唯一の公認候補としてトップ当選。この後、自民党清和会の北川正恭さん、自民党宏池会の川崎二郎さんが続き、4位には自民党経世会の新人、岡田克也さんが初当選を果たします。5位は民社党の中井ヒロシさんで、公明党の坂口力政審会長が次点で落選してしまいました。この中で最年長の伊藤さんが亡くなりました。このメンバーは不思議なもので、岡田さんは自民党の3人と一緒ですが、新進党で、中井さん、坂口さん、北川さんと一緒になります。そして、民主党で伊藤さんと同じ党になりました。全員と同僚議員だった経験があるわけですが、伊藤さんは最後に同じ党になった関係です。
政権交代ある二大政党政治を21年間、必死に追い求めてきた中で、「参・決算委の決算審査はどうなるんだろう?」と思いを馳せたことは、つい最近のことです。しかし、やはり二大政党による議会政治というのは、いずれにしろ、「まあなんとかなるものだ」と感じました。
アベノミクスのおかげかどうか知りませんが、ホンダがF1に復活するそうです。お互い似合わないタキシードと蝶ネクタイ姿という出で立ちの本田総一郎さんがアイルトン・セナの頭をげんこつでぐりぐりしながら「これからも良いエンジンつくってやるからな」と言ってセナが号泣した「54歳の年の差の音速コンビ」。それから数年以内に2人とも風の中に消えてしまいましたが、鈴鹿サーキットでまたF1を開く、世界の一等国に帰れる日まで、二大政党の切磋琢磨は続くでしょう。
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